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2013-03-24

[]あいちトリエンナーレ2013・パフォーミングアーツ概要発表

今夏から秋にかけて国際芸術祭・あいちトリエンナーレ2013/Aichi triennale 2013が行われる 。

2010年に続く第二回目となる今回は“「揺れる大地—われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」をテーマに掲げ、東日本大震災後のアートを意識しつつ、世界各地で起きている社会の変動と共振しながら、国内外の先端的な現代美術、ダンスや演劇などのパフォーミングアーツ、オペラを紹介”する。

会期は2013年8月10日(土)〜10月27日(日)の79日間。会場は愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、名古屋市内のまちなか(長者町会場、納屋橋会場など)、岡崎市内のまちなか(地区は未定)。芸術監督は五十嵐太郎(東北大学大学院工学研究科教授・都市・建築学)。

前回、パフォーミングアーツ部門では、ローザス/アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル、ヤン・ファーブル、平田オリザ、平山素子、ニブロール、チェルフィッチュらによる領域横断的な意欲作を取り上げ成功を収めた(愛知発の芸術批評誌「REAR」第25号に依頼されパフォーミングアーツ部門の見た範囲での総評を記した)。今回のラインナップも気になるところだが、22日、おおよその全貌が明らかになった。

企画概要(平成25年3月22日現在)(PDF/5.75MB)

http://aichitriennale.jp/press/item/250322kikaku.pdf

参加アーティスト(平成25年3月22日現在)(PDF/1.99MB)

http://aichitriennale.jp/press/item/250322kikaku.pdf

リリースによると、国内外から15程度の団体が参加し、愛知芸術文化センターを中心に上演される。ダンス、演劇、造形美術、建築等の垣根を越えた作品を重んじるようだ。テーマである「揺れる大地—われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」は、不条理劇で知られるサミュエル・ベケットの世界感と通じるということで、「われわれが立っている場所を見つめ直す」ということをコンセプトに展開していくという。

舞台公演等スケジュール

愛知芸術文化センター大ホール公演

プロデュースオペラ・プッチーニ作曲『蝶々夫人』 9月14日(土)、16日(月・祝)

愛知芸術文化センター小ホール公演

ままごと『日本の大人』(仮称・新作) 8月10日(土)〜15日(木)

藤本隆行+白井剛『Node/砂漠の老人』(新作) 8月23日(金)〜25日(日)

やなぎみわ『ゼロ・アワー 東京ローズ最後のテープ』(仮称・新作) 8月30日(金)〜9月1日(日)

梅田宏明『4.temporal pattern』(日本初演)ほか 9月6日(金)〜8日(日)

イリ・キリアン『East shadow』(仮称・新作) 9月13日(土)〜15日(月・祝)

清水靖晃『未定』 9月28日(土)予定

ARICA+金氏徹平『しあわせな日々』(予定) 10月12日(土)〜14日(月・祝)

ジェコ・シオンポ『Room Exit(Terima Kost)』(日本初演) 10月18日(金)〜20日(日)

(日本初演)マチルド・モニエ『Pudique Acide/Eatasis(restaging)』10月26日(土)〜27日(日)

愛知県美術館ギャラリーG展示

ペーター・ヴェルツ+ウィリアム・フォーサイス『whenever on on on nohow on | airdrawing』(映像インスタレーション)(日本初演)

まちなか公演スケジュール

長者町会場周辺

ほうほう堂『ほうほう堂@あいちトリエンナーレ201』(仮称・新作) 9月21日(土)〜22日(日)

オアシス21周辺

プロジェクトFUKUSHIMA!(総合ディレクション:大友良英)『プロジェクトFUKUSHIMA! in AICHI』(仮称・新作) 9月7日(土)〜8日(日)

岡崎地区 康生地区

向井山朋子+ジャン・カルマン『FALLING』(仮称・新作) 公演日未定

最大の話題は世界的振付家イリ・キリアンに委嘱した『East shadow』(仮称・新作)だろう。“ベケットの哲学から着想されたダンスパフォーマンス。生と死をテーマに、シリアスかつユーモラスな物語が繰り広げられ”るという。

海外公演が圧倒的に多い振付家・ダンサーの梅田宏明も注目される。国内での本格的な単独公演は前回の「あいちトリエンナーレ2010」以来ではないか。アジアへの目線も感じられる。インドネシアの伝統舞踊やヒップホップを独自に織り交ぜた作風で知られるジェコ・シオンポを招聘。「ダンストリエンナーレトーキョー2012」でも紹介されたが今回はカンパニーの単独公演を行う。演劇では愛知出身で「ままごと」を主宰する柴幸男の新作がある。多年代の観客層に訴える作品を生んできたのも起用のポイントか。

