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ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2011-08-12

[]フラメンコ・ギターの名手、モライート・チーコ死去

フラメンコギターの名手、モライート・チーコ/Moraito Chicoが亡くなった。

スペイン在住のフラメンコジャーナリスト志風恭子さんのblogによると、昨年秋、石井智子フラメンコ舞踊団公演『MAGIA マヒア 魔法』から帰国後間もなく癌が見つかったという。公演活動を行いつつ治療を続けていたというが、10日帰らぬ人となった。

享年54歳。まだ若い。

日本のフラメンコ関係者の間にも衝撃が走っているようだ。

ご冥福をお祈りしたい。

Renowned Flamenco Guitarist Moraito Chico Dies at 54

http://worldmusiccentral.org/2011/08/10/renowned-flamenco-guitarist-moraito-chico-dies-at-54/

志風恭子のフラメンコ 最前線〜モラオ!

http://noticiaflamenca.blogspot.com/2011/08/blog-post_10.html


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Morao Y Oro: Mauve & Gold

Morao Y Oro: Mauve & Gold

2011-03-09

[]小島章司のスペイン・へレス公演、大成功!

2009年秋に文化功労者に選ばれたフラメンコ界の大御所・小島章司。小島が、本場スペインの第15回「フェスティバル・デ・ヘレス」に招聘されるというニュースはここでもご紹介した。2月27日に公演が行われ、無事成功をおさめたようだ。

同フェスティバルは、1997年から開催されるフラメンコの祭典。上演されたのは2009年初演の際に好評を博した『ラ・セレスティーナ 〜三人のパブロ〜』だった。公演の模様を収録した映像や現地の批評等が小島の公式ホームページに掲載されている。

へレス公演成功の余韻に浸る間もなく、小島と舞踊団はスタジオ公演『ヘレスの風』(3/19-21)を行う。気鋭のバイラオール、ペドロ・コルドバ(特別ゲスト)を招いてのプログラムも予定されている。2009年の舞台後、アキレス腱断裂に見舞われた小島だが、完全復活を遂げているようで、さらなる深みを増した演技を期待したい。

第15回フェスティバル・デ・ヘレス招聘公演La Celestinaラ・セレスティーナ 〜三人のパブロ〜(終了)批評や映像等へのリンク有り

http://www.shojikojima.com/jp/news/celestina-jerez.shtml

小島章司フラメンコ舞踊団2011年スタジオ公演『ヘレスの風』情報詳細

http://www.paseo-flamenco.com/guide/classroom_post_32.php

Shoji Kojima. La Celestina. Festival de Jerez 2011

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フラメンコ・小島章司の世界 (Master of Art Series)

フラメンコ・小島章司の世界 (Master of Art Series)

2010-11-21

[]フラメンコ舞踊の現在〜小島章司を起点に

わが国のフラメンコ舞踊の第一人者のひとりとして活躍する小島章司。昨年秋に文化功労者に選ばれるという快挙を成し遂げたが、今年年明け早々に左脚アキレス腱断裂という事態に見舞われた。しかし、その後経過は良好らしく、ほとんど完治し、9月21日には徳島県郷土文化会館(あわぎんホール)で『小島章司&浅野寿穂 MAHO A MAHO 二人の古希のコンサート』を行い、翌々日には故郷の牟岐町<小島の浜>で絶景を舞台とした野外公演『潮騒に舞う満月のフラメンコ』を行ったという。

残念ながら毎年行われる秋の定期公演は行わない。とはいえお知らせによると来春からの活動への意欲高く、そして、今月23日(火)勤労感謝の日にはNHK総合テレビにて小島のインタビュー番組が放映される。牟岐町での舞台の模様も放送されるとのこと。小島の来歴と現在を知るうえで貴重なものになりそう。

