アーサー・ビナード【集団的自衛権を問う】言葉にごまかされるな

アーサー・ビナード集団的自衛権を問う】言葉にごまかされるな


朝日新聞2014/06/27朝刊(38面社会)


言葉は何かを伝えたり,世界をおもしろく見つめたりするもの. 日本語で詩を書いていて僕はそう思っています. でも「人をだます」ためにも使われることを忘れてはいけない


米国は朝鮮戦争(1950〜53年)で宣戦布告していません. ずっと「警察行動」と言っていました. その後のベトナム戦争も宣戦布告せず「国防」として戦い続けました


日本は今,米国の下請けで戦争が出来る国になろうとしています. それが「集団的自衛権」という言葉で誤魔化されようとしている気がします. 集団的自衛権はいわば「包装紙」. 破ると「戦争」という中身が出てくるんです


オバマ大統領が4月に来日したとき「大統領が集団的自衛権の行使容認を支持」と報じられました. 僕は「支持」じゃなく「指示」だったととらえています. 米軍にやらせたくないことを日本にやってもらうため「自衛隊をどこにも出せるようにしろ」と


米国による「押し付け」と感じず,安倍首相たちも突き進んでいます.「戦争放棄」をうたう憲法を理由に断ることができるのに. 集団的自衛権を認めてしまったら,米国の言いなりになるだけ.「属国」のようになってしまいます


米国は自由や民主主義を唱えていますが,政府は憲法違反を繰返し,国家権力に歯止めをかけられずに来てしまった. 日本にはそんな国になってほしくない. 政治家の言葉に誤魔化されてはいけない(聞き手…竹田)