リボン・スキャニングとは何か?その3

本日のお題: VHSの時代を思い出して!


前々回(http://d.hatena.ne.jp/denshikA/20100517)、リボン・スキャニングという「(自称)超マイナーでありながら、メジャー級の進歩」を紹介し、前回(http://d.hatena.ne.jp/denshikA/20100518)、コマの自動検出について、

マイクロフィルムを電子化していくとき、白黒のグラフをもとに、コマを検出し、自動的に切り抜いていくことが理論的に可能なこと

を説明し、

ところが、「理論的に可能」なことは、たいてい、現場では通用しません。

という、ありきたりな流れですね。流れについてけてないな、と思う方は、http://d.hatena.ne.jp/denshikA/20100517から始めてください。


そこで、本日、現場ではどんなことになるのか、ということを説明していきましょう。ただし、話を分かりやすくするために、かなり尾ヒレをつけて、脚色しますので、鵜呑みにしないでください。なんとなく、雰囲気を味わってください。


マイクロフィルムをスキャンすると、こんな感じの画像が取り込めますね。


コマの自動検出がうまく機能したとすると、

こんな感じになり、それぞれのコマを保存していきますので、

       

こんな感じの画像がたくさんできてくるわけですね。前にも引用しましたが、「16mmフィルムは幅16mm、長さが100フィート(約30.5m)でA4サイズの書類が2400枚程度撮影できます。*1」ということなので、1リールのマイクロフィルムをスキャンすると、2400枚画像ができる、というわけです。


ところが、これは理論上のお話です。


実際は、コマの自動検出をしくじる場合があります*2。緑枠がしくじってしまったところです。


すると、こんな感じの画像が出来上がってきます。

        


スキャン後の検査で、こんなコマ検出のしくじりを発見してしまうと、当然スキャンのやり直しをすることになるわけです。


でも、「しくじった部分だけ再スキャンすればいいんでしょ?」と思いますよね。ピンポン!正解です。


でも、「じゃあ、たいしたことないですね?」と思いますよね。ブブーッ!不正解です。


ここで、本日のお題「VHSの時代を思い出して!」の登場です。ヤングな方はご存知ないかもしれませんが、その昔、VHSというビデオテープがありました。ビデオテープの中のドラマとかを見ようとすると、「頭だし」なんてものをしなくてはいけなかったんです。ヤングな方、知ってます?/オールドな方、覚えてます?(以下、知っている人、思い出した人を対象に、話を進めます。)


マイクロフィルムのスキャンで、コマ検出のしくじりを発見した場合、しくじった部分だけ再スキャンすればいいんですが、そのしくじった部分を「頭だし」するのが、やたらと大変なんです。なぜなら、フィルムは長さ30mくらいで、中には画像が2400個くらい入っているんですから。


実際の流れでみていきましょう。

  1. うーん、大変だ、コマ検出のしくじりを発見 おおよそ何番目の画像だ?*3
            
  2. フィルムを頭だしするぞ!
  3. ここだ、ここ、フィルムをスキャナにセットして、はい、チーズ、カシャ!


さて、ここで、みなさん、「おおよそ何番目の画像だ?」というところで、例えば、1200番目くらいだと判明したとしましょう。マイクロフィルムの長さは30mくらいだとして、おおよそ半分の15m分を、手でハンドルを(300回転くらい)回して、早送りしていかないといけません。そして、だいたい1200番目と思われるあたりで虫眼鏡を用意して、1コマづつチェックしながら、スキャン画像と同じものをマイクロフィルムの中から探しだすのです。(場合によっては、頭だしが面倒なので、はじめから、スキャンし直しちゃうこともあるんです。そんで、またもや、コマ検出をしくじって、再々スキャンに突入し・・・という永遠のループに。)毎日こんなことしてたら、腱鞘炎になって、目も疲れて、寿命が縮みます。


VHSビデオでも、そうでしょう?おおよその時間が分かっていたら、そのあたりまで早送りでどんどん送っていって、近くにきたら、とりあえず再生して、ちょい早送りで頭だししてましたよね?途中、行き過ぎちゃったら、少し戻して、戻しすぎたら、少し送って、などと繰り返しながら。


その点、DVDは便利でいいですよね?頭だしする必要がなくて、見たい番組をメニューから選んで、ボタンをポチっと押すと、すぐにその部分から始まりますよね。


そうです、マイクロフィルムにおいても、リボン・スキャニングというものを利用すれば、そういうDVD的な簡単スタートが可能になってくるわけです。


というわけで、次回は、やっと、元に戻って、リボン・スキャニングにおける作業フローでも確認してみましょう。きっと、「でら、便利になったじゃん」と思っていただけるはずです。

*1:http://jcws.or.jp/microfilm.html

*2:多いか少ないか、それは分かりません。ただ、たった1個でも見つかると、以下で説明するような、かなり大変な作業が待っています。

*3:この画像の場合、単に3番目くらいになっていますが、もっと長いフィルムの一部をアップにしていると考えてくださいね。