NHK総合テレビ「ホリデーインタビュー」

11月23日(日・祝)午前6:30〜6:53

小島は後進へと託す思いも強く、黄金時代の本場スペインで研鑽し深めてきたフラメンコの精髄を伝えようとしている。2009年8月に行われたARTE Y SOLERA主催 desnudo Flamenco Live vol.3「小島章司 魂の贈り物」では、佐藤と鍵田・佐藤門下の矢野吉峰&末木三四郎、小島門下の関晴光&松田和也と共演し振付も行った。小島はその際のプログラムにおいて“世代間の交流”を掲げており、長年極めてきた奥義を後進に伝える。佐藤らがそれに応え気迫こもる感動的なステージだった。

ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ desnudo 小島章司

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現在のフラメンコ舞踊のシーンでは、河上鈴子や香取希代子といったパイオニアを経て小島や先達にあたる山田恵子、小松原庸子らの第二世代が長老・巨匠にあたる。そして、さらに第三世代とよべるジェネレーションが脂にのった活動を展開している。

前述のARTE Y SOLERA(鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団)は主宰の両人が各々踊り手として卓越しているが、創作者としても力量を発揮し各舞踊賞等も獲得。阿木耀子・宇崎竜童と組んだ『FLAMENCO 曽根崎心中』は国内外で再演を重ねる大ヒットとなった。最近は小スペースでの「desnudo Flamenco Live」を開催して、小島を招聘したり、欧州コンテンポラリー・ダンスシーンで注目されるシディ・ラルビ・シェルカウイ作品に出演したアリ・タベと鍵田のコラボレーションを行っている。今月末には待望の劇場での新作『道成寺』が初演される(11月27(土)〜28(日)@ル・テアトル銀座)。佐藤が構成・演出・振付を手掛け、鼓童の吉井盛悟が音楽を手掛けるもので注目が集まる。

【preview】ARTE Y SOLERA 道成寺 dojoji 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ

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また、小島つながりでいえば、2008年に小島が『戦火の詩人たち<愛と死のはざまで>』で舞踊批評家協会賞を受賞した際、同時に同新人賞を得たのが石井智子だった。石井は名門・小松原庸子スペイン舞踊団の華として知られるが、近年は自身の舞踊団活動に力が入っている。2008年の『エル・コンパス』は、コンパスの魔術師と呼ばれるディエゴ・カラスコを招聘しなんとも昂揚感あふれる舞台であった。今秋には、カラスコに加え、天才ギタリストのモライート・チコも招いてフラメンコの魔力的な魅力を探った『MAGIA 魔法』を発表し話題を呼んだ。石井は、華やかで存在感ある踊りもさることながら知的で構成力ある舞台作りと、洗練された演出の手腕を備えている。

鍵田・佐藤と石井の活動を挙げることになったが恣意的ではない。小島起点というのと実力・知名度にもよるが、それ以外に大きな理由がある。それは、本年度の文化庁の「文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業)」に両舞踊団が採択されていることだ。最高水準の舞台芸術活動に下りるもので、小松原、小島以外のフラメンコ舞踊で採択されたのは初めてではないか(前者は『道成寺』含め2本、後者は『MAGIA 魔法』に対して)。近年、小島の文化功労者や小松原、長嶺ヤス子、岡田昌巳らベテランの相次ぐ受賞に加え、第三世代の活躍が高く評価されているということは、フラメンコ舞踊がわが国の舞踊シーンにおいてより高いポジションを占めつつあることの証左であろう。近年の文化庁芸術祭(舞踊部門・関東)のラインナップを観ても中堅・若手フラメンコ勢の意欲が感じられる。ベテランの充実と新世代のさらなる展開が楽しみだ。




2009-11-30

[]小島章司フラメンコ2009『ラ・セレスティーナ〜三人のパブロ』

今秋、フラメンコ界からはじめて文化功労者に選ばれた小島章司がほぼ毎年恒例となっている11月末の公演を行いました。今回小島が挑んだのは、15世紀ルネッサンス期のスペイン古典文学『ラ・セレスティーナ』(11月27日〜29日 ル・テアトル銀座)。