美術家で近年、演劇活動も行うやなぎみわ『ゼロ・アワー 東京ローズ最後のテープ』、藤本隆行+白井剛が内外でツアーを重ねたマルチメディア作品『true/本当のこと』に続いて組んだ『Node/砂漠の老人』、キリアン新作に作曲・ピアノで参加する向井山朋子が照明家ジャン・カルマンと共同作業を行う『FALLING』なども。まちなか公演やギャラリー展示など前回好評を博した企画を受け継いでの展開が楽しみだ。

前回のトリエンナーレ以後、名古屋/愛知では「パフォーミングアーツ熱」が高まっていると知人の地元在住関係者は口々に語る。地元団体参加による「祝祭ウィーク事業」も含め盛り上がりをみせている。前回の成功を受けてのさらる取組みに期待したい。

パフォーミングーアーツのチケット発売は6月下旬予定。

なお、パフォーミングアーツの担当者は以下の通り。プロデューサー:小崎哲哉[統括]、前田圭蔵、藤井明子(愛知芸術文化センター)、唐津絵理(愛知芸術文化センター)、愛知県国際芸術祭推進室:阿部晃久


現代建築に関する16章 〈空間、時間、そして世界〉 (講談社現代新書)

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わが星

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2013-03-21

[]「小牧正英先生を偲ぶ会——七回忌にちなんで——」

3月20日(水・祝)春分の日、都内のホテルにて戦後バレエのパイオニア小牧正英(1911〜2006)の7回忌を偲ぶ会が行われた。

小牧は岩手に生まれた。上京して目白商業高校を卒業したのちハルビンの音楽バレエ学校に学び、魔都と呼ばれた上海のライセアム劇場を拠点にしていた「上海バレエ・リュス」の中心ダンサーとして活躍した。これは帝室マリインスキー劇場のOBやディアギレフのバレエ・リュスの残党からなるカンパニーで、幅広いレパートリーを誇っていた。そこで主役含め多くの役柄を踊っていたのである。戦後帰国後は第一次東京バレエ団による『白鳥の湖』全幕日本初演(1946年)に際して主導的な役割を果たす。その後も小牧バレエ団を主宰し数々の古典バレエや近代バレエを紹介した。f:id:dance300:20130321213236j:image:left

1940年代後半から60年代頭にかけて一時代を築いた小牧バレエからは日本バレエを発展させてきた多くの舞踊家・指導者が生まれている。現在、同門会はないが世話人(高橋好子・水口和子・鈴木光代・田村征子・木村公香)が、最初期の弟子にあたる谷桃子・関直人との連名によって7回忌の会への参集を呼び掛けたところ多くの古参門下が集った。

木村の司会により進行。小牧への感謝の思いと、小牧の業績を伝承していきたい旨が語られた。参会者全員による献花に続き、関、佐々保樹という重鎮の挨拶となった。小牧に憧れバレエをはじめた関そして関の踊る姿に惹かれバレエにのめりこんでいったという佐々の思い出話を一同懐かしそうに聴き入る。舞踊評論家・山野博大が『白鳥の湖』日本初演の前後で日本のバレエは変わり興行としてのバレエが根付いたということを話し小牧を称えた。舞踊評論家・うらわまことの音頭で献杯し歓談に移った。

会場のそこかしこでOBたちが旧交を温めあう姿がみられた。何十年ぶりという邂逅もあったという。関、横井茂、佐々、橋浦勇、雑賀淑子、尺田知路、由井カナコ、岡本佳津子ら日本バレエ史を彩ってきたそうそうたる面々の姿も見えた。来賓の菊池宗(小牧の甥で遺志を継ぎ東京小牧バレエ団団長を務める)、糟谷里美(「日本バレエのパイオニア〜バレエマスター小牧正英の肖像」著者)のスピーチや親族代表による挨拶も。会場には貴重な写真や資料も展示され見入るOBの姿があった。f:id:dance300:20130321213235j:image:right

小牧の活躍によって日本のバレエは劇的に飛躍向上したのは疑いないだろう。各スピーチからも、そのことがうかがい知れた。先人の遺した遺産を、どうつなげ発展させていくかが問われてくる。日本バレエの過去・現在・未来について思いをはせる好機だった。

舞踊評論家/ジャーナリストの出席者は山野博大、うらわまこと、伊地知優子、谷孝子、中島園江、池野惠、高橋森彦(順不同)。チャコット株式会社の早川社長と山田常務も来賓として参加していた。



2013-03-16

[][]第44回(2012年)舞踊批評家協会賞・同新人賞が決定!

