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2012-03-30

[]オールニッポンバレエガラ2012 公演概要発表

今夏行われる「オールニッポンバレエガラ2012」の公演概要が30日公表された。

オールニッポンバレエガラ2012の概要決定!!

http://nippon-balletgala.com/

http://balletnavi.blog114.fc2.com/blog-entry-729.html

所属を超えたバレエダンサーによる実行委員と出演者、事務局で構成されるダンサーが主役のボランティア団体が開催。昨年8月にチャリティガラコンサートを催し、その収益金を基に12月には福島県いわき市で特別無料公演を行った。いわき市での無料バレエワークショップを実施している。今年は『Heart to Heart!』というテーマで、身体と心で表現する復興への祈りを込めた新たなステージを届けるという。

今年は東京と横浜で開催。横浜公演はこの夏以降横浜市内で展開されるダンスフェス「Dance Dance Dance@YOKOHAMA2012」参加事業となる。先日のモナコ公国モンテカルロ・バレエ団来日公演の際、各メディアで大々的に取り上げられた小池ミモザら海外からの帰国組含め豪華で多彩な出演者たちの共演を楽しみにしたい。

<オールニッポンバレエガラ2012公演概要>

オールニッポンバレエガラ2012〜東日本大震災復興支援チャリティ〜

世界で活躍するダンサーが集結!

・横浜公演 2012年8月14日(火)18:00開演

神奈川県民ホール 大ホール

※Dance Dance Dance@YOKOHAMA2012参加事業

・東京公演 2012年8月15日(水)18:00開演

メルパルクTOKYO

・実行委員:遠藤康行、西島千博、酒井はな、島地保武、山本隆之、

森田健太郎、伊藤範子、志賀育恵、中村恩恵

・入場料:SS席10,000円 S席8,000円 A席6,000円 B席4,000円

・チケット発売予定:5月中旬

・主催:オールニッポンバレエガラコンサート2012実行委員会

・お問い合わせ:

オールニッポンバレエガラコンサート2012実行委員会事務局 

■出演予定者(五十音順)

青木尚哉、厚地康雄、荒井英之、伊藤範子、遠藤康行、大嶋正樹、

岡田理恵子、奥村彩、風間自然、加藤三希央、金田あゆ子、吉瀬智弘、

小池ミモザ、小尻健太、小林洋壱、酒井はな、佐久間奈緒、

佐藤健作(太鼓)、佐藤美紀、佐藤理央、志賀育恵、田島香緒里、

橘るみ、田中ルリ、中村恩恵、永橋あゆみ、西島千博、西田佑子、

平山素子、福島昌美、藤井美帆、黄凱、三木雄馬、森真琴、柳本雅寛、

ヤニック・ビタンクール、八幡顕光、横関雄一郎 ほか

(まだ出演者追加の可能性があります。)

■上演予定作品

海賊、眠れる森の美女、白鳥の湖、ロミオとジュリエットなどの

古典作品のほか、ジャン=クリストフ・マイヨー、

ケネス・マクミラン、ジョゼ・マルティネス振付作品、

新作、コンテンポラリー作品など

*出演者および作品は変更になる場合があります。

*横浜、東京公演のプログラムは一部出演者が異なります。

オールニッポンバレエガラコンサート2011 グランドフィナーレ

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2012-03-29

[]平成24年度芸術文化振興基金 助成対象活動決定

独立行政法人日本芸術文化振興会による平成24年度芸術文化振興基金助成対象活動が決定、29日資料が公表された。

平成24年度芸術文化振興基金助成対象活動が決定しました!

http://www.ntj.jac.go.jp/assets/files/kikin/joho/h24/24_josei.pdf

合計金額は2年連続で減少。現代舞台芸術創造普及活動の舞踊に関しても2年連続減っている。大手バレエ団等の公演の採択が多い文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)の24年度採択に関しては29日時点でまだ未公表。昨年度のように芸術文化振興基金との併願は認められていないため応募団体は切実だろう。

採択リストからは一年先までに予定される公演ラインアップが見えてくる。

バレエではDANCE for Life 2012 下村由理恵バレエ・リサイタルが昨年に続いて開かれる。隔年開催のペースだったが、昨年の『ジゼル』全幕に続く公演となり士気が高そうだ。関西では有馬龍子バレエ団、佐々木美智子バレエ団に加え、近年ではK★バレエスタジオと地主薫バレエ団が常連になりつつある。名古屋の中堅ではテアトル・ド・バレエ カンパニーと川口節子バレエ団が地歩を固めている印象。

