2012-05-26
「ドライヴ」
こいつは非常に困った映画ですよ。ぼかあ基本的にどんな映画でも楽しめるし、ここ最近はアンダーグラウンドな映画(え?コレ映画なの?事故なの?みたいなモノ)ばっかり観てたので「映画」そのものに対するハードルもムチャクチャ下がってたんですよ。つか、一カ所でも「!」と思えば褒めテンションですよ。この「ドライヴ」だって安心のクオリティだろう!と思って観に行ったんですけどねえ...。
【あらすじ】※シネマトゥデイより引用
天才的なドライブテクを武器に、昼は映画のカースタント、夜は強盗逃し専門の運転手をしているドライバー(ライアン・ゴズリング)。ドライバーはアイリーン(キャリー・マリガン)にひそかに思いを寄せていたが、彼女には服役中の夫スタンダード(オスカー・アイザック)がいた。ある日、服役から戻ってきたスタンダードがガレージで血まみれで倒れている姿をドライバーが目撃し……。
【予告編】
何が困ったってこの映画、すごぶる評判が良い。ファンが多い映画なんですよ。で、今から書く事なんてぶっちゃけこの映画が大好きな皆さんには不快にさせるような事しか無いんです。ですので「ドライヴ最高!」っていう方、この先読む事をお薦めしません。もしこの先を読んじゃったら不快にさせちゃって申し訳ありません。内容は変えないけど。「結果、何が言いたいんだよ!」くらいの興味を持って頂けたら一気に下の行まで飛ばしてもらえれば幸いです。ただ、みんな褒めてるし、カンヌも褒めてるしで、ボクみたいな何でも無い人間がごにょごにょ書いたところで世間のこの映画に対する「素晴らしい!」という評価は変わりませんよ!あ、ロン・パールマンの顔面は良かったですよ!
と言う事で、以下ネタバレ全開で感想。
びっくりするほどつまらなかったス。
つまらん...というか1シーンも「面白い!」と思ったシーンが無かったんですよ。
とにかくダサい。
「80年代の映画っぽい」なんて評判を耳にしましたが、観た限りだと丁度10年前、2000年代が始まった前後に「おしゃれ〜!」とか「斬新な映像!」と言われていたような映画の雰囲気でした。今観ると「絶妙に古臭くて恥ずかしくなる」感じ。それが良い味とかじゃなくて、ただ古臭いっていう。
【ロン・パールマンが乗ってる車を罠にハメて突き落とそうと、追い込んだ先がピタッと崖の上!】みたいなシーン見せといて「スタイリッシュでござい」と言われましてもね。「いやいや充分ベタですよ。このあと車ごと突き落とすんでしょ?」としか思えないのです。
話そのものは「シェーン」とか「遥かなる山の呼び声」のような昔からある内容なのでつまらないはずが無いんですけどねえ。はっきり伝わったテーマみたいなのは「バカは罪だ」くらいの話ですよ。あの主人公、一人で全部かき回してんだよね。アイツは何で物事を悪い方悪い方に進めようとするんだろう?惚れた女とその旦那の為に銀行強盗をするとか、話を複雑にしてばっかりなんですよ。で、アイツに関わった人たちが全員ヒドい目に遭うっていう。なんかみんな知り合いだったし、話し合いで「手打ち」って事が成立しそうな程度の話なんですけどね。アイツ「自分では手を汚さない」って言う割りに真っ先に人を殺したりしてて、なんかこの人「頭良さそうな雰囲気」なだけで、しゃべってない時間はホントになんも考えてない短絡的な男のように見えました。無口だっていう設定だったけど、一番言っちゃいけないバッドタイミングで嫁さんにダンナとの銀行強盗ばらしたりしてたしね。やっぱバカは罪ですよ。いっぱい人死んじゃったもの。
細かな設定もムチャクチャでした。覆面被ってロン・パールマンを殺しにいくけど、アレって覆面をかぶる意味が無いよね。覆面被るなら洋服も替えるべきじゃないの。つか、あのシーンはむしろ覆面被ってちゃいけない気がしたんですけど。復讐のシーンなんだし。海に突き落とすだけじゃなくてつまようじで眼を刺すとかどうです?......って、つまようじドコ行ったんだよ!?あの設定使わないのかよ!?とかね。いや、そもそもおやっさんとアイツの関係性も弱いぞ。昔から世話になってる感も無いしなあ...。あと奥さんとの恋愛の描き方もなあ...「見つめる」という行為が果たしてアレだけで効果的だったかどうか妖しいもんです。銀行強盗なんかしないでアイツが自分の「好きだ」という気持ちを抑えて、奥さんと子ども、旦那さんもろとも自慢のドライビングテクニックで逃がしてやった方がよっぽど哀しい「失恋映画」としてグッとくるってもんですよ。アイツと奥さん、お互いしゃべらなくてね。逃げてる最中バックミラー越しに目と目が合うとかね。
