"Your Bright Baby Blues" Jackson Browne

Pretender

Pretender

ジャクソン・ブラウンが売れていたのは1980年まで、と言っていいかもしれない。この年にリリースされた『Hold Out』が彼の唯一の全米No.1アルバムだし、事実、1980年代から今日まで、彼の作品のセールスはぱっとしない。それは多分、内省的なテーマを歌っていた時代から、政治的な活動を積極的に展開するようになる変化と一致している。大方のファンは、変わっちまう前のジャクソンの方がお好みなのだろう。

わたしの場合も、1970年代のジャクソン・ブラウンが好きだ。それは、彼の政治的なメッセージが嫌いだというよりも、「十代のときに出会ったもの以外、結局はなにも必要としないのかもしれない」という勝手な思い込みにしたがえば、70年代に聞いたブラウンが、それ以後に聞いたブラウンよりも大切だ、ということだろうと思う。

前作『Late for Sky』のほうが評価は高いのかもしれないけど、個人的には、この『Pretender』が圧倒的に好きだ。好き、というよりも、あれから30年が経ったいまでも冷静には聞けないほど、唯一無二なアルバムだ。デッドの『American Beauty』冒頭の"Box of Rain"もそうだけど、絵空事ではない圧倒的な喪失感の中から生まれた歌には抗しがたい力があるし、生きていると自ら似たような経験もし、そうした存在になることがあるんだろう。

このアルバムの中で一番好きなのが、この"Your Bright Baby Blues"。スライドでローウェル・ジョージ、オルガンでビル・ペインが参加している。下のトラックは、1982年のモントルーに出演したときのもので、FM放送のエアチェック音源から拾ったものです。

【試聴】 "Your Bright Baby Blues" Jackson Browne