第44回舞踊批評家協会賞ならびに同新人賞が決定した。

2012年1月1日から12月31日までに日本国内で公演された舞踊活動が対象。

第44回(2012年)舞踊批評家協会賞、新人賞が決定

http://www.chacott-jp.com/magazine/news/other-news/442012.html

舞踊批評家協会賞

笠井叡・麿赤兒 

『ハヤスラヒメ 速佐須良姫』(構成・演出・振付:笠井叡)は舞踏の異種混合ともいうべき画期的な舞台で、それぞれの若手軍団を率いた両巨頭の存在感は圧倒的で、これからのダンスシーンの可能性を予測させる成果だ

小林紀子バレエ・シアター

09年から『眠れる森の美女』『マノン』『アナスタシア』とマクミランの大作を初演。とりわけ『アナスタシア』は、歴史の一断面を鮮烈に描き、近年のバレエ表現のひとつの頂点に至った点に対して

花柳壽輔

「日本舞踊×オーケストラ」---伝統の競演----に置ける『牧神の午後』『ボレロ』の振付、及び5曲の企画、総合演出の成果に対して

舞踊批評家協会賞新人賞

大橋可也

『ウィスパーズ』『断崖』において、尖鋭的かつ繊細な舞台を独特の空間を生かして展開した成果に対して

花柳源九郎

新作『走れメロス』における卓越した表現力に対して

福岡雄大

2012年は新国立劇場バレエ団の『マノン』『シルヴィア』『シンデレラ』ほかの主要作品に主演を果たし、強靭なエネルギー溢れる舞踊を踊った

南阿豆

舞踏ソロ『傷跡』『傷跡II』の両公演で、自らの肉体的痕跡に萎縮することなくバネにして、激情と悲痛さの両極端にわたってダイナミックに踊りきったエネルギーは今後、おおいに期待できる

同協会は評論家有志による団体。3ヶ月に一度例会を持ち、年明け2月半ば頃に最終審査を行い、前年度の公演のなかから協会賞3〜5件、新人賞2〜3件程度を選ぶ。

過去の受賞者リストをみると、わが国の舞踊史が一望できる。あらゆるジャンルの舞踊から受賞者を選ぶ視野の広さと、国の顕彰や民間の財団等の賞とは違った独自の選択眼のバランスに定評あった。

会員はもちろん評論家。かつて故・村松道弥、故・江口博、故・早川俊雄ら戦後の代表的な評論家・ジャーナリストにはじまって現在の長老格の山野博大、うらわまことらが主導的な立場にあった。1990年代〜2000年代初頭くらいまではバレエやコンテンポラリー・ダンス系の中堅や文化人も多く参加し会員が30人ほどいた時期も。紆余曲折を経て現在の会員は15名ほどになっている。

評論家の団体が賞を出すことに賛否あろう。賞を出すならば推薦理由が明確であること、推薦者が対象舞台を含むジャンルにおいて業界内外から信用を勝ち得ていることが非常に重要だ。そうでなければ説得力に欠け、受賞者の方に対し非礼にあたる。日本舞踊、舞踏に関しては主導的地位にあるといっていい方が3人以上名を連ねるが、洋舞に関しては現役で幅広く舞台を鑑賞し定期的に書いている方は限られる。とはいえバレエでいえば、商業媒体に定期的に寄稿し各種審査員等も務められる立派な業績を持つ方が、お二方いらっしゃる。その方々が推薦されれば問題ないのだが……。現代舞踊やコンテンポラリー・ダンスに手が回らない状況にあるのは寂しい。

参照:http://kado.seesaa.net/article/185474540.html 舞踊評論家とその周辺(2) 舞踊批評家協会 - 観劇記 〜 No Body No Lid -

今回の選考に関して異論ない。協会賞は3件に絞ってきた。実績含め多くの人が首肯するに違いない選出であるし、新人賞に関しても話題になったり注目されている人が選ばれている印象を受ける。受賞された方々に祝意を申し上げたい。


銀河革命

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怪男児 麿赤兒がゆく 憂き世  戯れて候ふ

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2013-03-15

[]現代舞踊協会制定 第30回江口隆哉賞に能美健志と森山開次が決定!

