2014年12月31日のツイート

婦人科医に聞ける! FTMと治療 本当のトコロ ー健康に暮らしていくためにー(11)


▶休憩、ディスカッション
司会:最初に説明した通りなんですけど、いろんなセクシュアリティの人がいるので、「自分はこうあるべき」と押しつけないことと、もし嫌なこと、たとえば「その発言はちょっと…」と言いたければ言っていただいて構いませんという形の会にしたいです。どなたかあれば、まず先生のほうに質問をしていただく時間をとります。さっそくなんですけど、子宮頸がんの話で、私検査は行っていたんですけど、女性同士の性交渉のみでも感染するんですか?


吉野先生:ウィルスだから、免疫などを介しても移ることはあると思うので。HPV(ヒトパピローマウィルス)って子宮頸がんの病気だけじゃなくて、陰茎の癌とか肛門の癌とか、咽頭がんとか、それにもHPVっているのね。圧倒的に子宮頸がんの発症が高いから、子宮頸がんの予防にワクチンは打ちましょうということなんだけど、男性が打っても問題はないです。世界で73カ国くらいが男性にもワクチンを打ってる。日本は女性だけだけどね。


司会:性別とか関係ないんですね。もう一点いいですか? たまに卵巣が痛くなったりするんですけど、血もたまに出たり、ホルモン注射を打ってるんですけど、急に血が出るのって、この血は止めたほうがいいですか、それとも…?


吉野先生:血が出る以前に、子宮内膜が厚くなっているから、たぶんホルモン錠の問題で、男性ホルモンより女性ホルモンがちょっと勝って、内部が厚くなってきているから、それが破綻出血といって生理みたいに出てくるのね。ホルモン量の調整がうまくいかないとそうなる。あなたたちの年代って性ホルモンの分泌が一番活発だから、それを押え込まなくちゃならないので、けっこう濃度調整は難しいと思う。閉経くらいの人が男性ホルモン打つのと全然話が違うので、ともすれば月経も戻るし。そういうことは起こりやすいと思う。


司会:それは調節するにはどういうふうにしたらいいですか?


吉野先生:それはだから実際ホルモン量を測ったり、女性ホルモン値と男性ホルモン値を見ながら、注射打つペースを少し変えると。


司会:よく3週間というのが目安になっていますけど、きっちり3週間なんてみんなが合うわけはないですよね。


吉野先生:じゃないと思うよ。2週間の人もいれば…。


参加者:3週間に変えて楽になりました。


司会:2週間より3週間のほうが。


吉野先生:ガーンと抑えちゃうことで、体調が少し悪くなってるんだよね。だけど、月経を止めたければ、男性ホルモン量を上げないといけない。どっちをとるかだよね。


Y:ホルモン注射とかSRSについて、あまり詳しくないんですけど、先生にだけじゃなくてみなさんにも聞きたいんですけど、ホルモン注射って、だいたいは精神鑑定を受けることになるんですか?


吉野先生:最初はそうだろうね。やっている精神科ってけっこうあるよね。だけど、長くずっと続けていると婦人科にくる人もいる。


司会:私なんかも特にそのパターンで、やっぱり相談ができないので。生物学的女性なので、専門家にかかりますね。


参加者:でも多くの場所は、精神科と婦人科メインのところがつながっていて、終わったら、そっち行ってね、と促されました。検査もそうですし、ホルモン注射ならこっちのクリニックに行ってね、と。で、私は精神科に行ってから婦人科に紹介されたケースでした。


吉野先生:精神科の紹介でこちらに来ていることもあると思う。


Y:それは、MtFのかたの場合はどうなっていのるか知っているかたはいらっしゃいますか?


参加者:MtFは錠剤を飲まれるかたが多い。


吉野先生:うちにも注射打ちにくるよ。


参加者:泌尿器科でも注射打ってる人がいますよ。


参加者:子宮卵巣切除後に、男性ホルモン投与継続したほうがいいんですか?


