(9) まとめ
以上、Dが非・高周波電力増幅用途で使えそうな素子をお気楽に探し、軽く味見する方法を長々と書き連ねてしまいました。
あとは運次第です。
例えば、オーディオ工作をされているサイトで紹介されている安価な現行品の素子には、fTが高くPcが大きいものもあります。またアマチュアにあまり馴染みのない2SCの5000番台にも、高周波領域のスイッチング動作を得意とする素子がいくつもあります。いろいろおためしになってみてはいかがでしょうか。思わぬところで、格安で使いやすい素子との出会いが待っているかもしれませんよ。トランジスター規格表を片手に、もう一度トランジスター売り場を見直してみませんか?
HFであれば、出力500mW〜2W程度のC級に安定に使える素子を見つけるのは比較的容易かと思われます。
(7) テスト・サーキット
前項のクライテリアにしたがってパーツショップで素子を見ると、店頭価格100円以下で該当するものが結構あることに気づかれるはずです。
安いので気楽に買ってみて、味見してみましょう。
できれば容易に挿し替え可能な、素子のテストを行う増幅回路を作っておくとよいでしょう。
一番手っ取り早いテスト用回路が、ミズホ通信のQP-7や、「トランシーバ製作入門」にある2ステージ7MHz CW送信機のような簡単なストレート送信機かと思います。
C級増幅なので、ドライブ電力は連続的に可変できる方が好ましいと思います。
(6)選び出す条件(続)
- まずはfTを見ます。
- HFのミドルバンド以下で使うのであれば100MHzもあれば十分でしょうが、できれば180MHz以上あるとハイバンド以上でも余裕が出てきます。2SC〜の型番ばかりに目が行きますが、別にfTが高ければ2SDでもかまいません。
- 次に用途です。
- 結論から申しますと、オーディオ電力増幅用・電源用・スイッチング用でありかつfTが十分高ければ、C級であっさり使える可能性が高いです。
- 但し、通常A級かB級で動作させるオーディオ用素子だからといって、RF領域でもA級動作させられる場合は稀です。
- 電源用途でも、高電圧用は曲者です。耐圧は50V以下のほうが低電圧で使いやすいです。
- 次に重要なのは、PcとIcです。
- ”両方が”高い方がよりパワーを引き出せる可能性が高いです。
- 中間周波増幅用などがこれに当たるのですが、fT, Pcともに高くてもIcが極端に低いものがあります。これはパワーが出ません。
- 目安ですが、Pcが数ワットクラスでIcが500mAも行かないものはかなりの確率でパワーが出ません。数十ワットクラスでしたら、数Aは流せないと厳しいと思います。
- 最後にパッケージです。
- TO-92パッケージでは、本来用途外である高周波領域で1W以上を出すのがしんどい場合が多いです。
- 放熱が可能なパッケージの方が好ましいでしょう。
これらの値はパーツショップの店頭に表示してあるか、あるいは「トランジスタ規格表」等で確認してみてください。
(4) どんな素子をターゲットにするか?
出力0.5Wクラスであれば、小電力の汎用高周波増幅素子をパラにすると言う手もあります。
たとえば、2SC2053のようなHF〜VHFで数百mWを出すような素子であれば、2SC1906のようなそこそこfTの高い高周波増幅素子をパラにして代用することもできるでしょう。
別のアプローチが、完全に回路を見直してFETを使うことです。Dも一時期実験を繰り返していました。
確かに、高周波領域で使用可能な電力用FET素子(IRF510など)を用いれば、リニアアンプで10ワット級の出力が容易に得られます。
ただ、アマチュアにはあまり使いこなしは進んでいないのか、馴染みのバイポーラトランジスタによるアンプが今でも我々にはメジャーのようです。
そこで、今でも容易に手に入る増幅素子の中で、高周波用途とは明記されてなかったり、アマチュアにあまり馴染みのないような安価な素子を、HF〜50MHzで使いこなす小技の話をいたします。