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ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2010-09-26

[][][][]ヤン・ファーブル、貞松・浜田バレエ団、モノクロームサーカス×服部滋樹(graf)、日本舞踊 五耀會、チェルフィッチュ

9/23(木・祝)〜25(土)までの3日間は関西・中国方面に取材出張&観劇に出ていた。改めて触れる機会もあるかもしれないので、ここでは簡単な報告のみ。

23日はまず兵庫・伊丹アイホールにてヤン・ファーブル『Another Sleepy Dusty Delta Day〜またもけだるい灰色のデルタデー』。先週「あいちトリエンナーレ2010」で3日間上演され東京からも多くの関係者やファンが足を運んだようだが、スケジュールの都合上、伊丹で観ることになった。ファーブルが最愛の母と愛する妻へのオマージュとして制作したという女性ソロ・ダンス。踊るのは日本公演に向けて新たにキャスティングされたというアルテミス・スタヴリディだった。ファーブルの信者は満足したのではないか。

NTFI ANOTHER SLEEPY DUSTY DELTA DAY

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ファーブル公演終演後、尼崎のアルカイックホールへ。神戸を拠点に精力的に活動し水準の高い上演に定評ある貞松・浜田バレエ団のアルカイック定期公演第6回目となる『ドン・キホーテ』全幕を観る。キトリ役に期待のホープ廣岡奈美を抜擢。ここのバージョンは、ボリショイ経由のプティパ/ゴルスキー版をニコライ・フョードロフが改訂したもの。士気高くなかなか活気にあふれた舞台を楽しむ。

貞松・浜田バレエ団「ドン・キホーテ」DON QUIXOTE

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24日は朝早くから岡山は宇野港から香川の直島にフェリーで移動、瀬戸内国際芸術祭2010へ。1日しか時間が取れないため直島のイベントや展示しか見られなかったが地中美術館はじめベネッセアートサイトや本村地区を中心に効率よく各スポットを回る。

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お目当てはモノクロームサーカス×服部滋樹「直島劇場」。同島の本村地区をまるごと劇場化するサイトスペシフィックなダンス・パフォーマンスという触れ込みだ。診療所、古民家、桟橋というメイン会場のほか路地等で散発的にさまざまのパフォーマンスが繰り広げられた。島の日常の風景のなかにダンサーたちの身体が溶け合い、新たな光景を生み出していくのを追いかける。日常と非日常の境界が定かでなくなる。歴史ある街並み、海と緑に囲まれた豊かな自然のなかで贅沢な時間に浸りきることができた。

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25日はマチネに大阪・難波にある松竹座にて五耀會の第4回公演を観る。日本舞踊を舞台芸術・鑑賞対象として今の観客に届けたいという想いから結成された日本舞踊界を代表する中堅実力者5人(西川箕乃助、花柳寿楽、花柳基、藤間蘭黄、山村若)による会だ。昨年の5月に同劇場で旗揚げをしており、東京での2回の公演を経ての凱旋となった。『連獅子』『瓢箪鯰(ひょうたんなまず)』『忍夜恋曲者』『七福神船出勝鬨』と古典と創作を織り交ぜた多彩かつ意欲的な構成が光る。葛西聖治(アナウンサー)の解説トークも絶妙で初心者にも優しく日舞の魅力を伝える。メンバーが語るところによると、来年5月に東京公演(2日間)が決定したとのこと。さらなる躍進に期待したい。

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五耀會の終演後は名古屋へ急行して「あいちトリエンナーレ2010」のパフォーミングアーツ部門参加のチェルフィッチュ『私たちは無傷な他人である』。今年、2、3月に行われた『私たちは無傷な他人であるのか?』と大枠では変わらないが練り上げた新作で今回が世界初演となる。シンプルな構成、堂々巡りとも評される独特な展開のなかに「幸福ってなんだろう?」と問いかけ、現在の日本の社会の深層に潜む問題を浮き彫りにする。俳優たちが他の人物の代理として語り・動くといった手法を突き詰める。劇作家・演出家:岡田利規の、歩みを止めない、つねに先を行く創作姿勢が際立っていた。