と、こんなもんはまだ「気になった」レベルの話なんですよ。
「あ、この映画ダメだ」と観ながらにして思っちゃったのは、全てがどっかで観た事あるような映像だったんですよ。
で、一番残念だったのはこの「どっかで観た事あるような映像」ってのが、どっかで観た事ある映像の元ネタよりもクオリティが低かった事です。
例えば冒頭の客を逃がすシーンだったらゲームの「GTA」の方がもっとハラハラするし、ハンマーを使って復讐をするのであれば「オールドボーイ」の前歯バキバキシーン以上の拷問を観たかったんですけどね。カーチェイスも今放送してるリメイクの「ナイトライダー」の方がすげえ事してましたよ。愛するものへの「献身」って事だったら小説の「容疑者Xの献身」とかトッド・ブラウニングの「知られぬ人」の方が面白いし。オシャレ感を言ったらtumblrから流れてくる画像や映像の方が綺麗ですよ。なによりこのストーリーだったら素直に「シェーン」とか「遥かなる山の呼び声」の方が良いと思いました。
こういう「〜の方が良かった。」なんて文は感想としてダメって事はわかってますよ。でもこの映画はどう見てもサンプリング映画なんですもの。どうしたって元ネタとか似たような映画と比べてしまいますよ。後出しなのに元ネタや似たような映画よりも面白くないってどういう事なんですかね。ボクはサンプリング映画を否定するつもりはサラサラ無くて、むしろあらゆる映像表現をやりつくされた現代は サンプリングにこそ表現での活路があると思ってるんですがこの映画はそのセンスがなかったのか、単に技術が無かったのか、若しくはボクと了見が違ったのかとにかく酷かった。悪いサンプリングの映画だと思います。
悪いサンプリング、元ネタよりもクオリティが低いのに、あたかも「斬新!」とか「観た事無い表現だ!」みたいな評価を受けてるこの映画が、昔のアニメ等をパクって使って「新しいアートだよ!」みたいな作品を作り続ける某現代美術家の姿勢とダブってしまい反吐が出ました。「細かいツッコミはあるんだけど本質のココが良い!」の「本質のココ」の部分が今回は見つけられませんでしたよ。車にこだわりがあるでも無し、アクションにこだわりがあるでも無し。この監督、なにを「カッコいい!」と思って撮ってたんだろう...そんな思いでいっぱいです。
「そういう事をしないのがこの監督の演出」とか「みんなが突っ込むところは敢えて描かないんですよ〜」「わざとオフビートで作ってますから」とか言われるのであれば、そういうセンスは嫌いなので、「あ、じゃあクソですね。」としか言えません。この映画をカッコいいと言っている方がいて、一方ボクはカッコ悪い!と思ってしまったので、この映画に関してはもはやこれ以上相容れないと思う。でも一番不思議だなあと思ったのは、みんなだって他にもいっぱいいろんな映画観てるだろうに何でこの映画を「カッコいい!」って言ってるのかがわからんのです。ホントにカッコよかったスかね?コレ。
この映画観終わってぼんやりと「フルメタル・ジャケット」のハートマン軍曹の言葉を思い出しました。
「まるで現代アートのような醜さだ!!」
【おまけ】
Grand Theft Auto IV - Amazing Taxi Driver
Oldboy Tooth Torture Scene
Best of KNIGHT RIDER
2012-04-23
「バトルシップ」
個人的に今一番楽しみにしているイベントで「松江・古澤の勝手に映画宣伝部」というのがありまして。
松江監督と古澤監督が一本の映画についてあーだこーだいうイベントで第一回目から欠かさずお邪魔させてもらっているのですが、2012年に入ってから古澤監督がデカい映画の撮影に入ってしまってお休みになっていたんですよ。で、5月にいよいよ復活!第2シーズンに突入するという事で、今回のお題映画「バトルシップ」をイベント前に予習しておきました。
【あらすじ】※シネマトゥデイより引用
アメリカや日本など、各国の護衛艦がハワイに集まって大規模な軍事演習を敢行することに。アメリカ海軍の新人将校アレックス(テイラー・キッチュ)は、日本の自衛艦の艦長ナガタ(浅野忠信)をライバル視しながら演習に参加。そのさなか、沖合で正体不明の巨大物体が発見される。人類からの友好的な呼びかけに応じて現われたエイリアンの母船だという科学者たちの推測に反し、彼らは突如として謎の武器で攻撃を仕掛けてくる。
【予告編】
以下、サクッと感想。
面白かったっすよ!
