日々の読書を糧にして-備忘録と駄文感想 このページをアンテナに追加 RSSフィード

deku_decさんの読書メーター

2014-01-21 沈黙

沈黙

| 12:58 | 沈黙 - 日々の読書を糧にして-備忘録と駄文感想 を含むブックマーク 沈黙 - 日々の読書を糧にして-備忘録と駄文感想 のブックマークコメント

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

 キリスト教の知識が全然足りていないせいかもしれないが、いまいちなんで評価されているのかわからないな。小説としては非常にシンプルでわかりやすい設計となっている分、テーマありきのものというか、テーマを面白い、興味深いと強い関心を持てるかでこの小説を面白いと思えるかが決まると思う。どこまで愛せるか、赦せるか、自らの根本たる宗教(愛と赦しの源泉)を犠牲にしてでもそれをなせるか、そして神は愛と赦しを実行するために宗教を捨てることを許すかというようなテーマかな、たぶん。個人的にはテーマに長編小説を一本読む間関心を持ち続けることは出来なかったということもあり、細部の面白さは感じられなかった。それに解説に「事態は予測された通りに進行する。思いもうけぬ不意打ちは、まったく起こらないというのに近いのだから、ドラマとしては、わき道なしの直線的展開が目立つ」とあるように、思いがけぬエピソードとかもないので個人的には物語の面白さもあまり感じられなかったな。

 ロドリゴの視点だから仕方ないかもしれないけど単純にキリシタンが善良で貧しい民草、そして野蛮な弾圧者がいて、という分かりやすい構造に落とし込めているのが、その上からの視線も含めて嫌いだな。彼らの意識の上ではともかく、この年代ではキリスト教世界がそんなに優越しているわけでもないから特に。文明と野蛮で対置したいのだろうとは思うけど、それが若干イラっとこないかどうかは全く別問題。

 関係ないけどキチジロー、酒瓶で酒飲んでいるって、この時代酒瓶なんてあったの、しかもそれが裕福であろうはずがないキチジローが気軽に呑めるものだったのかという二重の疑問がわいたがどうなんだろう。あと、日射病で男が死んだとき番人が死体を焼こうとしたのを、キリシタンたちが止めて結局土葬になったというエピソードあるけど、そもそもこの時代って日本は土葬じゃなかったっけ?単にキリシタンへの侮辱的行いとしても、その抗議を単純に容れるのもおかしな話だし。

 『この国は沼地だ。やがてお前にもわかるだろうな。この国は考えていたより、もっと恐ろしい沼地だった。どんな苗もその沼地に植えられれば、根が腐りはじめる。葉が黄ばみ枯れていく、我々はこの沼地に基督教という苗を植えてしまった。』(P231)という文章は、いろいろなところで引用されているのを見かけるな。まあ、日本で何らかのことをなせなかったときの都合のいい文句というのもあるのだろうが。あまり日本が特殊という言説は好きでないので、ちゃんと分析してる、あるところが優れている、劣っているという言説ならいいけど。そして『この国の者たちが信じたものは我々の神ではない。彼等の神々だった。それを私たちは長い長い間知らず、日本人が基督教徒になったと思い込んでいた』というのは、あまりにも殉教した人たちがかわいそう過ぎるし、報われなさ過ぎるよ。そもそも地理的、歴史的条件が違いすぎる上に、信者の人たちもキリスト教に入ってせいぜい2、3世代だし、弾圧されている上に言語的な、または宗教から来る考え方の隔たりもあるし、キリスト教について教わった期間も短いのだから、全く同じように感じ取れというほうが無理だよ。

 そしてもう一つ踏み絵を踏む時の『踏むがいい。お前の足の痛さをこの私が一番よく知っている。踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生まれ、お前たちの痛さを分つため十字架を背負ったのだ』(P268)という文章も有名だが、それらが印象的なだけに他のシーンはこうしたいくつかのシーンを書くための前書きにみえてくる。上にあげた2つの他には、牢に入れられ、信者が拷問で上げる声を鼾と勘違いしていた場面とかね。

2010-02-06 白い人・黄色い人

白い人・黄色い人

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白い人・黄色い人 (新潮文庫)

白い人・黄色い人 (新潮文庫)

ナチ拷問に焦点をあて、存在の根源に神を求める意志の必然性を探る「白い人」、神をもたない日本人の精神的悲惨を追う「黄色い人」。

遠藤周作さんの小説読むの初めて。有名な作家や小説でも読んでいないことが多いからなるべく読むようにしたい。

遠藤周作さんの初期作の中篇2作。白い人は芥川賞を受賞した作品。

『白い人』、サディズム。元神学生、ナチス。遠藤さんはキリスト教について書かれた作品多いけど、この本に収録されている2作も第2次世界大戦中を舞台にキリスト教について書かれている。『黄色い人』、語り手やキミコの無感動による鈍さに共感を覚える。