社団法人現代舞踊協会制定 第30回江口隆哉賞の受賞者が3月14日、現代舞踊協会のホームページにて公表された。

同賞は「わが国における現代舞踊の振興と協会の繁栄に尽力された、故江口隆哉元会長の功績を記念し1983年10月13日に制定された。年間を通じ優れた現代舞踊を創作発表した作者に、過去の実績を加味して授与」するもので授賞対象は「広く舞踊界(公益目的事業における顕彰事業)」としている(公式HPより引用)。

今年の受賞者は2名。

江口隆哉賞及び江口隆哉賞に係る文部科学大臣賞能美健志

授賞理由

「White Reflection」「AQUA」と劇場型野心作のあと、昨年はソフトで軽妙なデュオ「リサージュ」を再演、その多才と領域の広さをあらためて証明した。

江口隆哉賞森山開次

授賞理由

「曼荼羅の宇宙」の舞台では、従来からの強靭にして個性あふれる身体表現法をいっきょに開花させ、密教にからむ特異なアジア的宇宙の描出に成功した。

能美の受賞作『リサージュ』は公私のパートナー軽部裕美とのデュオ。三原淳子の弾くドビュッシー、サティ、ショパン等のピアノの調べにのせて踊られる。シンプルな空間で展開される誠実で手応えのあるダンスに人生の哀歓を感じた。大人が踊り、大人の鑑賞に耐え得る希少な舞台。順当な受賞といえるのではないか。

しかし、能美のキャリア・作家性から考えると、授賞理由で挙げられている2作——自主公演で発表した『White Reflection』、神奈川県芸術舞踊協会に委嘱された『AQUA』という長編を創り、キャリア最高といっていい充実をみせていた2010年に選ばれるのがベストだったように思う。とはいえ賞というものはタイミングや運に左右されるのものだから致し方ない。満を持しての文句ない受賞であろう。

現代舞踊界を牽引してくれそうな働き盛りの男性受賞者は久しぶりだ。男性受賞者が近年きわめて少なく2002年度に上田遙、2007年度に大ベテランの故・若松美黄が受けたくらい。創作者として指導者として一層の活躍が望まれる。

もういっぽうの受賞者・森山開次は先日発表された芸術選奨文部科学大臣賞新人賞とのダブル受賞となった。受賞作『曼荼羅の宇宙』は新国立劇場制作の公演で大きな話題になった。各種メディアに売れている人気者だが、自身で絵を描くなど独特の感性の持ち主。ソロ公演などで才気煥発である。古典芸能との協同作業にも意欲的。

ただ、作品と踊りに接する限り、非常にナイーブな感受性の持ち主に思う。様々な企画に関わっているが、お題目をあたえられ枠を狭められたりするならば、もったいない。みずからの内から出てくる豊かな想像力を飛躍させた創作を続けていって欲しいと願う。


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空海 至宝と人生 第3集 曼荼羅の宇宙 [DVD]

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2013-03-13

[]東京新聞制定 平成25年度 中川鋭之助賞に瀬島五月(貞松・浜田バレエ団)が決定!

東京新聞制定 平成25年度(第19回目)中川鋭之助賞の受賞者が13日、公表された。

受賞者は瀬島五月(貞松・浜田バレエ団)。

平成25年度 瀬島五月さんが受賞

http://www.tokyo-np.co.jp/event/bu/nakagawa/

中川鋭之助賞は「日本の舞踊界で活躍し、近年国内あるいは国外で優れた業績をあげ、今後さらに飛躍が期待されるバレエまたは現代舞踊の若手ダンサー」に贈られる。受賞者は東京新聞が委嘱する選考委員若干名と東京新聞関係者の協議により決定。選考会開催に先立って参考として候補者について舞踊関係者にアンケートを求めている。本年度の選考委員はうらわまこと、北井一郎、藤井修治、林愛子の各氏。

関西拠点のため全国的知名度はまだまだと思うので多少詳しく解説しておく。

7歳から神戸の貞松・浜田バレエ学園にてバレエをはじめる。18歳のとき「全日本バレエコンクール・ジュニアの部」 第1位、翌年には「アジアパシフィック国際バレエコンクール・シニアの部」 第1位を獲得。英国ロイヤル・バレエスクールに留学しレスリー・コリアらに学ぶ。卒業公演では現在ヒューストン・バレエの芸術監督として知られるスタントン・ウェルチ振付『A Time To Dance』に主演している。ロイヤル・ニュージーランド・バレエ団入団後は主役・ソリストの経験を重ね、帰国後は貞松・浜田バレエ団に入団。