さすが老舗ユニバーサルの100周年を記念する映画、基本的には爆音でドカンボコンとする花火大会ですが、笑いあり涙あり、リスペクトありといろんな要素を取り入れた作品となっておりました。やっぱりバイキングは和洋折衷で頂きたいものですね。この店は焼肉と寿司が食べられますよ〜ってな感じですよ。ゲーム(しかもテレビゲームじゃなくてボードゲーム)が原作で大丈夫かいな?とも思ったんですけど、そういや海軍ががっつりと宇宙人と戦う映画ってあんまり憶えてないんですよね。今まで「陸軍」「空軍」から「カウボーイ」「ウィル・スミス」に至るまで、数々の職種が宇宙人と戦ってきましたもの、やっぱり海軍も宇宙人と戦わないと!
この映画、突っ込もうと思えばいくらでも突っ込めるので、ボクはもう暖かい目線で観ましたよ。とはいえ、それでも気になったところがあったので先に何点か。
ぶっちゃけ主人公に可愛げが無いんだよね。感情移入...って程の事じゃなくてなんか愛嬌がないんですよ。あいつバカじゃん?この映画を通していろんな登場人物から「オマエはやればできる子なんだよ!」って言われ続けてんだけど、やればできる感を最後まで感じません。オープニング、あいつのコントからはじまるからねえ...。しかも若干スベッてる感じの。物事のピンチもだいたいあいつから起こるので、あいつが何かしでかす度に「またオマエか!」と突っ込まざるを得ないっていう。意外とこれって重要な事のような気がして。今回の海軍とかNASAって一度も宇宙人と正しく交流してないんだよね。で、アイツがなんかしちゃった勢いで向こうが威嚇してきたっていう話で。結果、思い込みだけで大海戦っていう顛末じゃん!ディスコミニュケーション怖いなあ、って思いました。あとバカを前線に持ってくべきではないな、と。主人公のうっかりで何人も死ぬってなかなか無いですね。判断ミスで第三艦橋を全滅させたキムタクってのがありましたね。艦船映画で恐ろしい符合が今しちゃいましたけど。
あと、国防長官がゴーストバスターズ2でオカマのキュレーター演ってたピーター・マクニコルで大丈夫かよ...とか、
(この人ね)
(ゴーストバスターズ2のオカマ時)
冒頭のコントでピンクパンサー風の曲がかけるのかよ!とかね。
コントの件に関してはそういう演出を今やるっていう監督のハートの強さにビックリですよ。ドリフかよ!
って、ま、いいんですよ。
そんなのも含めて結構楽しんじゃったんで。
海上を碁盤上に見立てて原作通り「バトルシップ」を行うシーンが、実際にボードゲームをやっている時の楽しさをちゃんと再現できているという点は素晴らしい事だと思います。原作をよく忠実に描いている作品だと思いました。ゲームを原作にした映画ってあんまり好きなのが無いんですよ。スクリーンにコントローラーついてないもんで。でもこの映画は乗組員たちと一緒にハラハラしたので充分満足。バトルシップやりたくなりましたもの。原作なめんな!という気持ちにはならなかったですし、特に不快になったという事もありませんでした。良く出来てますよコレ。
せっかくの大作映画が上映されてるんですもの。大きな劇場で観ない手はありません。たとえ一年後にはTSUTAYAの店先で「タイムセール1,000円!」つって売られてそうな映画だとしても、この映画はスクリーンがよく似合います。なるほど確かにユニバーサル100周年記念です。是非映画館で観る事をお薦めしますよ!
【おまけ】
60年代
70年代
80年代
映画「ロボコップ」に、この「バトルシップ」のパロディCMあったね。「戦艦」じゃなくて「核ミサイル」だったけど。
すげえ皮肉!
【おまけ】っていうか最大の謎。
映画観たとき、「あっ!」と思っちゃたんだけど、冒頭のコントってコレなんだよね。
【恐ろしくマヌケな泥棒を収めた防犯カメラの映像】
過去のユニバーサルの名作をオマージュするならともかく、なんで4年も前の動画を金かけて(しかも元ネタよりもつまらなく)完コピしたのか監督のセンスがホントによくわからん!
