toe to toe

2013-01-04

[]2012年印象に残った本

2013年に入りました。2012年もなかなか充実した本ライフを送れたと思います。その中で印象に残った本をあげておきたいと思います。

中国と茶碗と日本と

中国と茶碗と日本と

中国から日本にやってきたものはたくさんある。漢字、米作り、仏教貨幣など、ぱっと思いついた物を挙げるだけでもこれだけある。遣隋使遣唐使など中国との交流を進め、中国からやってきたものを日本は独自な文化へと発展させた。本書ではその中から「茶碗」をピックアップしている。日本は中国文化であるはずの中国陶器磁器を借用し、独自の日本文化を作っていった。なぜこのようなことが起きたのか?そこから生まれた文化はどのようなものか?こういった問いかけから本書ははじまる。


ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか

ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか

ボク自身、ものすごい「先延ばし人間」であって、学生時代の夏休みの宿題なんて、その典型的な人間であった。そんな興味から購入した本。書かれていることは大体想像できることなんだけど、それを簡潔にまとめられた本です。


こういった謎めいた場所というのは誰もが興味あることだと思います。「世界でもっとも有名な秘密基地」という副題に惹かれました。


パンドラの種 農耕文明が開け放った災いの箱

パンドラの種 農耕文明が開け放った災いの箱

人類が1万年前に発明した『農耕』。一般的にポジティブな側面ばかりが語られているが、ネガティブな側面もあるのではないかといった問題点から始まる本書。ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』とも合わせて読むと良いかと思う。


千数百年間すっかり忘却されていたエピクロス主義の紹介者ルクレティウスと、ブックハンターのポッジョとの遭遇がテーマの本。その遭遇がそれからの世界の針路を変えて行くという内容となっている。


天才とはいったいどうやって作られるのか?遺伝それとも環境?そういった議論は無意味だったかを科学的に解説した本。書評こちら


日本型リーダーはなぜ失敗するのか (文春新書)

日本型リーダーはなぜ失敗するのか (文春新書)

日本型のリーダーはなぜ失敗してきたのかを事例とともに解説した本。日本の参謀ポジションから考察されています。事例は太平洋戦争中のリーダーシップを取り上げています。


科学の限界 (ちくま新書)

科学の限界 (ちくま新書)

物理学と神』以来、好きな著者である。あの震災以来、あちこちで語られている「科学の限界」について論じられた本。相変わらずの切り口で良書です。ちなみに、本書で著者が「脳梗塞」になっていたことを知る。


ブルーバックスからはこちらの本を。最近、ブルーバックスからは魅力的な本がめっきり減った気がするが、こちらを2012年のベストに挙げた。内容はタイトルそのままなんですが、山についての基礎知識から入っているため、読みやすいです。次点は『分散型エネルギー入門』でしょうか。


ユダヤ人の歴史 (河出文庫)

ユダヤ人の歴史 (河出文庫)

文庫からは圧倒的に本書。「ユダヤ人」に関する本はたくさん出てるかと思いますが、歴史について学ぶ入門書としてはこれでしょう。それほどうまく纏まっていると思います。


増補版 歌舞伎手帖 (角川ソフィア文庫)

増補版 歌舞伎手帖 (角川ソフィア文庫)

年末に歌舞伎界に衝撃が走りましたが、この本は今日上演されている演目を中心に、歌舞伎の310作品を一つ一つ丁寧に解説されています。これは辞書です。


いやはや紹介している本がHONZと被りすぎて泣けてくる。まあ、ノンフィクション好きだから仕方ないか。2013年もたくさんの良い本に出会いたいものです。すでに何冊か良い本に出会っていますが、それはおいおい。

2012-12-02

[]趣味は何ですか?

趣味は何ですか? (角川文庫)

趣味は何ですか? (角川文庫)

「趣味は何ですか?」と聞かれるといつも答えるのに躊躇してしまう。こんな経験は誰にでもあるのではないだろうか。ボクもそうだ。「何か1つにまとめなきゃ」、「できるだけかっこいい趣味を」、「人とは違う趣味に」とかあれこれ考えつつも、毎回異なる趣味を答えてしまっていたりする。ボクの場合、結局質問をした相手に合わせた回答をしていることが多い。

おそらく答えにくいのは、ある1つの決まりきった趣味がないというのが問題なのだろう。基本的に、広く浅くの趣味が多いので、1つのことに突き詰めてやったことがないとも言える。ちなみに、「突き詰めて」というのは、ボクの中ではその趣味については他の誰にも負けないほどの愛情と熱中度を持っていることを指す。こんなの、ほとんどの人が持ってないのでは?とも思っている。

著者も、とある講演会で「ご趣味は何ですか?」と聞かれ、答えに窮したという。「ないような気がします」と答えると会場が静まり返った。そこから、「趣味」というものに興味を抱いた著者は、「趣味は何ですか?」と誰かれかまわず聞くようになって行く。「航空無線」、「八十八カ所巡り」、「登山」などさまざまな趣味を持つ人の話を聞き、著者自身も挑戦してみるのだが、ことごとく失敗してしまう。趣味を持つ人それぞれの個性が著者の独特の語り口によって、描かれている。とにかく、全章で笑ってしまう。

