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ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2012-02-22

[]第29回 江口隆哉賞にケイ・タケイ

社団法人現代舞踊協会制定による第29回 江口隆哉賞にケイ・タケイが決まった。

授賞理由は以下の通り。

文化人類学的視点からダンスをとらえ、日本的ひいては汎アジア的身体性を探求、独創的な作風を生み出した。近年は、自然、環境と身体との関係を軸に意欲的な創作を続けており、貴殿が昨年発表された「CHANTING HILL」「水溜りをまたぐ女・かもめ」ほかの成果に対して。

江口隆哉賞は、わが国における現代舞踊の振興と協会の繁栄に尽力した故・江口隆哉の功績を記念し1983年10月13日に制定された。年間を通じ優れた現代舞踊を創作発表した作者に、過去の実績を加味して授与することとしている。現代舞踊協会の理事と舞踊評論家・ジャーナリストによる選考会によって選出される。

よく誤解されているのだが、同賞の授賞対象は広く舞踊界(公益目的事業における顕彰事業)。現代舞踊協会会員のみが対象ではない。前回の中村恩恵に続いて非協会員のケイ・タケイが獲得したことは舞踊界全体に対して刺激をあたえるものになるのではないか。戦前から育まれてきたわが国の現代舞踊の歴史を尊重したうえで、現代のダンスとの接点を見出していくという、より建設的な視座が打ち出されたといえる。

ケイ・タケイは現代舞踊のパイオニアのひとり檜健次と、その夫人の藤間喜与恵に師事した。のちにジュリアード音楽院舞踊科に留学。アナ・ハルプリン、マーサ・グレアム、トリシャ・ブラウンらの下で学ぶ。アメリカン・ポストモダンダンス最盛期のニューヨークに学んだ彼女は、同地を拠点に仲間たちとムービングアースを結成する。独自の舞踊語彙を開発し、1969年以降代表作のLIGHTシリーズを世界各地で上演してきた。文化庁の招待等によって来日公演も行う。欧米で各種助成金や舞踊賞を獲得。勅使川原三郎が登場する10数年も前から世界的知名度が高い舞踊家・振付家である。

1992年帰国後も内外で地道な活動を続け、現代舞踊の折田克子やアキコ・カンダ、竹屋啓子らと共演する機会も少なくなかった。とはいえ、欧米での高評価・高知名度に比し国内での評価が低かったのは否めない。2007年度に第19回ニムラ舞踊賞を得ているのが目立つ程度である。が、最初の作品の初演から40年を迎えた2009年以降、再びLIGHTシリーズ上演を本格的に再開。ダンサーやスタッフにも恵まれ、新作発表と旧作のリ・クリエーションを腰を据えて展開したことが今回の受賞につながった。

LIGHT,Part 34『CHANTING HILL』は昨年2月に日暮里サニーホールにて初演されたグループワーク。生の根源と自然との共生・対話を探るという彼女の一貫して追求してきた主題がスケール大きな構成のもとに展開される。自然への畏怖や近代化する過程で人間が行ってきた営為への疑問を静かに訴える。文明批評的な奥深さを備えた力作。大震災以前に発表されたがアクチュアリティがある。というよりも、いかにケイ・タケイが以前から今日的な問題を独自の舞踊語彙をもってして語り継いできたかの証左といえる。いっぽう、年末にシアターΧで上演したLIGHT,Part35『水溜りをまたぐ女』は新作ソロ。これは「ある女の生活記録」という副題を持つ。その年季の入った踊り、舞踊家としてさらなる高み・深みを志向する覚悟を示しつつストイックにダンスと向き合う姿勢が圧倒的であった。創作力・実績とも申し分ない。文句ない受賞であろう。

