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2011-12-01

「スパルタの海」

先日まで渋谷シアターNでやっていた「スパルタの海」が思ってた以上に素晴らしかったのでご紹介。


【あらすじ】渋谷シアターNHPより引用

昭和58年戸塚ヨットスクール事件 校長逮捕により急遽上映中止 !!

伊東四朗熱演! 豪華スタッフキャストで贈る、戸塚ヨットスクール青春物語!

見る者を感動と混乱に突き落とす、日本映画史に残る超問題作

学級崩壊ひきこもり無差別殺人、現代日本がこの映画に見出すものは何だ !?

非行少年や不登校児の更生施設として全国に知れわたる、愛知県美浜市の戸塚ヨットスクール。そこには、家庭や学校では、手に負えなくなった、全国の少年少女たちが、送りこまれ、日夜激しいスパルタヨット訓練に励んでいるのだった。そして今日もまた、一人の少年が、はるばる東京から送りこまれて来た。少年の名は俊平(辻野幸一)。入校初日、校長(伊東四郎)のキックやパンチを食らい、檻の中にぶち込まれても、反抗を全く止めない手強い奴。「まるでウルフやなぁ」校長が思わずつぶやいた。俊平は、もはや " 人 " の心を失った、凶暴凶悪な " 狼(ウルフ) " なのだ。入校前の俊平は、一日中部屋に閉じこもり、更には父親(平田昭彦)を絞め殺す寸前にまで、家庭内暴力が悪化していた。何不自由しない裕福な家庭に育ちながら、何が彼をそこまで追い詰めてしまったのか。嫌々ながらも、訓練をスタートさせた俊平。壮絶なシゴキに耐えられず、裸で逃げ出した夜…。突然の仲間の死…。そして卒業してしまった仲間 " アッコ " (横田ひとみ)への淡い恋心。さまざまな経験を積んだ俊平は、壮大な大海原に浮かぶ小さなヨットの上で、再び " 人 " に戻ることが出来るのだろうか…。

【予告編】

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以下、感想です。



この映画、本当に素晴らしいのですよ。これ観れば一発で「戸塚ヨットスクール」がどういうところかわかりますから。

戸塚校長(一番タフマンだった頃の伊東四朗風呂場でのヌードシーン有り)以下、「愛情溢れすぎる」コーチ陣がグレた若者たちを徹底的にシゴく!

殴る!蹴る!海に突き落とす!!

メシを抜く!牢屋に入れる!生徒のオデコに「100万円」って落書きする!!(注:シンナーで歯がいかれた、その男子の歯の治療費代とのこと)

さすが戸塚ヨットスクール直々に協力してるだけありますよ。極めて「正しく」この学校を描いていると思います。なにせ「フルメタルジャケット」よりも古いですからね。まずそれに驚かされますよ。日本もやればできるじゃん!と純粋に思ってしまいました。


受け入れた生徒には不良だろうが精神病だろうが分け隔てなく平等にシゴきますよ。いちおう念のために受け入れる前に必ず「お子さん、精神病じゃないですか?」ってダイレクトに聴きますから。家庭内で異常に暴れてるような子供たちですから。まず精神病かどうかっていう区別(not差別をしておかないとね。まあ基本的には皆さん「暴れる子供たちは、なにかしらの奇病にかかっている。」っていう認識なんでしょうけどれも。いや、実際そういう描き方してたし。家庭内暴力を振るう子供たちのメイクが押し並べてヤク中みたいな色してんですよね。あれは「大人たちは暴れる子供たちをそういう風に観ている」って事なんでしょう。途中中3の男の子が入学して、この子がまた手がつけられないくらい暴れるんですけど、その子が校長に「自分がこうなったのは親のせいだ!」ってまともな事言うんですよね。その後の戸塚校長の行動が「鉄拳制裁!」っていう...。ホント良いですよ。シンプルで。


今の世の中はシャレが通じない事も多いのでおふざけはこれくらいにして、ちょっと真面目に書きますとホントにシンプルなんですよ、この映画。ど真ん中のカルトムービーですよ。「カルト」が正しく描かれているという点においてど真ん中。まず、「我々は一つも間違っていない」という信条の基に作られてますから、その突き抜けっぷりが実に気持ち良いんですな。ボクなんかは戸塚ヨットスクールのやり方を良しとしていないのですが、それでも、というか、だからこそ戸塚ヨットスクールを正しく描いている」と思ったんですよ。プロパガンダ映画」ってのは、支持している人間が観れば完全に同意して「マンセーマンセー!」と楽しめるんだろうけど、支持してない人間が観るとその世界の異常性や狂気が際立って見えちゃうという事です。


そもそもこの映画って「誰に観せたかったか?」と言えば、実際、家庭内暴力子育てというものが崩壊しているお父さんお母さんたちが対象だったんでしょう。この映画はそういった大人たちに「実際に悪いのはあなたたちなんですよ!」と言う事を気付かせようとしているんだと思います。だからこの映画に出てくるお父さんお母さんたちははっきりと「悪役」として描かれています。だいたいがヒドい大人で世間体や自分たちの都合しか考えていない人物たち。まあ、それぞれに東京大学卒とか「最終学歴」までテロップに出すってのがかなり斬新でしたけど。

