2012年に読んだ作品、ベスト20 +α

読んだ本の数:361(1日平均0.99)|読んだページ数:117025(1日平均319)
 ということで、今年は結構本を読めたかな。

 読書メーターでおすすめランキングが作れてそれも、ちょうど20作で!ということなので作ってみたのだが、どうもブログに貼り付けられるという代物でもなさそうだ。ほとんど自分用みたいなものなのかねえ。そっちでは便宜的にランキングをつけているが、あくまで便宜的なものなので気にしないでね。といっても、読書メーターにいって見てみるという人もいないと思うけどね。本来本17+WEB読み物等で3つということだったが、読書メーターで作るときに20個いれたので、その3つも追加して結果20+αになった。どれを追加したかは内緒。読書メーターの僕の「2012年おすすめランキングの本棚」ランクの下から3つというわけでもございません。なるべくわかんないように動かしているからね。まあ、元々20というきりの良い数字にするためだけに切ったもので、同程度にオススメのものが結構あるから別に20+αでもいいけどさ。まあ、2013年はきっちり20で収めたい。あと年末の数日でベスト20を決めようとするから、中々20個が決まらず、なんか一言も出てこなくて困るから、2013年は少なくとも12月にはいる頃にはある程度ベスト20候補を決めとこう。


 ということで、こっからオススメベスト20+α

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歴史 5
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「黒船前夜」

黒船前夜 ~ロシア・アイヌ・日本の三国志

黒船前夜 ~ロシア・アイヌ・日本の三国志

 松前藩の統治のイメージが大きく変わった。例えば松前藩アイヌを未開の状態に留める政策をとったというのは誤解で、農業は奨励された事実もあるし、しかもそれを強制しなかった。『幕吏たちは松前藩アイヌを未開状態に放置したと憤慨するけれども、アイヌ自身にとっては彼らの生活はけっして「未開」ではなかったし、放置されることが幸せだったのである。幕吏の国防意識にとらわれる必要のない今日の私たちからすると、松前藩アイヌ不干渉政策は、アイヌの自立した社会を温存した点で評価に値するのではなかろうか。』(P166)という文には今までのイメージが大きく変わる。
孝明天皇と「一会桑」 幕末・維新の新視点」 
孝明天皇と「一会桑」―幕末・維新の新視点 (文春新書)

孝明天皇と「一会桑」―幕末・維新の新視点 (文春新書)

 孝明天皇が自己の代弁者とみた政治勢力が「一会桑」(一橋・会津・桑名)で、
 「一会桑」は江戸の幕府の代弁人ではない(将軍の慶喜がいるのに!)という見方は今まで考えたことのなかった見方なので、すごく新鮮で面白い。
 そして、慶喜の根回し下手を見るとそこらへんでは水戸の父・斉昭と似ているなあ、やっぱり親子だなあと、そんな部分で感じてしまった。
明治天皇(1〜4)」
明治天皇〈1〉 (新潮文庫)

明治天皇〈1〉 (新潮文庫)

明治天皇〈4〉 (新潮文庫)

明治天皇〈4〉 (新潮文庫)

 通史レベルの情報量なのに、異常な読みやすさ、情報量多くても僕の頭ではキャッチできていない(スルーされている)情報もまた多いだろうが。キーンさんと訳者さんの文章がいいからかしら、それとも4冊も費やしているからというのもあるかな。明治時代の通史でこの本と同じくらいのボリュームと情報量のものも他にないと思うので、明治〜大正という時代に非常に興味があったが、中々その時代についての本で面白そうなものが見当たらなかったが、これはそうした本を読みたいという欲求を満たしてくれた。とりあえず明治のことが読みたくなったらこれを読み返せばいいな、という安心感があるので、大正ロマン・昭和モダンの時代について読みたいなと思って、そうした歴史の本(なるたく文庫or新書で、かつ面白そうなもの)を探しているところだが、いまいちまだ良さそうなのが見当たらないなあ。2013年こそは、そうしたいい本とめぐり合えればよいのだけれど。
「銃・病原菌・鉄(上・下)」
 すごく有名な本だが単行本で上下巻買うのはなあ、としり込みしていたら、今年文庫化になったので嬉しかった。そして、思ったより読みやすかったのもいい。『新世界に侵入してきたヨーロッパ人は、致死性の病原菌にいはほとんど遭遇していない。この不平等なちがいはなぜ起こったのだろうか。』(上巻・P52)ということ今まで考えたことだったが何故だろうと思い、それは旧世界では人口が稠密で、家畜がいた(アメリカでは最終氷河期の末期に野生大型哺乳類の8割が絶滅した)ため、新種(例えば現代では、鳥インフルなど)のウィルスができやすく、病気に対する耐性も高かった。ことが原因だという論は説得力があり、素直になるほどと頷けるし面白い。また、アメリカ・ユーラシアの違いは、陸塊の東西の長さの差。似た気候の地域の人口が多ければ、色々な技術が伝播しやすいのだ、という指摘は目からうろこだった。
「貧民の帝都」
貧民の帝都 (文春新書)

