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ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2013-03-08

[]「二十世紀の10大バレエダンサー」村山久美子 著

舞踊評論家、舞踊史・ロシア舞台芸術史家、ロシア語通訳・翻訳として名高い村山久美子さんの新著「二十世紀の10大バレエダンサー」が5日、刊行された。早速求め一読したが、あらためて「バレエって素晴しい!」と思わずにはいられないような幸福な気持ちにさせてもらったので、ご紹介させていただく。


二十世紀の10大バレエダンサー

二十世紀の10大バレエダンサー

本書は村山さん自身「はじめに」と題された冒頭で記されているように“二十世紀の際立つダンサーについて、その舞台だけではなく、過ごした場所や時代の芸術的環境、社会状況などをあわせて語ることによって、彼らの芸術の深みに迫る試み”。

選ばれた10人に関しては、長年にわたる評論家としての活動を通して見続けてきた踊り手を中心に選んだという。キャリアの後半しか観ていない、映像・資料でしか確認できない人に関しては名演が広く知られバレエ界への貢献の大きかった人を選んだ由。その10人とは……。

ウリヤーナ・ロパートキナ

ウラジーミル・マラーホフ

シルヴィ・ギエム

ファルフ・ルジマートフ

ミハイル・バリシニコフ

ジョルジュ・ドン

ルドルフ・ヌレエフ

マイヤ・プリセツカヤ

ガリーナ・ウラーノワ

ワツラフ・ニジンスキー

(掲載順)

ほとんどがロシア派・ワガノワ・メソッドで育った人たちである。これは村山さんの専攻や嗜好云々ではなく、20世紀までに欧州で発展してきた各種メソッドを参照しつつ組み上げたワガノワ・メソッドが多様な進化・深化を遂げた20世紀バレエの土台になっているという事実を反映している。20世紀初頭、ベル・エポックに沸くパリに出現し一世を風靡したディアギレフのバレエ・リュスの中心であったニジンスキー、冷戦時代に西側に亡命し欧米で大活躍したヌレエフやバリシニコフ、いまをときめく美神ロパートキナにしてもワガノワ・メソッドを骨の髄まで学んでいる。

各ダンサーについて一章が設けられている。生年が遅い順に取り上げられており、現在活躍する踊り手との接点から「舞踊の世紀」の流れが浮びあがる仕掛けになっている。加えて「世界に羽ばたく日本人ダンサー」として、森下洋子吉田都熊川哲也を取り上げ、それぞれ一章を割いている(今回のために新たに取材したようだ)。グローバル化するバレエ界の動向が、より明確に伝わってくる趣向が心憎い。

各ダンサーの出自に始まり、バレエを学んだ環境や時代に関する正確な分析が平易に語られる。評論家であり研究者でもある著者の面目躍如たるものがある。そして、著者自身が実際の舞台や映像から感じた個々の踊り手の魅力が熱を帯びて語られる。ことにロパートキナやバリシニコフに関しては、その熱度が高い。熱い!しかし、熱狂的に入れ込んでいるというのではなく、具体的な舞台描写に加え第三者による証言を巧みに織り交ぜ説得力がある。

村山さんはロシア・バレエ研究の第一人者であり、その舞踊評論や公演評はアカデミックかつ切れ味鋭い。ときに冷徹なくらいに。幼少からバレエを学び、コンテンポラリーやストリートのダンスにも詳しく実技・実演もされる。理論と実践の両面から舞踊を捉え、論じている。厳格、という印象である。しかし、本書では、評論家になられる前の私的な鑑賞体験も触れられており、数々の素晴しい名演に接してきた感動が語られる。そこに共感を覚えた。当方、舞踊評論の末席を汚している身分であり、畏れ多くも公演時その他に村山さんと同席させていただく機会もあるのだが、飾らないお人柄で、鋭くも温かい論評を語られる。その魅力が本書にも反映されているように思った。

バレエ・ファンはもとより、バレエに少しでも関心のある方には必読といえるだろう。



ワガノワのバレエ・レッスン

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バレエの女王 シルヴィ・ギエム [DVD]