先日、受賞後初の公演として最新作LIGHT,Part36『風を追う者たち』およびLIGHT,Part12『Stone Field』をシアターΧにて上演した。旺盛な創作欲に驚かされる。そして、世界中で上演されてきた代表作のひとつ『Stone Field』のなかで印象的な、わらべ歌を用いた場面などは、師であった檜ひいては現代舞踊の潮流のDNAをも感じさせる。江口隆哉の名を冠した、現代舞踊界最高の栄誉を受けるにふさわしい存在であると、あらためて実感した。ケイ・タケイの、さらなる発展を願いたい。

LIGHT,7 Diary of the field -創作畑の日記- 2010.5.23(Sun)

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2012-02-18

[]AIのアルバムのリードトラックに永橋あゆみ(谷桃子バレエ団)が出演

R&B歌手として人気を誇るAIの9枚目となるオリジナルアルバム「INDEPENDENT」からのリードトラックが2月14日、YouTubeに公開された。

"磨き上げたMY STYLE 何度も何度も 努力してきたら"ガールズ・アンセム的リリックに込められた想いと共に、各界の一線で活躍する"INDEPENDNET"な女性達が出演するドキュメンタリー・ミュージックビデオ。そんな女性のひとりとして登場するAI自身の卓越したダンスアビリティーも必見のアッパーダンスチューン!という触れ込みだ。

各界で活躍する女性たちが登場する。バレエ界からは永橋あゆみが出演。

永橋は名門・谷桃子バレエ団のプリンシパルとして活躍している。清楚で美しい容姿と堅実な技術・表現力を兼ね備えたプリマ。近年は谷桃子バレエ団のあらゆる公演の主演を務め、2010年度には新進気鋭かつ今後の活躍が期待される洋舞ダンサーに贈られる中川鋭之助賞(主催:東京新聞)を受賞している。ベテランの域に入った酒井はな、それに島田衣子や島添亮子に続くプリマとしてさらなる飛躍が期待される存在だ。

永橋の主演する舞台で特筆されるのはアンサンブルとの一体感が好ましいということ。舞台を引っ張るにはアンサンブルとのコミニュケーションが欠かせない。永橋は谷バレエの舞台で周囲とのバランスのとれた舞台運びをみせているが、強い印象を残したのが2010年春、日本バレエ協会の都民芸術フェスティバル参加公演メアリー・スキーピング版『ジゼル』に主演したときのこと。アルブレヒト役の法村圭緒はいうに及ばず、ベルタの尾本安代、バチルドの福沢真璃江やペザント・パ・ド・ドゥを踊った奥田花純・奥村康祐らとの親密感溢れる絶妙の間合いの演技が忘れがたい。主役を務める人の多くは素晴らしい人間性を持っていると思うし実際そう伝え聞く。だからこそアンサンブルと一体化し自身だけでなく舞台全体を輝かすことができるのだろう。

バレエといえば華やかで優美な世界に思われるが、日々のレッスンが欠かせないし舞台では多大なエネルギーを消耗する。タフでなければバレリーナは務まらない。インデペンデントにタフに活躍する女性像として永橋が取り上げられたのは好ましい。

AI - INDEPENDENT WOMAN

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AI - INDEPENDENT WOMAN」(for mobile)

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出演:浅野順子/高木由利子(写真家)/宇津木えり(ファッションデザイナー) /矢部澄翔(書道家)/永橋あゆみ(バレエダンサー) /小田巻洋子(キックボクサー) /龍 Kaede(ドラァグクィーン)/MJCアンサンブル(合唱団)/ SHOW-GUN(ダンサー)/バーバラ植村(講師・イラストレーター)

2012-02-12

[]横浜ダンスコレクションEX2012 受賞者発表

コンテンポラリー・ダンスの登竜門のひとつ「横浜ダンスコレクションEX」のコンペティションが7日〜12日まで横浜赤レンガ倉庫にて行われ、12日、受賞者が発表された。