フェルナンド・デ・ローハスによる原作は、散文による小説風の戯曲です。貴族の青年カリスト、貴族の令嬢であるメリベーアの激しい肉欲に満ちた恋が描かれますが、それを仕向けることになるのが妖術を用いる娼家の女将セレスティーナ。ドラマティックな悲劇を、パブロ・ピカソの画集「ラ・セレスティーナ」を出発点として構想し、1973年に相次いで死んだピカソ、パブロ・・ネルーダ(詩人)、パウ・カザルス(チェロ奏者)という“3人のパブロ”に捧げられた意欲作となりました。4回公演の最終回を観ましたが、とにもかくにもドラマティック。物語バレエならぬ物語フラメンコ、ドラマティック・フラメンコの極点というものはかくやという素晴らしい出来ばえに涙。ことに後半、場を追うごとに悲劇の結末へ向けて奔流のごとく畳み掛けていくダイナミックな展開に圧倒されました。

小島が演じたのがセレスティーナ役。奸智に長け老獪・海千山千、一筋縄ではいかない曲者の老婆という役柄であり、精神性高いと評され、まさに求道者のようにストイックな踊りの印象の強い小島にとって今までにない挑戦だったと思います。巨匠にしてこの大胆な冒険心!振り付け・演出にスペイン屈指の振付師ハビエル・ラトーレを招き、自身は演者として作品の一要素に徹したのもトータルな舞台芸術としての完成度を高めようとする姿勢の表れに他ならないと感じました。なかなかできることではないでしょう。ゲスト・バイレやカンテ、ギター、チェロ、パーカッションら本場からのキャストはいつもながらですが門外漢であっても一流だと感得できる素晴らしい人たち。作曲はおなじみチクエロのオリジナル、美術も名匠・堀越千秋。舞踊団のアンアンブルも前作『越境者』のとき以上に生き生きとした心の底から表現して踊るダンスをみせて充実していました。年度末の最後の最後に大変な力作、感動作が誕生した感があります。

以下、ご紹介するのはスペイン版「ロミオとジュリエット」とも称される「ラ・セレスティーナ」映画化版のDVDです。今回の公演プログラムに寄せられているスペイン演劇研究の第一人者:古屋雄一郎氏の文章において触れられていました。今をときめくスペイン人アカデミー賞女優ペネロペ・クルスの主演作です。私もこれから観ようと思います。


情熱の処女~スペインの宝石~ [DVD]

情熱の処女~スペインの宝石~ [DVD]

2009-10-28

[]フラメンコ舞踊の小島章司が文化功労者に

フラメンコ舞踊の第一人者小島章司さんが文化功労者に選ばれました。おめでとうございます。毎年のリサイタルを心待ちにする観客のひとりとしてうれしい限りです。

小島さんは1939(昭和14)年徳島県生まれ。武蔵野音楽大学声楽科を卒業し、声楽、ピアノ、クラシックバレエ、モダンダンスを学ぶうちにフラメンコに出会います。1966(昭和41)年にスペインへ渡り、本場で修業に励み、スペイン各地や海外にて第一線の舞踊手として活躍します。1976年に帰国後は、精神性の高いと評されるダンスを持ち味にしつつ毎年のように精力的に創作フラメンコを発表してきました。『瞋恚の炎』による芸術祭賞を皮切りに、河上鈴子スペイン舞踊賞、東京新聞舞踊芸術賞、芸術選奨文部大臣賞、徳島県文化賞、イサベル女王勲章オフィシアル十字型章、紫綬褒章、アンダルシア州政府顕彰、文民功労勲章エンコミエンダ章等受賞・受章を重ねています。

近年では、『鳥の歌』『FEDERICO』『戦下の詩人たち』の〈愛と平和三部作〉を完成させ、クリスティーナ・オヨスと共演した『邂逅 ENCUENTRO』、高野山真言宗総本山金剛峯寺の壇上伽藍・金堂にてのフラメンコ奉納公演『聖なるいのち 〜空海に捧ぐ〜』等を行っています。つい先日には、鍵田真由美・佐藤浩希プロデュース「小島章司 魂の贈り物」に特別ゲスト出演。後進にフラメンコの精髄を伝える感動的な舞台を繰り広げて熱狂を呼び、各紙誌でも大絶賛を浴びました。日本舞踊史の生ける伝説と呼べる巨匠中の巨匠です。来月末には新作『ラ・セレスティーナ 〜三人のパブロ〜』を発表。創作欲はとどまることをしりません。受章を機にさらなる活躍が期待されるところです。

ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ desnudo 小島章司

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フラメンコ・小島章司の世界 (Master of Art Series)

フラメンコ・小島章司の世界 (Master of Art Series)

2009-10-09

[]この秋、フラメンコ舞踊の話題公演が続々と

この秋はフラメンコ舞踊が熱い!