貧民の帝都 (文春新書)

 これを読んで、過去の社会の暗い面にも知れ、同時に現代日本での福祉の弱さを感じ、またホームレスがこないようにわざと座ったり寝れないように駅にオブジェを作るとか、弱者イジメも過去のものではないと認識した。この本を読んでから福祉の重要性を痛感し、現代でもそれによって救われない人もいるんだから、これからの時代もっと福祉にかける金が少なくなりそうだけど、そう簡単に切り捨ててよいものだとは思わないし、福祉の重視ということは重要だと思うようになった。「ホームレス緊急一時宿泊施設」のようなものがもっと増えて、日本の誰もが金がなくとも望めば建物の下で寝られることができるようになればいいな、果たしてそれは過ぎた望みなのだろうか?

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思想・哲学・宗教 2
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「これからの「正義」の話をしよう」「ハーバード゙白熱教室講義録+東大特別授業(上・下)」

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業〔上〕(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業〔上〕(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 哲学についてわかりやすく、こんなに面白く書かれている本を読めるのは幸せだ。こんな本が他にも一杯あればいいのに!
 「ハーバード゙白熱教室講義録+東大特別授業」は重要なワードが見開きの末尾に脚注してあり、また解説で要点を示してくれているので、こっちの方がだいぶ読みやすい!
「極刑」
極刑 死刑をめぐる一法律家の思索

極刑 死刑をめぐる一法律家の思索

 これを読む前は死刑制度に無条件で反対で、2chのまとめとかで反対意見を見るたび、今までは殺人犯をそこまで擁護するかとお花畑な人らかと思っていたが、これを読むと個人的に冤罪の危険性が0になることはないというものには非常に説得力を感じるなど、反対派にも、一定の理があるということがわかった。今でも僕は賛成派だけど、それは僕が。賛成派の『究極の悪に対しては、究極刑があるべきではないのだろうか。これは、仕返しや報復というよりも、道徳的秩序の問題なのである。』(P80)という意見の方により魅力というか、その意見を持って必要だと感じるのでこちらを選んでいるというだけで、将来的には変わるかもしれないし、変わらないかもしれないが、少なくともこのことで自分と反対の意見を単純に否定的に見る気分はなくなった。死刑制についてちょっと考えてみるなら、この本は押し付けがましさもなくて非常におすすめ!

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小説 8
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「あまりにも騒がしい孤独」

あまりにも騒がしい孤独 (東欧の想像力 2)

あまりにも騒がしい孤独 (東欧の想像力 2)

 再読。初読時はほとんど意味解らずシーンと文章のきれいさに気をとられて、ストーリーを覚えていないから、再読になってようやくこんなストーリーだったんだとわかった(笑)。つうか意味が読み取りにくいため、文章の語感だけで読んでいたから幻想小説チックだったという記憶があったが、全然幻想小説じゃないことに再読してようやく気がつく。
 あいかわらず本当にきれいな文章だ。正直初めて読んだ当時は、意味解らないなりに感動するような感覚を持っていたので(今はそうした感覚が本を量を読むことでスレたとか、なんかで失われてしまった。また当時は珍しい構成だったり文章に感動する度合いも高かった。)、再読しても文章が美しいと感じられるか不安だったが、そんなものは杞憂だった。今でもこの文章はきれいだと感じることができた。
「牛 築路」
牛 築路 (岩波現代文庫)