ちなみに「松江・古澤の勝手に映画宣伝部」はホントに面白いので特にオススメ。
場所は新宿LEFKADA。次回は5/18(金)で、お題映画はコレ「バトルシップ」。
2012-04-18
「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」
縁あって公開初日の一回目の上映で観る事ができました。当日は雨の中スタッフ&キャストの皆さんが渋谷の街をゲリラで宣伝していて、一作目を公開した時から変わらぬその宣伝スタイルに観る前からグッときたりしてました。とは言え、映画の感想はなるべく中立に。ボクが映画の感想を思い入れたっぷりに書くと、後々読み返した際あんまり面白くなく感じるので...。とりあえずいつものスタイルであらすじから。
【あらすじ】※シネマトゥデイより引用
かつて埼玉の弱小ヒップホップ・グループ「SHO-GUNG」の仲間と別れ、上京したマイティ(奥野瑛太)はラップを断ち切ることができず、先輩ヒップホップクルー“極悪鳥”の手伝いをしながらメンバーに入る機会をうかがっていた。しかし、ラッパーになりたいと願いつつも現実は厳しく、ある事件をきっかけにマイティは追われる身となってしまい……。
【予告編】
以下、感想です。
面白かった!
これ一本でも充分楽しめるけど、やっぱり前2作は観ておいた方が良いね。
冒頭、「SR1」のマイティのエピソードから東京の夜景、そしてライブハウスへ。SRシリーズで遂に東京が描かれていると言う事に感慨深いんですが、ライブハウス内のワンカットで一気にいつもの「SR」の世界観に引き込んでくれます。ああ、そうだ。「SR」と言えばワンカットの演出だ。前二作もワンカットの演出が登場人物達の「息苦しさ(≒生き苦しさ)」をよく表現していて絶妙だったんですが、今回は更に登場人物達の「居心地の悪さ」まで表現されているようでした。
この「居心地の悪さ」というものに、前2作には無かったまったく新しいものを感じたんですよ。前2作のイックやトムさん、アユムにはどうしようもないリアルな現実が「壁」として対峙しており、その壁と立ち向かう際に「HIPHOP」を拠りどころにしていた訳ですが、前2作のワンカット演出は「居心地の悪さ」というより「所在の無さ」というのが表現としてあっているような。今作はリアルな社会の暗黒面に堕ちちゃったマイティが活躍する映画。リアルな社会ですら「HIPHOP」が通用しない世界だったのに、更に暗黒面に堕ちちゃってんですもの。基本、カタギのマイティには「居心地が悪い」んですよ。ブロ(ッコリー)畑育ちですし。「HIPHOP」、というか「夢」どころじゃありませんよ。入江悠監督作品の主人公達は必ず「走る」んですが、好きな女の子を追いかけて走ったイックや、メンバーを集める為にバイクで爆走したアユムと違い、マイティは極めてネガティブな理由で走ります。この辺りにもこのシリーズの新しさを感じました。
マイティを演じた奥野瑛太さんの演技は目を見張るものがありました。SHO-GUNGの中では一番若いのに、東京に出てあまりにも社会(の中でもハードコアな世界)の波に揉まれたおかげで野性的な面構え。且つ、あらゆる理不尽に耐えかねて逃げ出してしまうような弱さも滲み出ていてほっておけない感じ。この映画でいろいろな表情を魅せてくれたので将来が非常に楽しみな俳優です。まあ、今後ずっとマイティって呼ばれるでしょうけど!つまりはそれほど素晴らしいキャラクターを生み出したって事で。
今回のマイティのエピソードに異質な重さがあるのでハラハラしてしまうのですが、やはりそこはSR。イックとトムさんのコンビが出てくるとホッとしてしまいます。イックはSR2観た時も思ったんだけどSR1のラストを通過して既に「最強」なのです。ブルース・ブラザーズのように「神の使命」を帯びているようなもの。若しくは「裸の大将」か。いずれにせよ重要人物として話を盛り上げてくれます。あ、トムさんは相変わらずの「安定感」ね。絶妙のタイミングでまさにトムさんらしい台詞を挟んでくるあたり、癒し系ですなあ。マイティの野性味溢れる顔とイック&トムさんの天使みたいな顔の対比が良いですよ。
