毒針

彼女の恋人は暴力的だ。優しい彼女を殴り、時には心にまで傷を負わせたりする。それでも、男のことが好きなのだと、窓辺にたたずむ僕を見つめながら彼女は言う。僕には、とても理解できない。ある日のこと。偶然、僕の目の前に立っていた男の掌が何かの拍子に僕に触れた。「痛ッ」驚いて手を引っ込めた男は、舌を打ちながら僕を睨んだ。「腐れサボテンが」僕の針に毒があれば。そう思う。一瞬で男を殺せる猛毒があれば。例え彼女を泣かせる結果になっても、僕はそれを切に願う。end