「涼宮ハルヒ」シリーズ 谷川流

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)
涼宮ハルヒの退屈 (角川スニーカー文庫)
涼宮ハルヒの溜息 (角川スニーカー文庫)
涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

「ただの人間には興味ありません。
この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」。
入学早々、ぶっ飛んだ挨拶をかましてくれた涼宮ハルヒ
そんなSF小説じゃあるまいし…と誰でも思うよな。俺も思ったよ。
だけどハルヒは心の底から真剣だったんだ。
それに気づいたときには俺の日常は、もうすでに超常になっていた―。
第8回スニーカー大賞大賞受賞作。


いやぁ,正直ちょっとなめてました。
アニメが評判になる前から売れていたのは知っていましたが,
そうは言ってもこの「涼宮ハルヒ」シリーズは
アニメの評価あってこそなんだろうと思っていました。
しかし,実際に読んでみてると本当に面白い!
1巻の「涼宮ハルヒの憂鬱」から4巻の「涼宮ハルヒの消失」までが
とりあえず一つの続き物らしいということを知っていたので,
今回は「消失」まで読んでみることにしました。
実際,これは「消失」でシリーズ終わりでいいよねw
完璧に着地してますから。


最初に文句から書きますと,語り手のキョン(本名不明)がもてすぎて,
そういう描写はさすがにどうも受け付けない…(特に1巻の「憂鬱」)。
朝比奈みくるが極端に萌キャラとして書かれているのは
たぶんギャグなんだろうと思って見られるのですが,
キョンのもてっぷりについてはちょっとサービス(?)過剰かなぁと思いました。
また,3作目の「涼宮ハルヒの退屈」に掲載されている短編「涼宮ハルヒの退屈」のような,
勢いだけのどたばたコメディーにはさすがについていけません。
…とまぁ,この辺は私がおっちゃんなのでついていけない,というだけの話ですね。
メインターゲットの読者層を考えれば,この作品の欠点とは言えない部分です。


で,何が良かったかと聞かれれば,
4作目の「涼宮ハルヒの消失」としかいいようがありません!
読んだ方にしかわからないような感想になりそうですが,
「消失」は,涼宮ハルヒやSOS団のメンバー(宇宙人,未来人,超能力者)といった
わけのわからない人物達に「巻き込まれる」形で非現実的な日常を送っていたキョンが,
その非現実的日常を「選択」する話です。
「巻き込まれ型」の傍観者から「当事者」の立場になるというか。。。


どこか突き放した口調で物語を語り(この小説は地の文が全部キョンの語り),
自分の本音の部分はあまり出すことのないキョンが,
「消失」ではえらく動揺するし,自分の本音のについても晒します。
1巻の「憂鬱」の冒頭で,子供の頃から宇宙人や未来人や幽霊や…がふらりと出てくることを
どこかで望んでいたとキョンは語っていますが,
そういった感情って,3巻までほとんど出てきてないんですよね。
もちろん,SOS団が巻き込まれるさまざまな事件を楽しんでいる節はあるのですが,
積極的に受け入れると言うよりは,なんとなく「巻き込まれる」なんです。
そんなキョンが「非現実的な今までの日常」と「現実的な別の世界」を選択する際に,
悩みながら自分の本音をさらけ出す「一人語り」の部分は,
本音を隠し,どこか突き放した今までの「一人語り」とのギャップもあって,
妙に熱く,心に迫ってくるものがあります。
そして,そんな一人語りから結論を導き出し,
本来望んでいた「非現実的な日常」を選択するシーンは,
その答えが正しいかどうかは別として,
ひとつの決断を下すシーンとしては素晴らしいのではないかと思いました。


…やっぱり,読んでいない人が見たら何の感想がよくわかないですねw
ちなみに「消失」はSFのネタとしても,私なんかは十分に満足できるものでした。
今まで張ってきた伏線や時間トリックを使いつつ物語が進むので,
退屈することなく読めると思います。
あとはこの作品では「長門萌え」で有名らしいんですが,
1〜3巻までの長門というキャラクターがあるだけに,
長門もいろいろと感じていることがあったんだなぁというのが出ていて,
キャラクターの使い方もうまくいっていると思います。


というわけで,結論としてはとにかく面白いと言うことです。
確かにキャラクターなども含めて漫画的で,そういった小説がだめな人は読めないとは思います。
また,私のようにキョンのもてっぷりやらにちょっと拒否反応が出る人もいるかと思います。
でも,全然大丈夫な人や,何とか我慢できる人にはお薦めの作品です。
…って,いまさらこんな有名な作品を薦めても仕方ないんですがw