舞踏では笠井叡×麿赤児『天の岩戸』というパンクな大御所の共演が控える。ローザスで活躍する池田扶美代[In Piece]日本バージョン 横浜/大分公演が非常に楽しみ。黒田育世2年ぶりの長編新作となるBATIK新作公演「おたる鳥をよぶ準備」にも注目。コンテンポラリー・ダンス界の押しも押されぬ実力者・黒沢美香は黒沢美香&ダンサーズ公演と「薔薇の人」それぞれ別プロジェクトで採択され貫録を見せつけた。

珍しいキノコ舞踊団、イデビアン・クルー、マドモアゼル・シネマ、ニブロール、山田うん、まことクラヴ、金魚(鈴木ユキオ)らも定着している。若手の平原慎太郎の瞬projectが少額とはいえ2本採択されているのも目を惹く。若手ということでは笠井瑞丈×上村なおかも食い込んできた。2010年度のトヨタコレオグラフィーアワードの覇者・古家優里率いるプロジェクト大山は初採択。創作だけでなくキャリア展開も卒がないようだ。

モダン系と目されるなかでは、ケイ・タケイ、加藤みや子、江原朋子というポストモダンの洗礼も受けつつ独自のダンスを練り上げ先端を歩む実力者が評価されている。フラメンコでは気鋭・入交恒子が入ってきた。2年連続で文化庁芸術祭優秀賞を獲得するなど高評価を得ているConcierto Flamencoシリーズ3年ぶりの舞台が楽しみだ。

多分野共同等芸術創造活動でも舞踊関連が採択されている。北村明子の「アジア国際共同制作企画2 "To Belong -dialogue"(仮)」やアーキタンツの「スタジオパフォーマンス シリーズ」、アンサンブル・ゾネ、合唱舞踊劇O.F.C.など。地域文化施設公演・展示活動:文化会館公演活動では、恒例の東京シティ・バレエ団 / ティアラ “くるみ”の会「第27回くるみ割り人形」のほか武蔵野シティバレエ 第27回定期公演、岡山県の新見市における牧阿佐美バレヱ団「ジゼル」などが採択されている。

2012-03-28

[]「日本のバレエは高水準」佐々木涼子氏の記事

舞踊評論家で東京女子大教授(フランス文学)の佐々木涼子さんが産経新聞に「日本のバレエは高水準」と題された記事を寄稿している。

舞踊評論家・東京女子大教授 佐々木涼子 日本のバレエは高水準

http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/120327/ent12032708590007-n1.htm

http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/120327/ent12032708590007-n2.htm

http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/120327/ent12032708590007-n3.htm

今年2月、高校2年生の菅井円加がローザンヌ国際バレエコンクールで第1位優勝を果たしたニュースは各メディアで大きく取り上げられ、バレエへの関心が高まった。そんな中、日本のバレエが国際的見地から観て、どのような水準にあるのか、日本のバレエがどう発展し、どこへ向かっていくのかを考察している。“現在の日本のバレエはとても高い水準にある。そして将来の展望はさらに輝かしい、と。”“教育面など、いまだ十分に制度が整っていないと憂える声もあるが、少なくとも今の日本では、才能のある者の前に、細くとも確実なキャリアへの道が開かれている”と佐々木さんは指摘する。

佐々木さんは幼時からバレエと日本舞踊を修めフランス文学を専攻。プルースト研究で名高い。「朝日新聞」「ダンスマガジン」などに寄稿しバレエに関する著作多数。文化庁の各種委員を歴任し朝日舞台芸術賞(現在は休止)の選考委員も務めた。日本の舞踊評論の第一人者のひとりと目される。今回の寄稿記事は若き日にバレエを学び、後年比較文化論からバレエを考察してきた論客の面目躍如たるものがある。

日本人ダンサーの技術水準は高く表現力も向上しているのは事実であろう。日本人が踊るバレエの魅力の考察も興味深い。“日本人が踊るバレエはとても清楚(せいそ)で折り目正しく、強靱(きょうじん)であっても柔和で繊細だ。また抑制された表現には心地良い静けさがあり、何より清潔な空気感は他では見られないものだ。”日刊紙にこういった論考が掲載されたのは意義深く思う。国立のバレエ学校がなくプロフェッショナルに活動できる場も乏しいという現状を変えるのは並大抵ではないが、少しでもバレエのこと、ダンスのことが広く社会に知られることは変革への第一歩である。




バレエの宇宙 (文春新書)

バレエの宇宙 (文春新書)

2012-03-21

[]「横浜ダンスコレクションEX 2012」の審査員講評&川村美紀子 新作『へびの心臓』映像UP!