吉野先生:子宮卵巣とったら女性ホルモンはもうないし、積極的に男性ホルモンが増えるわけではないので、筋肉質な身体になりたいとか、ヒゲを生やしたいということを望むのであれば打つらしい。それはどうでもいいってことであれば、何もしないでもいいと思う。


Y:体調が悪くなったりは?


吉野先生:体調が悪くなるのは、普通は卵巣とったら悪くなると思うよ。


Y:更年期と同じような症状が出る以外は…。


吉野先生:骨が脆くなる、血管が脆くなる、心筋梗塞、脳血栓とかいろんなリスクは上がります。


参加者:あくまで外見のために打つっていう意味しかないってことですか?


参加者:ただその場合だと、もともと生物学的女性なので、男性ホルモンも女性ホルモンもまったく出ない状態になりますね。それは健康面から考えて…。


吉野先生:だから、まったく健康ではないよね。


一同:爆笑


吉野先生:男性ホルモン打ったからといって健康になるわけじゃないんだけど…。


Y:男性ホルモンを少し打ちつつ、女性ホルモンもちょっと投与するのが…。


吉野先生:それが一番いいと思う。


一同:納得


吉野先生:さっき言ったジェルとか、濃度調整が利くので。男性ホルモン打ってればそっちが優位になるから、そこにちょっとした不調をとるために女性ホルモンを使うとか。不調が出たときにだけ使うでもいいと思う。


参加者:男性ホルモンの塗り薬はまだないんですか?


吉野先生:あると思うよ。


参加者:ミクロゲンパスタ。


参加者:グロミンとかだよね。


参加者:できれば塗布剤が一番良い?


吉野先生:投与経路としては、経口よりは経皮のほうが副作用が少ない。なぜかというと、飲んだものは胃腸で分解されて「肝臓初回通過効果」って分解産物が出てくるので、それが悪さをする。この薬はどの薬でもそうなんだけど、一般的に、経口よりは経皮吸収のほうが副作用が少ないんです。


参加者:男性ホルモンの投与って、125、250が一般的じゃないですか? あれ以上は意味がないんですか?


吉野先生:意味がなくはないと思うけど、たとえば、更年期の人たちがよく言うんだけど、ちょっと足してあげると症状がよくなるじゃん? もっと足せばもっと良くなると思って、勝手に薬増やす人がいるんだけど、それはあんまりリスクを増やすだけなので、やっぱり決められた投与量で、不具合が出たら微調整が必要だけど、大きく2倍打つ、3倍打つ必要はないんじゃないかな。むしろ不健康のリスクを挙げることになる。


参加者:男性ホルモンをあまり打ち過ぎると、かえって女性化するのではないかと。胸が出てきちゃうとか。


吉野先生:胸筋のこと? 脂肪がつくわけじゃないけどね。


参加者:ネット上の噂としてね。


参加者:過剰摂取は男性ホルモンは女性ホルモンに変わりやすい。


吉野先生:変わんねーよ。なんで変わるんだよ。


一同:大爆笑


参加者:そういう、当事者の間での間違った医療知識というのが。


吉野先生:そうだよね。変な情報のほうが行き渡ったりしてるんだよね。


参加者:子宮卵巣残していると癌化するって、大学の授業で言われて。


吉野先生:あなたの臓器はどれもみな癌化する可能性はあるよ。


参加者:ゼロではない。


参加者:ホルモン注射をして、手術するのが1年くらいかかると、すぐに子宮卵巣を摘出しないと、長くホルモン注射を打ったまま子宮を残しておくと身体によくないよ、と知り合いから言われたんです。


吉野先生:そんなことないよ。なんの根拠もないと思うけど、それ。


参加者:…デマ?


