「賭博堕天録カイジ 和也編」3巻感想

賭博堕天録カイジ 和也編(3) (ヤンマガKCスペシャル)

賭博堕天録カイジ 和也編(3) (ヤンマガKCスペシャル)

6月4日に「賭博堕天録カイジ 和也編」の新刊が発売されました。
会長の息子でボンボンでプロデューサーで小説家でもある兵藤和也の新たな一面が爆発しまくりの和也編。
表紙は黒服二人に押さえつけられながら泣きわめくカイジですが、本編のこのシーンでは一度も泣いてません。

同日発売の「福本伸行 人生を逆転する名言集 2」についてはたぶんまたいずれ。




2巻から光山・チャン・マリオの3人による友情確認ゲーム「救出」が続行中。
さらに3巻はチャンとマリオの回想話が半分近くを占めています。*1


正直こんな脇役はどうでもいいので早く進めてほしいのですが、残る光山の過去を描き切るまでこのままのペースで続く気が…。
ただでさえ展開が遅いところにこんな回想を挿入されても「いいから早くカイジギャンブルしろ!」という苛立ちが先行してしまいがち。新キャラたちの魅力が薄いのであまり共感できず、不遇で重苦しい過去がやや上滑りしているように感じます。テンポも悪いです。


それにしても福本先生が外国人キャラをこんなに掘り下げて描くのはめずらしい、というかたぶん初めてかもしれない。涯に出てきた平田サーンの黒人くらいしか思い浮かばない。ペドロが城山小太郎*2に見えました。
今のところ出身地での回想ばかりですが、なぜこの3人が相手のためなら腎臓を提供してもいいとおもえるほどの深い友情で結ばれているのかの過去もそのうち明かされるのでしょうか。これは破滅フラグの予感。




相変わらず傍観者のままのカイジ。3巻出番少ないです。

その分救出ゲームに一喜一憂。豊富なリアクション芸をかましてくれて和也もプロデューサー冥利に尽きますね。すぐ横であれだけジタバタ暴れていたらいくら大音量の音楽がかかってても少しくらい目をやってしまいそうですが主人公見向きもされません。

それにしても鷲巣さまと同じく目がどんどん少女漫画レベルに大きくなってきているような気がします。アゴとんがり絵柄ウイルスと眼球拡大症候群の併発が。


1ゲームが終わるたびに「3人は裏切らないよ」派カイジと「いいや裏切るよ」派の和也の押し問答の繰り返し状態ですが、カイジも今まであれだけひどい裏切り方をされてきて、面識のない3人をよくぞあれだけ信じられるなと感心してしまうほど異常なお人好しっぷり。

大甘っ……!治ってねえっ……!こいつの妙な善人ぶり……!
掬われて当然だな……!こんなんじゃ足を……!進歩ゼロ……!いずれ喰い殺される……!そんな考えじゃ……!(遠藤/破戒録)


ほんとにどうしてカイジはそう簡単に他人に対して深々と感情移入できるのか。愚かなまでに信じきれるのか。そこがカイジの人間らしい長所でもあり、弱点でもあるわけですが。


2巻であった通り、救出ゲームはカイジの真実(リアル)と和也の真実(リアル)、どちらが正しいかの実験という意味合いも含まれています。
目の前の3人を信じることで、「所詮人間なんて自分だけが可愛い」という和也の歪んだ考えを打ち砕きたい気持ち、「信頼で結ばれた仲間は裏切らない」「そうであってほしい」と自分に言い聞かせている部分が強いのかもしれません。

なるほど……。土壇場 いや……土壇場でなくても 風向きや条件……状況……その変化で人は容易く寝返る!裏切る!
が……!が……!違う!!
どんな状況でも たとえそれが死や……今死んじまう…っていうような状況でも……人間らしさを失わない!失わず死ぬ!そんな強さを見せる人間もいるんだ!それは…一見弱々しそうに見える人間の中にも!(カイジ/和也編)


改めて石田さんの存在はカイジの中で大きな支えになっているんだなあと。


今週のヤンマガでは草食男子ズが確固たる意志で団結。まだまだ終わりそうにありません。福本作品は一章完結後に単行本で一気読みした方が絶対におもしろいので毎週連載を追うのは結構しんどいです。ドMにしかおすすめできない。




おまけ。3巻で一番なごんだシーン。
カイジは完全に和也のことを変態的サドマシーンだとおもっているよね。和也も和也で自分アピールの仕方が下手くそすぎるとおもいます。
 
 

*1:しかし上の画像の「再び再開!」は日本語としてどうなのか。

*2:零に出てきた小太郎・ヒルマウンテンウィリアムスなんたら。