「横浜ダンスコレクションEX 2012」審査員講評が3/18日、発表された。

コンペティションI 審査員講評

http://www.yokohama-dance-collection-r.jp/jp/file/Jury_reviews_Competition_I.pdf

コンペティションII 審査員講評

http://www.yokohama-dance-collection-r.jp/jp/file/Jury_reviews_Competition_II.pdf

この種のコンペで問題になるのは、審査の経緯や審査員の評価が示されぬまま、うやむやに終わることである。観客からすると、どういう基準で選ばれたか知りたいし、参加者も納得がいかないだろう。横浜のダンコレおよび旧バニョレの選考会では、結果発表時に審査員1名が総評を短時間で述べるだけであったが、昨年から各審査員がコメントを出すようになった。何よりのことで、審査の透明性を高めたといえるだろう。

年始に行われた「ダンスがみたい!新人シリーズ」でも、主に出場者に向けた講評会に加え各審査員が総評を出している。なかなか他ではお目にかかれないような、率直というか良い部分だけでないところもガンガン指摘しているのが特徴だろう。そこまでは難しくても、コンテンポラリー系のコンペにおいて、各審査員がどういう基準で何を推したかを示すべきという流れになっているのは望ましい。それがもっと徹底されるようになることを期待したい。別に隠すような理由は、まずないはずだから。

そして、ダンコレ絡みで、もう一つ。

コンペティション2(新人部門)の昨年度最優秀新人賞受賞者川村美紀子が今年のダンコレで受賞者公演を行い新作『へびの心臓』を発表した。その映像がUPされているのでご紹介しておく。観ればわかるように、なかなかハイテンションなダンスである。川村は、それに先立って「ダンスがみたい!新人シリーズ10」でも圧倒的評価を得て新人賞を受賞した(『がんばったんだね、お前の中では』)。いま、勢いに乗る新鋭。

川村は突き抜けた個性と圧倒的技量によって濃密な世界観を創り出す。ときにエグくてグロテスクなテイストのある作品も作るが、そこを押し切る強い意志に創作者としての高い資質と覚悟が感じられる。ダンサーとして凄いのは言うもおろか。ストリート系のハードな動きも身に着け、四肢を大きくダイナミックに用いた踊りは圧巻である。

感性も踊りも一風変わっているのだが、滅多にお目にかかれない異才である。

へびの心臓(横浜ダンスコレクションEX2012)

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2012-03-15

[]第43回 舞踊批評家協会賞に森下洋子、吉田都、三木雄馬らが決定

第43回(2011年度)舞踊批評家協会賞の受賞者が決まった。

・受賞者「授賞理由」推薦者(五十音順)

◆本賞

正朔・長岡ゆり「Dance Medium舞踏公演『帰る』の振付・演出・出演で、2011・3・11《東日本大震災》の衝撃を深く受けとめ、その追悼と未来への強い希求を舞台化して感銘を与えた成果に対して」古沢俊美

坂東勝友「第86回女流名家舞踊大会における、長唄『二つ巴』の卓越した構成・振付による女性素踊り群舞の見事な成果に対して」石川健次郎

森下洋子「松山バレエ団5月公演『新・白毛女』に於ける喜児・白毛女の強い意志を持った役柄の表現力と高度なダンステクニックに対して」横溝幸子

吉田都「日本に拠点を移して、世界で踊った輝かしいキャリアを結実させた『コッペリア』などの高度で精緻な舞台成果に対して」関口紘一

◆新人賞

五条詠佳「清元『流星』に於ける着実・柔軟な表現力に対して」藍本結井

三木雄馬「谷桃子バレエ団公演『ラ・バヤデール』での主役ソロルの優れた成果に対して」伊藤喜一郎

横滑ナナ「自然の中で踊り続けて体得した身体を、『とんがらづき』の舞台で自立させつつ、独自の世界を表現した成果に対して」志賀信夫

(志賀信夫氏によるメールマガジンmaldoror275 より引用)

第43回舞踊批評家協会が決定! チャコット「Dance Cube」

http://www.chacott-jp.com/magazine/news/other-news/43.html

かつて存在した舞踊ペンクラブ等の歴史を引き継ぐ老舗のグループが選んでいる賞。3ヶ月に一度例会を持ち、年が明け2月半ば頃に最終審査を行い、前年度の舞台のなかから正賞3〜5名、新人賞2〜3名程度を顕彰している。

