4月に読んだ本のまとめ

2014年4月の読書メーター
読んだ本の数:20冊
読んだページ数:6633ページ
ナイス数:309ナイス

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)感想
文明社会、都市は多くの抵抗力を持っている感染症保有し、それは周囲の孤立していた小さなヒトの集団との接触のときに、スペインのアメリカへの侵略の例ほど劇的でなかったにせよ、多くの命を奪い取る疫病として機能した。そして小集団にとって未知の感染症は、社会の青年層に対して最大の威力を振るう場合が多く、そうした病が何度も襲来すると精神的・物質的な自立が難しくなる。周辺地域や異民族を文明が同化していったのは、そうした疫病の力もあるのではないかという推論は面白い。(続く)
読了日:4月30日 著者:ウィリアム・H.マクニール
二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕感想
犯人が捕まった後に主人公ハリー・ブロックは、現在に起こった事件ではなく過去に起こった事件について、いくつかの新事実を発見するなどかなり活躍しているので、犯人が逮捕された後のパートもすごく面白い。犯人が捕まった後にはFBIのタウンズ捜査官が好意的になったが、ハリーが新たな発見をするごとに彼が喜んでいるのを見るのは楽しい。
読了日:4月30日 著者:デイヴィッド・ゴードン
第一次世界大戦  忘れられた戦争 (講談社学術文庫)第一次世界大戦 忘れられた戦争 (講談社学術文庫)感想
この本では国際関係、外交関係をメインにまとめられていて、社会主義者たちの動きや日本の動きについては多めに書かれているが、内政や軍事的な動きについての記述は少ない。オーストリアは暗殺事件を口実にバルカンに勢威を伸張させようと、独立国に対しては前代未聞の厳しい要求を突きつけ、それを全面受諾することを迫り、セルビアはその大部分を受諾することを認めたが、それを受諾拒否とみなして戦争が始まった。当初オーストリアとドイツはロシアとフランス相手には共にあたる決心はしていたが、イギリスは中立を守るだろうと予想していた。
読了日:4月29日 著者:山上正太郎
運命論者ジャックとその主人運命論者ジャックとその主人感想
この小説のメインである登場人物たちが語る話(主に恋愛話)は「異様で、残酷で、それゆえにいっそう痛切でもあるような裏切りや陰謀に行きついてしまう」ものばかりだけど、語りの途中で何回も聞き手との会話がはさまれて、そこで語られている話について聞き手が語り手と話したり、あれこれとその話の人物を論評したり、あるいは地の文で作者がこれが小説だということを強調してくれたおかげでそうした話に重苦しさを感じない。また、そうして話が脱線を繰り返すため、主人は最初からジャックに語らせていた彼の恋の話の結末を結局聞けなかった。
読了日:4月28日 著者:ドニディドロ
サイゴンから来た妻と娘 (文春文庫 こ 8-1)サイゴンから来た妻と娘 (文春文庫 こ 8-1)感想
記者である著者はベトナム戦争末期にそこで出会った年上で子連れの女性と結婚して、南ベトナムが崩壊して、日本で生活することとなった家族三人の生活の記録。後に妻となる女性とは友人から紹介されて出会い、著者が宿を追い出されたときから、彼女の家に下宿をすることになり、そこから深い交流がはじまった。その下宿時代の話が最初のほうに少し触れられているが、それが面白い。日本とベトナムのカルチャーギャップなどが書かれているが、その中では食についての話が特に面白い。
読了日:4月26日 著者:近藤紘一
渋沢栄一 上 算盤篇 (文春文庫)渋沢栄一 上 算盤篇 (文春文庫)感想