華やかな容姿、堅実な技術もさることながら豊かな音楽性と明確な意思をこめた解釈・表現力に秀でている。

公私のパートナー、アンドリュー・エルフィンストンと息のあったパートナーシップを築き、『眠れる森の美女』オーロラ姫、『白鳥の湖』オデット/オディール、『くるみ割り人形』お伽の国の女王、『ジゼル』のタイトル・ロール、『ドン・キホーテ』キトリなどを踊る。役柄解釈の確かさとテクニックをしっかり役に惹きつける抜群の表現力を発揮している。

現代作品/コンテンポラリーでの活躍も目覚ましい。東京でも2度披露しているオハッド・ナハリンの超人気作『DANCE(マイナス16)』のソロ・パートで魅せた即興の楽しさとパワフルさに富んだ踊りはインパクト大。イリ・キリアンの『6DANCES(Sechs Tänze)』での軽妙洒脱でユーモラスな演技も絶品である。バランシン『セレナーデ』では優れた音楽センスをみせている。貞松・浜田バレエ団出身でドイツ・レーゲンスブルク・バレエの芸術監督を務める森優貴の『Memoryhouse』も印象深い。欧州コンテンポラリー・ダンス特有の身体使いを体得したうえで、森作品ならではの動きの微細なトーンのポイントを押さえつつ独自のニュアンスを表現。芸術性が際立っている。

関西中心の活動だったが、その力量が次第に知られるようになり、来たる3月16日、公益社団法人日本バレエ協会の都民芸術フェスティバル参加公演『白鳥の湖』主演に抜擢される(共演は奥村康祐)。また、新春に新国立劇場の地域招聘公演として行なわれた貞松・浜田バレエ団東京公演でも主軸を務め観客・関係者に強烈にアピールした。

賞歴としては地元の県や市の奨励賞等を受けたのと昨年末、ようやく文化庁芸術祭新人賞(舞踊・関西)を手にしたくらい。活動の場が関西に限られると注目度が下がってしまうのは否めない。新国立劇場共催地域招聘公演という檜舞台があったとはいえ、そのハンディを押しのけての受賞は快挙。中川賞受賞者の受賞年齢からすると若干年長ではある。しかし、この賞は将来性を重視している。将来性=必ずしも若ければいいというわけではない。中川賞の受賞者リストをみると、バレエ界もしくは現代舞踊界の中軸として大きく活躍することを念頭に選ばれてきているのは明らかだ。その意味において期待できそう。古典/現代作品ともにきっちりと踊りこなす得難い存在である。


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2013-03-12

[]平成24年度(第63回)芸術選奨文部科学大臣賞及び同新人賞発表 山本隆之、森山開次らに決定!

文化庁は12日、平成24年度(第63回芸術選奨文部科学大臣賞及び同新人賞を発表した。

平成24年度(第63回)芸術選奨文部科学大臣賞及び同新人賞の決定についてhttp://www.bunka.go.jp/ima/press_release/pdf/geijyutsusensyo_130312_ver2.pdf

舞踊部門は以下のとおり決定した。

芸術選奨文部科学大臣賞

山本隆之(職業:バレエダンサー 授賞対象:「アンナ・カレーニナ」他の演技)

贈賞理由

山本隆之氏は新国立劇場のダンサーとして、ほとんど全ての作品で主役を踊り、同バレエ団では名実ともにトップダンサーである。氏のダンサーとしての資質は、まず気品があり、どんな役を与えられても自分自身の色に染め、誰にもまねの出来ない空間を創ることの出来る日本には稀な逸材である。平成24年3月の新国立劇場における「アンナ・カレーニナ」は、エイフマン振付のもので、高度なテクニックと豊かな表現力の必要な作品であるが、氏は見事にカレーニン役を自分のものとして熱演し、深い感銘を与えた。

芸術選奨文部科学大臣賞

吉村輝章(職業:日本舞踊家 授賞対象:「座敷舞道成寺」他の演技)

贈賞理由

上方舞四流の家元の中で吉村輝章氏は、生まれも活動の拠点も東京であるのが異色だが、吉村流六代目を継承後、流儀の結束に尽力。自身の大病をも克服して、近年は一段と円熟味が増し、味わい深い舞が注目されている。とくに本年は着流しで舞った長唄「座敷舞道成寺」(2月18日・国立劇場、10月13日・国立文楽劇場)が上方特有の品ある色香を漂わせ、格調高い舞台に仕上げた。他にも一中節「都見物左衛門」(5月3日・国立劇場)や上方唄「世界」(11月23日・国立劇場小劇場)で洗練された技芸と芸域の広さを示した。

文部科学大臣新人賞

森山開次(職業:ダンサー・振付家 授賞対象:「曼荼羅の宇宙」の成果)