詳しくは後日、赤レンガ倉庫からリリースが出るはずである。とりあえず速報。

コンペティション 1 作品部門

審査員賞 鈴木優理子

若手振付家のための在日フランス大使館賞 岩渕貞太・関 かおり

MASDANZA賞 皆藤千香子

コンペティション2 新人部門

最優秀新人賞 高橋和誠

奨励賞 塚田亜美

2/15追記:下記、プレスリリース出たので紹介する。

http://www.yokohama-dance-collection-r.jp/jp/file/ydc12%20PressReleaseVol_3_jpn.pdf

なお、最終日には昨年の最優秀新人賞を獲得した川村美紀子の新作上演が行われた。また、15日には過去の受賞者による受賞者公演が行われ、長内裕美、古家優里、パク・ウンヨンの作品が上演される。こちらも楽しみにしたい。

【横浜ダンスコレクション受賞者公演】ダンス・振付家、長内裕美さん

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2012-02-11

[]「ダンスがみたい!新人シリーズ10」の講評掲載

ダンス界において独自の存在感を示すダンスフェスティバル「ダンスがみたい!新人シリーズ10」が1月6日(金)〜1月22日(日)まで神楽坂die pratzeにて行われた( 主催:「ダンスがみたい!」実行委員会 共催:die pratze 助成:EU・ジャパンフェスト)。

http://www.geocities.jp/kagurara2000/s10

若手を中心とする39組が参加し、13日間にわたって研を競った。

既報であるが受賞者は下記の通り。

新人賞

川村美紀子『がんばったんだね、お前の中では』

オーディエンス賞

ビルヂング『雨宿りのビル』

昨年に続いて新人賞審査員を務めさせていただいた。他の審査員は、上村なおか(舞踊家・桜美林大学総合文化学群非常勤講師)、志賀信夫(舞踊批評家・編集者)、貫成人(専修大学文学部教授・舞踊評論家)の各氏。

講評がdie pratzeおよびd-倉庫のHPにて公開されたのでお知らせしておく(2/8UP)。

新人シリーズ10 審査委員による講評

http://www.geocities.jp/kagurara2000/s10_c

がんばったんだね、お前の中では(ダンスがみたい!新人シリーズ10) D

ビルヂング いままでとこれから

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2012-02-09

[]サウラ×ストラーロが“生命の旅と光”を描く「フラメンコ・フラメンコ」

「血の婚礼」「カルメン」などの名作を撮ったスペインが誇る名匠、カルロス・サウラ監督。「暗殺の森」「ラストタンゴ・イン・パリ」「地獄の黙示録」などにおいて色彩感覚豊かな映像美をみせる撮影監督のヴィットリオ・ストラーロ。マエストロたる両者は近年コンビを組むことが多く、「タンゴ」「ゴヤ」などの作品を生み出している。

名コンビが初めて協同作業を行ったのが「フラメンコ」(1995年)。ホアキン・コルテス、メルチェ・エスメラルダ、マリア・パヘスといった若き名舞踊家らが出演し、わが国でもフラメンコブームの火付け役を担ったとされる。 それから15年の歳月を経てサウラとストラーロがフラメンコを題材にした作品を生んだ。「フラメンコ・フラメンコ」(2010年)だ。

ここで描かれるテーマは「生命の旅と光」だという。人が生まれ老い行き、そして新たに生まれ変わるまでの旅路を、さまざまのパロ(曲)にのせ21景にわたって綴っていく。全編スタジオにセットを組んでの撮影。歌(カンテ)、踊り(バイレ)、ギター(フラメンコギター) それぞれスペインを代表する名手たちが集い至芸を披露してくれる。パコ・デ・ルシア、マノロ・サンルーカル、ホセ・メルセーといった巨匠といえる存在のギタリストやフラメンコヴォーカルが、新世代のフラメンコ・アーティストたちとコラボレーションを行う。

スタジオには、フラメンコをモチーフとした大きな絵画が並べられてる。その前で、生命の神秘と躍動を歌と演奏と踊りで表現するフラメンコの神髄が余すところなく演じられ、映像に捉えられている。光と影、陰影に富んだ映像の美しさには息をのむばかり(21曲が間断なく連ねられる、やや禁欲的な構成のため、観る人によっては途中で疲れてしまうかもしれないが…)。演者たちの息遣いが間近で捉えられ臨場感もたっぷりだ。