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二十世紀バレエ団の芸術 [DVD]

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ニジンスキーの手記 完全版

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2011-09-13

[]「日本バレエのパイオニア−バレエマスター小牧正英の肖像−」糟谷里美 著

さる7月30日、東京小牧バレエ団が戦後バレエの先駆者として知られる故・小牧正英(1911〜2006年)の業績を顧み「小牧正英生誕100年記念公演1」を新国立劇場オペラ劇場にて催した。演目は小牧正英の手によって本邦初演されたフォーキン・バレエの名作『ペトルウシュカ』『シェヘラザード』の二本立てだった。大掛かりな装置を用い出演者多数を要する二作の同時上演は世界的にも珍しいはずで話題を呼んだ。

時を同じくして小牧に関する著作が上梓された。「日本バレエのパイオニア-バレエマスター小牧正英の肖像-」糟谷里美 著である。著者は舞踊研究者で昭和音楽大学専任講師。舞踊教育学(バレエ教授法)、舞踊分析学を専門としている。



コンパクトな分量にして内容濃い。非常な労作である。小牧のバレエ人生を冷静に俯瞰して検証しつつ戦後バレエの発展の歴史が二重写しになるのが心憎い。

小牧は岩手生まれ。上京して目白商業高校を卒業したのちハルビンの音楽バレエ学校に学び、当時魔都と呼ばれた上海のライセアム劇場を拠点にしていた「上海バレエ・リュス」の中心ダンサーとして活躍した。戦後帰国後は第一次東京バレエ団による『白鳥の湖』全幕日本初演に際して主導的な役割を果たす。その後も数々の古典バレエや近代バレエを紹介し日本バレエの礎を築いた巨匠である。本書は序章と結章含めた7章構成。幼少期を過ごした岩手への綿密な取材によって小牧のルーツを探り、ハルビン時代を経て「上海バレエ・リュス」時代の活躍をいきいきと活写し、帰国後に本格的なバレエを普及させようと熱意を燃やした小牧の道程を追っていく。

小牧は単に多くの古典バレエや近代バレエを日本に移植したに留まらない。時期と機会を見計らって最良の状態で紹介した点に真価があろう。本書の第四章「外国人舞踊家の招聘」では、ソニア・アロワ、ノラ・ケイ、ポール・シラード、アントニー・チューダー、マーゴ・フォンティン、マイケル・サムスといった当時の世界第一線のダンサー/振付家を招聘した歴史が語られる。『眠れる森の美女』『ジゼル』やチューダー作品を当時望みうる最高の形で日本の観客に紹介した小牧の国際感覚の見事さと日本のバレエの現状を冷静に見つめていた分析力の確かさをあらためて浮き彫りにする。

また、第五章「創作への挑戦」において小牧の創作作品について論じているのも注目される。チャイコフスキーの「悲愴」に感化され「ヨブ記」をモチーフに生まれた『受難』に始まり、横光利一原作『日輪』、『交響曲第四番』、最後の大作となった『やまとへの道』に至る諸作に触れている。岩手江刺の郷土芸能を基にし宮沢賢治の詩に取材した『剣舞』についても紙数を割いて紹介している。ことに小牧作品の底流にある「運命」「死」「愛」「苦悩」といった、小牧が芸術家として人間として終生抱えていたであろう命題を洗い出していく手際は鮮やかで、筆致にもひときわ熱が感じられる。

結章「夢の実現へ」では、多くの後進を育て、バレエ人の結束や社会的地位の向上のため日本バレエ協会設立に深くかかわり、上海から帰国後夢見た“劇場をもつ組織的な職業バレエ団”として第二国立劇場(新国立劇場)実現へ向けて運動してきた軌跡が語られる。韓国やモンゴルとのバレエ交流についても触れている。小牧がディアギレフ・バレエから、ロシア・バレエから受け継いできた伝統の継承、小牧の遺産をどう未来へつなげていくかという「先」を示唆して終わっており読後感はすがすがしい。

