[フレンド]清野静流『純愛特攻隊長!』

純愛特攻隊長!(1) (講談社コミックス別冊フレンド)

純愛特攻隊長!(1) (講談社コミックス別冊フレンド)

連載:『別冊少女フレンド』(2004〜2011)
単行本:講談社フレンドKC(2005〜2011) 全13巻+全4巻


 現在は別フレで『ラブカツ!』を連載中の清野静流(せいの・しずる)が同作品の前に同誌で描いていた作品。形式的には『純愛特攻隊長!』全13巻と『純愛特攻隊長!本気(マジ)』全4巻に分かれているが、物語的には特に明確な区切りがある訳ではないので、本記事でまとめて一作品として取り扱う。
 主人公は、高校一年生の遊佐千笑(ゆさ・ちえみ)。入学早々、暴力事件を連発して退学寸前の彼女が、担任の教師に、学校一の問題児・平田明史(あきふみ)の更正を命じられる場面から物語は始まる。その直後、平田の喧嘩の現場に遭遇した彼女は、退学撤回のためにその喧嘩に介入するのだが、そこで平田は彼女に一目惚れし、やがて二人は付き合うことになる。
 元々は作者の別作品『POWER!』の終盤に登場したゲストキャラである平田の過去話として描かれた読切で、そこから連載へと発展した。そのため、舞台は1994年頃に設定されており、携帯電話などが登場しない。
 また、二人は早々に付き合うことになるものの、物語の途中で何度も二人の間に割って入ろうとする者達も登場し、その大半が精神的に病んでる者達であるため(一部例外アリ)、重苦しい展開になりがちなのだが、読者の大半は(上記のコンセプトの都合上)「二人が最終的に結婚する」ということは分かっているため、最終的には鬱展開にはならない、と信じて読み進めることが出来る。これは、スピンオフ作品ならではの楽しみ方と言えよう。
 一方で、物語の途中からは、千笑の友人で毒舌キャラの小牧由香里が、意外な人物に恋心を抱くようになり、幸せな未来が約束されている主人公カップルの物語とはまた違った「先の読めない恋物語」も楽しむことが出来る。
 ちなみに、千笑はテニス部という設定であり、これは「暴力女」と呼ばれる彼女のギャップ演出のための設定なのだが、本編ではテニス部の場面は背景程度にしか描かれていない。一度くらいは、試合も見たかったな。