贈賞理由

その柔軟な感受性と身体能力によって、舞踊のみならずミュージカルや演劇、テレビ等幅広いジャンルで活躍してきた森山開次氏は、日本の伝統文化への共感も深い。10月に新国立劇場で初演の「曼荼羅の宇宙」では、高木正勝演奏のピアノと対峙する渾身のソロ「虚空」と、5人の優れたダンサーを起用した「書」からなる二部構成の舞台を演出振付し、さらには自ら曼荼羅図を描く等多才ぶりを発揮。人間の生の営みを通して知の記憶を呼び覚ますと同時に、豊饒な精神を感じさせた。独自の世界観を知らしめ、舞踊の可能性を広げた功績を称えたい。

非常に権威ある顕彰である。日本のバレエ・ダンス史に残る大物舞踊家、振付家でもタイミングを逸したためであろうが受賞していないケースも多々ある。

授賞理由や活躍ついては文化庁が公表しているものを参照されたし。新国立劇場での公演の受賞が連続しているが、目立つ場所において好条件で公演できる/踊れることも、運を含め実力であろう。

山本は2007年に新人賞を授賞済。それ以来の進境ぶりが評価されたのだろう。日本を代表するダンスール・ノーブルのひとりであり『アンナ・カレーニナ』カレーニン役は確かに名演だった(アンナ役の厚木三杏の好演も見逃せない)。選考基準の「これまでの業績に加え、将来性、年齢、他の受賞歴等も勘案して選出する」という点からすると、現在、山本は古典全幕の主役は踊らなくなりつつあり「将来性」という点で、やや引っかかる向きもあるかもしれない。しかし、何も主役だけがすべてではない。『シンデレラ』の義姉や平山素子『兵士の物語』悪魔などキャラクター役にも味をみせ独自の境地を開きつつあるのでフォローできそうだ。実績その他は申し分ない。

各種メディアに注目される森山に関しては秋の芸術シーズンまっさかりに新国立劇場主催公演で話題作を発表。ソロ作品に加え男性5人を使った群舞を発表した。これは彼にとって初となる本格的な群舞作品なのでは。ソロ公演等で魅せる美術的センスには独自のものがあり魅力的なクリエイターである。が、大人数を動かす振付家としては、まだこれからという面もあろう。今後のさらなる活躍を期待したい。なお第29回江口隆哉賞(制定:現代舞踊協会)とのダブル受賞となった。

贈賞理由に加え、このところ選考委員・推薦委員が発表と同時に公表されるようになった。さらに本年度は審査経過も明記されている。オープンな姿勢は望ましい。

選考経過

舞踊部門では選考審査員と推薦委員から、文部科学大臣賞の候補として11名、新人賞の候補として16名の名前が挙がった。まず例年に比べて推薦が少なかった大臣賞の候補者各人について、推薦した委員から活動の詳細と推薦理由が述べられた後、質問や議論が交わされ、推薦委員からの候補者に関しても、推薦理由と添付された資料をもとに意見が交わされて、全員で客観的情報を共有するに至った。次に新人賞候補16名について、同じ手順で議論が尽くされ、最終的に投票した結果、二次選考の対象として大臣賞候補4名、新人賞候補5名を残した。第二次選考審査会では、一次選考での議論に補足するかたちで意見が述べられた後、投票に移った。まず大臣賞で、1名が全員の賛同を得たが、残り1名の枠について、該当者なしとすることも含めて議論が行われ、結果的に地唄舞の吉村輝章氏、バレエダンサー山本隆之氏の2名を選出した。新人賞は最初の投票で3名にまで絞られたが、票数が等しく三者に分かれて難航し、長い議論の末に再度投票して、森山開次氏を選んだ。

選考委員

藍本結井(舞踊評論家)

池野惠(舞踊評論家)

佐々木涼子(東京女子大学教授)

篠原聖一(公益社団法人日本バレエ協会業務執行常務理事)

西村彰朗(演劇評論家)

丸茂美惠子(日本大学教授、舞踊評論家)

推薦委員

尼ヶ崎彬(学習院女子大学教授)

稲田奈緒美(舞踊評論家、昭和音楽大学バレエ研究所准教授)

上野房子(舞踊評論家、明治大学非常勤講師)

鈴木英一(聖学院大学講師)

高畠整子(朝日新聞企画委員(シニア・スタッフ)、社団法人当道音楽会理事)

永田宜子(新国立劇場運営財団研修主管)

長野由紀(舞踊評論家)

坂東亜矢子(演劇評論家)

平野英俊(舞踊評論家)

守山実花(尚美学園大学非常勤講師)

2013-03-10

[]東京バレエ協議会 ホープ2013(金子紗也・清水愛恵・日高有梨・松野乃知)

