特急料金10円と時間制フリーきっぷ

JR北海道は3月26日のダイヤ改正普通列車を削減する宗谷本線で、影響を受ける3町の町民に限って10円の追加料金で特急列車に乗車できる特別措置を検討中とのことである。毎日新聞2月4日付記事

JR北海道 宗谷線3町住民、10円プラスで特急乗車OK
 JR北海道の3月26日のダイヤ改正普通列車が減便される宗谷線旭川稚内)で、JR北が沿線の中川と幌延、豊富3町の住民を対象に、運賃に10円を追加すれば特急列車に乗れる特別措置を検討していることが4日、分かった。国土交通省によると、全国でも珍しい措置という。
 減便はディーゼル車両の老朽化などが理由で、宗谷線では現行58本のうち6本が廃止、2本で運転区間が短縮される。通院や通学、買い物などで中川町からは名寄市へ、幌延、豊富両町からは稚内市へ利用する住民が多いが、減便で区間によっては日中最大約7時間、普通列車が運転されない時間帯ができる。
 JR北から提案を受けた3町によると、特別措置では、中川町民は名寄−天塩中川幌延町民は幌延稚内豊富町民は豊富−稚内で、運賃に10円を追加して特別乗車票を購入すれば特急に乗れるようにする。対象区間の自由席特急料金は620〜1130円。宗谷線には1日往復6本の特急が運転されており、どの列車を対象とするかは各町とJR北が協議している。
 JR北広報部は「特別乗車票の販売を各町に委託する契約を結ぶことを提案している」としており、各町は町民への販売方法を検討している。【小川祐希】

特定町民だけが対象というのが気になる。鉄道事業法16条5項は、運賃・料金が「特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき」国土交通大臣鉄道事業者に対し変更命令をだすことができると規定している。特別措置は「不当に」特定の旅客だけを優遇しているとはいえないのか。特別乗車票の販売を各町に委託するというのがその回避策なのか。
もう一つ東京メトロから2月4日付で興味深いリリースが出た。3月26日から「東京メトロ一日乗車券」(600円)を「東京メトロ24時間券」に変更し、使用開始から24時間有効にする(リリース)。また、東京メトロ都営地下鉄共同の「Tokyo Subway Ticket」は1-Day(800円)、2-Day(1,200円)、3-Day(1,500円)がそれぞれ24-hour、48-hour、72-hour Ticketに変更され、時間制となる(リリース)。東京メトロ都営地下鉄とのサービス一体化の取組みとして実施するとのことであるが、東京メトロ都営地下鉄共通一日乗車券(1,000円)は時間制への変更対象になっていない。また東京都交通局単独の「都営まるごときっぷ」などの一日乗車券も従来のままである。
時間制のフリー切符は、日本では沖縄都市モノレールが導入しているだけだが、海外では一般的である(2014年10月16日記事)。外国人旅行者が対象の「Tokyo Subway Ticket」を時間制へ変更するのに合わせて、メトロの一日乗車券も変更したのだろう。
「Tokyo Subway Ticket」を購入できるのは外国人旅行者だけと思っていたら、首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬および山梨の1都7県)以外からの旅行者も発売対象に含まれている。しかし、日本人旅行者向けの発売個所は米子鬼太郎空港(航空機利用者のみ)と地方旅行代理店(東京向けの旅行商品購入者のみ)だけで、ほとんどの旅行者は利用できない。メトロ・都営の共通一日乗車券よりも安く、時間制で使い勝手が良い「Tokyo Subway Ticket 24-hour Ticket」を米子からの航空機利用者だけが購入できるというのは、何か理由があるのだろうか。
地方空港利用者に対する首都圏鉄道運賃の優遇については、2013年12月3日記事京急の「羽得2枚きっぷ」の例を取り上げた。米子空港発売の「Tokyo Subway Ticket」は、購入者がより限定されるという意味で、「羽得2枚きっぷ」やJR北海道の特別乗車票よりも差別的取扱の不当性が低いといえるのか。あるいは、トクトクきっぷはもともと、鉄道事業法16条5項の対象ではないのか。