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ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2012-04-15

[]第37回 橘秋子賞決定!大原永子、佐々木大らが受賞

(公財)橘秋子記念財団制定 第37回橘秋子賞の受賞者が14日分かった。

特別賞:大原永子

優秀賞:佐々木大

功労賞:野間康子

舞台クリエイティブ賞:森岡肇

スワン新人賞:清瀧千晴

わが国バレエ界の最高権威といえる顕彰で、これまでの受賞者は押しも押されぬ重鎮ばかりである。毎年受賞者を選んでいたが今回より隔年での選考となった。

特別賞の大原は戦前からの日本バレエのパイオニア橘秋子の愛弟子で戦後を代表するプリマである。森下洋子や川口ゆり子の姉弟子にあたり、英国スコティッシュ・バレエのプリマとして長年活躍するなど海外経験も豊富。踊り手として橘秋子賞優秀賞も受けた。今回は新国立劇場バレエ団の監督補としての活躍を評価されての受賞であろう。英国での経験も活かし、バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のトップと兼任である芸術監督デヴィッド・ビントレーを支えて団を牽引しているのは間違いないだろう。

優秀賞の佐々木大は関西を中心に活躍する男性ダンサーのトップ・クラス。昨年3月、篠原聖一の自主リサイタル『ジゼル』全幕に主演し下村由理恵と組んでの演技が高評を得た。7月には菊池宗率いる東京小牧バレエ団が新国立劇場オペラ劇場で盛大に催した小牧正英生誕100年記念公演の『ペトルウシュカ』タイトル・ロールを務めた。『ドン・キホーテ』のバジルや『バフチサライの泉』のヌラリなど超絶技巧を思う存分駆使しての踊りによって注目されてきた佐々木であるが、アルブレヒトやペトルウシュカを踊り新生面に挑んだことが評価されたと思われる。これで芸術選奨文部科学大臣新人賞、中川鋭之助賞、松山バレエ団芸術奨励賞、服部智恵子賞に続く栄誉となった。

功労賞の野間は大阪・堺を拠点にバレエ団を結成し定期的に活動を続けてきた。古典全幕のほか中村恩恵にコンテンポラリー作品を委嘱するなど活発な活動が目につく。文化庁芸術祭(舞踊部門・関西)では大賞こそ獲得していないが、団や子女の野間景が相次いで優秀賞を得るなど関西有数の団として存在感をみせている。

舞台クリエイティブ賞の森岡は言わずと知れた舞台監督の大御所(ハージャイム代表)。新国立劇場バレエ公演や熊川哲也Kバレエカンパニーをはじめとする国内の主要バレエ公演の多くに関わってきた。当然の受賞であろう。

日本のバレエを愛した篤志家の遺した基金を基に授与されるスワン新人賞は牧阿佐美バレヱ団の清瀧が受ける。6回目となる今回、男性では初の受賞となった。シャープなテクニックと清潔な演技を持ち味とする気鋭で大成が期待される。


バレエに育てられて―牧阿佐美自伝

バレエに育てられて―牧阿佐美自伝

2012-04-09

[]平成24年度文化芸術振興費補助金助成対象活動の決定

平成24年度文化芸術振興費補助金助成対象活動が決定し4月9日公表された。

平成24年度文化芸術振興費補助金助成対象活動の決定について

http://www.ntj.jac.go.jp/assets/files/kikin/joho/h24/24_1hojyokin.pdf

総額は3,385,000(千円)。直近でみても22年度が4,130,400(千円)、23年度が3,824,500(千円)なので年々減少。「厳しい状況」は一層強まったといえる。

舞踊部門の採択は35件(応募56件)総額409,000(千円)。直近2年でみると22年度は56件採択(応募67件)総額478,100(千円)、 23年度は45件採択(応募位63件)総額464,200(千円)なので採択件数・助成額ともに年々大幅減少している。各団体とくに予算のかかる大規模なバレエ公演を制作する団体にとって採択の可否は死活問題。