東京バレエ協議会(理事長:高橋典夫)のHPに所属団体の気鋭を紹介する「ホープ」が掲載されている。

これは一昨年まで発行されていた機関紙の名物企画であったが、合理化のためか同紙が出なくなり、昨年から同HP上で紹介されている。

ホープ2013

http://www.tba-ensemble.com/hope.html

今年取り上げられているのは、金子紗也(スターダンサーズ・バレエ団)、清水愛恵(東京シティ・バレエ団)、日高有梨(牧阿佐美バレヱ団)、松野乃知(チャイコフスキー記念東京バレエ団)。

金子は長野バレエ団を経て大阪のK★バレエスタジオに学ぶ。2008年第65回全国舞踊コンクールのパ・ド・ドゥ部で同門であり現・新国立劇場バレエ団プリンシパルの福岡雄大と組んで第3位に入っている。テクニックに強い踊り手。決戦を見ていたのだが、この回は非常にレベルが高く第1位が高田万里・青木崇、第2位が金子扶生・奥村康祐。その後金子はスタダンに入り順調にソリスト役を務めている。

清水は東京シティ・バレエ団が芸術提携を結んでいるティアラこうとうの組織するティアラ・ジュニアバレエ教室を経て同バレエ団に入団。昨年末には『くるみ割り人形』金平糖を踊っている。まだ、しっかりと認知していないので評は控えるが、相次ぐ抜擢から鑑みるに安達悦子ら首脳陣は評価しているのだろう。

日高は押領司博子バレエクラスを経て橘バレヱ学校入学。在学中から牧阿佐美バレヱ団公演に出演しAMスチューデントで牧阿佐美の指導も受けている。若いが早くからバレエ団公演に参加していたため中堅どころといっていいキャリアを持つ。『くるみ割り人形』『白鳥の湖』等に主演。アンサンブルでも手を抜かない演技に好感が持てる。

松野は若手男性の注目株。東京バレエ団付属の東京バレエ学校出身で長身のノーブル・ダンサーである。キャリア先行し進境著しい柄本弾とともに東京バレエ団の次代を大きく担うであろう踊り手。子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』王子役が好評を博し、きたる6月には『ラ・シルフィード』に主演する。楽しみな逸材だ。


スターダンサーズ・バレエ団「シンデレラ」(全2幕) [DVD]

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牧阿佐美バレヱ団「くるみ割り人形」<全2幕> [DVD]

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バレエに育てられて―牧阿佐美自伝

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2013-03-08

[]「二十世紀の10大バレエダンサー」村山久美子 著

舞踊評論家、舞踊史・ロシア舞台芸術史家、ロシア語通訳・翻訳として名高い村山久美子さんの新著「二十世紀の10大バレエダンサー」が5日、刊行された。早速求め一読したが、あらためて「バレエって素晴しい!」と思わずにはいられないような幸福な気持ちにさせてもらったので、ご紹介させていただく。


二十世紀の10大バレエダンサー

二十世紀の10大バレエダンサー

本書は村山さん自身「はじめに」と題された冒頭で記されているように“二十世紀の際立つダンサーについて、その舞台だけではなく、過ごした場所や時代の芸術的環境、社会状況などをあわせて語ることによって、彼らの芸術の深みに迫る試み”。

選ばれた10人に関しては、長年にわたる評論家としての活動を通して見続けてきた踊り手を中心に選んだという。キャリアの後半しか観ていない、映像・資料でしか確認できない人に関しては名演が広く知られバレエ界への貢献の大きかった人を選んだ由。その10人とは……。

ウリヤーナ・ロパートキナ

ウラジーミル・マラーホフ

シルヴィ・ギエム

ファルフ・ルジマートフ

ミハイル・バリシニコフ

ジョルジュ・ドン

ルドルフ・ヌレエフ

マイヤ・プリセツカヤ

ガリーナ・ウラーノワ

ワツラフ・ニジンスキー

(掲載順)

ほとんどがロシア派・ワガノワ・メソッドで育った人たちである。これは村山さんの専攻や嗜好云々ではなく、20世紀までに欧州で発展してきた各種メソッドを参照しつつ組み上げたワガノワ・メソッドが多様な進化・深化を遂げた20世紀バレエの土台になっているという事実を反映している。20世紀初頭、ベル・エポックに沸くパリに出現し一世を風靡したディアギレフのバレエ・リュスの中心であったニジンスキー、冷戦時代に西側に亡命し欧米で大活躍したヌレエフやバリシニコフ、いまをときめく美神ロパートキナにしてもワガノワ・メソッドを骨の髄まで学んでいる。