小牧が戦後バレエの発展の礎になったのは揺るがせない事実である。ただ、1960年代に入ると小牧バレエ団の公演数は激減していく。そのため小牧の業績が埋もれてしまった感があるのは否めない。だが、著者は団員の相次ぐ退団などによる衰退というよりも“本格バレエの普及や日本人独自の新しいバレエの制作といった小牧自身の目標は、ひとまず終わりを告げ、日本初演を実現してきた数々のレパートリーの再演を通じて、その伝統を継承していくという次なる使命を課せられたのだとも考えられる”と指摘する。小牧は後年、自伝やバレエ・舞台学の著作を著すとともに、日本バレエ協会や「NHKバレエの夕べ」の公演で演出・振付を続けるなど小牧バレエ全盛時とは違った形であれバレエ芸術の継承に心血を注いでいる。そこを見落としてはならない。

最後に小牧版のディアギレフ・バレエに関して。ディアギレフのバレエ・リュスの流れをくむ欧米のカンパニーのものと比してどうなのだろうか。見方はいろいろあろうが、小牧バレエの系譜を継ぐ東京小牧バレエ団の上演する『火の鳥』日本初演版復元版や『牧神の午後』『薔薇の精』などの実演に接する限り、映像を含めわれわれが見慣れた諸外国のカンパニーの上演しているものと基本的に変わらないと思う。先日上演した『ペトルウシュカ』にしても広場の景の群衆処理に若干独自の色付けもみられるが、ペトルウシュカ、バレリーナ、ムーア人らの主なる振付が原典に沿っているのは、だれの目にも明らかだ。改作版と銘打った『シェヘラザード』にしても、エピローグ/プロローグに語りを入れた演出は独自のもので、音楽構成がフォーキン版と異なるが、ほかはおおむね原典を尊重しているといってよいのでは。「上海バレエ・リュス」には、バレエマスターのソコルスキーはじめディアギレフのバレエ・リュス出身者もいたというから当然であろう。小牧の上海時代の活動がより詳しく明らかにされ、「上海バレエ・リュス」の研究も進めば、そのあたりが明確になっていくに違いない。その意味でも、小牧の業績を「公平」な目から検証した本書は、今後の小牧正英研究の指標となるのではないか。

なお、引用・参考文献/小牧正英年譜/公演活動年表/日本バレエの黎明期から発展期への略年譜といった資料も充実している。モンゴル時代や戦後間もない舞台やプログラムの写真も盛りだくさんで資料的な価値が高い点も特筆される。



バレリーナへの道 87

バレリーナへの道 87




2011-05-27

[]新書館「ダンスマガジン」月刊化20周年!

新書館の発行する「ダンスマガジン」が2011年7月号をもって月刊化20周年を迎えた。

27日発売の同号では20周年特別企画として「ダンスのいま、そして未来」という特集を組んでいる。数々のスターダンサーが登場した20年分240号の表紙をすべて掲載。月刊化以後長らく編集長を務め、現在は顧問を務める三浦雅士氏による「ダンス、さらに未来へ」という一文はじめ、内外のバレエ・シーンの軌跡も回顧されている。

私は2004年11月号にはじめて署名入りで公演評を寄稿させていただいた。以後、公演評等を何度か書かせてもらったり、アンケート記事の回答依頼いただいている。

世紀をまたいだ激動の20年の内外のバレエ/ダンスシーンを広く網羅的な情報とヴィジュアルな紙面で捉えてきた同誌は、世界的にみても貴重な舞踊メディアといえよう。ダンスのさらなる未来を考える上でも同誌の一層の発展を祈りたい。



バレエ101物語 新装版 (ハンドブック・シリーズ)

バレエ101物語 新装版 (ハンドブック・シリーズ)


世界バレエフェスティバル写真集

世界バレエフェスティバル写真集

2010-11-26

[]「ダンスマガジン」1月号

「ダンスマガジン」1月号を読む。



ボリショイ・バレエ&マリインスキー・バレエ合同ガラ公演の速報スペシャルが充実。両バレエ団の若手ダンサーによる対談がとにかくおもしろい。出ているのはボリショイからナタリヤ・オシポワ、イワン・ワシーリエフ、マリインスキーからヴィクトリア・テリョーシキナ、ウラジーミル・シクラリョーフ。舞台でのエピソードや地元での日常について談論風発という感じ。飾らない人柄やバレエへの真摯な思いが感じられた。また、久々に日本の観客の前で貫録をみせつけた女王ガリーナ・ステパネンコと来シーズンからミハイロフスキー劇場へと移ることが決まっているレオニード・サラファーノフの近況を知ることができるのもうれしい。そしてウリヤーナ・ロパートキナは表紙を飾っている。

