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2007-02-02

[]アンパンマンができるまで その3 02:36 アンパンマンができるまで その3を含むブックマーク アンパンマンができるまで その3のブックマークコメント

余はここに

漫画集出版を

ビール国民に対して

布告する

ビール国王


ボクはあこがれるなあ 王者の風格に

高貴純潔慈愛のまなざし ゆっくりと微笑して

心は四月の太陽のようにあたたかい

ああ王さま ボクも

あなたの国へ行き あふれる涙は正義のため

マンガかくのはお金のためじゃない

みんなをニッコリ笑わせる

あなたの政策に協力したいのです

(やなせたかし 「アンパンマン遺書」)


1973年。それは、やなせ先生のターニング・ポイントの年でした。

詩集を出したサンリオ社がどんどんと大きくなり、やなせ先生の詩の本も順調に売れていました。

そこで社長に詩の雑誌を作ることを持ちかけたやなせ先生

季刊誌の薄いものでいい、編集費は無料で自分の独力でやるから、と頼み込んだところ、二つ返事で了承されて、「詩とメルヘンが創刊とあいなりました。

これが良く売れたので、すぐに月刊誌へと移行。「『詩とメルヘン』の会社だから」という理由でサンリオに入社してくる若者が出てくるくらいに人気でした。

同時期に「漫画家絵本の会」という同人サークルも作りました。「絵本好きな漫画家仲間で、絵本の会をつくって丸善展覧会をしよう」というコンセプトです。やなせ先生長新太手塚治虫や永嶋慎二などの豪華な面子が集まり、大盛況となります。やなせ先生は、このときの同人たちと一緒に活動したことが、絵本を作るうえで大変勉強になったといいます。

そして同年秋、名作「あんぱんまん」が初公開されます。


もともとアンパンマンは「PHP」という雑誌に連載していた「十二の真珠」という短編童話の中の一つでした。そのアンパンマンは、顔がパンのアンパンマンと違い生身の人間で、戦時下の空を飛んで、飢えている子供にパンを配る正義の味方でした。しかし国境を越えたとたん、未確認飛行物体と思われて撃たれ、身体に風穴を空けて墜落してしまう…というお話でした。

さすがにこれは売れないということで、茶こげたマントに身を包み、アンパンの頭をもった正義の味方、「あんぱんまん」が出来ました。

あんぱんまん (キンダーおはなしえほん傑作選 8)

あんぱんまん (キンダーおはなしえほん傑作選 8)

*1


この「あんぱんまん」には、当時流行っていた仮面ライダーウルトラマンなどのヒーローに対する、戦争を経て培われたやなせ先生なりの「正義」のあり方が描かれています。

後書きにはこうあります。

子どもたちとおんなじに、ぼくもスーパーマン仮面ものが大好きなのですが、いつもふしぎにおもうのは、大格闘しても着ているものが破れないし汚れない、だれのためにたたかっているのか、よくわからないということです。

ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そして、そのためにかならず自分も深く傷つくものです。そしてそういう捨身、献身の心なくしては正義は行えませんし、また、私たちが現在、ほんとうに困っていることといえば物価高や、公害、飢えということで、正義の超人はそのためにこそ、たたかわねばならないのです。

あんぱんまんは、やけこげだらけのボロボロの、こげ茶色のマントを着て、ひっそりと、はずかしそうに登場します。自分を食べさせることによって、飢える人を救います。それでも顔は、気楽そうに笑っているのです。

さて、こんな、あんぱんまんを子どもたちは、好きになってくれるでしょうか。それとも、やはり、テレビの人気者のほうがいいですか。

やなせたかし 「あんぱんまん」あとがきより)

初期の絵本アンパンマンは、顔の全てがすっかり食べ尽くされることで、ようやく新しい顔を得ることが出来ます。

文化人類学者の出口顕は、これを「自らの死と引き換えに、または命を賭けてその一部を与えて他者の命を救う、臓器ドナーと同様のことを実践している」と読み、このことが、傷つくことなしには正義は行えないという作者の主張であり、アンパンマンエッセンスだと解釈します。


当初アンパンマンは、あまり世間から受け入れられませんでした。もともと幼稚園保育園に直接販売される直販本で普通本屋に出回りませんでしたし、出版社からはアンパンマンはもうこれっきりで」といわれ、幼稚園先生からは「顔を食べさせるなんて残酷と怒りの手紙が届き、絵本評論家からは子供はこんなくだらない絵本を読んでも面白がらない」と酷評される始末。

そこでやなせ先生は、自分が編集長を務める「詩とメルヘン」に大人向けの「熱血メルヘン怪傑アンパンマンを連載しました。これは先生の好きなフランケンシュタインベースにしたお話で、かなりダークな雰囲気のもの。これを紹介するだけでもエントリが一つ出来てしまうので省略しますが、一年続けて「支離滅裂なお話」になってしまったために打ち切られます。ちなみに最終回は、殺人未遂で監獄に入れられたアンパンマン脱獄する」というストーンオーシャンな話でした。後にこのアンパンマン書籍化されますが、現在絶版です。