吉野先生:デマっていうか、「どうして?」って聞きたいよね。


参加者:その人の母親が看護師さんやってて…


吉野先生:看護師さんとか薬剤師さんとか保健師さんとかうさん臭いのがいっぱいいるから。


一同:大爆笑


吉野先生:けっこうねえ、変に偏った知識でもの言うから、まず自分が思い込むので、思いこみが激しいのであの人たち。わりとそれを伝えちゃうんだよね。けっこう間違っている人もいるから。お母さんが看護師さんて一番厄介な患者さんだね。なんか説明してさ、治療を始めましょうと言ったら、「母が看護師で、それはダメだと言っています」って。もうしょっちゅうだよそういうの。


一同:爆笑


参加者:さっきの話で言うと、男性ホルモン打ってて、女性ホルモンもたまに少し使うっていうので考えると、子宮と卵巣とらないでいるほうが健康なんですか?


吉野先生:健康的ではあると思うよ。もちろんでも、どういう生活をするのか、じゃあ、卵巣残しているから何やってもいいのかっていうと、煙草スパスパお酒ガバガバ飲んでも、それはそれで健康的じゃないからさ。まずはやっぱりその人の基本的な生活習慣が大事なんだと思うけど。さっきも言ったけど、どっちがいいかということじゃなくて、本人の好みとか、そういうのがあると思うので、あなたがヒゲ生やしたいのと、こちらは生やしたくないのと同じ(笑)。


一同:爆笑


吉野先生:それは、個人的な趣味嗜好の問題だと思うのね。どっちを選んでも、その後の健康に注意してほしいと思うから。とったほうがいいとか、とらないほうがいいとか、私は言えないです。それは自分たちで決めること。その代わり、正しい情報を得た上で決めてくださいと。とったらとったでどういうフォローをするか、とらなかったらどういうフォローをするかということが大事だと思って。選択自体に優劣はないと思う。


参加者:戸籍を変えるためにとらないといけないというのは、そう考えるとけっこう辛い話ですね。


吉野先生:戸籍変えないでも仕事してるしね社会で。税金ちゃんと払ってるしさ。いろんな生きかた、多様性を日本も認めないといけないんだよね。それがまだ全然できていないからさ。一方的に遅れてるし、そういうところに自分たちも苦しめられてるっていう人たちも多いような気がする。それはトランスジェンダーの人だけじゃなくて、女性であれ男性であれ、なんかそういうのにすごく縛られて、追いつめられている人たちが多いと思うんだよね。私は「いいじゃん、そのままで」って、「自分のままでいいじゃんそれで!」って、生きてる意味はあるし、楽しければいいじゃんそれで、って思うんだけど、戸籍がどうだからっていうようなものではないと思うし。同性婚認めないということもね、海外では認めているところもあるからね。そういうところに移住して生活している人もいるけどね。北欧とかそのへんは進んでるので。ていうか、ヨーロッパって悪いところもいっぱいあるけど、人間的に成熟している国が多いと思うよ。日本てすごく幼稚なんだよ。「女は若いほうがいい」とかさ。くだらないのがすごく強いの。イタリアとかで、年を取るごとに幸福度が上がるの、ヨーロッパの人たちって。日本は年をとるごとに幸福度が下がるの。調査がちゃんとある。年とることがすごくネガティブ。だって、雑誌とか本もそうだけどさ、いかに若く見せるか、40代や50代の人たち向けの雑誌が、どういう髪型にしたらいいか、どういう化粧のしかたをしたら若く見られるか、そんなのばっかりやってるでしょ? くっだらないなあと思って。


一同:爆笑


吉野先生:アンチエイジングの取材がくると、「アンチエイジング」って言葉は大っ嫌いだから、「それは取材を受けません。エイジングは自然なことで、人間の自然な状況なのでアンチはしません」て。


一同:爆笑


吉野先生:自分にとって心地いいのが一番大事だから、本当に下らない世間の偏見とか世論に惑わされず、縛られず、自由にみなさん生きていていいんだよ!って本当に子どもたちにいつも言うんだけど。親がどうしたとか、男だから女だから関係ないんだよ、やりたいことは何でもいいよ、その代わり正しい知識を持って、やりたいことやるためには健康でないとダメなので、健康に留意しながら、正しい知識を持ってなりたい自分になってほしいと、本当に思います。