各ダンサーについて一章が設けられている。生年が遅い順に取り上げられており、現在活躍する踊り手との接点から「舞踊の世紀」の流れが浮びあがる仕掛けになっている。加えて「世界に羽ばたく日本人ダンサー」として、森下洋子吉田都熊川哲也を取り上げ、それぞれ一章を割いている(今回のために新たに取材したようだ)。グローバル化するバレエ界の動向が、より明確に伝わってくる趣向が心憎い。

各ダンサーの出自に始まり、バレエを学んだ環境や時代に関する正確な分析が平易に語られる。評論家であり研究者でもある著者の面目躍如たるものがある。そして、著者自身が実際の舞台や映像から感じた個々の踊り手の魅力が熱を帯びて語られる。ことにロパートキナやバリシニコフに関しては、その熱度が高い。熱い!しかし、熱狂的に入れ込んでいるというのではなく、具体的な舞台描写に加え第三者による証言を巧みに織り交ぜ説得力がある。

村山さんはロシア・バレエ研究の第一人者であり、その舞踊評論や公演評はアカデミックかつ切れ味鋭い。ときに冷徹なくらいに。幼少からバレエを学び、コンテンポラリーやストリートのダンスにも詳しく実技・実演もされる。理論と実践の両面から舞踊を捉え、論じている。厳格、という印象である。しかし、本書では、評論家になられる前の私的な鑑賞体験も触れられており、数々の素晴しい名演に接してきた感動が語られる。そこに共感を覚えた。当方、舞踊評論の末席を汚している身分であり、畏れ多くも公演時その他に村山さんと同席させていただく機会もあるのだが、飾らないお人柄で、鋭くも温かい論評を語られる。その魅力が本書にも反映されているように思った。

バレエ・ファンはもとより、バレエに少しでも関心のある方には必読といえるだろう。



ワガノワのバレエ・レッスン

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バレエの女王 シルヴィ・ギエム [DVD]

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二十世紀バレエ団の芸術 [DVD]

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ニジンスキーの手記 完全版

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2013-03-03

[]日本バレエ協会制定 第29回服部智恵子賞に荒井祐子(Kバレエカンパニー)が決定!

公益社団法人日本バレエ協会制定による第29回服部智恵子賞の選考会が3月3日行なわれ、受賞者に荒井祐子(Kバレエカンパニープリンシパル)が決まった。

http://www.j-b-a.or.jp/topics_top.html

http://www.j-b-a.or.jp/hattori-prize_13winner.html

同賞についてはバレエ協会のHPを参照。

服部智恵子賞は、第7回全国合同バレエの夕べの舞台稽古中にメルパルクホールで倒れ、急逝致しました日本バレエ協会初代会長、服部智恵子を偲び、かつ故人が戦前・戦後を通じて我が国バレエ界の草分けとして寝食を惜しんで我が国バレエ界の発展とその普及に尽力した業績を称える意味で、年間において最も顕著な業績をあげ、かつ将来においてもバレエ界の発展に貢献することが期待されるダンサーに授けられる賞として1985年に制定され、今日に至るまで名実共に我が国を代表するダンサーに授与され続けております。

荒井は愛知県生まれ。8歳より名古屋の塚本洋子バレエスタジオでバレエを始める。1990年、ローザンヌ国際バレエ・コンクールにおいて「スカラシップ賞」を受賞し、ハンブルク・バレエ学校に留学した。海外生活を経て95年にチャイコフスキー記念東京バレエ団に入団。『白鳥の湖』オデット/オディール、『眠れる森の美女』オーロラ、『ドン・キホーテ』キトリなど主役を務め活躍した。2003年秋、Kバレエカンパニーにファースト・ソリストとして移籍入団。2005年にはプリンシパルに昇格。

テクニックが強く絶対的な安定感を誇る。表現力も兼ね備え、数々のレパートリーに主演している。昨年度も『シンデレラ』『ドン・キホーテ』『くるみ割り人形』などに主演。年間を通しての幅広い活躍が評価されたものと思われる。実力・実績ともに十分な大型プリマ。納得の受賞である。ちなみにKバレエ結成以前に同賞を受けている熊川哲也を別にするとKバレエからは初の同賞受賞者となる。

なお選考委員は伊地知優子、うらわまこと、桜井多佳子、藤井修治、三浦雅士、山野博大の各氏。

荒井 祐子|メンバー情報|K-BALLET COMPANY

http://www.k-ballet.co.jp/members/view/6

荒井祐子 出演DVD


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