気になった部分が無いって訳ではないんですけどね。
例えば今回の話は今までと違って重いって感じだけど、それでもまだPOPでしょう。今までの主人公たちがぶちあたった壁、SR1の元AV女優で元同級生の「千夏」や、SR2の「アユムの父」が提示した「いつまでもラップなんかやってないで働かなきゃいけない現実」があまりにもリアルだったもんで、今作の「はっきりと悪い奴ら」ってのがどうにもステレオタイプだなあ...と感じてしまいました。悪役としての極悪鳥や自動車工場の親父、産廃業者のあんちゃんは素晴らしいんですよ!ただ、よりファンタジーに近づいちゃったんじゃないかなあ、と。こうなっちゃうと相手が宇宙人でも成立するんじゃないだろうか。いよいよシリーズとして強度が増した、と良いように解釈するけどね。
とはいえ、やはりこの映画は素晴らしいのです。
クライマックスの長回しのライブシーンが感動的なのです。
入江監督が「これはオレの映画だ!」と、監督、カメラマン、主役のたった3人から始まった「SRサイタマノラッパー」。完成後も丁寧に宣伝活動を行っていった結果と、そもそもの作品の素晴らしさも相まって、多くの観客の「これはオレの映画だ!」といった賛同を集めて「第3作」まで作られるような人気作品となりました。「もっと彼らが観たい。」「続編を!」...とはいえ自主映画に大掛かりな撮影はできません。その為、音楽を扱った映画ですがSR1にもSR2にも多くの観客を必要とするライブシーンはありませんでした。SR3にはライブシーンを。この無理難題に「これはオレの映画だ!」と共鳴した観客たちが、まさにHIPHOPのライブのように「手を上げて」参加し始めたのでした。ある者はボランティアスタッフとして。またある者はエキストラとして。
果たしてクライマックス、10分以上の長回しによる大掛かりなライブシーンは単なる長回しではありません。スタッフと出演者、主人公と脇役、有名俳優と新人、俳優とエキストラ、プロと一般人、というようなそれぞれ立場の違う人たちの全ての境界線が取り払われた瞬間でありました。やはり映画というのは一人で作るようなもんじゃない。「集団芸術」なのだという事を再確認させてくれました。集団芸術はとても難しくてスゴく美しい。このライブシーンは本当に美しいのです。映画に関わる全ての人たちの「情熱」が、一切のブレ無しで観客に向かって真っ直ぐにスクリーンから放射されています。この情熱は「作り手と観客」という境界線すら無くしてしまうような強力なエネルギー。「気迫」と言い換えてもいいかもしれません。サイタマノラッパーシリーズに流れている「無視すんな!」という根本的なテーマを、この映画の存在自体がはっきりと体現していました。10分以上のライブシーンがバシッと決まった瞬間、ボクは涙を止める事ができなかったよ。イックがノリノリで歩いていたあの農道もここまで来たんだなあ。
無名の役者主演で若手の監督が撮った自主映画がこうやって皆に愛され、立派な映画館で満員のお客さんたちに公開されるという事は日本映画にとって本当に本当に幸せな事。同世代やその下の世代の作り手たちの道標に、若しくは羨望の的、もっと言うと仮想敵となっているのは間違いないのだから、まさか今作でこのシリーズを辞めちゃうとか無いよな。毎年作れって事じゃなくてね。このシリーズは作り続ける事に意味があると思う。やっぱりSHO-GUNGの近況はことある毎に観たいですよ。大変だとは思うけど末永く続いて欲しい。なぜなら「SRサイタマノラッパー」は、もはや監督ひとりの映画などでは無く、とっくに「オレたちの映画だ!」となっているのだから。
※本文から漏れた感想
- 俳優陣の演技がどれも素晴らしい!挙げだしたらキリが無いくらい。マイティのエピソード一本で進むと思ってたもんで「極悪鳥」や「征夷大将軍」といった新たな濃いキャラクター達が出てくるのには驚きました。しかもみんな良いキャラしてんのよ!
