赤旗海賊版

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72/09/30 (Sat)

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72/09/03 (Sun) 山代巴「わたしの報告」(3/)

【3】 おっくうについて

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72/09/02 (Sat) 山代巴「わたしの報告」(2/)

【2】 補償要求のあとにつぐもの

「きのこ会」の誕生は,新書『この世界の片隅で』を足台にしている. この足台はどうしてつくられたか,私はいまそのことを思う


『この世界の片隅で』は「広島研究の会」の成果である. 私の「広島研究の会」での役割は,自発的な被爆者の組織を最初につくった,故川出健君の遺志やその方法を,もう一度確かめ,できることなら受け継ぐ組織を残したいということにあった. 川出健や私が共通して持っていた方法を要約すれば,被爆者といえどもその平和要求の一番の砦は,自己の内面の革命で,このためには互いが実践し討論し,新しい自分,新しい相手を発見しつつ,同志的に連帯していくことだった. これは畠中さんの「我々が幸せになるためには,そうしたあらゆる宿命から生じる難を一つ一つ打開し,一歩一歩幸福へ前進していく以外にない. そのためには先ず,自分自身の革命からおこなっていかなければならない」と共通の考え方だと思う. ところがこれは抽象の世界での共通で,実践に移した場合には,この共通の言葉を,ある者は祈ればよいというようにも受け取り,ある者は古い日本人のままの努力を重ねて行き,ある者は古い日本人のままの努力に正面からぶつかり,あの侵略戦争の反省が行動の基礎であるというように受け取る. 実践すれば必ずこの対立が起こってくる. そこから分裂ということも起きてくる. 分裂せずに互いの内面の革命を助け合い,連帯を保って行くということは,大変むずかしいことなのだ.「きのこ会」がこの困難にかつて一度もぶつからなかったということは,互いの内面革命の面は,実践の上での連帯へは向かわず,抽象のところに止めて,今日までの連帯を保って来た証拠といえるのではないだろうか. これが一万五千円を引き出したあとの,気の抜けた沈滞,会としての活動にピリオドが打たれたかと思えるほどの状態の一番の原因だろうと私は思う


畠中さんが「片隅の記録」で書かれている「我々の運動は八月が近づくと夏の夜空に彩られる花火のように,パッと燃えてはスーッと消えて行く一時的なはかないものであってはいけない」という,運動への願望は,一人畠中さんだけのものではなく,「きのこ会」と「きのこ会」にかかわる全員のものであったろうと私は思う. そしてその願望は,互いの日々の内部革命の積み重ねにかかっている. 認定と補償にまずまずの実りを得たいまは,遠慮の殻を破るのが第一だと思う. 遠慮の殻を破った会報は,全員と会にかかわる全員の,一人一人の内部変革の報告集であっていいのではなかろうか. 時々カンパを集めて送って下さった人も,会報を買って読んで下さった人も,その人々の内面変革の実践報告を送って,互いの心に波紋をひろげて下さっていいのではなかろうか. 私は会報の事務局報告にある「いま,日本全国で戦われている平和のための戦いの底辺として,それらと連帯して戦うということは,観念的にはわかるが,なかなかそこに辿り着く途はけわしいように思う. むしろ,その過程を大切にしていくような活動をしていきたいものである」に対してそう思う


そこで長岡さんから何か書くようにすすめられたのを機会に,私の内部変革の報告を送ることにした. ものには順序があるというので何年も前のことにまで遡っていたら大変だから,書くことを求められた6月の一月をとって報告することにした

【3】 おっくうについて

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72/09/01 (Fri) 山代巴「わたしの報告」(1/)

山代巴『山代巴文庫 第II期 第4巻 原爆に生きて』径書房,1991/07/25


わたしの報告



    山代巴



会報No.6の事務局報告は,


…これからどう「きのこ会」がすすんでいくかは非常にむつかしい問題といえる. 確かな手応えのうえでともかく5年間,まとまって活動してきた「きのこ会」が,理念的な次元でどう運動を展開していくのか,この小冊誌を読まれた方の忌憚のないご意見をぜひききたいものである