第二章「マニアの苦悩」では、「航空無線」を傍受している人が登場する。この方は、「マニアは、人がやっていることは嫌い。流行ったら終わり。ただし、あまりに人がやっていないものは共感相手がいないので厳しい。」と言う。要は、あまり人がやっていない内容が良いが、趣味に関する友達はほしいということらしい。そして、平然とやっていることを「つまらない」とも言っている。

あまり他人がやっていないことで、ちょっとだけわかり合える人がいる趣味。こういうのは共感できる。ただし、「つまらない」のに続けるのはなぜだろうか。時間つぶしなのだろうか?それとも少しずつ上達していく過程を楽しんでいるのか?

うーん、本書を読んでいると「趣味」というのがよくわからなくなってきた。

wikipediaには、「人間が自由時間(生理的必要時間と労働時間を除いた時間、余暇)に、好んで習慣的に繰り返しおこなう行為、事柄やその対象のこと。道楽ないしホビー(英: hobby)」とある。

好んで習慣的にやっている趣味を持つ人はいるのだろうか?ボクが「趣味は何ですか?」と聞かれたときの候補に挙げているものには「読書」、「音楽」、「椅子」、「歌舞伎」、「仏像」などがある。これらを考えた場合、何か目的を持ってやっている気がする。全部に対して、「生きる」上での知識・体験を肉付けしていくようなものと捉えている。だから、いろいろなことに興味を持ったりする。したがって、「突き詰めて」というよりも、「広く浅く」を選択しているのかもしれない。うーん、なんだか哲学的になってきたが、ボクの中での趣味は「自分の生き方をプラスに補完してくれるより良いもの」みたいな感じ。

さまざまな趣味に挑んでは失敗している著者が、最後に辿り着く境地ははたして?こちらは本書でご確認いただきたい。


著者の盒興美さんは最も好きなノンフィクション作家の一人である。『やせれば美人』や『ご先祖様はどちら様』、『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』など名著が多い。特に『ご先祖様はどちら様』はおすすめ。書評こちら

やせれば美人 (新潮文庫)

やせれば美人 (新潮文庫)

ご先祖様はどちら様

ご先祖様はどちら様

「弱くても勝てます」―開成高校野球部のセオリー

「弱くても勝てます」―開成高校野球部のセオリー

2012-10-05

[]大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012 まとめ

ちょっと前になるが、大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012 に行ったときの写真をまとめてみる。これは、3年に1回、新潟県十日町を中心に6つの村で開催されるアートフェスタです。


これはクリスチャン・ボルタンスキーの「No Man's Land」です。これはもはや有名ですよね。

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これは一番見たかった「棚田」です。日中に見に行きましたが、少し逆光で、夕方にちらっと見たときには見事な美しさでした。

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草間彌生さん作品の「花咲ける妻有」

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ヘビ(水神)とキリン

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「絵本と木の実の美術館」は昔の小学校を利用したアート。人がいっぱいでしたが、小学校時代を思い出し、懐かしむことができました。

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田舎道の中にぽつんと現れるアート「再構築」

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そこかしこに現れる田んぼの風景は本当に見事でした。

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これも個人的には好きでした。

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へぎそば1。これは「小嶋屋総本店」です。有名店だけあって、人が多かったです。へぎそばは初めてだったのですが、蕎麦が美味しすぎて、海鮮ちらしはいらなかったかも。これも美味しかったけど。

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へぎそば2。これは「由屋」です。写真はないですが、天ぷらがものすごい美味でした。蕎麦は量が多かったが、非常に美味しい。ちなみに、店内は外国人ツアー客であふれていました。外国人は蕎麦を目一杯残されていました。

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他には「光の館」に行きたかったが、残念ながら時間オーバー。当然、2,3日で全ての作品を回ることは難しいです。新潟トリエンナーレは車があったほうが、かなり効率良いと思いますが、今度は電車でも回ってみたい。

2012-10-04

[]天才を考察する

「天才」という言葉をWikipediaで調べると、『天から与えられたような、人の努力では至らないレベルの才能・その人を指し、主にきわめて独自性の高い能力的業績を示した人を評価したり、年若いのにあまりに高い才能を示した人への賛辞的形容に使われる。』とある。出てくる名前を見ても、アインシュタインニュートンゴッホフォン・ノイマンなど錚々たるメンバーだ。

誰もが天才に興味があると思う。特にどうやって天才が生み出されるのかを。天才が生まれる過程はというと、「天才とは生まれながらに天才であり、すべては遺伝子が決定する」そんなイメージが強い。しかし、著者はこれを「G×E」という言葉で否定する。「G×E」とは、「遺伝子かける環境」を省略した言葉。遺伝子は、体や知能などあらゆる特徴の形成に大きな影響を及ぼす。しかし、どう発現させるかを厳密に命令することはめったにない。遺伝子はさまざまな刺激に反応し、それらと相互作用して、ひとりひとりの独特な環境に合わせる。