今年の状況を観てみよう。

バレエでは以下3団体の健闘が目につく。財団法人 橘秋子記念財団(牧阿佐美バレヱ団)が4件で67,100(千円)と最多採択件数・受給額。『ロメオとジュリエット』、『ア・ビアント』、『デューク・エリントン・バレエ』、『眠れる森の美女』という古典、創作、ローラン・プティ作品を並べた豪華なラインナップである。昨年度に続き3本採択されたのが財団法人 スターダンサーズ・バレエ団。総額39,800(千円)。『シンデレラ』、ピーター・ライト版『ジゼル』、鈴木稔が新振付する『くるみ割り人形』が対象となる。創立40周年を迎える小林紀子バレエ・シアターもケネス・マクミラン『アナスタシア』日本初演と小林紀子による新版『くるみ割り人形』という新制作2本により35,800(千円)受給する。

例年最多採択数・助成金額の公益財団法人 日本舞台芸術振興会(チャイコフスキー記念東京バレエ団)は今年前半、5月のパリ・オペラ座からの招待公演や「ダンス・ダンス・ダンス@横浜」参加公演、「世界バレエフェスティバル」全幕特別プロなどが活動の中心となる。秋以降の3件で47,400(千円)。クランコの名作『オネーギン』、ベジャール版『くるみ割り人形』、『ボレロ』『中国の不思議な役人』『ギリシャの踊り』によるベジャール・プログラムが対象となった。神戸の貞松・浜田バレエ団は総額22,800(千円)を受給し東京公演含め3件採択。近年の活動の高評価が反映された形だ。他に地方では名古屋の越智インターナショナルバレエと大阪の法村友井バレエ団が1公演採択。

関東圏のバレエ団で初採択となったのが一般財団法人 東京シティ・バレエ団。創立45周年記念公演『ジゼル』に11,600(千円)が下りた。近年、2年に1度の自主公演もしくは芸術提携を結ぶ江東区のティアラこうとうで毎夏行われる全幕公演2日間のうち1日(バレエ団主催)に対して芸術文化振興基金が下りていたけれども重点支援事業の対象となるのは初めて(のはず)。2009年に一般財団法人化し、さらなる飛躍と経営の安定を目指してきた理事長の安達悦子ら首脳陣にとっては悲願達成であろう。

いっぽう、一昨年以降採択件数が減っていると思しき団体もある。昨年以降、各団体が毎年年末に上演している『くるみ割り人形』に対して軒並み支給が見送られる傾向にある(新制作版ならば別なのだろう)。助成総額が減っている厳しいご時勢のため致し方ないのか…。そして、首都圏・各地の団体のなかで、ここ数年定着していたところのいくつかの名前を見かけない。対象期間に公演がない、あるいは申請していないということも考えられるので、採択されなかったためかどうかは分からないが…。

コンテンポラリー系では「Kazuo Ohno Festival 2012」(大野一雄舞踏研究所)、「TOKYO DANCE TODAY」(財団法人 児童育成協会)、セッションハウス・レジデンス・アーティスト・プロジェクト2012「世界へ!」(セッションハウス企画室)、「Monochrome Circus ×graf ×山中透“TROPE 2.0”」(一般社団法人 ダンスアンドエンヴァイロメント)、コンドルズ東京公演(ROCKSTAR 有限会社)が採択された。常連で母体がしっかりしているところが選ばれた。特にセッションハウスとダンスアンドエンヴァイロメント(旧・京都の暑い夏事務局)の手掛ける公演は他の制度含め文化庁関連助成に強い。

フラメンコでは「小松原庸子 スペインと50年 “私のマエストロに捧げる”“血の婚礼”」(株式会社 ソル・デ・エスパーニャ)、「鍵田真由美フラメンコリサイタル(仮称)」(株式会社 ARTE Y SOLERA)、舞踏では大駱駝艦・天賦典式 創立40周年公演(キャメルアーツ株式会社)、日本舞踊では「走れメロス」(社団法人 日本舞踊協会)が採択された。

文化芸術振興費補助金による助成事業は「トップレベルの舞台芸術創造事業」と称するだけに何よりも上演水準の高さが強く求められる。また、公演の実現性も大切に思われる。近年、助成金受給が決定していながら公演中止・演目変更となり受給が見送られた公演もあった(大震災関連等やむを得ないと思われるものもあるが…)。そこは厳しく問われてしかるべし。芸術団体のさらなる意識向上が望まれるところだ。

