吉田まゆみ『エリーDoing!』

エリー DOING!(1) (フレンドKC)

エリー DOING!(1) (フレンドKC)

連載:『週刊少女フレンド』(1981年/1982年)
単行本:講談社フレンドKC(1981年/1982年)


 『ロコモーション』の作者でもある吉田まゆみが、1981年に『週刊少女フレンド』にて描いた作品。翌年には続編の『アンコール エリーDoing』も発表されている。近年の作者の代表作としては、山田太一原作のドラマ『岸辺のアルバム』のコミカライズ版(ビーラブKC)がある。
 主人公は、ロサンゼルスに留学中の女子高生・絵理子(通称:エリー)。アメリカの青春映画に憧れて、金髪碧眼の彼氏を作ることを目指している彼女が、バスケ部のビル・フレミング、テニス部のビンセント・メイヤー(通称:ビンス)などの美男子達と交流しつつ、あくまで自分が一年後に日本へ帰る身であるが故に「本気になってはだめ」と葛藤する過程を描いた物語。
 ビンスのモデルは、おそらく当時の人気選手(後に俳優となった)ヴィンス・ヴァン=パタンだろう。そして彼のライバルとして、ジョン・マッケンローそっくりのジョン・マッケントニーという少年も登場する。実力ではジョンの方が上なのに、女の子はビンスにばかり群がるという辺りは、この時代のテニスを語る上では、もはや一種の鉄板ネタと言えよう。
 エリー自身も日本ではテニス部に所属していたという設定であり、途中で彼女もテニスに興じる場面が若干描かれるが、全編通してテニス自体は断片的な位置付けでしかない。ちなみに、1巻の表紙ではなぜかビルがラケットを持っているのだが……、おそらくこれは雑誌連載の初期の頃に使われた表紙絵で、微妙に設定が錯綜していたのではないかと推測される。
 当時はまだ「1ドル=200円台」で、海外留学の敷居が高かった時代だからこそ、「若者達が自由に青春を謳歌出来る国」としてのアメリカは、閉塞した日本の学校に通う少女達にとっての理想郷だったのだろう。海外がより身近に感じられるようになった今では抱くことの出来ない、当時の少女達の夢と憧憬を疑似体験したい人達には、強くお勧めしたい作品である。