司会:その流れで、今度は建設的な話にしたいんですけど、どうしたら婦人科女子医の敷居は下がるのか、どうやったら行きやすくなるのかを、みなさんの要望やアイディアを出してもらってディスカッションをしようと思います。たとえばさきほど先生が言った、ピンクが嫌だから行けないというようなのを出していただきたいと思います。


Y:いま私ちょうどそれを卒論でやってて、アンケートとっているところなんですけど。


吉野先生:できたら見せてください(笑)。


一同:爆笑


Y:まず、この待合室に女性がたくさんいるのと、呼び出されるときに下の名前まで言われちゃうと、保険証とかに書いてある名前だから、変更する前だと女性名みたいに呼ばれてしまうのでしんどい。だから番号とか上の名前にしてくれということがあって、あとはトイレが、女性用トイレしかない場合に、すごく行きづらくて、尿検査がある場合もあると、どうしていいのかわからないかたもいらっしゃったりとか。問診票に男女の性別欄があると困っちゃったりとか、婦人科の中で、医療者の人から「え?」と言われたりとか。興味本位でいろんなことを根掘り葉掘り聞かれてしまったりしてしんどい人もいましたし、内診台に乗るのがしんどくて、あの台って、乗ってボタンを押すと自動的に脚が開いてくるという説明も受けなかったし、開くときに、「嫌だと思うけど、ちょっと我慢してね」の一言があればよかったのに、と言う人もいました。


吉野先生:内診台の研究してる人もいるよ。大学院で。


Y:えっ、そうなんですか??!!


一同:微笑


Y:あとは、「婦人科」という名称が、女性だけのものみたいな感じがして、もっと全般的な名称にしてほしいとか、いろんな科と併設されてると行きやすいとかありました。


司会:なるほど、全部出ましたね(笑)。


一同:爆笑


吉野先生:個人の対応は医者の資質の問題だからさ。「え?」って言うって、何それ?って感じだけど、それは論外だと思う。工夫はいくつかあって、待ち合いが二つあって、入って誰にも会わず診察に行けるっていう設計ね。あちらから診察室に入ってもらって、こっちから出られる、と。


Y:それは予約のときにしておけばいいんですか?


吉野先生:もちろん。○○(企画者の一人)くんはここで通院して長いから、もう慣れた感じよ。


参加者:無愛想で、いつも申し訳ないです。


吉野先生:全然。誰も気にしてないから(笑)。


一同:大爆笑


司会:確かに、「産婦人科」ってついていると、女の人しか行かないというイメージしかなくて、中の人もそう思ってるじゃないかと、そういう恐怖感もあって。


参加者:待合室が怖いですね。


吉野先生:カウンセリングルームみたいなのがあるし、ある程度対応可能なところあるんじゃないかと思って。待合室が一つしかないところっていうのももちろんあるけど。それは最初から調べればわかるし。聞けばいいことだし。


参加者:逆に、婦人科の待合室にいる人たちに聞いたという人がいて、FtMとかがいると落ち着かないっていう人もいて、こっちだけじゃないから(笑)。


一同:爆笑


吉野先生:予約制にしているから、待合室がそんなにあふれるほどにはならないと思うけど、さっき言ったダンナを連れてきた人は、あっちのほうに座ってもらって、ここに男性が座っていると、女性2、3人がいて、「何なの?」って落ち着かないと思うし。○○くんと知り合って12年目で、ここは「カップル用待合室」で男性は向こうにってことだったんだけど、そうか、役に立ったなと思って(笑)。つくっといて良かったな(笑)。


