テンペスト(1)〜(4)

池上永一著、角川文庫
テンペスト 第一巻 春雷 (角川文庫)
琉球王朝末期を舞台にした宮廷もの。女性が性を偽り「宦官」として王宮の官僚になり大活躍する波瀾万丈のストーリー。途中からは王の側室との「一人二役」もこなすという荒唐無稽な話になっていく。
中国・清と琉球王朝の違いや、主人公の男女の違いはあれど、同じように滅びゆく宮廷の宦官の活躍を描いている「蒼穹の昴」とカブる。台詞を使ったギャグのもっていきかたなどもかなり感じが似ており、読み始め当初は気になって仕方がなかった。
さらに男女の「一人二役」という設定にかなり無理があるうえ、ストーリーも特に終盤はかなり駆け足になり、予定調和的になっていく。
それでも、沖縄出身の筆者らしく「琉球愛」にあふれており、琉球文化の華やかさもよく描かれ、小説としては結構楽しめた。ただ、沖縄の物理的な「暑さ」は全く伝わって来なかった。ウチナンチュにとっては、暑さというのは当たり前すぎて、あえて小説に描く必要のないものなのかもしれない。