牛 築路 (岩波現代文庫)

 「牛」の冒頭の文章がすごくいいねえ。最初の文だけで魅了される経験はめったにないが、それがあるとそれだけでその作品が好きになっちゃう。いや「牛」は冒頭以外の老社と羅漢(老人と子供)が端から見ればほとんど対等に見える(子ども扱いしていない)関係性や、彼らの会話やキャラクターはすごくいいなあ。
「幻影の書」
幻影の書 (新潮文庫)

幻影の書 (新潮文庫)

 中々本を一度に数十ページ読むことができなかった時期に、一気に読むことができたほどリーダビリティの高い作品。ぐいぐい物語とそこで扱われるへクターの映画に引き込まれる(だからこそヘクターの妻・フリーダの行いには怒りを覚える)、素晴らしい本だ。
「三銃士」
三銃士 上 (角川文庫)

三銃士 上 (角川文庫)

三銃士 中 (角川文庫)

三銃士 中 (角川文庫)

三銃士 下 (角川文庫)

三銃士 下 (角川文庫)

 「やる夫は青い血を引いていたようです」を見て、近代以前のリアルの感覚が少しつかめた気がするので、騎士が金に困るという世知辛さにこの時代でもか、と苦笑いを浮かべながらも、貴族なのに?と不思議になる感情を抱くことなく読めた。この本は、めちゃくちゃ読みやすくて驚いた。これほど何も考えずに読めて、ただ単に面白い小説というのは、初めてだ。キャラが心理があまり描かれておらず(描かれても地の文で神の視点からで、キャラ自身の独白めいたものはない(と思うw))またそのためあまり共感することはないので、逆にストーリーが動くことだけに集中できて良いなあ。キャラに共感ができると、逆に窮地に陥ると、読むのが苦しくてしんどくなってしまうからなあ、自分でも難儀なことだとは思うが(笑)まあ、このぐらいキャラを突っ放して読めるようなキャラとの距離感はいいね!
竜馬がゆく
新装版 竜馬がゆく (1) (文春文庫)

新装版 竜馬がゆく (1) (文春文庫)

新装版 竜馬がゆく (8) (文春文庫)

新装版 竜馬がゆく (8) (文春文庫)

 序盤は正直微妙かな、と思ったが、勝海舟が登場して以降はグンと面白くなった。竜馬、襲撃されて薩摩藩邸にかくまわれたあと、移動するときに寺田屋の前を通ってわざとらしく咳をするシーンは好き。後半の竜馬の暗殺の場面のあっさり加減もいいね。今のところ僕の中では司馬遼太郎作品でベストかな、長くても飽きさせない上、竜馬が色々なところと関わるから様々な面白いエピソードが見れるし。
「キケン」
キケン

キケン

 学祭のシーン、そしてその前の元山がラーメンのスープを試行錯誤して作っているシーンはすごく好みで、10回くらい読んでいる。そして何度読み返しても飽きずに毎回楽しい!
 有川さんの小説で「シアター」の次に好きな作品かも。
ボーン・コレクター(上・下)」
ボーン・コレクター〈上〉 (文春文庫)

ボーン・コレクター〈上〉 (文春文庫)

ボーン・コレクター〈下〉 (文春文庫)

ボーン・コレクター〈下〉 (文春文庫)

 評判に違わぬリーダビリティーの高さ。読書欲が減衰している中でも非常に早いペースで読み進められた。
「芙蓉千里」
 正直、好みでなく須賀しのぶさんの本はあわないと確信するために買ったのだが、かなり面白くて、そのため流血女神伝を読むの頑張って再開するべきか悩ましい思いを抱くことがまだ続きそうだ。

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ライトノベル 1
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 新しく読み始めた作品以外なら、「薔薇のマリア」「ベン・トー」「魔法科高校の劣等生」は今年も変わらず面白かった。けど、それだと毎年入っちゃうので今回は自重した。そして今年は悲しいことに「蒼穹のカルマ」が終わってしまった……。「デート・ア・ライブ」は正直好みじゃないというか、2巻まで読んだ限りだと凡庸なライトノベルという印象しかないので、恐らくそっちに集中するために終わったというのはひどく悲しい。
オーバーロード