現代屈指といわれるフラメンコの女王で、亡きピナ・バウシュや「リービング・ラスベガス」などで知られる映画監督マイク・フィギスらが熱烈に支持するエバ・ジェルバブエナが3年ぶりに来日し『Santo y Seña(サント・イ・セーニャ)』『Yerbabuena (ジェルバブエナ) 』を上演(10月20-21日 於:Bunkamuraオーチャードホール)するのが話題ですが、日本の創作フラメンコも負けてはいません。わが国は本場スペインに次いでフラメンコ舞踊が盛んといわれます。黎明期の河上鈴子を経て、小松原庸子、小島章司といったパイオニアが芸術舞踊として深め社会的地位を向上させました。そして現在、次世代の俊英がどんどん台頭しています。今秋は芸術祭シーズンということもあって公演が目白押し。そのなかから次代を大きく担うアーティストによる公演を紹介しておきましょう。

まず最初に挙げておきたいのが鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団・desnudo Flamenco live Vol.4『愛と犠牲』(10月28、29日 於:代々木上原ムジカーサ)。この団体はフラメンコの原点たる力強くエネルギーに満ちた踊りを持ち味としています。『ARTE Y SOLERA 歓喜』では文化庁芸術祭大賞を獲得。プロデュース・作詩:阿木耀子&音楽監督・作曲:宇崎竜童による『FLAMENCO曽根崎心中』は、大・中劇場において再演を重ね多くの観客を動員してきました。desnudo Flamenco live は、座席数80席の小スペースにおいてフラメンコ熱を体感できる貴重な企画です。先日は日本フラメンコ界の至宝・小島章司を招いて男性舞踊手五人による「小島章司 魂の贈り物」を開催して話題を呼びました。今回の『愛と犠牲』は、2007年に劇場公演されたものをJAZZ界で活躍する近藤和彦のオリジナル音楽をライブ版に再構成したものということ。パッションに溢れた踊りを間近で堪能できるまたとない機会であり楽しみなところです。

10月の公演のなかでも女性アーティストの活動が目につきます。なかでも注目されるのが日本のフラメンコ界のエリート中のエリートによる公演。公演日順に2つご紹介しておきましょう。最初は入交恒子 CONCIERTO FLAMENCO Vol.11『La Luna de Andalucia(アンダルシアの月)』(10月24日 草月ホール)。入交は小島章司に師事したのち、小松原庸子の舞踊団に入り活躍しました。現在の日本のフラメンコ舞踊手のなかでも超一線級に入る、という関係者の声もちらほらと。2006年、2007年には連続して文化庁芸術祭優秀賞を獲得しており、それ以来2年ぶりとなる公演となるだけに大いに注目されます。石井智子フラメンコ公演『EL COMPAS エル・コンパス』(10月29日 新宿文化センター大ホール)も話題の舞台。石井は名門・小松原庸子スペイン舞踊団の第一舞踊手として長年活躍しました。独立後も古巣に客演する実力者にして日本フラメンコ舞踊界の華といえる存在です。2008年には舞踊批評家協会賞新人賞を受賞しました。今回はコンパスの魔術師ディエゴ・カラスコ、スペイン屈指の若手バイレのエル・フンコを招聘する熱の入れようだけに、充実の内容が期待できそう。