渋沢栄一はサン・シモン主義の精華であるパリ万博を見たことや銀行家フュルリ=エラール(フロリヘラリ)との交流などから、1年半の滞仏期間でサン・シモン主義的経済システムを学び取った。サン・シモン主義者であるナポレオン三世の時代に、その思想に基づいた経済政策がとられた。サン・シモン主義者たちは近代資本主義の『根幹となる産業分野を一種の促成栽培的に作り出すシステムを開発して、これを上から社会の各分野応用しようと試み』、成功させ、先進プロテスタント諸国に比べ立ち遅れていたフランスの産業を一気に活性化させた。
読了日:4月24日 著者:鹿島茂
ソードアート・オンライン (14) アリシゼーション・ユナイティング (電撃文庫)ソードアート・オンライン (14) アリシゼーション・ユナイティング (電撃文庫)感想
今回は1巻丸々戦闘シーンで終わってしまった。敵の親玉アドミニストレータも倒してアリシゼーション・人界編は終わったが、まだキリトは現実世界へと帰還できないようで、今後もアリシゼーション世界での物語は続く。キリトとユージオは共に瀕死の状態にあるときに、ユージオの心意の力がキリトに力を与えた。そのときのユージオ「さあ、立って、キリト。僕の、親友……。ぼくの……英雄……」キリト「ああ…立つよ。お前のためなら、何度だって」という会話は、王道だけど、いいな。
読了日:4月23日 著者:川原礫
戦争の足音 小説フランス革命 9 (集英社文庫)戦争の足音 小説フランス革命 9 (集英社文庫)感想
ルイ十六世は逃亡後に自分の価値を自覚したことと憲法が立憲王政に決まったことで、政治の舞台で再び王の存在感が強まっている。王は戦争でフランスが負けることで自分の権利を取り戻そうとする謀略をしている。それまでは末路を知っているから同情的にルイ十六世の行動を見ていたのだが、そうした行動をとっているのを見るとそんな気持ちは吹き飛んでしまった。ジャコバン派は主戦派ブリソや現パリ市長と、士官以上(≒貴族出)が信用ならないから現状は戦を避けるべきとするロベスピエールとで意見が割れ、再度分裂の危機にさらされる。
読了日:4月22日 著者:佐藤賢一
デュラララ!!SH (電撃文庫)デュラララ!!SH (電撃文庫)感想
本編から2年後を舞台としている。メインキャラクターは新たに高校一年になった新キャラたちだが、これまで登場してきたキャラクターも大勢登場してくるのでよかった。平和島静雄の噂で『曰く、ネブラ社製のボールペンだけが彼の筋肉を貫ける。』(P151)とあって、以前アニメ化されたときにそれがネタになっていたことを思い出して笑った。それから帝人が非日常から脱却することができているようなのは本当に良かった。そしてSHはこのエピソードが終わった後も、1冊完結ないし連作短編という形でシリーズになるということで今後とも楽しみ。
読了日:4月21日 著者:成田良悟
江戸の小判ゲーム (講談社現代新書)江戸の小判ゲーム (講談社現代新書)感想
「第二章 改革者たち」では寛政の改革のときに松平定信をリーダーとしたチームが、棄捐令と町会所の作成という2つの政策の案を彼らはどのように煮詰めていき、そして実行するに当たって町方との折衝や調査などが書かれていて面白い。たとえば棄捐令では、今後札差が武士に金を貸さなくなっても困るから、札差たちの理解を得るために、公儀が札差相手に出した棄捐令を詳しく説明をする文章でもそれなりのメリットをいくつか提示して、さらに文章の順番などの細かな工夫もほどこすなど骨を折っている様子を見るのは今までのイメージになく新鮮だ。
読了日:4月19日 著者:山室恭子
火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)感想
 『色盲の画家』事故で色覚を失いモノクロの世界に生きることになった画家のI氏。色盲は記憶の中や想像の中でも色を見れなくなるものだとは知らなかった。『「見えて」いても「見えない」』幼少期に視力を失い中年になってから手術によって視力を得たヴァージル。視力が回復しても、盲目だった人が眼が見える世界に慣れることは、眼が見えていた人が盲目の世界に慣れるのと同じくらい困難だというのは目から鱗。そうしたわけで視力を回復した人たちは最初は視力を得た喜びは大きいが、その後は深刻な鬱状態に陥ることが多いそうだ。
