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2014-06-29 マージナル・オペレーション 01

マージナル・オペレーション 01

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マージナル・オペレーション 01 (星海社FICTIONS)

マージナル・オペレーション 01 (星海社FICTIONS)

内容(「BOOK」データベースより)

三〇歳のニート、アラタが選んだ新しい仕事、それは民間軍事会社―つまり、傭兵だった。住み慣れたTOKYOを遠く離れた中央アジアの地で、秘められていた軍事的才能を開花させていくアラタ。しかし、点数稼ぎを優先させた判断で、ひとつの村を滅ぼしてしまう。モニターの向こう側で生身の人間が血を流す本物の戦場で、傷を乗り越えたアラタが下した決断とは―?『ガンパレード・マーチ』の芝村裕吏が贈る、新たな戦いの歴史が、今はじまる。



 村上春樹みたいな冷めた文章なので、不味い展開になったときに読むのが苦しくなることが少ないから、読むのに疲れなくていいね。それにそうした文章なので、かなり特異な世界に主人公が飛び込んで言っているのだが、村上春樹系の文章だから、なんでという疑問を持たずに、普通に受け入れられる。

 アラタが訓練を受けていた地の売春宿には扉がなかったが、それは個室で女性に暴力を振るうようなことを妨げる用心のためという理由のようだ。普通は用心のためにあるドアが、逆に用心のためにドアをなくしているという発想にはちょっと驚いた。

 訓練だと思っていたことが、実際のオペレートだったことに衝撃を受けて、かなり動揺して、自室に帰ってからかなり吐いている。アラタはそれまで淡々と過ごしていてどんな状況でも淡々と対応をするような良くも悪くも冷静な人間と思ったが、流石に覚悟なく実戦に入って人の生死に関わっていたことに動揺しないくらいに無感覚というわけではなかったか。

 同僚や上司がアラタのことをニッポーズと呼んでいるが、そんな呼称をはじめて聞いたので、そんな呼称があるのかと変に感心した。

 主人公のアラタがオペレーター(オペレーター・オペレーター=OO)という立場の適正と才能があるというのは非常にご都合主義的だが、彼が外部から部隊をオペレートしている部隊(その時点では直接にはあっていない部隊)を彼の的確な指示によって窮地から救い、そのことを実際に部隊で戦闘を行っていた兵から感謝されるというのは。ご都合主義であってもそうした展開は面白いし、読んでいて楽しい。

 それと上司のランソンにその資質を認められて、ランソンが反語的な言い方でアラタの指揮をほめているのには思わずニンマリとする。

 ランソンは、交代要員として隣にいる人間に、この場合君ならどこに部隊を配置すると尋ねるが、主人公は当然のことを尋ねられていると感じて苦痛を覚えているようだが、他の人間(OO)は汗をかきながら必死で考えて正解をだせない様子を見て、彼の才能がいかに優れているものなのかということをそこで実感する。メリット・デメリットを具体的に、というか総量で比較せずに、勘で最適解が導き出せるのだから凄いわ。

 ドンキーと称される行ぐんする際に荷物持ちとなるロボットが出てきたことで、そういえば近未来だったなということを思い出す。

 現場の人間(オマル)に『指揮が本物だった。いや、多くの指揮官が、軍人が、理想としている指揮だった。だから驚いた』(P134)という風に、彼の指揮は「理想の指揮」といわれるほどのチート的な才能とまでは思わなかったから非常に驚いた。

 自らが実戦の中に期せずして放りこまれても、内心では非常に緊張を覚えつつも、言動には恐怖が表れることなく、知っている地形ということもあり同行している部隊に的確な指示を与えているのは格好いいね。

 アラタは、ソフィアが直接会っていて想像できる自分を守るために防戦という指示を出したことを知り、現場で直接要請されたとはいえ、彼女の心情を忖度せずに、直接指揮をとって舞台が無事帰還できた成果を誇りに思っていたことを恥じる。たしかに彼女の心情を考えず、その指示の不味さばかりみていたのは恥ずかしいが、読んでいるこちらも彼女がそんな思っていること考えていなかったので、ソフィアに謝りたい気分になる。

 彼の軍事的才覚にほれ込んで、美少女の娘(ジブリール)を嫁に取らないかと薦められるというのは、ある意味定番だけどいいね。ジブリールは美少女の兵士というキャラで、イラストもかわいいから、この展開いいね。

 歓迎されていた村が会社と敵対する勢力に密かに鞍替えしており、アラタたちは捕まってしまうという展開は正直予想外だった。

 訓練の時に効率の良い点数を取るためのオペレーションをした際、村を壊滅させたことがあったが、それが実は現実のオペレーションであったことを知り、それを見せしめと受け止められ、離反する村が多く出てくる。アラタも知らぬうちに重たい十字架を背負わされるはめになるとは災難な……。というか、これは現実の先進国の人間への揶揄みたいなものでもあるのだろうな。

 この村を、地域を守るために、目先の勝利だけでなく戦争の終わらせ方まで考えて、相手に一矢報いて自らの損害を抑えつつも、相手にも成果を与えるという作戦を立案して、実行するとは想像以上にアラタの軍事的才能はすさまじいものがあるな。

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