そのほかにも先生は「いちごえほん」「イラストレ」などの雑誌を創刊し、三本の編集長をかけもちします。そこでもアンパンマンは、誰に知られることもなく、ひっそりと連載されました。

しかし「あんぱんまん」を認める層が徐々に増えつつありました。

子供には向かないとされたアンパンマン見出したのは、皮肉にも二歳・三歳の子供たち。

どこに行っても、「うちの幼稚園子供アンパンマンが大好きで」などとと言われ、もう少し高年齢向けの作風だったやなせ先生は、どうしたものかと戸惑います。アンパンマンも気持ちとしては小学生くらいの児童に向けて書いていたもの。今まで五歳以下に向けた作品を作るのは無理だと思っていたのに、どうしたものか。しかしやなせ先生はそこで決心を固めました。

この読者層に対して、大人はどう対処するのか。甘い赤ちゃん言葉で「かわいいウサちゃん」くらいのところでお茶をにごしていたのではないか。

ぼくは真剣に考えるようになった。そして、自分のメッセージをしっかりと入れることにした。

正義とは何か。傷つくことなしに正義は行えない」

やなせたかし 「アンパンマン遺書」)

「あんぱんまん」のキンダーおはなしえほん傑作選版が出版された76年、六本木の地下劇場で、最初の「アンパンマンミュージカル」が開かれました。このミュージカルで、やなせ先生アンパンマンの重大な欠点を見つけます。

それは、悪役の存在でした。当時のアンパンマンの悪役は普通人間で、アンパンマンの相手役としてはパンチが不足していたのです。

そこで先生「食品の敵はバイキンだろう」ということでばいきんまんを思いつきました。こうして、アンパンマンばいきんまんという永遠のライバルが出来上がったのです。

ネットではよく、二人の対立する理由が不透明なせいで「ばいきんまんアンパンマンから金をもらって、アンパンマンの引き立て役としてわざと人々をいじめて退治されている。本当に腹黒いのはアンパンマン」みたいな冗談が飛び交ったりしますが、やなせ先生自身は、二人の戦いについてこう述べています。

現在新型肺炎SARS)とか、鳥インフルエンザとか、バイキンが猛威をふるっていて人類共通の敵になっています。しかし酵母菌のようにパンをつくるときに必要な菌、納豆菌とか乳酸菌とか有用善玉菌も多いから、バイキンを死滅させると人間絶滅する。うまい具合にバランスがとれてるのがいいわけです。

だからアンパンマンばいきんまんの闘いは、バランスを保ちながら永遠に続いていくことになります。

やなせたかし 「人生なんて夢だけど」)

実際には、もやしもん的な深い意味があったわけですね。本当ですか?

ばいきんまんキャラクターステージを見ていて生まれました。「ハヒフヘホー」という笑い声も、舞台での子供たちの反応をみて決めたものです。お客の反応をダイレクトに感じられる

ステージは、先生にとって特別なものとなっているようです。

ばいきんまんは「いちごえほん」で連載していたあんぱんまんにも登場し、しょくぱんマンやカレーパンマン、チーズなど、いまのアンパンマンに出てくるキャラクターの基礎が出来上がっていきます。

その後アンパンマン絵本の売れ行きはどんどん伸びていき、80年を過ぎた頃から、先生仕事多忙をきわめます。

しかし、そのとき先生はすでに60歳を超える老境に差し掛かっていました。

身体は次第に言うことを聞かなくなり、白内障の手術や尿道結石などの病気をやりつつ、なんとかかんとか仕事をこなす先生に、大きな落とし穴が近づきつつありました。

奥様がガンにかかっていたのです。


84年ごろから、アンパンマンテレビ化の話が持ち上がってきました。

当初NHK日本テレビからそれぞれ話を持ちかけられ、NHKの話はキャンセルになり、日本テレビのほうも反対意見が強く話が進まないという状況でした。

ちょうどその頃、先生の奥様が体調を崩して診断を受けると乳ガンでした。やなせ先生は、医師から「末期のガンで、手の施しようがありません。長くて三ヶ月です」と宣告されます。

入院している奥様の見舞いに一日一度は行くけれど、仕事をしなくては食べていけない。さすがに元気がなくなり、仲間の集まりに出てもうつむくばかり。そんな中、里中満智子さんが相談に乗ってくれました。里中さんは「私もガンだったの」と言い、自分のガンを治してくれた丸山ワクチンを薦めます。

医師からは「水みたいなものですよ」と言われつつ丸山ワクチンをうった奥様は、見事に回復していきました。*2

そして88年、ようやく日本テレビアンパンマンアニメ化が決定されました。

家には余命三ヶ月と宣告された妻。妻の母は老人ボケが進んで入院。僕自身も病気あがりで、いいことは何ひとつなく、昭和天皇のご症状はますます悪く、新番組スタートの恒例イベントも自粛。全く期待度ゼロの灰色の空へ、アンパンマンはごくひっそりと飛び立ったのです。