読了日:4月18日 著者:オリヴァーサックス
魔法科高校の劣等生 (13) スティープルチェース編 (電撃文庫)魔法科高校の劣等生 (13) スティープルチェース編 (電撃文庫)感想
達也と服部の代表選考時や代表の練習相手をしているレオとエリカを見た時の2人の会話を見ていると、最初のころから比べると彼らがずいぶんと親しくなったようなのはなんだかうれしい。今巻は九校戦ということで試合のシーンや普段とは違う色々なキャラクターの絡みが見られるを楽しみにしていたので、巻き展開でそうしたものがほとんど描かれなかったのは少し残念。しかしあとがきによると九校戦の期間中のサブエピソードを何篇か短編で書くようなので、どういう形式で発表されるかはまだ決まっていないようだがそれが読めることが今から楽しみ。
読了日:4月17日 著者:佐島勤
フイヤン派の野望 小説フランス革命  8 (集英社文庫)フイヤン派の野望 小説フランス革命 8 (集英社文庫)感想
パリから逃亡した王が捕獲される。王の逃亡は誰にとっても自明のことであるのに能動市民(富裕層)の利益となる立憲王政を定めた憲法制定の日程をずれないように、右派、ラ・ファイエット、三頭派は「王の誘拐」という嘘を合作して、堂々と述べて王の逃亡を不問とした。今までなんで王が脱出を図ったのに、誘拐ということになっているのかがわからなかったが富裕層の利益を代表する議員たちの思惑もあって、誘拐という嘘が作られたのか。
読了日:4月16日 著者:佐藤賢一
終物語 (下) (講談社BOX)終物語 (下) (講談社BOX)感想
忍野扇と話していて記憶や認識が色々と変えられているように感じたのは、彼女が阿良々木暦自身でもあったからで、忍野扇が阿良々木くんに厳しかったのは彼自身の自罰的傾向故のことだったということがわかり、そうした部分は今まで少しもやもやすると感じていたのだが、こうして納得できる理由が説明されたことで、もやもやしていた分だけ爽快感がある。
読了日:4月15日 著者:西尾維新,VOFAN
漢字伝来 (岩波新書)漢字伝来 (岩波新書)感想
聖武天皇の母が亡くなった時に大規模な写経が行われた。その時の記録について少し書かれているが、それが面白い。記録によると、聖武天皇の母が没した年の8月は29日しかない月だったが、その月には多くの経師が29日、つまり毎日出勤していた。そんな中で休暇願いに記された休暇の理由が「穢衣(汚れた衣服)の洗濯のため」だったり、宿舎に泊り込みで仕事をしているため赤痢・疫痢や腹痛などの病気で、あるいは長時間座り続けることによる腰痛や足の病で、休暇を願い出ているのを見ると、古代の写経生たちになんだか親しみがわいてくる。
読了日:4月14日 著者:大島正二
お言葉ですが… (文春文庫)お言葉ですが… (文春文庫)感想
世間では普通に使われているが本来の使い方、漢字の意味的には誤っている、あるいは著者が違和感を覚えている言葉遣い、漢字遣いについてのエッセイ。清末期に清で女子教育を推進しようとした服部宇之吉によると、当時の中国では「身分ある家の娘は外へ出さない、特に不特定多数の人と接触する可能性のあるところへは出さない習慣」で家の中では長女、次女などの呼びかけ方で十分だったから、良い家の娘は名前を付けられていないことが割合あったという話は現在からは想像がつかないことなのでちょっと驚く。
読了日:4月10日 著者:高島俊男
ベトナム戦記 (朝日文庫)ベトナム戦記 (朝日文庫)感想