フラメンコ愛好者には見逃せない。アントニオ・ガデス旋風に沸いた80年代の熱狂、サウラ×ストラーロコンビによる「フラメンコ」やホアキン・コルテスらに代表される90年代半ば以降のブームに続く新世代のフラメンコの魅力を堪能できる。

個人的には、ここ数年動向をフォローできていない踊り手たちに接することができたのが収穫だった。たとえばサラ・バラス、エバ・ジェルバブエナなど。彼女たちは少し前に何度か来日したが、招聘元のカンバセーションアンドカムパニーが2010年末に実質倒産してからは途絶えてしまった。同社はコンテンポラリー・ダンスやワールド・ミュージックに加えフラメンコ舞踊も少なからず招聘していた。2005年に同社が企画招聘した「フラメンコ・フェスティバル・ジャパン」はバラスやジェルバブエナら第一級のフラメンコ・アーティストを招いたもので、いまや伝説といっていい名企画。完売していた公演(フラメンコ系以外の舞踊関係者はほぼ見かけなかった)の当日券を必死の思いで手に入れて観劇し熱狂した覚えがある。その後も同社は彼女たちやラファエル・アマルゴなどを招聘。昨年2月に来日したマリア・パヘス舞踊団の公演も元来カンバセーションが呼ぶ予定だったところ倒産により急遽パルコが引き継いだという経緯がある。

私が映画「フラメンコ・フラメンコ」のなかで一番興奮したのは、いま、世界中の熱い視線を集めるバイラオール、イスラエル・ガルバンの演技である。父親のホセ・ガルバンらに学び、若くして天才の名をままにしてきた彼はフラメンコのみならずクラシックバレエや、モダンダンスなども学ぶ。現在も独特なコンテンポラリーな質感のフラメンコを創造している。本作でも軽やかにして華麗、圧倒的なスピード感と精度を誇るステップを披露し、忘れがたい印象を残した。彼の出演場面をみるだけでも、この映画を観る価値があると断言していいくらい。私は生で観たのは一度だけ。近いうちに来日してほしいアーティストの筆頭のひとりである。というか、どこかが呼んでくれることを熱望する。

2月11日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

http://www.flamenco-flamenco.com/index.html

映画『フラメンコ・フラメンコ』予告編

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ISRAEL GALVAN - "LA EDAD DE ORO" - DEMO

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サロメ [DVD]

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2012-02-08

[]舞踏のメッカ・テルプシコール公式ホームページ開設

昨秋、東京・中野にあるスタジオ、テルプシコールの公式ホームページが開設された。

http://www.studioterpsichore.com/

不覚にも、つい先日情報が流れてくるまで知らなかった。

テルプシコールは舞踏のメッカとして知られる。1981年に設立されたこのスタジオの命名者は舞踊評論家の故・市川雅。舞踏史を飾る多くの舞台が上演されてきた。コンクリート剥き出しの無機的な空間で、こじんまりとしているが、多くの舞踏家たちの血と汗がにじんでいるような歴史の重みを感じさせる。聖域といえるかもしれない。新人の登竜門「舞踏新人シリーズ」が行われ、若手のデビューの場ともなっている。

このスタジオは毎月「テルプシコール通信」というものを出しており、舞踏批評等も載っているが、基本的に定期購読しないと読めないようだ。公演情報を得るにもチラシ頼みだったので、公式ホームページができ、情報を出してくれるならば、ありがたい。というのも、時おり舞踏の舞台を観たいと思っても、知らない間、気が付かない間に公演が終わっていて残念な思いをしたことが数知れないからだ。先年亡くなった伝説的な舞踏家・五井輝の『音江山』(2004年)などを見逃したのは痛恨の極みである。

