蒼龍のタワゴト-評論、哲学、認知科学- このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-03-06

トゥービー&コスミデスによる進化心理学の説明(要約版)

近年トゥービー&コスミデスが提示した進化心理学の理論的内容は次のようなものだ

  1. 脳とは自然淘汰によってデザインされた環境から情報を抽出するするコンピュータである
  2. 個々の人間の行動はこの進化したコンピューターによって環境から抽出した情報に応じて生じる。行動を理解するには、行動を生んだ認知的プログラムを明瞭にする必要がある
  3. 人の脳の認知的プログラムは適応物である。これらが存在するのは、祖先が生き残って繁殖することができるような行動を生み出すためである。
  4. 人の脳の認知的プログラムは今では適応ではないかもしれない。これらは祖先の環境において適応的だった
  5. 自然淘汰によって生じたのが、脳は多くの異なる特殊な用途のプログラムから成り立っており単一の一般的な構造物ではないことである
  6. 進化した計算する構造物である私たちの脳を描き出すことは文化的社会的現象をきちんと理解するのに役立つ

Evolutionary Psychology (Stanford Encyclopedia of Philosophy)より

これはTooby, J. & Cosmides, L. (2005)[PDFではp.16-8]からの要約になっていますが、元の論文PDFへのリンクは英語のWikipediaのEvolutionary psychologyの項目にあります(ちなみにWikipediaのこの項目の説明は盛り沢山過ぎて要領が悪い)。ここに翻訳したのは、各項目の要約になっているものです。

はっきりとは書かれていませんが、これは基本的に人間という生物種(男女差含む)を単位にした話です(でなければ「多くの異なる特殊な用途のプログラム」という言葉が理解できない。これは所謂モジュール*1のことだ)。なので結果として、適応した祖先の環境とは人の種が形成された過去の野生環境を想定するのが一般的である(だから乳分解酵素ペストに強い体質と比較されても困る)。生得経験問題を考えたら人間という種(男女差含む)を単位にして考察せざるをえない。個人差は生得か経験かの見分けがあまりに困難なのであまり検討対象にはしないのが妥当である。社会生物学的な考え方を取り入れるのは構わないけれど、できればもっと慎重に検討してほしいと思うことも多い。一応指摘しておくと、ネオ・ダーウィズムは種をうまく扱えないのでモジュール論との相性は必ずしも良い訳ではない。

*1モジュールとは能力のひとまとまりの単位、言語モジュールはその代表とされる。ただし言語能力がモジュールかどうかには議論がある

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