蒼龍のタワゴト-評論、哲学、認知科学- このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-03-21

2009年のジャン-ニコ賞はElizabeth Spelke

今年のジャン-ニコ賞が決まったようです(受賞講義そのものはまだ先ですが)。Elizabeth Spelkeは知覚や発達を研究する心理学者です。調べてみると、最近では性差の話題で有名なようです。科学能力*1の男女差について心理学者ピンカーと論争をしたこともあるようです(下記リンク参照)。この論争はハーバート大学学長のLawrence Summersの発言(女に科学なんてできねぇ!みたいなの)がきっかけで起こった論争だ。

ネット上にこの論争の記録があるのですが、私は面倒なのでスライドだけを見たのですが、それだけでも大体の内容は分かりましたので紹介します。ピンカーは様々な証拠から男女の科学能力の差は社会化や偏見だけで説明するのは無理があると言っています。ピンカーは男女には生まれたときから差があるという証拠(実験や調査)を示した。ひとつは人の興味には生まれつき性差があるという話で、赤ん坊の段階から男は物に女は人に興味を示す傾向があるとしています。もうひとつは、数学や科学に関連した能力には性差があるという話で、心の中でイメージを回転させる能力の性差などを例に挙げています。これに対してSpelkeは物や数に関連した能力に関して性差がないという証拠があることを挙げ、社会的な力が働いているを示した。例えばSpelkeは数える能力や空間定位の能力に性差がないことを挙げている。また、親の子供に対する評価や学者に対する評価に関する実験(社会的認知の実験)から、評価には相手の性によって偏りがあることを示した。ちなみに、心理学には女性の研究者が多いというのは余談だが、それってどっちの見解を支持した証拠だがよく考えると分からないじゃねぇか!

それにしても、去年に引き続き進化心理学的な主張(生得説)に批判的な研究者が受賞したところが面白い(ちなみにそれ以前には逆に進化心理学に好意的な研究者の受賞が目立っていた)。まぁいろいろ反省が働いているんだろうねぇ、と私は邪推を働かせてしまうが、しかし(性差問題以外の貢献を考慮しても)受賞にふさわしい研究者であることに変わりはない。

  • 参照リンク

Institut | Nicod
http://www.institutnicod.org/index.html

Elizabeth S. Spelke
http://www.wjh.harvard.edu/~lds/index.html?spelke.html

紹介したのは→Edge: THE SCIENCE OF GENDER AND SCIENCE[PINKER VS. SPELKE]
http://www.edge.org/3rd_culture/debate05/debate05_index.html

ハーバード大学の Larry Summers 学長の発言について
http://freshu.ist.hokudai.ac.jp/blog/?p=41

心の性差の始まりを考える
http://blog.livedoor.jp/gccpu/archives/45372.html

身体化とか何とか

UTCPワークショップ "Philosophy of Perception: Being in the World"
http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/2009/03/utcp-workshop-philosophy-of-pe/

この20年近くの間に、知覚の哲学心の哲学、そして認知科学哲学の分野では、古典的な認知主義と内在主義のパラダイムに代わる心と認知に関する考え方がさまざまに提出されてきた。

アフォーダンスとかエナクティブとか日本じゃ好まれるんだよね(のはず)。その割に日本ではめぼしい成果が表に出てるのを見ることはあまりない、というか翻訳自体が少ない(本当に好きなのか?)。そういえば、21世紀に入ってからはAlva Noëによる知覚の哲学が話題になったり、最近だと生命との関連を問うているのを見ることも多い気がする。

世界的に見ても、多くの哲学科で認知科学との共同研究センターを設けることがここ20年近くブームのように行われてきているが、実質的内容を持つ研究がなされることはそれほど容易ではないようである。日本では残念ながらほとんどそうした研究のあり方が見られないままいま現在に至っている。

あははは、確かにそうだ。哲学が科学に貢献しようとか科学的手法を哲学にも持ち込もうとする試みでうまくいっているのをほとんど見たことがない。こう言っちゃ悪いけど、哲学者が本職の科学者にかなうわけない。こっちは認知科学の基礎について悩んでいるっていうのに、哲学の自然化のように認知科学哲学の基礎になりえるみたいな考えが私にはさっぱり分からない

Listmania! Extend-Embed Mind/Knowledge
http://www.amazon.com/Extend-Embed-Mind-Knowledge/lm/RP6XZ40TGHHJH

おまけで、アメリカアマゾンから関連書籍リスト「延長された-身体化された心/知」。よくできたリストだけどヴァレラらの本がないなぁ。それにしても、何でこの辺りの本ってなかなか訳されれないんだろう(好きな人は日本に多そうなのに…)。

*1:初めは理系能力と書いたが、誤解されそうなので書き換えた

認知科学リンク

生成文法
Noam Chomsky
Ray Jackendoff

認知言語学
George Lakoff
Gilles Fauconnier
Ronald W. Langacker
Len Talmy
Eve Sweetser
Adele Goldberg
Paul Kay

哲学
William Bechtel
Ned Block
David Chalmers
Paul Churchland
Andy Clark
Daniel Dennett
Hubert Dreyfus
Jerry Fodor
Ruth Millikan
Thomas Nagel
Hilary Putnam
John Searle
Wilfrid Sellars
Stephen Stich
Paul Thagard
Evan Thompson
Mark Turner
Tim van Gelder

計算機科学
Allen Newell
Marvin Minsky
Seymour Papert
Terry Winograd
Rodney Brooks

神経科学
V. S. Ramachandran
Joseph E. LeDoux
Oliver Sacks
Francisco Varela
Alexander Luria

人類学
Dan Sperber
Scott Atran
Roy D'Andrade
Edwin Hutchins
Lucy Suchman
Etienne Wenger

心理学
John R. Anderson
Bernard J. Baars
Paul Bloom
Richard Byrne
Michael Cole
Jeff Elman
Howard Gardner
Dedre Gentner
James Gibson
Thomas D. Gilovich
Richard Gregory
Keith Holyoak
Nicholas Humphrey
Philip Johnson-Laird
S. M. Kosslyn
Elizabeth Loftus
James L. McClelland
Andrew Meltzoff
George A. Miller
R. E. Nisbett
Don Norman
Jean Piaget
Steven Pinker
Michael Posner
Zenon Pylyshyn
Barbara Rogoff
Eleanor Rosch
Daniel Schacter
Herbert A. Simon
Linda B. Smith
Michael Tomasello
Anne Treisman
Michael Turvey
Lev Vygotsky

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心の哲学(分析哲学)の古典
認知心理学を理論的に知る

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マニア向け記事
認知科学年表(増補版):英語原典版つき
心の哲学に関する説明(改訂版)
19世紀心理学前史(年表)

随時、改良による書き換えを行なう記事

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