あいちトリエンナーレ2010パフォミングアーツ作家紹介

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久々に3日間の遠征をしたけれども、できれば26日に名古屋でのバレエ公演を観たかったし、他にも「あいちトリエンナーレ2010」関連のイベントもチェックしたかった。が、時間的・物理的理由から断念した。とはいえ、バレエ、コンテンポラリー、日舞、演劇とバラエティ豊かかつ充実した公演に相次いで接することができ有意義であった。

2010-05-31

[]国立劇場主催公演「舞踊−源平絵巻−」を観て

日本舞踊に関しては、個人的な趣味で観に行くのと、ごく稀にご案内いただくものが中心になる。とはいえ国立劇場の主催公演は都合がつけば足を運ぶようにしている。ことに秋に行われる「舞の会-京阪の座敷舞」は見逃せないものであり、極上の上方地唄舞を存分に堪能できる好企画だ。会場には洋舞の関係者・観客も少なくない。

さて、先日も国立劇場にて興味深い公演が行われた。「舞踊−源平絵巻−」と題された、平安時代末期の源氏と平氏をめぐる争いの中から生まれた様々な人間ドラマを取り上げた作品を並べたものである(5月29日 国立劇場大劇場)。上演されたのは、創作長唄「新・平家物語」より長唄「いつくしま」(出演:橘芳慧ほか)、俚奏楽「俊寛」(出演:西川扇藏、西川箕乃助、藤間蘭黄ほか)、創作長唄「新・平家物語」より長唄「常盤草子」(出演:花柳寿南海、花柳翫一)、舞踊「義経千本桜」より長唄「大物の浦」(出演:花柳壽輔ほか)。いずれの作品にも邦舞界の重鎮・名手が出演するという豪華な顔ぶれだ。

源平の争乱に関しては、歌舞伎や文楽、能楽等でもよく扱われるが、今回の出し物は、昭和・大正に生まれた創作ものである。「いつくしま」では平家のわが世の春の繁栄を煌びやかな女性群舞で描く。「俊寛」は歌舞伎や浄瑠璃でもよく知られたドラマをせりふなしに描くのがみせどころ。「常盤草子」で描かれる運命に翻弄される女性の生き様は普遍的なものだ。「大物の浦」は平家復興に燃える男たちの力強い踊りが見もの。「源平絵巻」と題して、こういった演目を集められるだけのレパートリーの豊富さには感心させられる。最初と最後に見られる群舞に顕著だが、歌舞伎舞踊・古典から発展して創作作品を生み出してきた邦舞の変遷も感じることができた。

ただ、終演後、「歌舞伎舞踊に比べるとやはり地味で華やかさにかける」という声も耳にした。今回に限らず、歌舞伎好きの観客や専門筋にはそういうことを言う人が少なくないようだ。最近はご無沙汰とはいえ私的にも歌舞伎役者の踊る舞踊は大好きだ。華があって、えもいわれぬ高揚感を覚えて帰路に就くことができることが多い。歌舞伎座の歌舞伎公演で観たものや何度も足を運んだ坂東玉三郎の舞踊公演などは個人的にも日舞鑑賞の原点。でも、動きの密度と様式性の高さということに関していえば、邦舞のプロパーの人のほうが優れているケースが多々ある気もするのだが・・・。

今回の「源平絵巻」には日本舞踊界当代随一の名手たちが揃って妙演を披露していた。好みや批評眼は人それぞれでいい。しかし、歌舞伎舞踊派?邦舞派?どちらにも偏らず曇りなき眼で舞踊を見極め楽しんでいくことが日本舞踊を現代に生きる舞台芸術として受容していく視座となるのではないか。あらためてそう実感させられた。

2009-09-16

[]五耀會 東京公演

日本舞踊は、日本のさまざまの古典芸能の集成でありながら、バレエやオペラ同様、舞台上で上演することを目的とした舞台芸術です。しかし、現代において、その魅力が広く人口に膾炙しているといえないのが現状でしょう。そういった状況に風穴を開けるべく結成されたのが五耀會です。西川箕乃助、花柳錦之輔、花柳基、藤間蘭黄、山村若という、名実ともに日本舞踊界の次代を担う舞踊家5人が流派を超えて集いました。3月、大阪での旗揚げ公演を経ての、満を持しての東京公演です。古典名作から創作、新作まで幅広い演目が上演され、日本舞踊の多彩な魅力を伝えていました。

