蒼龍のタワゴト-評論、哲学、認知科学- このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-02-10

認知科学の倫理的利用?

個人的な諸事情で最近はブログを書くにはなれないのだが、せめてリンクぐらいはしてみる。すでに出版されている本だが、ネットで解説文を見つけたのでつないでおきます。というか、いまさらこれを見つけたのだから自分の怠慢もいいところだな。

スタノビッチ「心は遺伝子の論理で決まるのか」解説

認知科学は純粋な実証的な成果としては中立的なので、それ自体はどんなことにも使える。脳科学ブームや進化心理学ブームの科学的に怪しいところを除いても、実はこの問題は残る。最近は行動経済学に関してきな臭さを感じることもある(金融危機で投資ブームは去ったはずでは…)。認知科学的な成果は認識や行動の癖を教えてはくれるが、科学である限りあくまでそれだけである。その成果をどのように用いるかという問題は全くの別問題である。また、こういう癖があるという教訓を知ったからといってその誤りを防げるわけではないことは(二重過程説だけでなく)学習の転移が難しいことからも導けうる。自分自身の認識問題は二の次にして他人を騙す(惑わす)ことばかりに目が向けられて認知科学的な成果が見られるとしたら、少なくとも私はそんな人ばかりの社会に住みたいとは思わない。

行動から性格を推測する

某所でこのような内容の書き込みを見た。こいつはコメント欄でのやり取りを続けなかったので気が短いだから本を丁寧に読めない。この推論は妥当だろうか。この人が直接に観察した行動は「コメント欄でのやり取りを続けなかったこと」である、そのことから相手の性格を「気が短い」と判定し「本を丁寧に読めない」という行動を予測した。しかし考えてほしい。「気が短い」という特性を抜きにすると、「コメント欄でのやり取りを続けないこと」と「本を丁寧に読めないこと」が同じ人に当てはまると考えることが妥当なのだろうか。こうも考えられないだろうか。こいつはコメント欄でのやり取りを続けなかったのでネット中毒ではない。そこから、ネット中毒でないのだから本を丁寧に読めない、と推論するのはそれほど妥当には思えない。つまり、観察されたある行動からどんな性格を想定するかで予測される行動はまったく変わってしまう。この辺りの話は社会心理学における社会的認知とも関わりがあるのだがここではそれに触れない。

教訓:少ない情報から任意の結論を導き出すのは簡単である

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