一同:爆笑


参加者:入り口からすでに男性用と別れているのがすごくいいなと思って。たまに、そこまでは行かなきゃいけないところって意味ないんですよね、すでに見られてる感じで。


吉野先生:なぜか女性って奥の見えないところから座るんだよね。だから入り口にいてもお互いに全然見えない。


参加者:いままで他の患者さんと鉢合わせたことはないです。


一同:感嘆


参加者:やっぱすごく受診しやすいよね。


参加者:すごい受診しやすい。身体のこと何でも話せるし。


参加者:HPにそういうことが書いてあれば選びやすいというか。「いきなり別れています」というと、じゃあ、安心して受診できる(笑)。


吉野先生:じゃあ入れますよ(笑)。


参加者:「トランスジェンダーのかたも」と一言書いてあると違うと思う。


参加者:根本は、婦人科に男性がいるということが…アレだから…アレですよね?(笑)。


参加者:そうですね、根本がアレだから。アレが出てこない(笑)。


一同:大爆笑


参加者:だから、通常の妊娠してるかた? とかが来てるときも、ダンナさんも来てね、というのを広めていけば、もう男性がいても当然という環境をつくるしかないと、「婦人科」というイメージを壊すしかないんじゃないかと思って。


参加者:そうするといつも男性が向こうの部屋にいることになっちゃいますからね。それじゃちょっと。


オデ:さっき言った性暴力センターを併設している病院も、戸籍上は女性でも、見た目男性のかたが純粋に患者さんとして行くだけじゃなくて、そこをプロテクトすることはできます。


司会:いろんなかかわりかたができるってことですね。患者側だけだと、どうしても受け身に、後手に回らないとならないですから。あるものをただ受けることしかできないですからね。


オデ:そうですね。


吉野先生:「男の人がいて何が悪い?」っていうね、そういうのをみんなが気にしないようなメンタリティになるのが一番いいと思う。だって、不妊症の人が妊婦さんを見ると殺意が起こるという。


参加者:待合室の問題がある。


吉野先生:そうそう、待合室の。だから、二人目不妊で子どもを連れて不妊の病院に行こうものなら、もうすっごい殺されそうな視線が刺さるらしいんだけど。


参加者:産婦人科は、まずそこの問題がありますね。


吉野先生:けっこう、それを言うクリニックは多いよね。妊婦さんと別にしてるとかさ。私、子ども好きだし、自分で産んでないけど、妊婦見て殺意が起こるなんて仕事になんないからね、そんなの(笑)。


一同:大爆笑


吉野先生:そういうのって、追いつめられちゃうのかな、そういう人たちって。そのことがよろしくないかなって思う。やっぱ、「女性は女性の先生がいい」って言うんだけど、私の知り合いでとんでもなく上手な男性の先生もいるので、個人だと思うんだけど、まだまだなんかそのへんがね。日本は本当に遅れているというか。


参加者:固定概念みたいなのが強いなって気がする。どの場面でも思いますね。


司会:婦人科女子の場でそういうものがけっこう凝縮してて、わかりやすく出てくるなと、今聞いてて思たんですけどね。


参加者:さっきも言ったように、「トランスジェンダーも」とか「男性も来れますよ」とか、余計な一言かもしれないんだけど、やっぱそういう一言があるだけで、それがトランスだったら、「すごく考えてくれてるな」「わかってるんだな」という気持ちが伝わるし、入りやすいのかなって思いますし、他のかたもわざわざ書いているのかと思いつつ、HPを見たら、「あ、そういう人もくるんだ」という心構えにもなると思う。


吉野先生:明日からさっそく載せます(笑)。


一同:大爆笑


司会:ぜひぜひお願いします(笑)。


参加者:多くのクリニックが、ちょっとした心遣いがこちらにはとても嬉しいんだっていうアピールがこちらからも必要な気がしますね。


司会:主体的にアピールすることも大事だと。たった一言で患者さんの環境がいい意味で変わるようなアピールをしよう、と。


オデ:でもね、そのたった一言が、本人は多大な期待をしちゃうから、行ってみてちょっと不快な思いをすると、がっかりしちゃうよ。


参加者:それは行かないとわからない。


オデ:まあねえ。


Y:受診してみて初めてわかる利益ってはたくさんあるって、私自身は婦人科に対してすごく感じているので、その間口を広げるだけで私は価値があると思うから。


オデ:そうですよね。


吉野先生:あと、内診台の話なんだけどね、うちは内診台乗らなくても、性交経験がない人は乗せません。ベッドで充分。お尻でできるし、がん検診もできるし。イギリスなんかベッドで看護師さんが撮ってるんだよ、がん検診。日本は医者じゃないとダメなんだけど。できるんだよ、ベッドで。子どもなんかも、ときどき「かゆい」と言うとベッドで診ますよ。必要ないもん。婦人科へ行くと内診される、内診台に乗せられるというイメージがどうもあって、違うってば!(笑)。