過去の受賞者リストを観ると、わが国の舞踊史が一望できるといっていいくらい目配りの行き届いた選出である。あらゆるジャンルの舞踊から受賞者を選ぶ視野の広さと、国の顕彰や民間の財団等の賞とは違った独自の選択眼のバランスに定評あった。

会員はもちろん評論家である。以前は故・村松道弥、故・江口博、故・早川俊雄ら戦後の代表的な評論家にはじまって現在の大御所の山野博大、うらわまことらが主導的な立場にあり、会員が常時30人ほどいた時期もある。現在の会員数は15名ほどになってしまったものの日本舞踊、舞踏に関しては主導的地位にある人が名を連ねる。

が、バレエを中心とする洋舞に関しては会員数が極めて限られる。近年の洋舞の受賞者に関して異論ないが推薦理由が明確であるか、推薦者が業界内外の信用に足るか否かが厳しく問われるのは致し方あるまい。今年は日舞、舞踏に加え洋舞のバレエ3件とも納得いく推薦であるし、推薦人もキャリアあり受賞者の舞台をちゃんとフォローしている。受賞者にとって何よりであるし協会としてもひとまず体面を保ったといえる。



2012-03-13

[]平成23年度 芸術選奨発表 舞踊部門の文部科学大臣賞に首藤康之と花柳寿楽、同新人賞に湯川麻美子

文化庁は13日、平成23年度第62回芸術選奨を発表した(13日夕、文化庁HPに報道発表は出ていないが各媒体が一斉に報じている)。

平成23年度(第62回)芸術選奨文部科学大臣賞及び同新人賞の決定について(3/17追記)

http://www.bunka.go.jp/ima/press_release/pdf/geijutsusensyo_120313.pdf

演劇・映画・音楽・舞踊・文学・美術・放送・大衆芸能・芸術振興・評論等・メディア芸術の11分野において、その年に優れた業績をあげ、新生面を開いた者に、芸術選奨文部科学大臣賞または芸術選奨文部科学大臣新人賞を贈るというもの(重賞不可)。

選出方法は評論家を中心とする有識者等による選考委員および推薦委員が候補者を挙げ、そのなかから選考委員が審議して決定する。近年、演劇・音楽・舞踊などでは選考委員が7名、推薦委員が10名というパターンになっている。

舞踊部門は以下のように決定した。

芸術選奨文部科学大臣賞(洋舞):首藤康之

芸術選奨文部科学大臣賞(邦舞)花柳寿楽

芸術選奨文部科学大臣新人賞湯川麻美子

芸術選奨文部科学大臣賞(洋舞)は首藤康之

極めて妥当、衆目の一致するところではないか。年末の各紙誌の回顧記事やアンケート等でもあらゆる評論家やジャーナリストが首藤の活躍を成果に挙げた。私も「真摯にダンスの新領域を探る首藤が印象深い一年」(「ダンスマガジン2月号」ベスト・ステージ&ピープル)、「しなやかにダンスの新地平を拓く首藤の活躍が際立つ一年だった」(「週刊オン★ステージ新聞」2012年新年特大号・洋舞ベスト5)と記し、それぞれの媒体で首藤のセルフプロデュース公演「DEDICATED」を印象に残る公演/ベスト5公演に挙げた。中村恩恵との共作共演『Shakespeare THE SONNETS』(新国立劇場ダンス部門)は昨年度最高といっていい高評価を得た。文句の付けようのない受賞であろう。

首藤の歩みは止らない。来たる16日-18日にKAAT神奈川芸術劇場においてウィリアム・タケットとのコラボレーション『鶴』を発表する。衣装のワダエミ、尺八の藤原道山ら一流スタッフも参加した話題作。以後も長塚圭史の演劇に参加し中村恩恵の演出・振付による『兵士の物語』に出演するなど目が離せない。快進撃は当分続きそうだ。

芸術選奨文部科学大臣賞(邦舞)は花柳寿楽

二世・花柳錦之輔の長男として生まれ、三世宗家家元・花柳壽輔三回忌追善舞踊会の『連獅子』『檜垣』にて、三代目・花柳寿楽を襲名。弟の花柳典幸と「ふたば会」を主宰している。西川箕乃助、花柳基、藤間蘭黄、山村若という斯界を大きく担う同世代の仲間たちと五耀會を結成し意欲的な公演活動を行っていることでも知られよう。