舞踊批評のページもあるので、そちらにも期待したい。


見ることの距離―ダンスの軌跡1962~1996

見ることの距離―ダンスの軌跡1962~1996


病める舞姫(限定復刻版)

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Corpus(コルプス)―身体表現批評〈no.4〉特集 土方巽

Corpus(コルプス)―身体表現批評〈no.4〉特集 土方巽

2012-02-07

[]ローザンヌ国際バレエコンクール 菅井円加が受賞

スイスのローザンヌで行われるローザンヌ国際バレエコンクール( Prix de Lausanne)は15歳から18歳までのバレエダンサーを対象としたものだ。今年は19カ国から79人が参加し、決勝には21人が進出した。クラシックとコンテポラリーを踊り妍を競った。

既報の通り17歳、高校2年生の菅井円加(佐々木三夏バレエアカデミー)がスカラシップ賞とコンテンポラリー賞を受賞した。第1位受賞ということで大きな話題になっている(熊川哲也らが受けた最優秀者に贈られるゴールドメダルは廃されている)。審査員を務めた吉田都によると、菅井は「すべてが良く、審査員9人全員一致の結論です。決勝前日の演技からも成長が見て取れ、現代舞踊ではエネルギーを感じました」とのこと。実際、満場一致といっていい評価を得たようで文句ない受賞。大変喜ばしい。

大手紙やテレビ各社でも大きく報道された。過去にない位の熱狂ぶりである。この10年でみても、贄田萌や高田茜、佐々木万璃子らが上位入賞してスカラシップを受けている。バレエ関係者やファンからすると、1位というのは確かに快挙ではあるもののここまで大騒ぎするほど?とも思う。「将来性」を評価するコンクールであり、「その後」が何よりも問われるからだ。だから、現在のフィーバーには、いささか戸惑ってしまう。いくらなんでも、ここまで持ち上げられるのは異常という気がしないでもない。

日本の関係者のコメントのなかでは、谷桃子バレエ団出身でNBAバレエ団の重鎮・久保幸子の評が具体的で分かり易い。「体の芯がしっかりしていて、自分の脚で立つことができるバレリーナ。心の軸も安定しているのでしょう」「クラシックのみならずコンテンポラリー(現代舞踊)で評価された点が画期的。表現力が弱いとされた日本のバレエも新時代に入ったのだと、感無量です。海外からの出場者は大半が国立バレエ学校の生徒。小さな個人スタジオというハンディを覆して、これほどの成果を上げた本人と先生、周囲の頑張りを誇りに思います」(毎日新聞)。

菅井は昨夏の埼玉等では上位に入らなかったものの全国舞踊コンクール、こうべ全国舞踊コンクールはじめとする国内のコンクールで第1位を得ている。国内コンクールでの評価が低かったというような声を見聞したが、それは違う。2010年度の全国舞踊コンクールジュニアの部では「シルヴィア」のヴァリエーションを踊った。決選を観たが、通常コンクールで踊られる振付とは違って意表を突かれた覚えがある。が、どこかで見た覚えがあるな、と思い返した。アシュトン版のもの?そのこともあって彼女のことを認識していた。確かに身体の軸が非常にしっかりしている。その後の神戸でも1位を獲得。

菅井はスタイルは良い方とは言えないが「表現力」を評価されている。が、キャリアある指導者・実演家に聞くと、彼女の演技特にクラシックに対しては評価がやや分かれる。「音楽性がある」という見方もあれば「そこまで評価されるほど?」という見方も。でも、誰が何と言おうとも一定以上の資質の持ち主であるのは疑いない。将来、どう化けるか分からないし、踊りに癖あるにせよ改善は難しくないはず。バーミンガム・ロイヤル・バレエ付属学校への留学を希望しているとか。さらなる研鑽と飛躍を期待したい。