参加者:ネットで広がりますよね。「今日、婦人科で検査してきた!」って(笑)。


参加者:「ご開帳」とかいって(笑)。


参加者:手つっこんだりして、あ、違うか(笑)。


一同:大爆笑


参加者:そのイメージは強いですね。


吉野先生:いくら違うと言っても、なかなかね。お母さんが電話かけてきて、「娘が月経痛がひどいんですけど、ちょっと診てもらえませんか? 内診ありますか?」と、まず聞いてくる。必要がなければやらない。


参加者:普通に敷居が高いですよね。女性でも(笑)。


参加者:最近の若い女の子でもありますよね。来ないっていう。


吉野先生:そんなことはないんだけどねえ。


参加者:じゃ、あれですよね。「内診台だけじゃないよ」っていうのも(笑)。


一同:大爆笑



参加者:「別なのもありますよ」って(笑)。


参加者:そこまで過保護にするのもどうなのかなって(笑)。


吉野先生:面白いよね。トップページにさ、「内診台だけではありません」て(笑)。


参加者:この前、うちに来たんですよ。検査が1000円でできますっていうハガキが。「スカートで来てください」って書いてあった。親とかに、「スカートで行かないといけないのか…」と話したら、「ズボンでもいいんだよ」って。「でも脱がなきゃいけないじゃん!」と思って、そのイメージしかなかった(笑)。吉野先生の話聞いて、「あ、お尻からでもいいんだ!」と思って。


参加者:書いてあるよね。「スカートで来てください」って。あれ辛いよね。


吉野先生:冬場寒いからズボンのほうが多いよ、やっぱり。来て最初は戸惑ったけど、バスタオルあるしね。全然問題ない。


参加者:そういうの、来てみないと分からないよね。


参加者:聞いて初めて分かった。


吉野先生:そこが一番ネックだね。内診台ね。


参加者:情報がないから、みんな不安だと思う。


参加者:自分の中の固定概念が突き進んでっちゃう。


参加者:だからといって、日常会話で婦人科行って内診台の話とかしないし(笑)。


一同:爆笑


参加者:そこが難しい。もうちょっと気軽にできたら、「こういうのがあるらしいよ」とか「この人が聞くと分かるよ」っていうのも。


参加者:日常会話で話さないのたぶん、敷居が高くなる理由。


参加者:FtMが集まっても絶対言わないもんね。


オデ:レズビアンだったら言うけど。


参加者:それは触れちゃいけないみたいなのが、暗黙の了解で絶対あって。


オデ:レズビアンといっても、おそらくフェミニストだから「まんこまんこ」ってバンバン言うよ(笑)。


参加者:みんな下ネタは言うんですよ。中学生のノリなんです。中学生以上のことは言わない(笑)。


一同:大爆笑


参加者:中学生でそういう話ができたら、たぶん今後も「中学生のノリ」とかがなくなって、いい方向に進むんじゃないかと。


参加者:もっと真面目に自分の身体のことを、下ネタも楽しいけど、たまには真面目に語ってみる機会もあったらいいんじゃないかと思う。


参加者:健康面からね。


吉野先生:本当はもっとちゃんとしないといけないんだけど、どうしても勉強のほうにいっちゃうから、保健体育の時間てあるんだけど、半分以上体育だし、保健の時間をちょっとだけ触れる程度だから、全然ダメなんだよね。もっとあそこをちゃんとやらないと。さっき言ったように男の子も何も聞いてないので、中学生くらいになるとインターネットで間違った情報ばかり入るので、「(精子が)三日溜まったら死ぬ」とかさ(笑)。アホなネタばっかりになって洗脳されるから、正しい知識からどんどん離れちゃうんだよね。だいたい商業的にネットでもマンガでもそうだけどさ、金儲けのためにやってるのって大袈裟でヤラセで一方的な情報だから、けっこう間違ってる。「レイプまがいのほうがいいんだ」とか「女性のNoはYesのサイン」とかさ(笑)。間違ったことやってみんな振り回されるのね。間違った情報で洗脳されると、ひいては性暴力やDVにつながっていくので、ちゃんとしたことを教えないといけないよってずーーーっと言ってもダメね。学校もね、今は学業第一主義だからさ。