遺伝子と環境の相互作用を示唆する実例」としては、以下のようなものがある。


ウミガメとクロコダイルは、卵のときの周囲の気温によって生まれる子の性別が決まる

イナゴは、密集した環境で生まれ育つと、そうでない場合に比べて筋肉がよく発達する


こういう実例は出ているが、どうしても「すべて遺伝子が決定する」という印象は残ったままだ。例えば、親子でスポーツ選手という例はよく目にする。これは遺伝子もたしかに関係あるが、親がどう育てるかというプロセスを体得しているからこそ、2代続けてなどという現象が起こるのだろうか。たしかに、自分がこれまで生きてきたなかで、親が知っていることは継承できるが、未知の世界は自分で切り開くしかない。しかも、そこに多大な労力と時間がかかる。そこに目がなかなか行きにくいため、「すべて遺伝子が決定する」というイメージがまとわりついているのではないか。


本書の第2部では、「天才を育成する」とある。第1部の「生来の才能という神話」が主張にあたり、第2部は根拠だ。決してハウツー本のような内容ではなく、第1部の根拠である。第2部で、気になった文章を引用してみる。


『それでも、生まれつきの才能という神話はいつまでも廃れないだろう。(中略)それは、われわれが神話に頼っているからである。生まれつきの才能と限界を信じる方が、精神的に楽なのだ。自分がいま偉大なオペラ歌手になっていないのは、そうなる器ではないからだ。自分が変わり者なのは、生まれつきなのだ。』

確かに。人はどこかで自分の限界を決めてしまっているように思う。努力することが面倒くさい、また、できなかったときの言い訳として、無意識に「才能」を挙げているのではないか。ここは妙に納得してしまった。


『親がなすべき仕事は、そのプロセスを尊重することと、自らそれに関与することだ』

これも納得。結果を重視しすぎると、失敗することを恐れるようになるという。良い結果を出した子どもへの褒め方としても、「よくやったね」よりも「よくがんばってたからだね」のようにプロセスを褒める方が良いように感じる。プロセスを褒められると、「努力する」、「挑戦する」ということを覚えるのではないか。


最後に、天才とは、知的障害も関係すると言われる。一番有名なのは、サヴァン症候群であろう。知的障害のある者のうち、ごく特定の分野に限って、優れた能力を発揮する者の症状を指す。レオナルド・ダ・ヴィンチガリレオ・ガリレイなどもこの症状だったと言われている。この辺りも興味が広がる。


いずれにしろ、子どもを持つ人、部下を持つ人など教育に興味がある人には断然お勧めの一冊。


こちらは遺伝子と「こころ」を結びつけた本。こちらもおすすめ。

2012-09-27

[]ルリボシカミキリの青

もちろん『生物と無生物のあいだ』は読んだし、それ以後出版されている著者の本もチェックはしていた。ただ、ずっと読まず嫌いだった。有名になりすぎた著者なので、何か読む気になれなかった。

動的平衡』など有名な本を出版されている中でも、本書がハードカバーで出版されたときは一番気になった。それほど青色に黒い斑点のルリボシカミキリが表紙を飾った装丁は印象強い。ちなみに『動的平衡』は読んでいない。なかなか手が出ない中で、本書が文庫になっていたのを見て慌てて飛びついた。

生物と無生物のあいだ』を読んだときは、正直衝撃を受けた。自分自身が文系出身ということもあって、それまで理系の本はあまり読まなかった。理系の本は、文章が固く、すらすら頭の中に入ってこないことが多かった。そんな印象を『生物と無生物のあいだ』は取っ払ってくれた。「ユーモラス」そんな言葉がぴったりな文章。

本書も、このユーモラスな文章はまったく変わっていない。さらに内容が科学エッセイということもあって、そちらも後押ししてくれる。

随所で福岡ハカセの頭の中を垣間見ることができて楽しいのであるが、

ハイライトは、

・第2章「ハカセはいかにつくられたのか」

・第3章「ハカセをいかに育てるか」

だ。

そして全体を通してのキーワードは「センス・オブ・ワンダー」これに尽きる。

福岡ハカセが本書を通して言いたいのも、人生でいかに「センス・オブ・ワンダー」の瞬間に出会えるかだと感じた。少なくともこれが福岡ハカセを形成したものであると。

子どもの頃にこういった本に出会えていたら、間違いなく理系に進んでいただろうな。

最後に、9月17日まで東京都美術館で開催されていたフェルメール真珠の耳飾りの少女」特別展にちなんで、本書から小ネタを一つ。

フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が巻いているターバンの青。このつややかな青は、細かく砕いた宝石で描かれているから、350年経った今でも色あせていないそうな。この宝石は、当時高価で希少なものとされたラピスラズリというものだったようだ。


同じく科学エッセイの筆頭と言えば、これに並ぶものはない本。もはや、これはもう有名ですね。