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11-03-22 Tue

震災対応に関するマスメディアへの提言  震災対応に関するマスメディアへの提言を含むブックマーク

ポイントをあえて1つだけに絞って提言します。

マスメディア各社が連携して、被災地全域にわたる情報を集約し、共有するしくみを作ってください。


今回の震災は、阪神淡路や中越に比べても桁違いの規模・範囲におよびます。

大手のメディア企業であれ、1社で、被災地全域をカバーし情報収集・集約できる限界を超えています。

1社単位ではなく、マスメディア業界全体で連携し、支援の必要な、どの被災地も取りこぼされることなく網羅する。

たとえば、各社が取材地域や役割をある程度分担する。

情報はひとつに集約して、行政やボランティアとも共有する。

そのような連携が必要ではないでしょうか。


原発や計画停電等々への対応のため、政府の情報収集力・集約力は過去の震災よりも削がれています。

県や市町村でも自治体じたいが深甚なダメージを受け、加えて二次災害・複合災害への対応のため、十分に情報を集め、出すことができません。

今、マスメディアには、政府や自治体に代わる分までも、被災地の情報を収集し、集約し、発信することが求められています。

そしてまた、そんなことができるのは、マスメディアしかありません。


しかし、連携して業界全体として被災地を網羅するという考え方は、未だマスメディアから出てきていないように思います。

18日時点ですが、ある通信社の記者の方からも、ツイッターで次のような反応がありました。

「今現場には民放を除く新聞各社、NHKは100人以上の記者が取材に当たっています。各社ごとには網羅的な取材をしていますが、全社が統合的に取材することは原則ありません。有事ですから協力することも大事ですね。「結託して云々」との批判があるかもですが、提言してみます」

現場は多忙と混乱を極めているでしょうし、そんな中、余計な負担をかけるだけでも心苦しいものがあります。

ただ、こうした連携は基本的に、現場でどうこうできる・すべき話ではなく、各マスメディア本社・中枢部レベルで取り組むべきマターであろうと思います。

このレベルにおいて、未だ動きがあるように思えません。


今となっては、取材地域の分担・調整などは難しいかもしれません。

各社ごとの、取材・報道の多様性が重要であるという考え方もわかります。

しかしながら、そうだとしても、たとえば各社が取材の中でつかんだ情報のうち、安否や物資の必要性等に関わる情報だけでも(要は支援に関係する必要最低限の情報と言うことです)一元的に集約し、自治体やボランティアを含めて共有できるようなシステムが組めないでしょうか。

個人単位の安否情報ではなく、町村単位(できればより細かく公民館のカバーするくらいの範囲)で、現在どのような状況で、何がどれくらい必要とされているか(特に医療資源)を、関係機関・団体すべてが一覧できるようなしくみです。

その情報をGoogle Map等にマッピングさせれば、被災状況に比して、どの地域の情報が薄いか、取り残されてしまっているか、すぐわかるでしょう。

それだけでも十分に意味があるはずです。


震災発生時から10日経って、もう急いで多くの被災者の命を救う・救える時期ではなくなったのかもしれません。

メディア報道にもそういう空気が漂い始めています。

しかし、これからの10日は、これまで食料や医薬品の枯渇を何とか耐えてきた慢性病患者、けが人、お年寄りなどの弱者が、二次災害として命を落としていく時期です。

これからは、「減災」のための勘所の1週間、10日になります。

阪神淡路クラスの規模であれば、震災発生10日後の時期には、行政によっても、個別バラバラに動いていたメディアによっても、各被災地にそれなりに目が行き届いてきていたかもしれません。

しかし、今回の震災はそれを数倍上回る規模と深甚さです。

それにも関わらず、どこかこれまでの「大震災」と同じような感覚で捉えてしまっている、状況を甘く見てしまっているような気がしてなりません。

(このような言い方が、阪神淡路、中越などの被災者の方々に失礼極まりないこともわかっているつもりです。申し訳ありません。非難・批判は甘んじて受けます。)


ネット上でも被災各地域の情報は逐次あがってきてはいます。

しかし、それらがどこまで確度の高いものか、「裏を取る」ことはマスメディアしかできません。


昨日は、各局、各紙とも、高校生とお祖母さんの9日ぶりの救出がトップ扱いでした。

貴重なニュースだと思います。

ですが、入院先まで踏み込んで取材すること、高校の先生へのインタビューに報道時間を費やすことに意味があるとは思えません。

これからはさらに震災報道のドラマ化が進んでいきそうな気がします。

それが一概に悪いと言うのではありません。

ただ、現場の記者の方々は、必ずしも絵になる映像、感動ドラマになる話を追い求めているのではなく、実質的な支援に役立つ地味な情報も――いや、そういう情報こそを――つかんでいらっしゃるはずです。

記事にならなくてもニュース映像にならなくても、その情報は直接被災者を救うかもしれない情報です。


現場で大変な思いをしていらっしゃる記者の方々の頑張り、努力に最大限応えるためにも、マスメディア各社が連携して、情報を集約し、共有するしくみを考えていただきたいのです。

事が落ち着いた後で問題提起するよりも、まだ現在進行形の今、提起・提言しておくことが、今後につなげるためにも重要だろうと考えます。

何卒どうかよろしくお願い申し上げます。



大阪大学大学院人間科学研究科准教授  辻 大介