小島一将「ギブ☆ミー☆ラブ」(『青空スタンバイ』収録)

初出:『月刊少年チャンピオン』(1981年)
単行本:双葉社100てんランドコミックス『青空スタンバイ』(1982年)


 小島一将の『青空スタンバイ』の巻末に掲載されている読切作品。初出は表題作と同じ『月刊少年チャンピオン』の5月号である。『青空スタンバイ』の連載開始が7月号からなので、さしずめその呼び水となった作品と言って良かろう。
 主人公は、月星学園高校の二年生で、テニス部員の見城進(けんじょう・すすむ)。サングラスをかけ、身分を隠してパチンコを打っていた彼が、隣に座った美人の女子大生・田村若葉に打ち方を教えるところから物語は始まる。その後、若葉と意外な形で再開した進は、彼女がかつて高校女子テニスで日本一になった選手であるということを知り、彼女のコーチを受けることになる、という物語。
 正統派のテニス漫画である『青空スタンバイ』と比べると、こちらは「年上の女性」に対する進の恋心と葛藤を描くことに主眼が置かれており、どちらかというと「テニスを題材にした恋愛漫画」といった印象が強い。とはいえ、それでも全体的に少ない頁数の中でテニスの場面はきっちりと描かれており(ただ、202頁のスコアボードには「?」と思わせる表記もある)、その点が評価されて、その後の『青空スタンバイ』の連載へと繋がったのであろう。
 年上の女性への憧れ、という意味では、同時代の『純のスマッシュ』に近い構図のように思えるが、むしろ本作品のヒロインである若葉は、同作品の野上麗子よりもむしろ、『テニスボーイ』の高杉梨絵に近い風貌である(ただ、設定年齢は若葉の方が遥かに上なのだが、梨絵よりも幼く見える)。
 とりあえず、全体的に頁数が少ないので、今一つよく理由や事情が分からないまま終わってしまった感はあるが、あえて進の視点から「分からない部分は分からないまま終わる」という展開も、それはそれでアリなのではないかと。あと、この物語のラスト描写については評価は分かれるかもしれないが、私的には、こういった形できっちり最後まで描かずに終わるというのも、これはこれで結構好きな演出である。