私的には上記2点に加え公益性の強いもの、地域を含む一般の観客層に訴求する活動をしているか否かを問いたい。特にバレエに対して、その思いが強い。この2月、ローザンヌ国際バレエコンクール受賞のニュースがメディアで大きく取り上げられた。なかにはバレエ教室が多くコンクールが盛んな「バレエ大国」などという、景気のいい報道も見受けられた。が、ダンサーたちの多くは公演活動に専心できない現状にある。公演の場を増やしていくための、あらゆる努力が求められる。いかに上演水準が高く関係者や愛好家にとって楽しめる公演であっても客席がガラガラであったり身内客ばかりというのは寂しい。公的助成金を投入する意義を問われもしよう。そこを変えていこうとしなければ未来は暗いと思う。助成対象団体には従来以上に自助努力に取り組んで欲しいし、それを後押しする助成評価基準の策定も必要ではないだろうか。

2012-04-03

[]タウンニュース 麻生区版に小山久美(スターダンサーズ・バレエ団代表・総監督、昭和音楽大学短期大学部教授)

神奈川県全域・東京都町田市の地域情報紙「タウンニュース」の川崎市・麻生区版に財団法人スターダンサーズ・バレエ団代表・総監督を務め、昭和音楽大学短期大学部教授の任にある小山久美へのインタビュー記事が掲載されている。

スターダンサーズ・バレエ団の代表を務める小山 久美さん

http://www.townnews.co.jp/0205/2012/03/30/140162.html

スターダンサーズ・バレエ団は、このたび「アルテリッカしんゆり2012」のオープニング公演を任され鈴木稔振付『シンデレラ』を上演する(4月27、28日 テアトロ ジーリオ ショウワ)。小山は叔母である故・太刀川瑠璃子から団を引き継ぎ9年。インタビュー記事では初めてプロデュースした舞台『シンデレラ』について語っている。「敷居が高いと言われるバレエを、幅広い層に楽しんでもらいたいと選んだ題材。芸術をもっと身近にというアルテリッカのコンセプトとも通じる作品をぜひ多くの人に味わってもらいたい」。

鈴木稔版『シンデレラ』は、プロコフィエフ曲を用いオーソドックスな展開は守りつつ、現代的な意匠や緻密な伏線を織り交ぜ、ファンタスティックなドラマとしてセンスよくまとめている。シンデレラの父は忙しいビジネスマンという設定であり、シンデレラの小さな友達としてピーターラビットばりの着ぐるみを着たりもするキャラクターを配する点などに工夫がある。二村周作による幻想性と重厚さを兼ね備えた舞台美術も効果的である。

そして、作品の面白さもさることながら上演展開が水際立っており近来まれなヒット作となった。2008年に初演し翌年に早くも再演。その後、神奈川県民ホールや日生劇場(「ファミリーフェスティバル」)に買取られた。2011年春には吉田都をタイトル・ロールに迎えて上演。先日「NHKバレエの饗宴2012」を催し大反響を呼んだNHKプロモーションによる主催公演も行われた。他にも文化庁の委託事業として小中学生を対象に各地で抜粋版が巡演された。新書館からは公演を収録したDVDが発売されている。

小山は中長期的な戦略を持った運営方針を展開する。吉田都をゲストに招き安定した動員を図りつつ団員の創作やバランシン、フォーサイスらによる珠玉の名作を腰を据えて上演している。オーケストラとの協同作業にも積極的で外部の仕事も着実に獲得し団員に舞台を踏ませる機会を増やしている。厳しいご時勢のなか活発に活動する意欲が目につく。昭和音楽大学短期大学部教授、東京バレエ協議会常務理事の地位にあり、公益社団法人日本バレエ協会「全日本バレエコンクール」の審査員も務める。

「タウンニュース」の記事によると、創成期を経て発展を続けるバレエ界に身を置くうち、自らの使命を考えるようになったという。太刀川から受け継いだバトンを未来に繋げ、子どもたちへのアプローチをライフワークにしているようだ。各地でワークショップを催しバレエの普及に力を注いでいる。「子どもたちには未来に続く大きな可能性を感じている。いつか花咲くことを信じて、今はこつこつと種まきに専念したい」。

このところバレエ界では代表・芸術監督クラスの世代交代がみられる。広く社会を、舞踊界を見渡して活動する新時代のリーダーとして小山に寄せられる期待は大きい。


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