そして、今回のフィーバーに関して述べておきたいことがある。わが国では、コンクール熱が年々増し、毎年のように新たなバレエコンクールが創設されている。勉強の場としてコンクールを利用するのであれば構わないが、今回のフィーバーによって、入選すること自体が目的と化すような傾向が助長されるのであれば困る。そして、菅井がプレッシャーに負けないで大成してくれることを願う。今のフィーバーぶりでは、熊川哲也や吉田都クラスの名実備わったスターにならなければ、というような感じですらある。そんなことはあまり気にしないで、自分のペースでのびのびと成長することを願う。

熊川哲也は毎日新聞の取材に対し、こう述べた。ローザンヌについて「世界を目指す若きダンサーたちが夢から覚め現実を直視する初めての試練の場だ」。菅井には「アーティストとして通過点であることを心に留め、真にプロフェッショナルなダンサーとして世界に羽ばたくことを願っている」。おおらかな姿勢で菅井の成長を見守りたい。

2012ローザンヌ国際バレエコンクール一位受賞の瞬間から

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Madoka Sugai Contemporary 2012ローザンヌ国際バレエコンクール

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2012-02-03

[]各地で盛ん、コンテンポラリー・ダンスの新たな波

2月に入ると東京での公演数が激増するが、同時に各地でコンテンポラリー・ダンスのイベントが立て続けに行われていることはもっと知られてもいいだろう。

横浜では、新人の登竜門的存在である「横浜ダンスコレクションEX2012」が開かれている(2012年1月28日〜2月19日 横浜赤レンガ倉庫1号館)。コンペティション部門だけでなく受賞者公演、海外フェスとの交流プログラムやショーケースも組まれる。海外のダンスフェスティバル等の関係者も多数来場することで知られよう。重要イベントだ。

福岡では「福岡ダンスフリンジフェスティバルvol.5」(2月4〜5日 大博多ホール)が催される。アジア、全国、福岡からの22作品が上演される。韓国を初めアジアとの交流の輪が着実に広がっているようだ。

神戸ではKOBE-Asia Contemporary Dance Festival #2 (2月17〜25日 Art Theater dB神戸)。関西をはじめとしたわが国のアーティストとアジアの気鋭たちが作品を発表したり展示を行ったりする。プログラムディレクターは気鋭の制作者・横堀ふみ。地域に根差した活動と先鋭的なダンス/パフォーマンスを積極的に取り上げる同劇場であるが、このフェスティバルはアジアを見据えた取り組みである。

横浜はコンペがメインとはいうものの関連のプログラムなどの充実もあって、一大フェスティバルといった趣がある。福岡、神戸はフェスティバル形式を取る。コンペからフェスティバルへとコンテンポラリー・ダンス界の動向が変化しているのは明らかだ(かなり前に乗越たかお氏は指摘している)。そういったフェスティバルの熱気が新たな波を起こし、コンテンポラリー・ダンスを活性化させていくことが期待される。

他の地域の動きも活発。

新潟ではりゅーとぴあ 市民芸術文化会館 のレジデンシャル・ダンスカンパニーNoismが成功をおさめている。今月は研修生カンパニーNoism2春の定期公演が行われる(2月17〜19日 新潟市民芸術文化会館 スタジオB)。Noismがモデルケースとなって各地に同様のプロフェッショナルなカンパニーが生まれることが望まれる。

京都はコンテンポラリー・ダンスの全国組織JCDNの拠点とであり、「踊りに行くぜ!!」や音楽や映像とのコラボレーション企画、国際共同制作プログラム等を国内外で展開している。また、京都では、ダンサーたちによる出会いの場「wedance京都2012」(2月3〜4日 元・立誠小学校)が行われる。プログラムディレクターはきたまり。勉強会的な色彩が強いが新たな創造に結びつくことを願いたい。


コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド HYPER

コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド HYPER



Corpus―身体表現批評〈no.2〉特集 コンテンポラリーダンス再考

Corpus―身体表現批評〈no.2〉特集 コンテンポラリーダンス再考