昨年9月28日には第一回となる「花柳寿楽 舞踊會」を国立劇場小劇場で催した。私もこの会を観ることができた。『夢殿』『奴道成寺』を上演。創作『夢殿』が高く評価された。さらに昨秋は典幸の会に客演し、この会の成果によって典幸は文化庁芸術祭優秀賞獲得。また、五耀會の仲間・藤間蘭黄の会にも客演し『隅田川』の舟長を好演する。門外漢の人間から観ても目覚ましい活躍ぶりであった。納得の受賞である。

芸術選奨文部科学大臣新人賞は湯川麻美子

押しも押されぬ新国立劇場バレエ団のトップ・プリンシパルである。昨秋のビントレー振付により初演された『パゴダの王子』皇后エピーヌ役の演技によって高く評価された。活躍・実績は申し分ない。しかし、同賞をバレリーナが受ける場合、20代前半あるいは半ば、遅くとも30歳前後というデータがある。将来性が問われてきたのは間違いない。前年の受賞者で同じ新国立劇場バレエ団の小野が20代半ばで受賞したことから鑑みても30代後半の湯川が獲得するのは異例といっていい(男性バレエ・ダンサーや現代舞踊家は30代半ば、振付家は40歳くらいまでが目安となっている感)。

湯川の場合これまでに新人賞を受けたバレリーナに比し受賞後主役級を踊れる時期が限られるのは止むを得ない。当然そこを踏まえて推挙されたはず。国の賞は重い。湯川には、まだまだ踊って独自のポジションを深めていってほしい。同時に新国立劇場バレエ創設以来の主要メンバーであり、現・芸術監督ビントレーのミューズであるという経験を活かして貰いたい。指導的な立場として新国立はもちろんバレエ界の中核としてシーンを引っ張る存在に成り得るかもしれない。そこに「将来性」を見出すことができ、今回の受賞が大きな意義を持つことになろう。さらなる活躍が期待される。


SHUTO ダンサー首藤康之の世界

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Ballet Work 首藤康之の美しくなるバレエ [DVD]

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2012-03-10

[]第6回 日本ダンスフォーラム賞に笠井叡、加賀谷香、白井剛

日本ダンスフォーラム賞というものがある。これは舞踊評論家やプロデューサーらのメンバーによって構成される日本ダンスフォーラム(JaDaFo)が主催するもの。日本におけるコンテンポラリーダンスの年間賞として創設され、“提案力のある批評性(criticism)の提示と、新たな表現価値の創造性(creation)を支援”し”“専門的な信頼性の高い評価基準で、今までにない視軸”を持つものを志向している。

具体的には国内公演の作品および国際協力作品の中から年間活動に優れた成果を挙げた作家(コレオグラファー・演出家)、公演グループ、ダンサーを、日本ダンスフォーラムのメンバーが推薦し、投票、討議等によって「日本ダンスフォーラム大賞」1名(あるいは1グループ)、「日本ダンスフォーラム賞」若干名(グループ)を決定する。昨年度には「日本ダンスフォーラム賞 特別賞」が新設された。

JaDaFoの会員は名だたる文化人や評論家、制作者たちだ。功成り名を遂げている人も多く、若手の人でも日刊紙に寄稿するなど活動実績は十分。社会的にも業界的にも認められている人たちである。それはともかく同賞が信用に足るのはコンテンポラリーダンスをちゃんと観ている人が選考しているから。一定数の会員がいて、その多くが対象と成り得る舞台の多くを観ているということは年間賞を選出する最低条件である。授賞に際し推薦の弁を述べるのが受賞者の活動を細かく追ってきた人というのも好ましい(前年度の授賞に関するリリースによる)。説得力あるし受賞者もうれしいだろう。

今年(第6回)の受賞者が決まった。先日、どこからともなく情報を耳にした。リリースは貰っていないが、一部メディアで既に報道されているため、ご紹介しておく。

日本ダンスフォーラム賞笠井叡

日本ダンスフォーラム賞加賀谷香

日本ダンスフォーラム賞白井剛

大賞と特別賞は無し。

舞踏創生期から活躍するベテランの笠井叡はYRBWダンスプロジェクトVol.6『Utrobne〜虚舟〜うつろぶね』(於:横浜赤レンガ倉庫1号館3階ホール)を振付けた。笠井と子息の笠井端丈それに岡本優、小暮香帆、四戸由香、水越朋という4人の女性を配した大変な力作・快作として話題に(意外に知られていないが、笠井の主催公演でなく「上村なおか+笠井端丈」の主催である)。昨年度を代表する舞台のひとつだと思っていたので、今回顕彰されたのは何よりである。大御所ながら意気盛んな笠井に対し、大賞を授賞しなかったとはいえ功労賞的な意味合いも含む「特別賞」ではなく本賞を授与するのは誠意あるというか現役の作家として遇し敬意を示しているといっていだろう。