- 極悪鳥のメンバーを演じた北村昭博さんの「上にいたらホント怖い先輩」感と、産廃業者のあんちゃんを演じたガンビーノ小林さんの「飄々としてんだけど怒らせたら怖い先輩」感がハンパない。
- マイティの連れを演じてた斉藤めぐみさんも良かった。SR1の「千夏」とまた違った、とはいえ確実に存在するであろう女性像。感覚的にはSR2のマミーに近いかも。
- SR1の嫌な先輩KENさんが出てきたり、TECさんが別キャラで出てきたりと、シリーズファンにもちゃんとサービスするあたり、入江監督って丁寧な人だなあと思いました。
- TECさんはあれだね、「仁義なき戦い」の梅宮辰夫みたいな位置になると面白いね。毎回違う役柄で出てくるとか。
- ムチャクチャ怖い極悪鳥がどこのレペゼンかって話ですよ!笑っちゃったよ!ああいうのが入江監督の独特のセンスだよね。
- 東京に出ようが田舎に留まろうがどこ行ったって同じなんだよね。タテの社会。それは結構身近な絶望。その辺りは上手く出来てた。
- Twitterの「SRサイタマノラッパー」アカウントも影の功労者だと思う。映画宣伝アカウントは数あれど、SR2の頃からこの映画が作られていない時期も一度も休まずツイートし続けたというのはファンを確実に増やしたはず。
2012-02-29
「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」
今、AKB48の映画がやってるのね。前作からもう一年たったのかあ、という気分。AKB48に関しては、前作を観たおかげである程度名前は憶えたのですが興味は持続せず。映画に関してもいかんせん前作の出来があまりにもいちげんさん無視だったもんで今回はノーマークだったんですよ。しかしながらtwitter上ではすごぶる評判が良い。あと総選挙で1位を取った前田敦子さんと2位の大島優子さんの受賞時のコメントがボクの中では衝撃的でして。それ思い出してちょっと興味が湧いたので観てきましたよ。
【あらすじ】※シネマトゥデイより引用
2005年、秋元康のプロデュースにより誕生し、今や国民的アイドルの地位を不動のものにした AKB48。西武ドームコンサートで3日間で延べ9万人を動員するスーパーアイドルたちのメンバー内格差や、アイドルとしての葛藤(かっとう)を1年にわたり追い掛ける。カメラがとらえたし烈な舞台裏や、メンバーのインタビューなども収録されている。
【予告編】
以下、AKB48に思い入れの無い人間の書く感想。
いくらAKB48に思い入れが無いとはいえ、総選挙で曲のセンター争いしてるって位は知ってますよ。前回の総選挙の時の2位の大島優子さんと1位の前田敦子さんのコメントは、ファンじゃないボクが聴いても衝撃的でした。
大島優子「1人1票ではないのか。1人で何枚もCDを買って本当に総選挙と言えるのか。いろんなことを言います。ですが、私たちにとって票数は愛です。」
これはまさに「宗教」としてあまりにも美しすぎる「赦し」。投票の為に何枚も買う熱狂的なファンに対しても、「1枚1票」という総選挙のシステムに関してとやかく言う外野に対しても、簡潔かつ素晴らしい見事なアンサーだと思いました。
その後に続いた前田敦子さんのコメントもスゴかった。
前田敦子「私のことが嫌いな方もAKBのことは嫌いにならないでください。」
10万以上も票を集め、AKB48の頂点に立ったエースの言うコメントとはとても思えなかったんですよ。「一番人気がありますよ!」と証明された総選挙でアンチを意識するとは...。いったいこの子にどれだけのモノを背負わせてるんだ!?と思った次第。
AKB48に関しては、去年公開された前作の感想で「AKB48とは【道】である。」と自分なりに解釈したんですよ。「柔道」とか「茶道」とかと一緒。メンバーもファンも「AKB48」という【道】を探究している者の集団。ただし、その道は「冥府魔道」。進めば進むほどその魅力にハマって抜けられなくなる。突き詰めて進んだ道の先には「虚しさ」だけしか残らないかもしれない。今回のこの映画は、そのAKB48という「冥府魔道」を真正面から描いた意欲作となっていました。
とにかく凄まじい映画でした。この映画の評判でよく耳にした「戦争映画」というキーワードが本当にぴったりだと思います。「単なるインタビュー集じゃないか!」とか「時系列よくわかんね!」といった、前作で感じたストレスがほぼ解消されており、AKB48に詳しくない人間が観てもすんなりと「戦場の最前線」を体感できる構成となっております。
2011年と言えばやはり「東日本大震災」で、アイドルでもやはりあの哀しい出来事は黙って通り過ぎる事はできません。この映画はAKB48が被災地に慰問に行くシーンから始まります。津波で流されて何も無くなってしまった街を走るバス。中にはその景色を見ているAKB48のメンバー。あまりに悲惨な景色でメンバー全員絶句。ホントに不謹慎な事書きますが、被災地とアイドルってものスゴく画になるんですよ。