新生なったアントニオ・ガデス舞踊団やクリスティーナ・オヨスといった一時代を画した巨星、先に触れたエバ・ジェルバブエナやホアキン・コルテスらスターの来日も楽しみですが、日本のフラメンコ・アーティストの水準も高く、創作力や機動力に優れた意欲溢れる公演が続きます。前記のdesnudo Flamenco live のvol.5(12月8、9日 於:代々木上原ムジカーサ)では、ヨーロッパで注目を集めるダンサー/サーカスアーチストで、奇才シディ・ラルビ・シェルカウイ作品にも出演するAli Thabet(アリ・タベ)を招聘し、フラメンコの枠を越える新たなステージを展開するとか。コンテンポラリー・ダンスのファン/関係者にとっても見逃せない公演となること必至でしょう。多様な刺激的な公演が続いているので、ぜひ多くの人々に日本のフラメンコ舞踊に接してほしいと思います。

2009-08-27

[]ARTE Y SOLERA/desnudo Flamenco Live vol.3「小島章司 魂の贈り物」

男たちだけによる力強く、激しい舞台。でも、そこに野暮ったさは微塵もなくて端正で凛とした美しさがある――ARTE Y SOLERA主催によるdesnudo Flamenco Live vol.3「小島章司 魂の贈り物」は、稀にみる高揚感溢れたステージでした。芸術祭大賞等に輝く鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団の佐藤浩希と、佐藤が師と慕う日本フラメンコ界の大御所小島章司の共演が話題。さらに鍵田・佐藤フラメンコ舞踊団からは矢野吉峰&末木三四郎、小島門下からは関晴光&松田和也が出演しました。

「歓喜の歌」、「ファルーカ」、「ハレオ エストレメーニョ」、「ソレア」、「トナ・イ・シギリージャ」等を息つく間なく展開。小島の振付が中心のようで、黄金時代の本場で研鑽した巨匠が深めてきたフラメンコの精髄。小島はプログラムに寄せた一文において公演の眼目として“世代間の交流”を挙げています。小島が長年極めてきた奥義を後進に伝え、それを佐藤以下、斯界の次代を担う俊英男性陣が気迫のこもった踊りで応える――新旧世代の魂の交歓の場に立会える幸運に感謝せずにはいられませんでした。

(2009年8月26日 代々木上原・MUSICASA)

2009-03-03

[]アントニオ・ガデス舞踊団『アンダルシアの嵐』

アントニオ・ガデス舞踊団『アンダルシアの嵐』

振付・監督:アントニオ・ガデス

ラウレンシア:クリスティーナ・カルネーロ

フロンドーソ:アンヘル・ヒル

村長:アドリアン・ガリア

騎士隊長:ホアキン:ムレーロ

(2009年3月3日 文京シビックホール大ホール)

現代フラメンコの巨匠、アントニオ・ガデスが逝去したのは2004年のこと。その報は日本でも大きく報じられた。1980年代に自身の舞踊団を率いて来日、空前のフラメンコブームを巻き起こした立役者である。名匠カルロス・サウラ監督との協同作業による「血の婚礼」「カルメン」といった映画でも広く知られよう。ジョルジュ・ドンの踊る「ボレロ」(ベジャール振付)が印象的な映画「愛と哀しみのボレロ」やベジャール・バレエの来日公演に接してバレエに開眼したファンは多いけれども、同様に同時期にガデスの出演する舞台や映画を観てフラメンコに惹かれた日本の観客も少なくない。現在の新生アントニオ・ガデス舞踊団はガデスが死の直前に自作の普及と後進の育成のために創設した財団が運営、かってガデスとパートナーを組んだステラ・アラウソが芸術監督を務める。2007年に続く来日公演は3プログラムが組まれているなか今回日本では12年ぶりの上演となったのが『アンダルシアの嵐』だ。ガデス後期の傑作との誉高く、なるほどその評判に違わぬものだった。16世紀スペインの劇作家、ロペ・デ・ベガの戯曲「フェンテフォべフーナ」に着想を得たものであり、15世紀スペインにおいて実際におこった事件に基づいている。暴君の圧政に耐え切れなくなった農民たちの反乱がテーマ。土着的、民族的、ローカル色の濃い題材であり、振付も当然ながらフラメンコのテクニックがベースになっているけれども、いつの世にも存在する強大な権力への異議申し立てを描き出して普遍性がある。運命に翻弄される若い男女の愛も涙を誘う。後半、一気に畳み掛ける演出が冴えていて緊密、見応えのある舞台に仕上がっていた。

