名古屋市民芸術祭賞 舞踊部門に2011年 テアトル・ド・バレエ カンパニー公演「白鳥の湖」(深川秀夫版)

名古屋の秋を彩る芸術文化の総合的なイベントとして知られる「名古屋市民芸術祭」(10月〜11月に開催)。平成2年からスタートし、音楽・演劇・舞踊・伝統芸能・美術・文学・生活芸術の5部門にわたって、主催事業・参加公演を実施している。
参加公演において特に優秀な公演に対し「名古屋市民芸術祭賞」を、特に表彰に価する公演に「名古屋市民芸術祭特別賞」が贈られる。
2011年度の市民芸術祭賞・市民芸術祭特別賞が16日、発表された。3公演に名古屋市民芸術祭賞が、1公演に名古屋市民芸術祭特別賞が贈られる。
2011 市民芸術祭賞・市民芸術祭特別賞
http://www.bunka758.or.jp/id_shimingeijyutsusai.html
舞踊部門は2011年 テアトル・ド・バレエ カンパニー公演「白鳥の湖」(全幕)
以下、授賞理由。

古典の名作にオリジナリティーと工夫を持ち込んで幻想美を息づかせた振付家・深川秀夫の才気が光る舞台だった。白鳥オデットと黒鳥オディールをダンサー2人が踊り分けて人間の光と影、表裏一体性を象徴する構成や、白鳥の群舞が悪魔を追い詰める力強い終幕の演出は、現代性もあって感銘を受けた。人や金のハンディに逆転の発想で挑み、最大限の舞台効果を発揮した点も評価したい。

榊原弘子・有佳子姉妹や荒井祐子、米沢唯らを輩出している団体。前身の塚本洋子バレエ団・スタジオ時代に深川の『コッペリア』、現在、新国立劇場舞踊チーフプロデューサーの重責にある望月辰夫の代表作のひとつ『EDEN』でも同賞を受けている。
森下洋子とともに日本バレエの海外進出の先駆者といえるのが深川秀夫である。ヴァルナ、モスクワの国際バレエコンクールにおいて上位入賞後、ヨーロッパにわたり、ジョン・クランコやジャン・クロード・ルイーズらに師事。12年の海外生活を経て帰国後は出身地名古屋を拠点にフリーの振付家として活動し多くの創作を発表している。
深川作品はクラシック・バレエの規範を大切にしながらロマンティシズム溢れた独自のもの。細かなステップの使い方は深川節と呼びたくなる。作品発表の機会が名古屋や関西に集中するため管見であるが、『白鳥の湖』『コッペリア』『ドン・キホーテ』『ガーシュウィン・モナムール』『ソワレ・ドゥ・バレエ』『グラズノフ スウィート』『真夏の夜の夢』『妖精の接吻』『ホフマン物語』(抜粋)など、彼の秀作に惹かれるひとりだ。
海外進出の先駆者であり、振付家としても才人である深川。しかし、実力に比して世評は追いついていないという印象も受けていた。が、平成19年度名古屋市芸術特賞、第24回橘秋子賞特別賞を立て続けに受賞して、広くバレエ界で巨匠の扱いを受けている。今回の受賞によって地元・名古屋でも彼の声望がさらに高まるであろう。

"Coppelia" コッペリア(Miyashita Yasuko Ballet Company)