司会:なるほど。小学生の時点で性教育をしっかりと行えば敷居も自ずと下がってくるし。


吉野先生:幼稚園くらいからずっとやっておかないと。そうすればスムースだと思う。


参加者:親ともなかなか話せないというようなものがある。そこが問題かなと。


参加者:親の健康も超気になってるんですよね。子どもも知識ないから言えないし。


参加者:性的なことを話すのが「恥ずかしい」と思ってるから。


吉野先生:それがそもそも間違いなんだけど、やっぱ隠さなきゃいけないことだからね。だいたいそれがいかん。


参加者:ちょっとタブーみたいなこともあって。


参加者:たぶん、いまは教えたくても教えられないじゃないですか? 親が。


吉野先生:そう、親世代も知らない。保健所とかの講演会もやるんだけど、お母さんたちが何も知らないから、子どもが思春期くらいになってくると、「どうしよう? どうしよう?」となっちゃって。特に男の子持ってるお母さんが慌てている。話す機会もだんだんなくなってくるし、男の子が離れていくから。絶対に言わないの自分のことを。でも心配はしてるね。掃除してたらエロ本が出てきた(笑)。どうしましょう?!って(笑)。


一同:爆笑


参加者:お母さんが教えられなかったら…じゃあ、もう…。


吉野先生:お父さんも出てこないしね。だから、精通の話はお父さんが息子にすればいいんだけどできない。日本の家庭ではほとんど100%に近いくらいにできないからね。


参加者:私は、精通は、小学校1、2年のころから知ってて、少年野球に出て、合宿のときに、女子は2、3人しかいなくて、男子は20人くらいいたんですけど、そこでみんな集められて、コーチか監督に「夜おねしょしたと思ったら、僕らに言いなさい」って。「なんでおねしょなんだろ? おねしょすんのかな?」と思って記憶もあって、中学生のときにちょっとそういうの聞いて、「あのことはアレだったのか!」と思いました(笑)。


吉野先生:へえ、合宿か。なるほどね。


参加者:ちょっと上の子たちに言ってたんですけど。それかな? と思いました。


参加者:そういうアプローチもあるかなと思って、集団て大事だなと思いました。


参加者:男女で分かれて聞くからさ。


吉野先生:あれがよくないんだよ。一緒に聞いたらいいのに。そもそも月経の話も、私のときもそうなんだけど、女子だけ集められて男子は外で遊んでて、男子には「聞かれちゃいけないこと」という刷り込みがあって、「だから恥ずかしいことなんだ」って。小学校でどうやってナプキンを隠そうかとみんな苦心するという(笑)。


<おまけ>
オデの所感。子どものときから子どもが嫌いだったオデだが、障害者になってなにかとベビーカーと鉢合わせする機会が増えた(公共交通機関における車椅子スペースとベビーカーの共有)。オデが気分的に余裕があるときには積極的に赤さんをあやし、本当に可愛いなーと最近は思うのだった。
それに、吉野先生の話を聞いて「これはオデが子どもを持つべきだなあ(産む/産まないは別として、一人里親でもいい。そういうNPO法人がある)。性教育はバッチリ☆」と思ったのだった。


吉野先生も、参加者がちょっと言ったことでグサッ! ときて、明日からまた反省の日々を持つことを言っていました。


おしまい。
婦人科医に聞ける!FTMと治療 本当のトコロ ー健康に暮らしていくためにー(1)
婦人科医に聞ける!FTMと治療 本当のトコロ ー健康に暮らしていくためにー(2)
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