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deku_decさんの読書メーター

2014-02-24 遠い声 遠い部屋

遠い声 遠い部屋

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遠い声遠い部屋 (新潮文庫)

遠い声遠い部屋 (新潮文庫)


内容(「BOOK」データベースより)

父親を探してアメリカ南部の小さな町を訪れたジョエルを主人公に、近づきつつある大人の世界を予感して怯えるひとりの少年の、屈折した心理と移ろいやすい感情を見事に捉えた半自伝的な処女長編。戦後アメリカ文学界に彗星のごとく登場したカポーティにより、新鮮な言語感覚と幻想に満ちた文体で構成されたこの小説は、発表当時から大きな波紋を呼び起した記念碑的作品である。

 読み始めるまでは、「遠い声」と「遠い部屋」という短編が入った、短編集ないし中編集だと勘違いしていたが、長編小説。

 ジョエルがジーザス・フィーヴァー馬車に乗せてもらってスカイリイズ・ランディングまでの道を行く。夜になりジーザスが寝入ってしまうが、騾馬がゆっくりと歩きながら夜道を行く中でフローラベルとアイダベルの姉妹に出会い、会話しながら途中まで一緒に行くというような、3人の子供が夜道をゆっくりと歩む馬車に乗って、あるいは連れ添って進むという情景というのは、姉妹がまるで違った口調(お嬢様口調と悪がきのような花仕方)をしているということもあって、より一層その情景が幻想的に感じられて、なかなか素敵で印象的なシーン。

 ジョエルが家の窓に知らない女の人を見たといったとき、エイミイとランドルフが信用していないから「こってり入念に嘘をでっち上げて行った」というのは、非常にほほえましい好きな感じのエピソードだな。

 フローラベルとアイダベルの姉妹喧嘩、フローラベルは木の天辺まで追い詰められているのに、下から眺めているジョエルに対して平素と変わらないお嬢様っぽい口調で話しているのはくすりとくる。

 父との初邂逅が強烈過ぎたのと、その直前に夢を見ていたというのもあり、再度そのことが本文中で言及されるまで夢か現かどっちだったのか判別できなかった。あと、祭りの日にランドルフに落とされた時の描写もそうだが、語り手がかなり混乱しているということがよくわかる文章なのはすごいわ。

 アイダベルと川で裸で水浴びを終え、会話がとまったとき、ジョエルがふいうちでキスをしてアイダベルが怒ったのは、うん、ジョエルなんでそんな行動取ったんだろう。男として扱って欲しいというのがアイダベルが望むことなのに、ぼくは君の親友だ、とあらわすためにキスをするというのはなんでやろ(笑)。まあ、結局女の子としてみているということか。

 ランドルフはなんだか浮世離れしているなあ、そんなに若いというほどもないのだろうが、ジョエルのお兄さん然として20歳くらいに見えなくもない。

 ランドルフが、父親が現在のような状況になった顛末を話しているが、それを聞くと今までのジョエルの生活が一気にグロテスクなものへと変わるような気分になるよ。そして、そんな話をジョエルに聞かせた後、「ほら、おねがいだ、ぼくの聞きたいあの言葉を聞かせておくれ」といって、ジョエルに「みんなそのうち、きっとよくなりますよ」と言わせたのも含めてね、ただ反面、当人らは満足しているし、ある意味弱い者同士が傷のなめあいというか助け合いのようにもみえるし、そうした関係でも本人たちが満足ならそれでもいいのではという気もするけれど。

 アイダベルとジョエルが祭りの夜にどこかへ行こうとするシーンはなんだかその願いはかないっこないことがわかっているから、ほほえましくも少し悲しい。

 サーカスの一員である少女のような体の大きさしかない女性ミス・ウィスティーリアが、自分が普通の男性に好まれないことがわかっているから、ジョエルのような子供に対して哀れなくらいの執着を見せている姿には、胸がズキリと痛む。

 ランドルフに半軟禁にされながら、それを自らもごまかして気づかないようにするジョエルのいい子だ、だからこそ悲しい。ジョエルの親族がきても知れせずに会わせないように別の場所へ移されたが、彼女らが来たことを知りジョエルは、懐郷の情止みがたくなり、いよいよこの町から出る決心をする。

2011-03-08 ティファニーで朝食を

ティファニーで朝食を

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ティファニーで朝食を (新潮文庫)

ティファニーで朝食を (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

第二次大戦下のニューヨークで、居並びセレブの求愛をさらりとかわし、社交界を自在に泳ぐ新人女優ホリー・ゴライトリー。気まぐれで可憐、そして天真爛漫な階下の住人に近づきたい、駆け出し小説家の僕の部屋の呼び鈴を、夜更けに鳴らしたのは他ならぬホリーだった…。表題作ほか、端正な文体と魅力あふれる人物造形で著者の名声を不動のものにした作品集を、清新な新訳でおくる。

村上春樹さん訳で話題になっていたものだけどようやく読了。短編集、だけど表題作は150ページ越えの中編。

「訳者あとがき」で『ホリー・ゴライトリーはトルーマン・カポーティが、そのフィクションの中で創り上げた。おそらくはもっとも魅力的なキャラクターであり、それを一人の女優の姿に簡単に同化してしまうというのは(当時のオードリー・ヘップバーンが魅力的であることはさておいて)いかにももったいない話であると僕は考える。』(P266)とあるのを見て、この訳者あとがきを読んでそういえば映画も有名な作品だったなとようやく思い出したほどなので、特に先入観なく読めたのは良かったのかな。

でもこの短編集では「クリスマスの思い出」がいちばん面白かった。面白い小説読んでいると背筋がゾクゾクすることあるけど、「クリスマスの思い出」では久々にそうした感覚が味わえた。

2010-12-12 冷血

冷血

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冷血 (新潮文庫)

冷血 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

カンザス州の片田舎で起きた一家4人惨殺事件。被害者は皆ロープで縛られ、至近距離から散弾銃で射殺されていた。このあまりにも惨い犯行に、著者は5年余りの歳月を費やして綿密な取材を遂行。そして犯人2名が絞首刑に処せられるまでを見届けた。捜査の手法、犯罪者の心理、死刑制度の是非、そして取材者のモラル―。様々な物議をかもした、衝撃のノンフィクション・ノヴェル。

最近このぐらい長い本を読んでないからちびちびと読み進めていたが、最後の150ページは一気に読み進めた。「ノンフィクション・ノベル」作者の脚色とか個人的な意見が一切入らないのがいいね。それでもこんなに面白い(といってしまうのは昔の事件でも不謹慎かな?)のがすごい。カポーティを読むのはコレが初めてだったけど、他の作品も読もうという気がわいてきた、けど他に「ノンフィクション・ノベル」の作品はあるのかな?

ペリーの自白を読んで、「彼らが長い時間にわたる恐怖を体験し、苦しんだという点だ。デューイはその苦しみを忘れることができなかった。にもかかわらず、怒りを抱くことなく――むしろ、いくぶんかの同情をもって――自分の傍らの男を眺めることができた。というのも、ペリー・スミスの人生は決してバラ色ではなく、憐れむべきものだったからだ。一つの蜃気楼から、また別の蜃気楼へ向かうぶざまで孤独な道程。しかし、デューイの同情は、寛恕と慈悲をもたらすほどに深いものではなかった。彼はペリーとその相棒がつるされるのを――続けてつるされるのを――見たいと望んでいた」(P449)デューイと同じように不思議と、怒りを感じなかったのは自分でも不思議だ。

悲しみ、やるせなさに満ちた終わりにはすごく感情を揺さぶられる。