浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



BLTサンドイッチ

dancyotei2016-04-13

4月10日(日)第一食

日曜日。

今朝は、BLTサンドを作ろうと考えた。

考えたのは昨夜からだと思うのだが、
昨夜のいつだか、なぜBLTなのか、は、年のせいであろうか、
よく覚えていない。

寝る前の夢現(ゆめうつつ)の間であったのかもしれない。

BLTサンドイッチのBLTとは
もちろん、ベーコン、レタス、トマトの頭文字。

食パンをトーストして、この三つをはさんだサンドイッチのことである。

前にも書いたことがあると思うのだが、
大学に入ったころであったか、片岡義男の一連の小説を
読み漁ったことがあった。
角川文庫の氏の赤い背表紙の一連のシリーズはすべて読んだのでは
なかろうか。

その後、そして今現在の私の言動、この日記の内容からすれば
かなりの違和感を持たれる方が多かろう。
学生時代の友人達からはむしろ今の方がいったいどうしちゃったの?
といわれることの方が多いのではあるが。

その片岡氏の作品にBLTサンドが出てきていたのだが、
それがとってもカッコよく見え、憧れの対象であった。

片岡義男氏は当時、80年代、大ブレイクしたといっても
よいだろう。

1983年で私がハタチ。
就職をしたのが85年。

『スローなブギにしてくれ』(81年)、『彼のオートバイ、彼女の島』(86年)、
『メイン・テーマ』(84年)は角川から映画化されている。

『スロー』は浅野温子主演、テーマ曲が南佳孝の同名のもの。
『彼の』は大林宣彦監督、原田知世の姉原田貴和子、渡辺典子。
『メイン』は森田義光監督、ご存知、薬師丸ひろ子主演。

彼のオートバイ、彼女の島 (1980年) (角川文庫)  メイン・テーマ1  スローなブギにしてくれ (角川文庫 緑 371-4)

なにか、このラインナップを見ているだけで、
私には“青春”という言葉がピッタリきてしまう。
ドンピシャ。我々の世代といってよろしかろう。

片岡氏の作品群は、アメリカ文化、サーフィン、ハワイ、オートバイ、、、。
そんなもの達が登場し、やっぱりカッコよく見えた。
ハンドルではなくステアリングという、とか、、、。

音楽でいえば、シティー派ポップスというのであろうか、
先の南佳孝しかり、山下達郎あたり。大滝詠一佐野元春杉真理
ナイアガラトライアングル

車は皆、赤いハッチバックのファミリアで、
ダッシュボードに人工芝を張り、ヤシの木のミニチュアを
飾って、、、。

スノボなどはまだなく、スキー。
スクーバダイビングなども話題になり始めていた。
(私などもそれに乗ってしまったわけである。
あれほど行ったスキーはまったくしなくなったが、
ダイビングは依然として続けている。
これも今、お前の言行不一致の一つだという人もある。)

この頃、「ジャパン・アズ・N0.1」という言葉がそろそろ出てきていたのか。
戦後の経済成長のピーク。
数年後のバブル、そしてバブル崩壊もまだまだ夢にも思わぬ頃。

まあ、軽い時代であったのであろう。

私の生まれは昭和38年。
高度経済成長とともに成長した。
まさに、申し子といってよいのかもしれぬ。

ともあれ。

片岡作品、あるいはBLTサンドに戻るが、
なぜ、アメリカであったのであろうか。

このあたりのライフスタイルのブームはおそらく、
雑誌「ポパイ」あたりからなのであろう。

若者がアメリカのライフスタイルに憧れるというのは、
戦後、なん回かあったのであろう。
そのうちの一つというとらえ方があてはまるのかもしれぬ。

いや、その後もヒップホップだののダンスミュージック
(エクザイル的?なもの)もアメリカ発のものであろう。
やはり定期的に日本人の若者文化にはアメリカの影響が
現れるものかもしれぬ。質的には大きく異なっているが。

片岡作品的なアメリカは、そういう意味では
戦後日本人の若者が憧れたアメリカの延長線上にあると
いってよろしかろう。いわく、大きな家、大きな冷蔵庫、
大きな車、エアコン完備。

結局、我が国はジャパン・アズ・N0.1からバブルで、
こうした大きな、豊かなアメリカはには追いついた。

それで、もう追いかけなくてもよくなったと、
文化的にはいえるのであろう。

それに替わって我が国の若者文化だのサブカルチャー
アニメ、ゲーム、、いわゆるオタク文化全盛になっていった。

バブル崩壊後は、経済的には失われた20年などというが
私は文化的にはよかったのではないかと思うのである。

我が国の文化史を見れば、遣唐使をやめた平安時代には
源氏物語枕草子などの宮廷文化が花開いた。
また、積極的な海外との付き合いをやめていた
江戸期には、歌舞伎、浮世絵、その他文芸、味の濃い
成熟した江戸文化が生まれた。

我国の文化は閉じた時に成長する。
これはほぼ法則といってよいだろう。

オタク文化の世界的な影響力の大きさは今さらいうまでも
なかろう。

例えば、片岡義男的なアメリカ文化と今のオタク文化
どちらがよいか?、どちらが好きか?。
まあ、比べるものでもないのかもしれぬ。

結論は明らかであるように思うが、
どっちもはまった私としてはコメントは控えよう。

レタスを洗いトマトを切って、ベーコンを焼く。
食パンをトーストし、マーガリンではなく、ちゃんと
バターを使う。
マスタードとマヨネーズも忘れてはいけない。

コーヒーも入った。

 

 

さあ、食おうか。