第一部最初は、地唄『葵の上』。座敷舞の伝統をもつ座敷舞であり、謡曲「葵上」をもとにつくられた本行物です。上方舞のニューリーダーである山村若が至芸を披露しました。続く義太夫長唄『浜松風』は、手踊りや立ち回りなど歌舞伎舞踊ならではの手法が全編を彩るもの。出演は藤間蘭黄、西川箕乃助です。蘭黄の女形が艶やかで見物でした。第二部の長唄『一人の乱』は、1985年初演の二世花柳壽楽作品。平安中期、敵対しつつ互いの武勇を尊重しあう源頼義と阿部宗任の友情を描きます。花柳寿楽と花柳基が紋付袴の簡素な衣装姿ながら緻密にドラマを展開しました。第三部は、メンバー総出演の新作『七福神船出勝鬨』(作・演出:植田伸爾)。戦争を続け、大恐慌下にある人間界を憂う七福神が、下界を救うため宝船を漕ぎ出す――レビューのような楽しさを備えつつ、今日の世界状況を織り込んだ、楽しめ、考えさせられる一編でした。

開演前や幕間には、アナウンサーで日本の伝統芸能に造詣深い葛西聖司による解説が行われました。日本舞踊を舞台芸術として身近に感じてほしいという会の趣旨を反映して、みどころを分かりやすくレクチャー。義太夫、長唄や囃子方等も多数出演する、本格的・大規模な会でありながら、チケット代が破格ともいえる値段に抑えられていたのも注目に値します。HPの開設、バレエ公演等でのチラシ配布やプレイガイドへのチケット委託といった営業努力や、大手紙等に事前取材記事が載るなどした広報活動にも並々ならぬ意欲を感じさせました。これは、邦舞のみならず、バレエや現代舞踊等の洋舞の公演のあり方についても示唆に富む挑戦。さらなる展開が注目されます。

(2009年9月14日 国立劇場大劇場)

2007-06-20

[]葛タカ女 舞の会

地唄舞の舞い手のなかでも注目される葛流・葛タカ女の会をみることができた。

地唄舞とは、江戸時代中期から末期にかけて上方で生まれた、伴奏に上方歌を用いる座敷舞・上方舞の一種。大阪の土地に伝播した地歌を伴奏に用いるものである。地歌とは、盲人音楽家が創り歌い継いだ三味線歌。能や歌舞伎、人形浄瑠璃などを源泉としつつ遊里の室内舞踊として発展してきた。演目としては、能楽から材を得た本行物、女舞の、艶やかな舞である艶物、歌舞伎舞踊を上方舞に取り入れた芝居物、軽妙な味のおどけ物である作物などが挙げられる。

今回の会では、タカ女が三曲舞う。最初の『八島』は能の「八島」から採った本行物。西国を行脚する僧が屋島の地で源義経の霊に遇うという話だ。三絃と琴、唄いに合わせた幽玄な雰囲気のなかにも格調のある舞がみもの。二曲目の『蛙』は、唄・三絃に合わせた作物。蛙が蛇に食べられそうになったとき、蛙は蛇に「カラスに食べられた親の敵討ちをするために活かしてください」ととっさに懇願、息子を鳶に殺された蛇は蛙を助け去っていく。口八丁で難を逃れた蛙の滑稽譚。おどけ物ならではのしゃれた味わいを楽しむことができた。そして最後は『雪』。ソセキという尼が若き日芸妓であった頃の恋を述懐する。「花も雪も払えば清き袂かな」という文句で始まる艶物の代表作だ。『雪』といえば、畢生の当たり役としたのが武原はん。彼女に師事した坂東玉三郎のものを以前観て陶然とさせられたが、タカ女の、しっとりとした情感がひたひたと迫る舞もじつに見事である。

本行物、作物、艶物という、地唄舞のなかでも毛色の違った舞をたくみに配した会であり、日舞に疎いものにとっても地唄舞の魅力、奥深さをじっくり味わうことができた。ひとくちに舞踊といっても範囲は広い。会場には洋舞関係者の姿も散見された。さまざまのジャンルの踊り・舞に接することは有益だとあらためて実感させられる会だった。

(2007年6月15日 国立劇場小劇場)