加賀谷香は現代舞踊畑と目される。各舞踊コンクールで第1位を総なめした天才ダンサーとして知られ、Dance-SHANを率いて振付も手掛けている。数年前には傑作ソロ『パレードの馬』を発表し、再演時に江口隆哉賞を受けた。昨年は新国立劇場 近松DANCE 弐題で『エゴイズム』(於:新国立劇場小劇場)を発表。近藤良平、篠井英介、佐藤洋介、柳本雅寛という個性派が出演し話題を集めた。名ダンサー=名振付家とは限らない。しかし、加賀谷は、この数年振付者としても力を付け、現代舞踊界の次代を大きく担う存在となりつつある。目配りの行き届いたフェアな選出に唸らされた。

白井剛は伊藤キム+輝く未来のメンバーとして活躍、発条トやAbsTを率いて自作発表も行い、2000年代のコンテンポラリーダンスシーンの一翼を担った。近年は『True/本当のこと』の海外ツアーや『THECO』の国内ツアーを行うほか関西等での活動が多い。昨年は「フェスティバル/トーキョー11」に招聘され『静物画—still life』(於:自由学園明日館)を発表。これは京都芸術センターで行われた「演劇計画2009」で初演した作品を練りあげたもので、東京公演の前には「KYOTO EXPERIMENT 2011」でも上演された。無駄な動きを徹底して切り詰めるストイックな展開。そのなかに静謐で美しくスリリングな時間が流れていることを体感した。白井作品としては2004年の『質量,slide,&.』以来のボルテージの高い仕事であり、それが認められたのは得心がいく。

KYOTO EXPERIMENT 2011 - Akira Kasai

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アルディッティ弦楽四重奏団(音楽)×白井 剛(ダンス) コラボレーション公演

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銀河革命

銀河革命

2012-03-05

[]第56回 岸田國士戯曲賞に矢内原美邦&ミクニヤナイハラプロジェクトvol.6『幸福オンザ道路』について

第56回岸田國士戯曲賞(白水社主催)の選考会が2012年3月5日(月)東京神田神保町・學士會館で行なわれ、ノゾエ征爾『○○トアル風景』、藤田貴大『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』、矢内原美邦『前向き!タイモン』が受賞作に決定した。劇作家の登竜門である同賞において3人受賞となるのは30年ぶり。

http://www.hakusuisha.co.jp/kishida/award.php

なかでも矢内原美邦はダンスを中心に異分野のアーティストが集うニブロールを主宰し振付家/舞踊家として知られる。いっぽうで、個人プロジェクト「ミクニヤナイハラプロジェクト」を立ち上げ、主に演劇作品を発表してきた。上演台本が受賞作となった『前向き!タイモン』は2011年9月1日〜5日東京・こまばアゴラ劇場、2011年9月23日〜25日京都・京都府立文化会館にて上演された。シェイクスピアの「アテネのタイモン」を矢内原流に読み替え味付けした異色作。原作とは真逆の設定で矢内原いわく“不幸などん底にいる後ろ向きな男が前向きに人生を見つめなおす作品”である。

矢内原は昨年、演劇作品『前向き!タイモン』のほかニブロールによるダンス作品『THIS IS WEATHER NEWS』を東京・シアタートラムにて上演した(初演は2010年秋の「あいちトリエンナーレ2010」)。これは「人生とは天気予報のように予測がつかない、思い通りにはならない」という、誰しもが抱くような人生の不条理・絶望を痛切に感じさせる。が、最後に立ち上ってくるのは強靭なまでの生への意志。その点は『前向き!タイモン』と同様である。『前向き!タイモン』の上演に際して矢内原は“生きることのエネルギーを私は信じたいです”と語っていたが、近年の矢内原作品はどんなにシリアスな内容であっても、その底流には生への強い願望があるのは明らかだ。

タイムリーなことに公演が控えている。ミクニヤナイハラプロジェクトvol.6『幸福オンザ道路』(2012年3月22日〜24日横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール)。これは一昨年7月にSTスポットで行った準備公演を経ての本公演。ビート・ジェネレーションを代表するジャック・ケルアックのカルト小説「路上」をモチーフにしたものだ。これも生と死をめぐるサスペンスである。ビルの上から何人もが同時に飛び降り自殺を起こした事件の真相が、事件に関わるさまざまの人物たちの群像劇によって明らかになっていく。

