しあわせの理由 / グレッグ・イーガン

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

順列都市を読んで以来、100%内容を理解できたとは言えないものの、攻殻機動隊を思わせるサイバーパンクSFちっくな作風が気に入ったグレッグ・イーガンの短編集「しあわせの理由」を読んでみた。
瀕死の事故で治療不可能な人の脳を女性の胎内で保存(育成?)しクローンに移植する話、複数異性との性交渉がトリガーになる致死性ウイルスの話など、奇想天外なSF話が多いものの、その根底には現代社会が抱える問題や課題がテーマとしてあるようで、読後にいろいろ考えさせられる作品が多く興味深い。
中でも、これまた難解な記述が多い「ボーダー・ガード」は、攻殻で言うところの「ゴーストとはいったい何なんだろう?」なんていう答えが出るわけのない疑問で頭がいっぱいになる実に興味深い内容だった。
難解というのは、この短編に登場する量子サッカーなるスポーツの描写およびルール説明なんだけど、いったいどんなゲームなのか、正直ほとんど理解できなかった。量子というだけあって、現代サッカーのような物理的なものでなく、プレイヤー同士が、なんらかのエネルギー(データ?)をボールに見立て、精神の力でもって操り得点を競うゲーム?とか考えたんだけど、果たしてグレッグ・イーガンの頭の中には、どんな光景が創造されていたのやら、まったく見当がつかない*1
「精神の力でもって操り得点を競う」なんて言うと、「超能力」とか「霊現象」とか、これまた設定に無理がありそうだなぁと思うかもしれないけど、実はこの辺が、この短編が持つ空想物語で済ませられないテーマへと導くためのギミックであったりして、前述のゴースト云々にも関わってくる部分なんですね。って、興味のない人には、まったく意味が伝わらなさそうな文章で恐縮ですが。
人が人たるゆえんであるゴーストは、ほんとうに存在するのだろうか。そして、ゴーストは、生身の体以外に宿ることも可能なんだろうか*2。そんな問いが好きな人に、ぜひおすすめの1冊。

8/4追記:量子サッカーについてとか、追加しました。
量子サッカー - つれづれなる日々にそこはかとなく

*1:どなたか有名なSF映画監督さんとか、映画でもって映像化してくれないでしょうか。映像で見たからと言って理解し易くなるとも思えないけど

*2:素子さんは、おもいきり宿っていそうですが