幼女戦記 1

幼女戦記 (1) Deus lo vult

幼女戦記 (1) Deus lo vult

 web版では既読。書籍版では女性部下・後に副官となるヴィクトリーシャ・イヴァノーブナ・セブリャーコフ(ヴィーシャ)が登場し、またweb版では本編前に没していたようだが外伝でゼートゥーアと同格の存在として書かれていたルーデンドルフも生存している。ルーデンドルフが生存していることで何が変わるのか、あるいは変わらないのか気になる。
 『人格は、歪みまくっている。』(P17)主人公、自身の人格のそうしたところ自覚的だったのか。
 存在Xと主人公の関係が主人公と彼を突き落とした人物の関係と案外似ている。管理側からしてみれば知っていて当然、やっていて当然な社会(世界、宗教的)のルールの存在を知っていながら、十分に守っていない。社会的あるいは宗教・道徳的ルールを自分勝手に無視して、処分を受ける段階で、いや、そんなこといわれてもと言い訳する。管理側からしたらやって当然のことをしていないから罰したのに、反省の色なく自分を正当化して逆恨みする。そういう、自分がやられたら同じようなことになっているじゃないかという笑いどころだったのかな。

 幼女軍人となったターニャ・デグレチャフの初陣での戦力に一人で敵の部隊と戦うしかない状況に追い込まれる。その時の内心で『見下すのは私の権利であって、私が見下されて良いはずがない』と考える。そうした強烈なプライドを見せる主人公も珍しい。
 戦意高いところを咽んでアピールしつつ奮戦及ばず戦闘不能になること狙い。しかしあまりに強烈な戦鬼ぶりを見せて銀翼突撃章という勲章を得る。
 ターニャは自分の中では演じている「つもり」だが、実際には狂人の真似とて状態。
 レルゲンのターニャへの怖れっぷり半端ないね。まあ、年齢と命令違反者の頭蓋を切開しようとしたというところを目の当たりにしたことを考えれば、その警戒心もわかるが。
 その後ターニャは、新しい宝珠(魔術を使うための道具)開発をする部署に赴き、その実験をすることになる。前線からは離れることができたが、マッドな博士が高性能だが安定していない危ないものの試験をさせられるので、大変危険な職場。
 そこで存在Xの介入もあり功を建てる。そして今度は部下を持つ小隊の長として前線に戻ることになる。そこで初めてデグレチャフ少尉の姿を見た、ヴィーシャの感想は幼い姿なのにその場に居るのが違和感がない。
 その後ターニャは軍大学へと進む。そこでたまたま遭ったゼートゥーア准将にアピールする。それが今後彼女が活躍する部隊を創設させることになって、本人には不本意なことにターニャ自身がそれを率いることになる。
 ゼートゥーア准将が鋭敏だからこそ、ターニャが述べた前世の似た戦争を知っていることによる先行き予想の凄さ、つまり正確な予想であることがわかる。ゼートゥーア准将の考えれば考えるほど予測の説得力があることに気づいて驚いている描写、いいよね。
 後世の新聞記者アンドリューが、謎が多い世界大戦のことを調べるというパート、好きだな。その時点で謎になっていて、調べていく中でも色々と諸説がでてきたり、謎解き的に進む。
 大尉となったデグレチャフが航空魔導大隊を新しく作ることになり、以前の部下で同性のセブリャーコフが副官となる。編成にあたって、志願者多数のために設けた試験の話も面白い。またその後の現代的な極めて厳しい再訓練をすることになるパートも好き。その訓練パートでの副官視点もいいね。