と述べていた. 私のこの手紙はそれに応じたものと受けとめて下さい

【1】 遠慮あれこれ

同じ事務局報告の中に,次のようなところがある


…中泉東大名誉教授が班長になり,小頭症に関するオーソリティーとして有馬東邦大学助教授,その他原医研所長の志水教授,さきの田淵教授などが厚生省の委託をうけ研究調査するというかたちで,ふたたび,三たび調査が開始された. 暑いさかりの8月であった. 中泉班長は「きのこ会」の父母を前に,決して悪いようにはしない. 静かに陳情されたみなさま方の誠意は充分に汲む. このように厚生省が動き始めたのは異例のことだ. その点を含んでおいてほしい. などと語った. 反体制的に騒々しく運動しない方が利口ですよというニュアンスが言外に感じられた…


ここには平和運動に好意を持たぬ官僚を相手に,一日も早く行政的に親の願いをかなえようとした事務局の慎重な配慮がのぞいている. 私はこの配慮に対して自分の意見を押し出すことを遠慮してきた


事務局報告はまた


原水爆禁止運動というより広い運動の場で,問題の解決をはかることも可能であったろう. しかし,特定のイデオロギーをもたず,子のためという願いだけで統一された「きのこ会」の依るべき運動体は残念ながらなかった. 既成のすべての団体から同じように協力は求めるが,どの団体にも所属せず,特別の関係をもつまいとの雰囲気が,いつごろからか会全体を色濃く支配していた…


これも私の遠慮の一因になっている. 会員一人一人の日常生活の救援が急を要した時期,同じ被爆者の小グループ「山下会」の人々の救援の心情と,「きのこ会」の人々の心情と摩擦を起こしたことがあった. 「山下会」の人々とも関係のある私の立場は微妙で,どちらにも沈黙する妙な遠慮が長く続いた


こうした遠慮も功があって,とにかく「きのこ会」は,官僚側から見ても,平和運動勢力から見ても,一個の独立した「子のために」という願いだけで統一した親の組織として,社会性をもち,第一の願いであった原爆との因果関係を認めさせることに成功した. それに対する補償要求も不充分ながら成果があがった. 原子爆弾被爆者に対する特別措置法が施行され,認定患者に特別手当一万円,医療手当五千円が支給されることになったのだ. この成果と運動の関係は非常に微妙だ. 事務局報告は次のように述べている


神の座ともいうべき胎内に侵入し,わが子を不具とした原爆に対する怒りは,月々一万五千円であがなえるものではない. しかし,日々の苦しい生活の中でこの金が大変助けになるのも,事実で,助けになるから,よくしてもらったとつい思ってしまう. そういう感情にとらわれてしまうと,結局,うちの子ばかりではない,もっとひどい人がいる. うちのはまだいい方だという更に下を見る感情が生まれてくる. 差別感が生じる. 不具の子と直面する日常の中で原爆への怨念は形あるものとしても,月々一万五千円という銭を媒介として差別感へと変質していっているのではあるまいか. 行政の枠から切り棄てられていたときには,冷淡な政府に対する怨みは執念と化したエネルギーとして一万五千円を引き出してきた. しかし,それを手にしたとき,行動のエネルギーとしての執念は変質してしまった. 「きのこ会」としての活動に実質的にピリオドが打たれたと正直に告白するのは性急であろうか


私はここのところを読んでいて,ふと会報No.5を思い出した. 会報No.5には会長畠中国三さんの「片隅の記録」がのっている. これは69頁の長文で,この中に作家井上光晴氏の,咽喉まで出る言葉の遠慮とのかかわりのところがある


昭和47年7月,作家の井上光晴氏が訪ねてこられた. 総合雑誌『世界』の取材で広島へこられ被爆者の状態を見られたもので『世界』8月号に「生きるための夏-自分の中の被爆者」と云う題名で書かれていた


この文中私の「アメリカは原爆を使用した責任を取り被爆者に補償しなければならない,又我々も団結してそれを要求しなければならない」という事に対し「アメリカが原爆を補償するために金をだせばあなたはうけとりますか. 私は口まででかかった言葉をおさえた. 私の反問自体がひどく浮き上がるように思えたからである」とあり,また昭和48年8月19日号の『アサヒグラフ』に「逆流する重たい時間」という被爆者に関した同氏の文中『世界』に書かれたと同じように「私は去年岩国で畠中さんと会った時,アメリカが原爆を補償するために金をだせばあなたはうけとりますか,口まででかかった言葉をおさえたことがあるが,畠中さんの苦しさがわかるだけに一層ゆすぶりたいような気もするのだ」と,再度に渡って同じような事が載せられており井上氏から見た場合「ひどい目に会わされた敵国からおめぐみを出されたら貴方はそのおめぐみを取るか」とはがゆい気持ちで私の話を聞かれたものと思われる