2007-12-01

[]総合芸術としてのフラメンコ〜小島章司フラメンコ2007、蘭このみスペイン舞踊公演

銀座1丁目はル テアトル銀座において立て続けにフラメンコ公演を観る機会に恵まれた。小島章司フラメンコ2007「戦火の詩人たち<愛と死のはざまで>」(11月30日所見)と蘭このみスペイン舞踊公演「花がたみ」(11月27日所見)である。

小島は今年で舞踊生活50年。クラシック、モダン・バレエを経てフラメンコ舞踊に出会い66年に単身渡西、やがては国立舞踊団でトップスターとして活躍した。80年に日本を活動拠点と定め、以後精力的に創作を発表。フラメンコと日本の伝統舞踊の融合を試みたり、一連のネオ・フラメンコ、近年ではガルシア・ロルカをテーマにした作品などを制作している。今回の「戦火の詩人たち<愛と死のはざまで>」は<愛と平和三部作>の完結編。恒久の平和を願って創作した詩人たちへのオマージュが八景にわたり描かれる。このところ小島の追ってきた主題であり、その切実さが舞台からも伝わってくる。ほとんど祈りといっていいほどに。現在最高の人気を誇る舞姫エヴァ・ジェルバブエナ作品なども振付ける著名なフラメンコ振付家バビエル・ラトーレを招き、ソロから群舞まで隙がなく密度の濃い作舞がなされた。音楽監督のチクエロが全曲を書き下ろし、舞台美術も堀越千秋が制作。小島の志向する総合芸術としての舞踊を展開した。日本フラメンコを芸術舞踊として認知させた第一人者・小島にとっても大いなる到達点であろうが、さらに踊り続け、さらにすぐれた作品を創造していって欲しいものである。

蘭は宝塚歌劇団で活躍後、スペイン舞踊家として活動を始め、『日高川』『明烏』等で日本の伝統芸能とフラメンコの融和を行ってきた。「日本人にしか踊れぬフラメンコ」を追及するいっぽう、モダンダンスの清水典人とデュオを発表するなど現代ダンスの分野にも意欲をみせている。今回の公演では、世阿弥作の謡曲「花筐」に材を得た『花がたみ』において歌舞伎の市川段冶郎と共演。物狂いに落ちぶれながらも皇子への思慕を続けついには再会を果たすという展開であるが、和と洋の表現を巧まず溶け合わせることで普遍的な恋の物語へと昇華させようという狙いが見て取れた。公演前半の「スペイン舞踊組曲」では「美しき青きドナウ」にのせ蘭とその門下、コンテンポラリーダンスのRoussewaltzが舞うパートを前後にはさみ、蘭による「ソレア」、蘭とバレエの中田一史による「約束」を上演。美しく優雅に舞ったRoussewaltz、しなやかなテクニックと高い集中力をもったソロで会場の目を釘付けにした中田は、それぞれ縁あって蘭と知り合ったようだ。若い才能を陽の当る場所に出してあげようとする蘭の姿勢は素晴しいが、多ジャンルの気鋭と触れ合うことで自身の創作にも得るものがあるのだろう。公演を通しスタッフは衣装:ルイザ・スピナテッリ、美術:朝倉摂など超一流揃いでもあった。

日本は本場スペインにつぐフラメンコ大国であり、古くから愛好者は多い。だが、芸術舞踊として評価されるようになるのは、黎明期の河上鈴子らの熱意を経て小島や先輩格の小松原庸子らの奮闘を待たなければならなかった。小島と蘭、立場もキャリアも異なる両者であるがその舞台をみて、21世紀の現在、フラメンコが総合芸術として日本のダンスシーンに着実に根付きつつあるのが手ごたえをもって感じられうれしく思った。