浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



とんかつ・目黒・とんき

やっと、通常バージョンに近付いてきた。



9月12日(月)夜



そうだ。



[とんき]に行こう!。



[とんき]というのは目黒にあるとんかつや。
池波正太郎先生行き付けの、池波レシピ。


五反田の私のオフィスからも歩いて10分とかからない。


なんとなく、ささくれ立った心の日には
[とんき]で人間らしい気持を取り戻さねば。


山手線沿いに坂を昇って目黒駅の際を左。
権之助坂を少し降りて、ビルの脇を左に入る。


右側数軒目。
白い暖簾が出て、白木のガラス戸。


開けて入る。


まだ6時台。
店の中で立って待っている人は10人もいないようである。


カウンターの向こうは広い広い調理場だが、
そこに真っ直ぐに立った初老の眼鏡の男性が、いつものように、


ヒレかロースか串かつか」


と謎の問答のような言葉をにこやかな笑顔で発する。


むろん、注文を先に聞くのである。
「ロース。
 それからおみやげで、ロース一つと串かつ一つ」。


ここへせっかくきたのだから、持ち帰りもしよう
ということである。


池波先生はここに限らず、とんかつは大好物で
とんかつやにくると、おみやげを持って帰り、
ご家族のものもあろうが、自らもその日の深夜だったり
翌朝、食べる。
それほどとんかつがお好きであった。


カウンターの後ろ、壁際の椅子に座って待つが、
10分も待たなかった。


出入口側のカウンターに案内される。


ビールをもらう。
キリンの秋味か、サッポロラガーからの選択。
サッポロをもらう。





お通しはピーナッツ。


こちら側に座るのは初めてである。
カウンターの向こう、目の前はちょうど衣付けの場所。
その奥で揚げている。


ここで見るとよく手順がわかる。
金串に刺した肉に、粉をつけて、玉子をくぐらせ、
また粉。
もう一度、玉子。
ほう、ここは玉子二度付けなんだ。
厚めのしっかりした衣になる。


パン粉をつけて、その後ろにある、五つ並んだ油の大きな鍋に
衣付けをした人が投入する。


油も温度違いで鍋を変えて、二度揚げのよう。


鍋は五つだが揚げているのは一人。


そして、油から上げて切って皿にのせるのが一人。
この方も、にこやか。
ご主人か。
かなりの高齢で背中が半分曲がっている。


顔が似ているので、最初に注文を聞く親爺さんは息子さんか。


きた。



出す時に、ビールを呑んでいるので、出したお兄さんが、
ご飯はあとでいいですか?と聞いてくれる。
こんなことは、あたり前だったはずだが、今時
聞いてくれる飲食店というのは、まったく限られている。


はい、と応えると、
いつでも声を掛けて下さいね、と、にっこり。
この感じのよさ、で、ある。



ここのロースは意外に脂がある。


ここはロース1,900円で、東京でも最も高いランクではないが、
肉の旨みも十分。


キャベツがなくなってくると、すぐに、いかがですか、
と聞きにきてくれる。
ここのソース、キャベツにもよく合うのである。


ビールを呑み終り、ご飯を頼む。



豚汁とご飯、お新香に熱いお茶


わたしは、そこまで食べないが、どちらも、お替り可。
腹一杯食べたい若者でも十分に満足できよう。


豚汁がまた、うまい。


独特の風味があるのだが、なんであろうか、これは。
味噌であろうか。


食べ終わる頃、やっぱり見計らって、今度は熱い
おしぼりを持ってきてくれる。
まったくもって行き届いている。


やはり、ここへくると、背筋が伸び、心が洗われる。


お勘定をして、おみやを受け取って、帰る。


おみやはこんな感じ。



大量のキャベツも。




おいしくいただきました。



ご馳走様です。






目黒区下目黒1-1-2
03-3491-9928