あつたゆりこ「恋のテニスコート」

初出:『週刊マーガレット』(1975年)
単行本:未発売


 1975年の『週刊マーガレット』11月20日臨時増刊号に掲載された短編作品。作者のあつたゆりこはその後、1980年代の『マーガレット』でホラー系作品を中心に活躍し、『悪霊夢(ナイトメア)』『ひき裂かれた顔』『吸血の町』『超常のテレカ』などの単行本を残すことになる。
 物語は、主人公のつばさ(♀)がファッション雑誌を見ながら、テニス・ブームにあやかってボーイフレンドを獲得しよう、と友達に相談するところから始まる。彼女達の通う学校はテニス王国としても有名で、部長以下、本格的にテニスに打ち込む部員達が揃っている中で、不純な動機で入部したつばさが、ハンサムなコーチに心ときめかせながら、少しずつテニスと向き合っていく過程が描かれる。
 1980年代のホラー漫画家として有名な作者であるが、本作品は以後のそのような作風とは全く無縁なラブコメ漫画であり、当時の他のスポーツ系諸作品と比べても、全体的なノリは非常に軽い(ちなみに、当時のマーガレット本誌では『真っ赤なストローク』が掲載されている)。また、この時代の漫画雑誌の特徴である「柱コメント」(近年ではクロ高スクランなどに見られるアレ)においても、不真面目すぎる主人公へのツッコミが連発されるなど、色々な意味でマーガレットのテニス漫画としては異色な内容である。
 テニスの練習の場面に関しては、正直言ってあまり真面目に描かれているとは言えない描写ではあるが、それはそれで主人公の「やる気のなさ」を表現する手段としては丁度良いのかもしれない。
 画力に関しては、同誌内の他の作品と比べても決して高いとは言えないのだが、絵柄自体は私的には結構好みなので、どちらかといえば私の中では好印象な作品ではある。とはいえ、この内容では単行本化されなかったのも無理はないと思うし、頑張って古本屋を回って探してまで読むことをお勧め出来るほどの内容でもない。ただ、当時のテニスブームの雰囲気を味わうための題材としてなら、一読の価値はあると思う。