矢内原の演劇世界はハイテンションで情報量が多い。物語や意味を汲み取ろうとすると置いてきぼりをくらう。また、演者は激しく動いて叫ぶので、以前は役者が何を言っているのか意味不明な状態に陥ることも少なくなかった(無論、それは演出の意図でもあるかもしれないが)。その点、本作はサスペンス、謎解きという核があって、だからこそ、細部がより細かに見えてくる仕掛けになっていた。複線の数々や動きのディティール、台詞に秘められた寓意がつながっていき、バラバラになったパズルが鮮やかに埋まっていくような快感を味わえた。振付・動きは初期のニブロールを彷彿させるような激しいもの。役者陣も、それをこなしつつ滑舌もしっかりしていたように思う。

矢内原のダンス作品は好きなのに彼女の演劇作品を敬遠する人もいるようだ。そんな向きや今回の受賞の報を聞いて関心を持った演劇ファンにとって『幸福オンザ道路』は矢内原の演劇世界に入りっていき易い作品といえるのではないか(無論、本公演の会場となる赤レンガ倉庫はSTスポットとは比べ物にならない大きな空間であり、台本・演出も練り直してくるだろうから、印象は少なからず変わるだろうが)。いま、ノリにノッている矢内原の紡ぎだす生への飽くなきエネルギーを体感したい。

ミクニヤナイハラプロジェクトvol.6『幸福オンザ道路』

【日時】

2012年

3月22日(木)19:30 ※アフタートークあり。ゲスト:岡田利規

3月23日(金)19:30 ※アフタートークあり。ゲスト:松井みどり

3月24日(土)14:00 ※アフタートークあり。ゲスト:河井克夫

3月24日(土)18:00

【会場】

横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール

【作・演出・振付】

矢内原美邦

【出演】

光瀬指絵、鈴木将一朗、柴田雄平、たにぐちいくこ、NIWA、守美樹、他

【舞台美術】

細川浩伸(急な坂アトリエ)

【舞台監督】

鈴木康郎、湯山千景

【照明】

木藤歩

【宣伝美術】

石田直久

【イラスト】

アベミズキ

【企画・制作】

precog http://precog-jp.net/ja/

【主催】

ミクニヤナイハラプロジェクト

【共催】

横浜赤レンガ倉庫1号館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)

【助成】

芸術文化振興基金

【後援】

神奈川新聞社、tvk、RFラジオ日本FMヨコハマ、横浜市ケーブルテレビ協議会

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2012-03-03

[]第28回 服部智恵子賞に島添亮子

公益社団法人日本バレエ協会制定による2012年度(第28回)服部智恵子賞に島添亮子(しまぞえ・あきこ/小林紀子バレエ・シアター)が決まった。

http://www.j-b-a.or.jp/hattori-prize_12winner.html

同賞は年間に於いて最も顕著な活躍を見せたダンサーに贈られる(重複受賞不可)。歴代の受賞者にはわが国を代表するプリマ・バレリーナ、ダンスール・ノーブルが名を連ねる。本年の選考会は3月3日に行われ、舞踊評論家の伊地知優子、うらわまこと、桜井多佳子、藤井修冶、三浦雅士、山野博大の各氏が出席した。

妥当な結果といえる。昨年度の活動に対する高評価と実績・受賞歴からみて受賞にもっとも近い位置にいるのは明らかだった。日本の民間のバレエ団としては初めてとなる『マノン』(マクミラン振付)全幕上演において標題役を務め高評を博したことが受賞の原動力になったと思われる。本人の資質や努力は当然必要だが、作品や役柄に恵まれたり、バレエ団の好調期に主役を務めるというタイミングの良さも賞が舞い込むか否かの分かれ目になろう。「運も実力のうち」というけれども、まさにその通りだ。

島添はこれで中川鋭之助賞(2007年度)、橘秋子賞優秀賞(2009年度)に続くビッグ・タイトルの獲得。橘秋子賞と服部智恵子賞というバレエ界の最高権威といっていい両賞を制覇した人は、そう多くない(橘賞の場合、踊り手として評価対象になったもので考える)。この10年余りでそれを成し遂げたのは酒井はな、田中祐子、小嶋直也、逸見智彦、森田健太郎、山本隆之だけである。その前にさかのぼると越智久美子、下村由理恵、吉田都、高部尚子、坂本登喜彦、熊川哲也らの名が挙がる。さらに前には森下洋子、大原永子、川口ゆり子、清水哲太郎ら大御所の名がずらり。すごい面々である。島添には今後日本を代表するバレリーナとしてさらなる活躍が期待される。