1964-5年の南ベトナムを書いたルポルタージュ。また、多くの写真が掲載されていているのでイメージがつかみやすい。著者と本書に掲載されている写真を撮影しているカメラマンは、ベトコンとの戦いの最前線の基地に行くにとどまらず、敵の支配地域の施設を破壊する作戦に同行して銃撃戦、そして潰走した。そうした中での行く前から同行するなんて言わなければよかったと内心後悔している心情が描かれていて、最前線で交わされるベトナム人兵士との会話が良いので、そうした前線を書いた章が一番興味深かった。
読了日:4月9日 著者:開高健
薔薇のマリア20 .I love you.[noir] (角川スニーカー文庫)薔薇のマリア20 .I love you.[noir] (角川スニーカー文庫)感想
今回は多くの情報が明らかになってきたので盤面が見えてきた。しかしマリアたちエルデンの面々がグッダーの狙い通りにいいように使われてクライマックスの前まで無理に押し流されていった今回の展開は、最後なのに今まで敵だと思っていたジュジとかグッダーがメインでマリアたちが脇役っぽくなっているからちょっと物足りなさを感じるな。そして前巻で次が最後と言っていたが、分量が多くなり2冊にわけたようだ。なんにせよ大好きな「薔薇のマリア」の世界観を、物語を少しでも多く味わえるというのは幸せなことだ。
読了日:4月7日 著者:十文字青
迷える者の禅修行―ドイツ人住職が見た日本仏教 (新潮新書)迷える者の禅修行―ドイツ人住職が見た日本仏教 (新潮新書)感想
著者は曹洞宗の安泰寺に入った。安泰寺では座禅とその他の雑務との違いはなく、全ての時間が修行の時間であり、「自分の時間」であるという考えを重視していた。著者はそこでの修行に行き詰まりを感じ、安泰寺を下りて臨済宗の寺に入った。そこは理不尽なしごきや体罰が蔓延る場所だったが、徹底的に心身を消耗したことで悟りを開いた。その後安泰寺に戻るが堂頭(住職)と先代住職の間に生じた寺の方針を巡る争いに巻き込まれたため再び安泰寺を下り、大阪でホームレスをしながら修行する道を選ぶが堂頭が死亡した後に、著者は安泰寺の住職となる。
読了日:4月4日 著者:ネルケ無方
ログ・ホライズンTRPG リプレイ 宵闇の姫と冒険者ログ・ホライズンTRPG リプレイ 宵闇の姫と冒険者感想
小説「ログ・ホライズン」の著者橙乃ままれGMゲームマスター、進行役)を務め、そして丸山くがね(「オーバーロード」)や芝村裕吏(「マージナル・オペレーション」)などPLも全員作家さんという豪華なTRPGリプレイ。本書では2つのセッションが収録されていて、皆さんが楽しそうにプレイしているので読んでいても楽しかった。それから、それぞれのプレイヤーがキャラクターを作る際の会話なども書かれていて、そういう部分が見られるのはちょっとうれしいので良かった。
読了日:4月3日 著者:橙乃ままれ,七面体工房

読書メーター

ラ/////5
小////
エ/
ノ////
歴/////5
そ/

サイゴンから来た妻と娘」「迷える者の禅修行」はノンフィクション換算。「ログ・ホライズンTRPG リプレイ」はその他換算。



ライトノベル 5
小説 4
エッセイ 1 
ノンフィクション 4
歴史 5
その他 1

最近月6000ページ台で安定してしまっているなあ。


4月に読んで特に面白かったもの。

「江戸の小判ゲーム」

 面白く、読みやすい。こういう歴史読み物大好きだ。
ベトナム戦記」
ベトナム戦記 (朝日文庫)

ベトナム戦記 (朝日文庫)

 1964-5年のルポルタージュで興味深い。
「疫病と世界史 上」
疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

 新鮮な視点で、新しい発見も多い。。


「【東方卓遊戯】 お嬢と五人の奇人達 4-1 【サタスペ】」
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 ついに新しい話が始まった。やっぱこの話はすごく面白い。そして相変わらず一度投稿が開始されると投稿ペースがすごくはやいので、間をおかずに視聴できて幸せ。