アニメ「とらドラ!」21話の感想

21話「どうしたって」は作中でとても重要なお話ですが、ここでは「罪悪感」発言の回答編としての21話について書いてみたいと思います。例によってネタバレしかありませんので、未見の方は注意。


16話のラストで亜美が実乃梨に言った「罪悪感はなくなった?」という発言。正直、私はすぐには意味が分かりませんでした。実乃梨の竜児に対する気持ちは、意識はしていてもまだ微妙なところにあると思っていたので。しかし、この発言の意味を無理なく説明するためには、大河に対する「罪悪感」が、大河が北村の写真を持っているのを見て「なくなった」と考えるしかありません。そうすると、実乃梨の竜児への気持ちははっきりと「好き」までいっていて、そのことで今まで大河に対して罪悪感を感じていたということになります。また、竜児に好意を持たれていることに罪悪感を感じていた、という部分もあるのでしょう。


さて、「罪悪感」の意味がわかったところで次に謎なのが、亜美がこのような発言をした意図です。もともと亜美は全体の流れを俯瞰して、先を読んで行動するタイプのキャラクターです。そのため、この発言にも何がしかの意図があるはずなのですが、これについてはさっぱり分かりませんでした。そして、17話から始まるクリスマスの話でもなかなか明らかにされません。
ちなみに、何がしかの理由で亜美が大河を応援するような姿勢を見せているのは確かで、罪悪感発言もその一環のはず、という推測はできます。ただそれにしても、この発言以降の亜美の実乃梨に対するあたり方は理不尽なほどに強く、「大河を応援する」ための手段としてやはり適切だとは思えませんでした。


そんなわけで、「罪悪感」発言の意図が謎のまま話が進み、それが明かされるのがこの21話です。実乃梨との喧嘩のあと、雪山を作りながら竜児に「なぜ嫌味(罪悪感の件)を言ったのか自分でも分かっていない」と吐露するのです!その後、「正面から相手してくれない実乃梨がムカついた」とも。亜美とキャラクターの性格上、その行動には何がしかの意図があると思っていたのに、自分でも自分の行動の意味がわかっておらず、ただ単に実乃梨にムカついていただけだったのです!そしておそらく、「ムカつく」の裏には、竜児に好意を持たれている実乃梨に対する嫉妬心があるのでしょう(原作を読むと「嫉妬」という単語も出てきていました)。


「発言の意図が何か?」と考えていたら意図などなかったという、いい意味で期待を裏切られて、驚かされた名シーンでした。また、竜児に忠告しながら、結局亜美自身も「自分のことが分からない」人間であり、4人の関係を俯瞰しているようでも、皆と同じように一人の高校生でしかないことがわかりました。亜美の人間くさいところが見えたことにより、彼女は今まで以上に魅力的なキャラクターになったと思いますねぇ。


さて、この「罪悪感」発言ですが、実は原作小説では発言の直後に「バカなことを言った。言わなければよかった」と亜美が後悔するシーンがあります。この場面で、亜美の発言に意図などなかったことが明かされているのです(実乃梨に対する嫉妬もあったことにも触れられています)。しかし、アニメでは亜美が後悔するシーンをあえて飛ばすことで、発言の意図がどこにあったのかを隠しました。そして、「発言の意図は何か?」と疑問を持たせ続けたことで、亜美が竜児に気持ちを吐露するシーンがとても印象的になっています。本当に素晴らしい演出ですねぇ。原作を読んでみると、アニメ版の完成度の高さがよりわかってきます。


…と、アニメで印象的だった話について書いていきました。もちろん、21話で言えば大河の「どうしたって…」の発言だとか、24話での橋の上(と下)での告白シーンだとか、いろいろと印象的なシーンはありましたが、それらについては「素晴らしかった」くらいしか書けないので省略w 次は原作を読んだ感想をつらつらと書いてみたいと思います。