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2008-10-12-Sun
■[日本]世界恐慌の足音を聞きつつ
先週1週間は東京市場を含め、世界中の株式市場は暴落に次ぐ暴落であり、新聞の株式欄を見れば、目に入るのは白抜き数字のオンパレードである。ボーダー予想はあっという間に次々と破られ、気がつけば7000円台も間近というところまで落ちた。落ちる理由が今のところ皆目見当がつかない。アメリカなら判る。金融不安はまだ終わっていない。有力銀行や企業の決算発表は来週である。これが良いものになるはずはない。まさに金融不安の直撃をアメリカは、軍艦で言うところのヴァイタル・パートに喰らい、これからも食らうのである。FRBや財務長官、そして大統領は必死にダメージコントロールに努めている。クリスマス商戦が暗いものになるという予想は誰でも出来る状況にある。ヨーロッパも同じだ。アメリカからの金融不安にこれまた直撃弾を喰らい、アイスランドは沈没の危機にある。EUは首脳の足並みがまだ整わない状況であり、アメリカと並んでヨーロッパの状況は予断を許さない。アメリカが日本同様に月曜日が休日で市場が休みであるのは、全くの幸運と言えるだろう。さて、日本である。
何でここまで落ちるのだろう。おかしな金融商品はあまり買っていないのではないか? かのリーマン・ブラザーズの商品だって、あれが原因でつぶれる会社が日本にはたくさんあるとでも言うのだろうか。勿論景気後退は避けられないし、それは以前から判っていた。だから決算が悪くなるのは織り込み済みではないのか、市場関係者の皆さん。ここまで落ちるという悪材料が日本にあるとは思えない。NYダウと歩調を合わせるがごとく下がる理由が判らない。先進国中でこの「暗黒の1週間」で一番下がっているのが日本だと言うのが正直信じられない。悪材料で一番大きい問って思い浮かぶのは、やっぱり円高である。円高が悪いことだけではない。輸入品が値下がりするからだ。しかし、輸出で飯を食っている会社は多い。そこが困ってしまっては、いくら安くなっても駄目だろうし、上がり方が急すぎるし、何より限度というものがある。
わが国の政府は補正予算を通した。そしてこれから第2の補正を組むかもしれないという状況にある(まぁ、自民党の手柄にしたいんだろうけどさ)。どうやら下がるものは下がると、株式を持っている企業は時価で計算するためにとんでもないことになる訳で。さて、これは政治家が可能な政策である。これから減税などが始まるだろう。これで消費税を上げるなどすればそれは狂気の沙汰であるし、経済学の基礎中の基礎から外れるわけだから、それはさすがにないだろう。増税論者の与謝野馨経済産業大臣の口が堅くなったのもそのせいだ。で、ここで何も動きが聞こえて来ないのが日本銀行である。金融危機の直撃はないものの、実物経済(金融は実物ではないらしい)不況へと直行しつつある日本経済を片一方で支えるはずの存在であるにもかかわらず、日銀の白川総裁は国会には呼ばれない。日本経済に現状について政治家に説明する義務を、どうやら日銀総裁は負っていないらしい。これが日銀の独立というなら、ちゃんちゃらおかしい。FRBのバーナンキ議長は連邦議会で毎週喋っているがねぇ。国が違うって? 日銀総裁人事は国会同意人事だ。国会同意ということは国民の同意だろうに(拡大解釈なのは判ってますよ、ええ)。国会で何も喋らないとはどういう了見だ。呼ばない政治家もどうかしている。
不況に突入しつつあるにもかかわらず、金利を下げないとは何事か。0.5が低いだと。ずっとデフレだからだろうが、低いのは。他の国はインフレだろうが。インフレに振れることなく不況に再び突入しつつある中で、どうして何もしない。市場にドルを出している? そりゃ結構。つか、当たり前だろうし、それ以上のことを日銀は求められているんじゃないか? まさか円高は円の価値が高まることで結構だとでも思っているのか。こうなれば、量的緩和は復活だろう、どう考えても。世界恐慌を防ぐために、各国政府機関が血眼になっている現在、日本銀行だけが孤高を保とうとする理由が判らない。まさか金利を上げたいと、この期に及んでも言うつもりではないだろうな(上げでもしたら、ローン破産者の群れが日銀を襲うだろう)。
一体日銀は何を見て金融政策をしているのだろう。国民を見ていないのは明らかだ。国会すらも見ていないかもしれない。1929年10月24日と29日の2度の大暴落から端を発する世界恐慌は、国際不協調と不作為によって(日本は民政党・浜口雄幸内閣の自滅的経済政策の結果であるが)、塗炭の苦しみを味わい、その結果ファシズム勢力は台頭し、1920年代の平和を維持してきたヴェルサイユ=ワシントン体制は崩壊し、最終的には人類は2度目の世界大戦を経験するに至った。地球規模の恐慌はIT技術のない時代においても発生した。今は昨日の暴落が今日の暴落を呼ぶ。情報は瞬時に地球を巡る。政治はマーケットのスピードとの競争のただ中にある。世界恐慌というものの真の意味は、大量の企業倒産と溢れる失業者の膨大で想像を絶する悲劇だけではない。その先にある「何か」なのだ。
あのときと大きく違うこと。それは情報伝達スピードが段違いであること、国際協調と中央銀行の対処だ。わが国はニューヨークでのG7ではある程度の存在感を持って、公定資金注入の効力を訴えた。英国はその方向に舵を切りドイツも倣うようである。過去のアメリカにおいても公的資金注入をFDRはやった。彼は民主党だったなと思うと、バラク・オバマが大統領に当選するであろうことは、何と言う巡り合わせだろうか。ここで何とも存在感がないのが日銀である。日本は不況に入りつつあることという認識が、日銀は甘いのではないか。財政政策と金融政策が噛み合ないというのは、不幸を通り過ぎて悲劇でしかない。EUならまだ判る。ECBが共通金融政策をおこなうのは当然であるし、財政政策は各加盟国に任されているからだ。トリシェECB総裁がEUには連邦予算がないとこぼしたというが、それは全く的を射ている。で、ここは日本である。1つの国であるのに、これだけ協調がないのは何と言うことだろう(帝国時代の日本陸軍と日本海軍じゃあるまいし)。世界恐慌を止めようとしている努力を横で見物しているかの如き日銀の姿勢は指弾されて然るべきだ。政治だけではない、日銀が動いてこその世界恐慌防止のはずだ。口先だけで金融政策が出来れば楽なものだ。それが出来た(らしい)人もいるが、日銀総裁はできるのかい?
さて、明日月曜日が休日ではない国々の株式市場と為替相場はどうなるのだろう。地獄の釜の中はまだ出るべきものはあるのだろうか。西ではアイスランドが破産寸前の状況だが、通貨危機状態になっている隣国韓国の状況も注視しなければならないだろう。マーケットの悲鳴が、世界恐慌を告げるものとなるかどうか。今年はまだ2ヵ月半ある。これから何が起こるか。歴史的非常事態のただ中にある現在、何が起こってもおかしくはない。そう考えるべきなのだろう。