(やなせたかし 「人生なんて夢だけど」)


「それいけ!アンパンマン」は月曜の夕方五時で関東限定放送、何をやっても2%としかとれない時間帯で、半年で終わるに違いない、といわれていました。

しかし前評判を蹴っ飛ばし、見事7%の視聴率をとりました。快調な滑り出しです。

そして三月、アンパンマン文化庁の優秀番組賞を受賞し、スポンサーも大勢ついて全国放送になりました。アンパンマンブームと騒がれ、絵本は飛ぶように売れます。初登場時の酷評ぶりから考えても奇蹟のような話とやなせ先生は言います。

そして90年、やなせ先生日本漫画家協会大賞も受賞し、漫画家としてひとかどの人物になりましたが、時既に71歳。青島幸男は「やなせさん、ちょっと遅すぎましたね」と言いました。

テレビに限らず、絶えず新鮮でエターテイメント性あふれるユニークネタを常に出し続けるのは、とても大変なことです。

例にもれず、アンパンマンアニメもすぐにネタがつきました。そこでやなせ先生は、マンネリズムを覚悟して「バイキンマンゲストキャラに悪さするのを、アンパンマンピンチになりつつやっつける」という型に物語をはめ込んでいき、変化は新キャラの登場でつけるようにしました。こうしてアンパンマンキャラ無限増殖が始まります。今では二千から三千種ものキャラが登場し、遠大なアンパンマンサーガを形作っているそうです。


絵本おもちゃの売り上げは上々ながら、夫婦ともに身体の調子はだましだましの不安定。しかし、そんな様子をおくびにもださないようにするやなせ夫妻は、傍から見れば幸福に包まれていました。

そんな92年の春、先生は勲四等瑞宝章を受章しました。十一月には天皇皇后陛下主催の園遊会に招かれ、「アンパンマンを書いています」と言って笑いをとったとか。

お祝いに赤坂プリンスホテルで「アンパンマン勲章を見る会」を開いたら大好評。

奥様は「こんなに面白いとは思わなかった、友達もみんな招待すればよかった」と言ったので、やなせ先生は「よし、この会場で、今度は君の友達を全部招待する」と応えられました。

しかし、丸山ワクチンをやめて抗癌剤のみを使用していた奥様の様態は優れず、次に開かれた「アンパンマン二十周年の未来を祝う会」には参加できませんでした。

世間から見れば、たとえ大変な遅咲きにしても今をときめくアンパンマンの作者としてホテルの大劇場を借り、一夜の豪華パーティー。全員無料御招待。お土産つきの大盤振る舞い。得意満面、順風満帆、幸福絶頂の思い上がりと誤解されたかもしれません。

しかし光と影が入り混じって、このときは半分奈落に落ちるような暗い恐怖と不安。半分は華やいだスポットライトを浴びて、ようやく陽の当たる場所に登場した高揚感。

その心境について誰ひとり知る人はいませんでした。カミさんの友人の皆さんもみんなうれしそうにわらっていましたから。

やなせたかし 「人生なんて夢だけど」)

そして93年、柳瀬嵩夫人、柳瀬暢逝去。ちょうど一月後の命日、愛犬のチャコも急死。

本人の遺志で密葬し、三ヶ月は秘密にするということだったのですが、やなせ先生は茫然自失の状態になります。遺言どおりに表向きは平気な顔で振舞うものの、夜は眠れず、食欲は無くなり耳鳴りは酷く、精神安定剤に頼る生活。

このあと僕はいったい何をするべきか。何を目標に生きるべきか。

アンパンマンテーマソングはぼくの作詞だが、幼児アニメーションテーマソングとしては重い問いかけになっている。ぼくはお子様ランチや、子供だましの甘さを嫌った。


なんのために生まれて

何をして生きるのか

わからないまま終わる

そんなのは いやだ!


何をしていきるのか、自分に問いかける時が来た。

やなせたかし 「アンパンマン遺書」)


先生はわかったのでしょうか…


次回へ

*1現在売っているものは、1976年に出版された「キンダーおはなしえほん傑作集」です。

*2:どーでも良い余談ですが、丸山ワクチンは、攻殻機動隊SAC元ネタにもなりました。

ひなのひなの 2008/04/25 12:40 強制的に長いあいだ新井泉さんを監禁虐待し続けておいて、自分はずるく立ち回って知事として天皇から園遊会に招かれ優雅な人生を満喫しているそのまんま東は隠れて「妊娠したら堕ろせ!」と若い女性を「機械」扱いする淫行ヤクザだ。この淫行芸人知事は子供の生命をボロクズのように考えている残虐な悪魔だ。何度も結婚離婚を繰り返すこんな惨忍なやつが、むりやり監禁暴行されているとうとい生命をしりめに、すっかりでかいツラして優雅に園遊会などでうまい酒を飲みまくっている地獄の国日本を滅ぼさなければならない。

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