独創短編シリーズ2 野崎まど劇場(笑)


内容(「BOOK」データベースより)

電撃文庫MAGAZINE」連載の、図ありイラストあり、挙句はQRコードすら載った奇文珍文目白押しの短編が、1冊にまとまって登場!不可解極まるキャラクターたちが織りなす爆笑必至の物語の数々を見よ!雑誌連載分に加え、恒例ボツネタ集&書き下ろし+αとボリューム満点でお贈りする、編集部の狂気を感じる短編集!


 相変わらずイラストや図を多く活用するなど、趣向を凝らした変わった形の短編集。飛び道具みたいな実験小説的な作品だけど作品の雰囲気は明るめで、コメディ方面(コント的な作品)が主で、お笑い番組的な感じで面白いし、読みやすくていいね。ショートショートとかは人の嫌な面をえぐったような暗い、ブラックユーモアがある作品が多いという印象だけど、そうしたのは嫌いだけど、こうした明るくくすりと笑える短い短編なら普通に楽しめる。
 最近のネタも扱っているし、これにも風刺的な側面もないわけではないだろうけど、変に皮肉気なものにせず、あくまでそれを単純に笑えるネタにしているのはいいよね。
 冒頭の作品「白い虚塔」でなろうネタが扱われていたが、まさかなろうネタがくるとは思っていなかったので、そのパロディのネタのチョイスに思わず笑う。
 「Cafe Bluetは元気です」カフェのメニュー看板をページごとに一つ置いて、徐々に時間の経過によって、そこに書かれてあることを通して、色々と変わっていくのを見るというのは面白い趣向。こういうの好きかも。
 「大オーク」大奥をオークの住むダンジョンにして、そこに徳川家斉と老中が赴くという突飛な短編だが、その突飛さが笑える。特に子沢山で有名な家斉を主人公にした点もギャップで笑える。
 「大相撲秋場所フィギュア中継」肖像権の問題で、相撲がテレビ放送できなくなり、中継は取り組みをフィギュアで再現してお届けするという話だが、棒立ちの力士フィギュアなどシュールな絵面で笑える。
 「のりもののえほん」絵本の文章のような形で、ひらがなでトー○ス的な電車の物語が書かれているが、電車の説明がやけに詳しく徐々に普通に漢字を使いだし非常に詳細な説明をする。元々ボツになった作品で、扉に『面白いより先に「もういいよ!」ってなる感じですかね?』(P233)というボツにした編集の人の言に納得。一発ネタとして面白いは面白いんだけど、短い作品なのに読んでいて、ひらがなだけなのも読みにくいし、とても細かい説明も読みにくいから、なんかちょっと疲れる。
 最後の「電撃文庫館人間消失事件」は巻末にある広告ページの枠を使用して、その中に文章を書いてメタ的言及をはさんでいる作品だが、個人的にこういう作品はなんか好きだな。