来年1月に来日するベルリン国立バレエ来日直前情報もたっぷりで、インタビューやみどころ紹介も豊富。インタビューは、パリ・オペラ座バレエのニコラ・ル・リッシュ。故ヌレエフの薫陶を受けた最後のエトワールであるだけに、ヌレエフと過ごした時間について語られるのは貴重だ。また、ベジャールやプティ、ノイマイヤー、ロビンズ、エックらとの協同作業やシルヴィ・ギエムとの共演についても語られる。偉大なる先人たちから受け継いだ財産を後進へと伝えていく決意も感じられ、なんとも頼もしい。

レビューでは、今夏〜秋に行われ盛況だった「あいちトリエンナーレ2010」のパフォーミングアーツ公演についてや東京はじめ各地で行われたバレエ公演が取り上げられている。谷桃子バレエ団の望月則彦振付『レ・ミゼラブル』、貞松・浜田バレエ団の森優貴振付『冬の旅』という、創作バレエ、コンテンポラリー・バレエの大作が紹介されてもいる。古典偏重といわれるわが国のバレエ界において、日本人の手による物語バレエや創作大作の創造は本当に貴重といえる。コンテでも、マイム・ダンス・演劇を越境した小野寺修二/デラシネラの話題作『異邦人』、2週にわたるロングランを敢行したKENTARO!!のソロ公演がピックアップされていたりしている。この秋のバレエ&ダンス公演は本当に充実していた、という思いを新たにさせられた。

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2010-11-03

[]斎藤友佳理 著「ユカリューシャ」の文庫版刊行!

わが国を代表するバレエ団・東京バレエ団のプリマバレリーナとして長年第一線で活躍されている斎藤友佳理さんの書かれた「ユカリューシャ」が文庫本になるようだ。

斎藤友佳理著「ユカリューシャ」が文庫本に

http://www.thetokyoballet.com/news/

ダンサー生命を左右しかねない大怪我や出産からのたびたびの復帰を得て活躍する斎藤が、その波乱万丈の半生を書き下ろした単行本(世界文化社刊)は2001年に刊行されて話題を呼んだ。単なるバレエ本ではなく女性の生き方を示した一冊として多くの読者を得たものであるが、今回の文庫化にあたっては、その後、ロシア国立モスクワ舞踊大学院に5年間通い首席で卒業した学生生活や悲願であったクランコ振付『オネーギン』のタチヤーナを踊るまでの日々について加筆しているという。

今春のタチヤーナ役(歴史に残る名演だろう)や今秋のジゼル役の演技を観てもつくづく感じたのだが、斎藤の踊りには全くと言っていいほどに私欲がない。これ見よがしに己の上手さをひけらかしたり、上っ面の演技で観客に媚びを売るようなするような俗っぽい邪念は微塵もない。完全なる無我の境地に達している。日舞や現代舞踊のベテランの踊り手のごくわずかにそういった人はいないではないが、バレエの踊り手で彼ら/彼女らに匹敵するする存在はそう多くはない。斎藤は稀有な存在である。それはバレエにおいてだけでなく生き方からしてストイックでいるからだと思う。

稀代の名プリマの生き方を知る貴重な一冊となるであろう。ぜひ一読したいところだ。


斎藤友佳理「ユカリューシャ」 [DVD]

斎藤友佳理「ユカリューシャ」 [DVD]


2010-06-21

[]くりた陸「MIYAKO バレリーナ吉田都ものがたり」

現在、来日中の英国ロイヤル・バレエ団公演『ロミオとジュリエット』主演をもって吉田都さんがロイヤル・バレエでの最後の舞台を迎える。2日間公演とも早々にチケットは完売しており、その舞台を観られる人は限られるのは残念なところ。

