遠藤淑子「今日もいい天気」(『狼には気をつけて』第4巻収録)

狼には気をつけて (4) (花とゆめCOMICS)

狼には気をつけて (4) (花とゆめCOMICS)

初出:『別冊花とゆめ』(2001年)
単行本:白泉社花とゆめコミックス『狼には気をつけて』(2002年)


 『エヴァジェリン姫シリーズ』や『マダムとマスター』などで有名な遠藤淑子の短編作品。単行本としては『狼には気をつけて』の第四巻の巻末に収録(同時収録は他に「チェスナット」)。白泉社の短編作家としての活動が有名であった作者であるが、近年は祥伝社竹書房などでも作品を発表している。
 主人公は、敬愛高校(本文中では「高校」と明記されていないが、「古文の教師」という表現から、おそらく高校だと思われる)の女子テニス部員・倉田みのり。取り壊しが検討されている旧校舎のテレサ館に幽霊が出るという噂があることから、部長が「次の新人戦で負けたら、テレサ館で肝試し」というバツゲームを提案するところから物語は始まる。テニス部内でも実力者と言われていたみのりだが、なぜかその日に限って敗れてしまい、一人で夜の旧校舎に行かねばならなくなる。そして、そこで「不思議な存在」に遭遇してしまうことになる。
 全体通して怪談的な内容なのだが、決してホラーやスプラッタの類いではなく、淡々と「少しだけ超常的な物語」が展開されていく。また、物語中には、みのりの彼氏として、男子テニス部の副部長の八木という人物も登場するのであるが、彼との関係の推移もまた、本作品の核の一つとなっている。ただ、個人的にはちょっとこの描写が薄いせいで、今一つ彼の行動に共感しにくいのが気になる点ではある。
 テニス描写に関しては、肝心の新人戦も一コマで「ゲームセット」→「負けた」と表現されている程度なので、ほぼ皆無に等しい。ただ、上述の八木との関係も含めて、基本的には「テニス部」であることを前提とした物語であることは間違いない。
 絵柄も作風もあっさり系で読みやすい頁構成なのだが、キャラの顔つきがどこか日本人離れしているので、やや違和感を感じる(この単行本の他の作品の登場人物は全て西洋人なのだが、基本的にタッチは同じ)。正直、今の御時世ではあまり一般受けはしない内容だとは思うが、個人的には結構好きな作品。「仏頂面の女の子」は、私にとっては結構重要な萌えツボだったりもするしね。