以下余談。選考委員の顔ぶれに変化があった。今年度から新たに三浦雅士氏が加わった。昨年9月に亡くなられた福田一平氏に代わって、どなたが入るのか気になっていたが、評論家で新書館編集主幹の三浦さんが加わる。2007年度に桜井多佳子さんが加入されて以来の新選考委員ということになる。

2012-03-02

[]東京バレエ協議会による、期待の新星を紹介する「ホープ2012」

昨年設立40周年を迎えた東京バレエ協議会の公式ホームページに、2012年活躍が期待されるホープを、各バレエ団のトップが紹介するコーナーが設けられている。

http://www.tba-ensemble.com/hope.html

スターダンサーズ・バレエ団の吉瀬智弘、東京シティ・バレエ団の中森理恵、チャイコフスキー記念東京バレエ団の二階堂由依、牧阿佐美バレヱ団の茂田絵美子の4名に対して各団の代表や芸術監督が期待の弁を述べている。皆まだ20代前半と若いけれども中森以外はバレエ団公演で主役経験がある。注目のホープといっていい。

元はといえば年始にあたり発行され、所属団体の公演会場等で配布されていた会報の名物コーナー。今年、会報は多分発行されていない。その代り、昨秋公式ホームページを立ち上げ随時情報を更新している。時代に即した広報といえるかもしれない。



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スターダンサーズ・バレエ団「シンデレラ」(全2幕) [DVD]

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2012-03-01

[]東日本大震災から1年、社会性ある活動が求められる舞踊界

今年もすでに3月に入った。あと10日で東日本大震災発生から1年を迎える。

震災直後は首都圏でも公演中止や延期が相次いだ。少し落ち着くとチャリティ公演や被災地への慰問公演を行うアーティストも現れた。「なぜ踊るのか」「ダンスに何ができるのか」と自問する人も少なくなかった。復興への道のりはまだ遠い。原発問題も収拾していない。舞踊界としても折からの不況や助成金の削減等厳しい情勢である。でも、そんな時代だからこそ芸術の力・存在意義が問われているのかもしれない。

大震災への復興を支援する募金活動や支援公演は数あれど、アーティスト主体となって立ちあげたイベントとして強く印象に残ったのが「オールニッポンバレエガラコンサート2011」だった。昨年8月、わが国を代表するバレエ・ダンサーたちが所属を超えて一堂に会しチャリティ公演を催した。収益や義援金をもとに年末には被災地の福島県・いわき市で公演を行い、地元の人たちに無料で公演を観てもらう機会を設けた。

「オールニッポンバレエガラコンサート2011」の実行委員会は単に復興支援公演だけにとどまらず被災地を継続的に支援していく方針を打ち出している。3月26日、いわきアリオスにて西島千博と酒井はなが講師となってバレエワークショップを開催する。

オールニッポンバレエガラコンサート2011バレエワークショップ

http://iwaki-alios.jp/cd/app/index.cgi?CID=event&TID=PAGE&dataID=00891

一過性ではない継続的な支援活動に頭が下がる。が、これは何も被災地のためというだけでなく舞踊界が社会に対し責任を持って存在をアピールしていくために欠かせないことである。お金のかかる舞台芸術創造を行うには、公民問わず支援を受けなければ続かない。広く社会の理解・共感を得られなけば厳しいものがある。助成金に関しても「芸術団体に助成が下りるのではなく、その活動を通し観客や地域に還元されることがあるべき姿」ということをよく目にし耳にするようになった。その通りであろう。社会との接点抜きの芸術創造活動、芸術団体運営は、もはやありえなくなりつつある。

芸術性や作品の良し悪しは大切である。だが、観客(納税者)や地域含めた社会に対していかに還元できるかという点を踏まえて活動する団体やアーティストが支援されていくのは当然の流れであろう。「事業仕分け」や「劇場法」といった問題へのリアクションにしても演劇界や音楽界の後塵を拝しているのは明らか。今少し社会への接点を持つという意識を高めたいところだ。バレエ界のトップ・ダンサーたちが、震災を機に、そのような意識に目覚めてくれているのなら未来は決して暗いものではないと信じたい。

オールニッポンバレエガラコンサート2011 グランドフィナーレ

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