瞬間的に9.11で世界貿易センタービルの瓦礫の前に立ちすくむスパイダーマンを思い出したのですが、全く違うものでしたね。
広場にはAKB48の到着を待つ子供たち。バスが到着し、慰問の会場に向かうAKB48。このシーンで既に涙がボロボロ溢れていました。子供たちが一生懸命AKB48を応援してる画が美しいのです。「アイドル」という「希望」。彼女たちの歌がどれだけの子供たちを励ましたか。こういうシーンが観れただけでも充分満足できました。
しかしながら震災の話などまだまだ序盤中の序盤で、ここからこの作品はAKB48のより壮絶な世界を描いていくのでした。
大きく分けると「震災」と「総選挙」と「西武ドームライブ」、あと新しくできた「チーム4」の話で構成されています。「総選挙」ではメンバーの精神を徹底的に追いつめ、「西武ドームライブ」では灼熱のドームと激しいダンス&歌がメンバーの肉体を破壊していく。まさに地獄。ホントに死人が出てるんじゃないか?ってくらいなんですよ。バックステージは酸欠状態で、メンバーが何人も何人もぶっ倒れていく。観ていてとにかく息苦しい。
そんな過酷な状況が続く中、観客を(というかボクを)救ってくれたのはメンバーの人間関係、チームワークでした。特に高橋みなみさん、前田敦子さん、篠田麻里子さんの3人のバランスの良さ。高橋みなみさんに関してはもう前作で「今一番信頼できるリーダー」だと認識してましたが、今作ではその思いをより強いものにさせてくれましたね。AKB48は高橋みなみさんで持っている。そんな感じ。前田敦子さんは間違いなくスターですよ。過呼吸起こしちゃってフラフラの状態でもエースである以上、舞台に上がらなければならない。特に総選挙でセンターの位置を手に入れた「フライングゲット」はなんとしても歌わなければならない。この一連の葛藤のシーンは今作一番の必見です!前田敦子さんのスター性と高橋みなみさんの信頼できるリーダーシップがワンカットで伝わります。
話は前後しますが、印象に残ったのは総選挙の時の篠田麻里子さんでした。2位になってしまいバックステージで一人黙っていた大島優子さんのそばにスッと側に寄り添った瞬間。前田敦子さんには高橋みなみさんが寄り添ってましたが、ああいう風にAKB48ってのは絶妙なチームワークで活動してるんだなあという事が端的にわかる瞬間でした。
この映画を観る前と観終わってからでは「AKB48」に対する見方もだいぶ変わると思います。TVや雑誌、今ではどこを見ても笑顔のAKB48を見かけますが、あの笑顔の裏にはあそこまで過酷な世界があるのかという事がよくわかります。むしろ神々しさすら感じる。そう言った点では前作よりもより強度が増しており、骨太のアイドル映画となっております。これは間違いなく今観た方が良い!公開してからだいぶ経っちゃってるから急いで観に行く事をお薦めしますよ!
つって、終わらないのが「ドキュメンタリーすけべ」を自称している人間のする事ですよ。
いやホントすごい映像のオンパレードだし、上映中ずっと涙が止まらず、構成も見事なのでオススメなのは間違いなく、ボクもこれは何回も観たい作品だと思ってるけどさ...。「ドキュメンタリー」としてはうーん...という感じ。
「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」
誰が傷つけてるの?っていう話ですよ。
「チーム4」のエピソードを書いてないや。新しくできた「チーム4」。リーダーに選ばれた大場美奈さんが彼氏を映ってるプリクラが流失したかなんかで謹慎処分になるんですよ。ものスゴく根本的な疑問なんだけど、AKB48ってなんで恋愛禁止なんだ?この辺りが「アイドル光と影」の「影」の部分だと思ってるんだけど。「この映画はAKB48の光と影を描いた」っていうけど、それはステージ上と舞台裏、つまり「表と裏」であって別に「光と影」って訳ではないんだよね。
AKB48に対して思い入れ無いなりに傍から眺めてて、率直に思ってたのが「いつかぶっ壊れるんじゃね?」という事。あくまで個人の印象なんだけど、なんであんなに売れても売れても売れても売れても「盤石の人気」感が無いんだろう?AKB48というアイドルは、かつてのアイドルとは違うと思うんですよ。AKB48の世界は「メンバー」と「ファン」だけで完結してないでしょう。「チーム替え」とか「総選挙」とか「じゃんけん」とか、AKB48に負荷をかけてファンの応援をエネルギーに変換する場を提供する「運営側」がいるじゃないですか。この映画は「運営側」をまったく描いていないんだよね。それはもう最初から「存在しないもの」くらいの勢いで。ボクは「この映画は『運営側』を描いていない」という点が、あらゆる疑問の「答え」のような気がしてならんのです。
AKB48という、言ってみれば日本を席巻する一大ムーブメントを描くドキュメンタリーで、それを司る人間たちが一切出てこないという点がものスゴく卑怯だし、AKB48そのものの危うさにも感じました。
