鈴木信也『Mr.FULLSWING』

Mr.Fullswing 17 (ジャンプコミックス)

Mr.Fullswing 17 (ジャンプコミックス)

連載:『週刊少年ジャンプ』(2001〜2006年)
単行本:集英社ジャンプコミックス(2001〜2006年) 全24巻


 現在は『Vジャンプ』で『クロストレジャーズ』を連載中の鈴木信也の代表作。『週刊少年ジャンプ』で連載され、2005年には関智一主演でドラマCD化された。作者の他の代表作としては、同誌で連載した『バリハケン』など。
 物語は、埼玉県立十二支高校一年生の猿野天国(あまくに)が、野球部マネージャー・鳥居凪に一目惚れして野球部への入部を決意するところから始まる。その後、激しい部内戦と特訓を経て強打者としての才能を開花させた彼は、様々な異能力を持つ仲間達と甲子園出場を目指して戦うことになる。
 十二支高校の選手達はいずれも(十二支を初めとする)動物の漢字が入った名であり、対戦校も何らかの共通コンセプトに基づいた名を持つ面々が多い。そして県大会三回戦で彼等と対戦する(十二支OBの村中紀洋監督が率いる)「黒撰高校」は新撰組をモチーフとしており、その中で「2番・遊撃手」の緋慈華汰斗肢(本名:泥片歳-ひじかたとし-)という選手が登場する。
 緋慈華汰は名家の出身で、幼少時よりテニスに没頭してきたのだが、実家の没落でテニスを断念して野球に転身し、テニスの技を応用した打法と守備術を駆使して戦う。基本コンセプトは「貧乏貴族」であり、名前の由来である土方歳三の面影は殆ど残っていない(なお、新撰組を題材にした理由は、いわゆる「和月組」時代に『るろ剣』に携わったことが契機らしい)。
 一応、形式的には野球漫画だが、本作品のウリはむしろ作中で挿入されるパロディ的な小ネタであり、正直言って「野球していない時」の方が面白いと思う。一応、作者自身は野球ファンを公言してはいるが、左投げの選手が二塁を守ることに対して(それ自体は「漫画だから」で許される話だとは思うのだが)作中で誰も一切ツッコまないなど、明らかに野球の常識が欠けていると思わざるを得ない描写も多い。それでも、漫画として好きか嫌いかと言われると、私の中では「好きな作品」の部類に入る作品なんだけどね。