ヒーローは戸塚校長、助けるべき対象は生徒。そして悪役は親たち、つまりこの映画を観ているおまえら勧善懲悪ものとして考えると良く出来てるんですよね。そこはやっぱり西河克己監督以下、きちんとした映画が撮れるプロ集団が作っているからなんでしょうね。


あと、この映画が「戸塚ヨットスクールを正しく描いている」と思ってしまう要因として、どこまでも一方的な「大人の目線」で話が進むんですよね。

大人の「子育てに対する悩みや苦しみ」を解放してあげる為の映画な故に、子供にスポットが一切当たらないんですよ。子供には子供なりにグレてしまう理由があると思うんですが、その辺りには特に触れません。なにせシンプルな世界ですから。女の子が落ちているビー玉を見て子供の頃を思い出すシーンがあるんだけど、普通の脚本だったらこのビー玉から「先生と生徒の心の交流」に繋ぎがちなんだけど、この映画はもうそんなヌルい事しませんよ。先生はビー玉に一切気付きません。なんか「教育」というか「意思疎通のできない異星人との交流」がテーマのようでした。「第9地区」や「突入せよ!あさま山荘事件」みたいな映画です。


冒頭に「暴れる子供たちは、なにかしらの奇病にかかっている。」描き方をしているという感じで書いたけど、子供たち自身が立ち直れないのは「気合いが足りないからそうなるんだ!」という考えしかないんだよね。

【全ての原因は精神の弛緩であるという考えの基に「教育」を行う】という方法は極めてシンプルなんだけど、実際問題、世の中自体がそんなに単純な構造で出来てないでしょ。その方法のシンプルさってのは逆に不便だろうと思うんだけどどうなんでしょうね。

しかし、戸塚校長にしてみればそれはそれで「情」。100%善意しか無い。100%の善意って相手が受け止めるかどうかによっても善し悪しが変わってくるんだけど、その辺りに腹芸が一切無いのが戸塚校長の「業」なんだと思いますよ。

こういった一方通行っぷり戸塚ヨットスクールの全てであり、この映画はその部分を忠実に描ききっていると思った次第なのです。


色々書きましたが「正しい」という事に関してはこの映画は太鼓判ものです。

何が「正しい」のかは自分で判断する事です。

でもまあ、この映画観て「暴力は正しく使えば正しい教育になる」だの「当時のマスコミに踊らされたがこの映画を観て体罰正当性を感じた。」とかなんていう感想を書いている人たちもいますからマジで


我々「観客」なんて実にちょろいもんですね。





【おまけ】

漫画家根本敬先生の、あまりに非道すぎて逆に「イイ!」エピソードで「頑張れ」って話が好きなので脳内で恣意的に編集して一席。

文字通り「死者に鞭打つ話」。

完全版は是非、根本敬著「夜間中学」をどうぞ。


大変厳格な家に生まれた息子は、厳格な父によってみっちりと躾けられ、勉学・習い事など全て父の一存の元で自由無く育っていった。反抗期も反抗させず東大に入る為に朝から晩まで徹底的に勉強勉強。息子に失敗は許されなかった。

万全の体制で望んだ入試。まさかの落第。あまりのショックで息子はしばらく立ち直れなかったが、厳格な父は曇り無く威圧感一杯に一言「今年の事は忘れろ。来年を目指して頑張れ。」

翌年,またしても受験に失敗した息子は思いつめ、自室で首を吊って自殺した。享年19。

彼は死をもってようやく「自由」を手に入れた。

その挙句、その挙句にも関わらずにも父は、あの世に旅だった彼の墓標、ぴっかぴかの大理石に大きく「頑張れ」と刻んだとさ。

夜間中学

夜間中学


本文から漏れた感想

  • 率直な感想だと「Tシャツのプリント」にぴったりの映画だなあ...と。
  • 26年越しに公開されたと言う事も良かった。当時、普通に公開してたらこの味は出せないでしょう。
  • 伊東四朗さんってムー一族のあとにこれやってんのね。イメージ全然違うわ。
  • 昨今「ちゃんと女優が脱がない!」と憤っていたのだが、この映画観て考え変わりました。あまりにも必然性のないヌードってエロどころか逆に怖い。なんで?っていう。
  • 80年代ならではのインストサウンドトラックが渋い!
  • 「警察の取調室でカツ丼」っていうまさか都市伝説と思っていたシーンを観てしまった!
  • ボートの乗り方を教えてるのに、生徒たちが全体的に鈍臭いのはそもそも教え方が悪いんじゃねえか?と思ったんだけど、アレってわざと怖がらせてるのね。戸塚ヨットスクールHPでわかりました。
  • 戸塚校長の提言する「脳幹論青少年の問題行動は、脳幹の機能低下により引き起こされる)」ってのは"神軍平等兵"奥崎謙三先生の「血栓溶解法」と同じヴァイブスなのかな、とぼんやり。

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