そんななか都さんの半生を描いたマンガ「MIYAKO バレリーナ吉田都ものがたり」が出た。「クララ」誌の別冊付録として昨秋から連載されたものを中心にまとめられている。都さんのバレリーナ人生を振り返るには格好といえ、時機を得た刊行といえよう。


MIYAKO バレリーナ吉田都ものがたり (ETOILE COMICS)

MIYAKO バレリーナ吉田都ものがたり (ETOILE COMICS)

2010-05-22

[]「オックスフォード バレエダンス事典」日本語版刊行!

ついに「オックスフォード バレエダンス事典」邦訳版が出る!早速先日予約した。

監訳:鈴木晶、訳:赤尾雄人、海野敏、鈴木晶、長野由紀という、日本を代表する舞踊評論家のお歴々が4年の時間をかけて翻訳したそうだ。辞典・辞書類の出版には定評ある平凡社からの刊行というのも心強い。バレエ&ダンスファン必携になるのでは。


2010-03-03

[]赤尾雄人 著『これがロシア・バレエだ!』

赤尾雄人さんの書かれた「これがロシア・バレエだ!」が刊行されました。「ダンスマガジン」の連載をまとめており、単行本化が待ち望まれていたものです。


これがロシア・バレエだ!

これがロシア・バレエだ!

これは20世紀のロシア・バレエについてまとめた労作であり、日本におけるバレエ史紹介において20世紀バレエといえばディアギレフのバレエ・リュスを基点とするものが中心であったことを考えると、非常に価値のある一冊といえるのではないでしょうか。

20世紀初頭、プロコフィエフやショスタコーヴィチといった作曲家やスタニスラフスキーらの演劇人らの活躍に刺激を受けてロプホーフ、ワイノーネンやゴレイゾフスキーらが活発な活動を展開し、ラブロフスキーによるコレオ・ドラマの傑作『ロミオとジュリエット』に結びつきます。その歴史は連綿と受け継がれ、ブルメイステルを経て、ロシア・バレエの金字塔『スパルタクス』を生んだグリゴローヴィチの黄金時代を生み出し、また、異能の才人として近年再評価されているヤコプソンらが活躍します。そして、ソビエト・バレエ最後の輝きをみせたのが1980年代後半に生まれたウラジーミル・ワシーリエフによる『アニュータ』。そこまでの歴史が人物列伝形式で生き生きと描かれます。

20世紀バレエの名作としてクランコの『オネーギン』やマクミランの『マノン』、ノイマイヤーの『椿姫』等が挙げられますが、これらも20世紀初頭から育まれてきたロシア・バレエにおけるコレオ・ドラマの歴史とは無縁ではありません。ラブロフスキー版『ロミオとジュリエット』が1956年のボリショイ・バレエのロンドン公演で上演されるや否や西側世界に衝撃をもたらし、クランコ、マクミランらを感化。それが20世紀ドラマティック・バレエの名作の誕生へとつながっていったことは軽視されがちに思えます。昨年逝去したプロコフスキーや今春、新国立劇場に登場するエイフマンらも古典的なロシア・バレエの遺産を現代へとつなぐ役割を果たして多くの観客を魅了するグランド・バレエを創造しており、ロシア・バレエの血が流れています。そのことを改めて実感させてくれました。

20世紀のロシア・バレエの意義を総括するだけでなく、現在、そして未来のバレエを考える上でも示唆に富む労作。ロシア・バレエ研究の第一人者のひとりだけに豊富な資料を駆使しての論考は説得力十分です。また、精確で読みやすい美しい日本語で綴られているのもすばらしい。バレエ・ファンなら「必読」と声を大にして薦めたい一冊。