オーバーロード1 不死者の王

オーバーロード1 不死者の王

オーバーロード2 漆黒の戦士

オーバーロード2 漆黒の戦士

 アインズ様がWEB版よりずっと格好いいのが好き!ただ、WEB版と大きく変わっているから、置換可能な物語だと感じ、
 相対化されてしまうと、WEB版で読んだときほどにはのめりこんで読めないのはしょうがない。

ノンフィクション 3
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「私のマルクス「甦るロシア帝国

私のマルクス (文春文庫)

私のマルクス (文春文庫)

甦るロシア帝国 (文春文庫)

甦るロシア帝国 (文春文庫)

 佐藤優さんの自伝的な本。「甦るロシア帝国」で佐藤さんが、ロシアのインテリたちとの交流、そしてソビエト大学で教鞭をとっていた時のエピソードを読むのは面白いなあ。佐藤さんが学生達の援助の為に、アルバイトを作ったり、教材を買ってあげたりなどしていたという話は、いいね。それが将来のエリートに対する日本の印象を良くするためという理由もあっても(まあ、それは照れ隠しや、一応経費だから名目つけている、という理由もあると思うし、無論表向きの理由である将来のエリートに対する日本の印象を良くするという理由もあるだろうが)、ソ連の混乱で困窮するエリートたちを少しでも助けようとするのは、あしながおじさん的なエピソードで素敵。黒い大佐にきてもらって彼を囲んで、佐藤さんのおごりで、学生たちをレストランに招待して話をしているエピソードは特に好きだ。
河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙」
河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙

河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙

 周囲に人がいるのに、涙ぐんだり、喉がきゅっとするような感覚を味わったりした。本を読んでいてそんな感覚を味わったのは初めてだ。泣ける小説とか映画(映画自体あんまり)とかを読まない、みない、からかもしれないが、そんな泣きたくなるような衝動を味わったのはちょっと記憶にないほど。
「幻獣ムベンベを追え」
 
幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)

幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)

 2013年は高野さんの本をきっと多く読むであろう、という確信を抱いております。

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その他 1
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「物語工学論 キャラクターのつくり方」

物語工学論 キャラクターのつくり方 (角川ソフィア文庫)

物語工学論 キャラクターのつくり方 (角川ソフィア文庫)

 キャラクターの類型だったりその大枠がどういう風に敷衍され実際の小説で現れているかなどを読むのは非常に興味深いし面白い。またキャラクターチャートがあり、簡易的なそのキャラを作り方やそのキャラと親和性の高い他の類型のことが書かれている、そういうまさに今まで小説の書き方の本で本当に読みたかった内容(抽象的すぎず、理論的で難しすぎない)が書かれているので嬉しい。僕はあまりに文章力が低く語彙が少ない上に、一貫性のある物語をつくりあげる根気がないから、小説書けないけどね。補章Bが文庫版には収録されていないということなので、それも読んでみたいから、もしかしたら、そのうち単行本を買うかもしれぬ。何で収録されなかったのか本当に理解に苦しむぜ、こんなにもどんなものか見てみたいと思うのに。

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WEB読み物等 3
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「やる夫は青い血を引いていたようです」

 最初か読み返すことはあまりないが、気に入っている部分を何回も読んだり、まとめあるいは本スレで途中から連続して読んだり、または投下ごとに前回や最近のものをいくつか読んだりしているので、この物語を読んで、何百時間も(!?自分でも驚くが誇張じゃない)楽しんでいる。今年読んだ物語の中で、一番物語世界に浸っていた時間が長い作品。
「灯火の行く橋」「天球賛歌事件」 

 大正を舞台にしたクトゥルフTRPG動画。大正浪漫の雰囲気が素敵。ナレーションの小気味良い調子も素敵だ。
「本当にあったSAN値が下がるクトゥルフTRPG」「風変わりな旅行」
 両方ともクトゥルフTRPG動画。前者跳躍、後者陰陽師。どちらも同じサークル(?)が製作している動画、どっちのシリーズもすごく笑えるクトゥルフTRPG