イギリスはおいしい

イギリスはおいしい (文春文庫)

イギリスはおいしい (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

アフタヌーンティーを飲むと、イギリス文化が見えてくる。フィッシュ・アンド・チップスはオシャレなのか。―不評極まるイギリス料理なれど、イギリス文化を会得すれば、これまた実に美味なるものなり。リンボウ先生のご説、ご覧あれ。日本エッセイスト・クラブ賞受賞の話題作、「新レセピ」のオマケが付いて文庫版登場。


 単行本にて読了。この本が書かれた当時20年前のイギリスでは一流ホテルだろうが街のレストランだろうが学食だろうが、塩味が足りなかったり、逆に塩辛かったりすることは当たり前だったというのは、流石に現在は違うだろうけど、たった20年前くらいまではそうだったということには驚く。栄華を誇っていた時代が長かったのに、よくもまあ、それほど食事に無頓着でいれたなあ。
 イギリス人は野菜をやたらとよく茹で、その湯で具合がどれくらいかというと、めキャベツやサヤインゲンを茶色くなるまで茹でる人がほとんどというのは呆気に取られる。ただ、それにはそれの良さがあり、著者も一度は美味しくなくて閉口したやたらとやわらかい料理を再渡英したときに食べたら、美味しく思ったようだ。
 コックスという品種のリンゴについては実に美味しそうに書かれてあるなあ、両手のひらに収まる小ささに、素晴らしい芳香、甘すぎないほど良い甘さと酸味の絶妙なバランス、うん、食べてみたい。
 イギリス人は甘いものに生姜を入れることを好み、ジャム、ビスケット、チョコレートに生姜を入れることがあるというのは個人的には生姜あまり好きでないのでちょっと引いてしまう。しかし、ググって見れば本書の発刊当時は驚くことだったのだろうが、現在の日本では生姜チョコの類もそれなりに普及しているようだな。
 鯖の燻製、鱈子の燻製は美味しそうで、パラパラと流し読みしながら夜中に感想を書いているのだが、お腹が減ってくる。
 フィッシュアンドチップス、モルト・ヴィネガーと塩をかけて食べるのがポピュラーで、そのヴィネガーは酢であるがすっぱくないということだが、どうしても酢というイメージからとても酸っぱいものだと想像してしまう。まあ、基本的に私は食でチャレンジしない人なので、こうやって有名な外国の食べ物についての記述を読むと、食べたことあるものの範囲が狭いなあと実感する(苦笑)。
 イギリスでは食パンを薄くきるが、それはサンドイッチにするときに一口で収まりやすいようにそうしている。また、パンはジャムとかチーズとか何かを載せる台としての役割であくまで主役でなく脇役であり、英国ではパンは主食ではない。そもそも英語には主食という観念はないようだ。そして著者が、英国人にそれでも強いて主食的な食べ方をするものをたずねたら、パンでなく「ジャガイモ」との返答があった。
 この頃ハロウィーンが若者の間ではやっているが根付くことはないだろうと欠いてあって、20年前からそれなりに日本でもハロウィンは知られていたのかとちょっと驚いた。ここ数年、なんかやたらとこのイベントをどっかが押しているのかその語を目にするようになったが、実際にハロウィンをするというのは極めて少数だろうし、今後も根付かないだろうな。
 シデハラさんと田舎町のホテルで、ハイティーをする「釣魚大全の昼下がり」はゆったりとした雰囲気と美味しそうなスコーンの話で好きだな。
 しかし美味しいものの話は日本と同じく海に囲まれている島国だけあって魚介系のものが多いね。まあ、著者が日本人でそういうものが好きだからというのもあるかもしれないけど。
 結婚式で、最後に婚姻届にサインして式が終了するというのは日本だとそれは事前にやっておいてという形だから式の中でサインするというのはちょっと意外。でも、それだから何かの映画みたいに結婚式当日に花嫁を奪うみたいなシーンが生まれるわけか。