【関連書籍】

バレエ・テクニックのすべて

バレエ・テクニックのすべて

2010-01-28

[]「ダンスマガジン」3月号

「ダンスマガジン」3月号が届きましたので早速拝読しました。

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2010年 03月号

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2010年 03月号

マリインスキー・バレエやギエム&カーン公演のレビューやインタビュー記事、パリ・オペラ座や英国ロイヤル・バレエ公演の現地レポートも載っていて充実しています。

私的にはナゴヤ・テアトル・ド・バレエの深川秀夫振付『くるみ割り人形』のレビューが大きく出ているのに注目。塚本洋子が主宰し、テアトル・ド・バレエ・カンパニーとして新たな展開を進めるカンパニーの公演です。この公演は観られませんでしたが、一昨年の『ドン・キホーテ』公演は観ることができました。音楽性豊かで独自の美意識に裏打ちされた創作を続ける深川を芸術監督に迎え、地域に根を下ろしつつプロフェッショナルな舞台活動を目指していこうとする姿勢は注目すべきものです。

そして、見逃せないのが三浦雅士氏とディアナ・ヴィシニョーワの対談でしょう。ヴィシニョーワの生まれ育ちからバレエ学校時代、そしてローザンヌ国際バレエコンクールに出場した際の様子にはじまり、ルジマートフやマラーホフとの公私にわたる交際が飾らない言葉で語られており貴重。私的にはヴィシニョーワが特別すごく好きというわけではないのですが、観るたびに踊るたびに新たな相貌をみせてくれる稀有な存在だというのは疑いなく、常に進化・深化するバレリーナだと注目しています。その魅力の一端を感じることのできるインタビューであり、じつに興味深いもの。一読に値します。

2009-11-27

[]「ダンスマガジン」1月号

「ダンスマガジン」1月号(新書館)が届いたので早速拝読しました。

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2010年 01月号

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2010年 01月号

今秋リニューアルして3号目。前回5年前のリニューアル時からの路線を受け継いでビジュアルに見易い誌面づくりを心がけているのが感じられます。「稽古場のダンサーたち」「バレリーナ 美の秘密」といった新連載は、鑑賞者にもバレエを習っている層にも興味深い内容。吉田都「東京-ロンドン日記」では吉田さんがロイヤル・バレエでの最後の一年にかける思いがひしひしと感じられます。そして最近の同誌では、ロシア・バレエ系に誌面を割く割合が増えている印象。今月はニーナ・アナニアシヴィリ&グルジア国立バレエの現地取材のほか来年1月に東京バレエ団『ラ・シルフィード』に客演するレオニード・サラファーノフのインタビュー記事も。毎号何かしらの記事の載るパリ・オペラ座バレエはじめ欧米カンパニーの情報とのバランスも良く充実しているのでは。

また、同誌はバレエとくに内外の大バレエ団のみならず各地の団体やコンテンポラリーについても取り上げています。今号でも名古屋や関西のバレエ公演のレビューが出ていますし、コンテンポラリー・ダンスの祭典「ダンストリエンナーレ TOKYO」についても総括レポートが。先月号では現代舞踊協会「時代を創る 現代舞踊公演」についてレポートが載っていましたし、今号では「アーティスティック・ムーブメント・イン・トヤマ」という大学生による創作ダンスコンクールの詳細な報告が出ています。誌面に限りもありますしバランスは難しいでしょうがバレエ中心に偏りない編集ではないでしょうか。

そして最後に触れておきたいのが「ダンスマガジン・インタビュー」。今号登場したのは貞松融と浜田蓉子(貞松・浜田バレエ団)。夫妻が神戸の地でバレエ活動をはじめて半世紀の歴史が語られます。1960年代バレエ団結成前後の話は関西バレエ黎明期を知るうえでも貴重なものでしょう。バレエ学園を開設し踊り手を育てつつ兵庫県内を回る学校公演によってバレエ普及に努める雌伏の時代。子息の貞松正一郎がローザンヌ国際バレエコンクール入賞を果たし、本格的な全幕公演も行うようになった1980年代の躍進。阪神・淡路大震災に見舞われながらも内外の一流振付者や団員による創作を上演する「創作リサイタル」を毎年開催するなど意欲的活動を続け今にいたる絶頂期。そしてこれから。地域に根ざしつつ世界に通じるバレエ団を志向するカンパニーの過去・現在・未来が熱のこもった言葉によって語られ感銘を受けました。必読。