西武ドームライブの件、映画内では「最悪の出来」とメンバーたちが悔やんでいたけど、あれってどう見ても運営側の責任でしょう。精神論でメンバーたちが「我々に気合いが入ってなかった」というのはわかるけど、傍から見る限りではそれでは解決できないような構造的な欠陥で「最悪の出来」だった気がするんですよ。でもそういう事を一切描かずに「メンバーたちの不甲斐なさ故の失敗」として描いている。この時点でボクはこの映画の作り手を信用できないんですよ。結局この映画自体も「意図的に作られた世界」じゃないですか。SFですよ、SF。「戦争映画」って表現はすげえ合ってると思うんだけど、あくまで軍隊直属の従軍カメラマンが撮った戦意高揚の「戦争PR映画」なんだよね。つまりは「場を作ってる人間の手の中のお話」。
「ドキュメンタリー」ってのは誰に対してもカメラが等しく向けられてこそ意味があると思っているんですよ。ドキュメンタリーとして一番最悪なのは作り手が手心を加えて身内にカメラの「牙」を向けない事。で、この映画はまんまとその一番最悪な作りをしています。映っている映像はホントにスゴくて、メンバーたちは全力でAKB48に取り組んでいるという事は伝わりました。しかしながら結局のところこの世界観も、ファンを如何により惹き付けられるかという事について周到な(非人道的な)戦略の元に作られており、作り手側(=運営側)にとって「望まれる観客」を具現化する為に用意された映画でしかなかったです。ぼかあ、そのバンドワゴンに乗ってないんだよ。
メンバーもファンも覚悟して「冥府魔道」を進んでるんですよ。運営側も同じようにその道を進んでいるという事がわかれば、なるほどAKB48ってのは盤石だ、って気にもなったんですけどね。あの世界を創っている人間たちが姿を現さないってのは、逆に「AKB48人気がヤバくなったらすぐに我々は手を引く準備があるんだぜ」という事なんじゃないかなあ...と邪推してしまいました。
よくわかってないんだけど「運営側」って触れちゃいけないタブーなんだろうか。いや、そんな事はあるまい。作品内で「チーム4」のメンバーを紹介する時、タキシードのおじさんがいきなり出てきてたぞ。この件に関してはライムスター宇多丸さんがシネマハスラーで「この映画は大人たちを不問にしているけど、それやったら終わる。」とおっしゃってて、あー、AKB48ってのはそれほど脆い世界で成り立っているんだ...って事が逆説的にわかった気分。
メンバーが恋愛禁止なのは何故か?
ライブでメンバーを呼吸困難になるまで動かせるものは何か?
2トップに「私たちにとって、票数は『愛』です。」「私を嫌いでもAKB48を嫌いにならないでください。」と言わせてしまうのは誰か?
少女たちを傷つけてるのは誰か?
「ファン」と「運営側」でしょ。
みんなもうどうせわかってるんでしょ?
わかってる事を描かずにメンバーたちに全てを載せるのは欺瞞。
敢えて言わないのは「ファン」と「運営側」に共犯関係があるからで、それを描いちゃったらこの狂乱の世界はオシマイ、と。
「運営側」にとって「ファン」は大事な顧客だもんね。
この映画で観客側に【「観る」という暴力】まではっきりと伝えてたら...。それはもう日本のドキュメンタリーの超傑作になってたかもね。でも作り手にはそこに興味が無い、というかそこまでの覚悟が無かった。伝えたかったのはただ「AKB48のメンバー超大変」って事だけ。やっぱ不誠実な作り方だと思う。メンバーに対しても不誠実。同じ「仲間」じゃないのかね?
AKB48のメンバーにはホントにただただ幸せになって欲しい。
去年のドキュメンタリーから考えると格段に良くなってた。今年はココまで来た。ボクが観たいと思ってるドキュメンタリーは来年にはちゃんと作られるんじゃないですかね。それくらい期待が持てる作品です。
あと、ホントAKB48のファンじゃなくて良かったかも...。
※本文から漏れた感想
- アイドルって人前に出れば出るほど綺麗になっていくんだね。どんどん洗練されていく感じが去年,今年と観てわかった。
- 「もしドラ」でさんざ聴いた前田敦子さんの「FLOWER」がもう良い曲にしか聴こえないよ!
- 総選挙のバックステージで警察が警備に回ってたのがびっくり。
- ケガで欠場、年齢問題...スポーツ選手か!
- 指原さん北原さんおもしろい。長生きしそう。
- 大変そうだけど、メンバーたちって幸せだよね。ブラック・スワン感。
- ファンと運営側をまったく描いてない!って訳では無くて、例えば過呼吸でヘロヘロになってるメンバーに併せてファンがアンコールしてたり、バックステージではスタッフが常にビニール袋持って過呼吸に備えてたりとかあるんだけど、まあそれくらいがホントに公式映画の限界かと。
※どうしても言いたい感想
- サブタイトルがクソだせえ。「少女たちは傷つきながら、夢を見る。」このサブタイトルのせいで余計な事色々考えた。なんで観客に「こういう風に観てもらいたい!」って事をそのまんまタイトルに付けちゃうかね?
ミッキー・ローク主演「レスラー 〜男は傷つきながら夢を見る〜」ほらダサい。