私は今一度はっきりとのべて置かねばならない「私は物乞いでもなければ,物もらいでもない」と云うことを…


畠中さんの補償要求の心底は


責任の果たせない者に原水爆禁止はあり得ないのである. その責任を果たすために保障を要求するので物乞ではないのではある


の言葉になって,井上氏の遠慮に強い反発を見せている. それは加害者米国だけでなく,日本政府の戦争責任追及の言葉にもなり


日本政府は引揚者の問題がかたづいたら戦後の処理は一切終るといっているが,もってのほかである. 第二次大戦に於ける最後の被害者は広島,長崎に於ける原爆被爆者であり,その中でも胎内被爆小頭児こそ最も最後の被害者で,この最後の被害者にまで援護と保障が行われた時こそはじめて一切の処理が終ったといえるのである…被爆者の問題を社会保障の枠の内で処理するといっているが,これもまたもってのほかである. 社会保障で処理するということは,被爆者を戦争被害者とみなしていないという事で,戦争被害者とはあくまで外地で受けた被害のみに限るようだ. これでは国民に戦後の責任を果たすという事にはならないのではあるまいか



内地での出来事であり,軍人でないという事によって社会保障でかたづけようとする態度は明らかに戦争に対する責任を国民にしめす態度ではない



戦地の軍人に恩給という保障がある如く,原爆という特殊な戦争被害に対し,被爆者への政府の責任を要求しているのであり,被爆者にはその当然な権利があるのである


これらの言葉は会長畠中氏一人の心ではなく,会員全体の補償要求の心だったと私は受け取っていた. 戦争責任の追及としての補償要求は,運動のあり方についても


我々の運動は八月が近づくと夏の夜空に彩られる花火のように,パッと燃えてはスーッと消えて行く一時的なはかないものであってはならない. 被爆時の初期の怒りに返れと叫びたい. そして立ち上がろうよ子孫のために,血涙もって訴えるような世界平和と人類の幸福のために. 追及し,要求しようよ,日本政府が果たさなければならない被爆者への責任と,我等が生きる権利のために



被害者は政府に反省と自覚に立った援護をうながすためには全民衆に燃えるが如き世論を盛り上げ一大旋風を巻き起こさねばならない


というような格調高い広がりを,文章の上に示していた. それは外に向けてだけではなく,自らの内部変革をも提起して


広島で原爆に会うのも宿命なら,小頭児として生まれて来なければならなかった百合子も宿命であり,その子を持つという親もまたその家庭へ姉妹として生まれて来た子供たちもみんな大きな宿命を持って来ているのである. 我々が幸せになるためには,そうしたあらゆる宿命から生じる難を一つ一つ打開し,一歩一歩幸福へ前進していく以外にない. そのためには先ず,自分自身の革命からおこなっていかなければならない. 美醜,利害,善悪の判断にも迷うような,たよりになるようで案外たよりにならない人間の心の弱さ,その弱さを革命することによって宿命を打開する力も付いて来るのだ


と書かせている. 私は,これらの文章の綴られている畠中氏の「片隅の記録」を示すことで,井上氏と同様な目で「きのこ会」の歩みを眺めている人々に「見て下さい. 畠中さんは地道に自分の革命に取り組んで,そこから権力の戦争責任を追及しています. きのこ会の補償要求は戦争責任の追及なのですよ. 戦争責任を問わずに核兵器の禁止はできんでしょう」と,胸を張って言えた. そのためもあって,会報No.5は,私のところにはいま,たった一部しか残っていない


いま,事務局報告の如く,一万五千円を引き出したとき,行動のエネルギーとしての執念は変質して,会の活動にピリオドが打たれたとしたら,いままで心配しながら咽喉まで出そうな言葉を遠慮していた人たちから「それ見ろ!補償主義の行きつくところはそうしたもんだ」と言われても,私には返す言葉がない



⇒【2】補償要求のあとにつぐもの id:dempax:19720902

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