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蟻の行列

2010-05-16

「基地依存経済」という神話

  • 基地がないと沖縄経済は駄目かというと、そうでもないという意見がある。
  • 基地のために国がお金をくれても沖縄経済的に発展するとは限らない。
  • 基地がなくなったところでは実際に雇用と税収が増えたらしいよ。
  • あとは自分で調べてくれ。

基地がないと沖縄経済は駄目かというと、そうでもないという意見がある。

基地が無くなったら沖縄経済は持たないことを説くような言説がネット上で流布し始めている。

これに真っ向から対立する趣旨の論文岩波『世界』2月号に掲載されている。著者は琉球新報社論説副委員長の前泊博盛氏。

沖縄は本当に米軍基地なしでは生きていけないのだろうか。結論を先に言えば「ノー」である。それどころか、米軍基地はもはや沖縄経済を蝕むパラサイトに過ぎない。沖縄の活力を吸い取るパラサイトを駆逐する時が来ている−−そんな声が沖縄で日に日に高まっている。

(「「基地依存経済」という神話」、『世界』2月号、p.203.)

 基地は沖縄を豊かにしたか。この問には「イエス」だが「ノー」である。終戦直後沖縄は、すべて基地に依存するしかなかった。

(……)

 しかしながら基地経済には、その特性から重大な欠点、限界が指摘されてきた。その根本は「基地は所得を与えはするが、直接県民の需要の対象になる生産物やサービスをほとんど生み出さない」という欠陥である。民需部門の生産基盤を強化しえないため、基地内で発生する需要に対する供給力不足が生じ、必要な消費財やサービスを域外で調達しなければならないという矛盾があるのだ。

 そのため基地経済投資効果が極めて低く、波及効果も民需に比べはるかに劣る。その上、基地に関する地域振興策の効果も地域の経済自立や発展を促すどころか、借金(市町村債残高)や失業率を増やし、法人地方税など自主財源の減少さえ招く逆効果も、多くの研究・分析で徐々に明らかになってきている。

(……)

 また、〔基地経済は(引用者注)〕政府財政支出に依存し市場メカニズムとは無縁のため、景気に左右されることが少ない代わりに国際情勢や国内外の政治状況に大きく左右される。

(……)

 だが沖縄には、こうした「基地経済」を拒否する権限などまったく与えられず、それどころか逆に銃剣とブルドーザーによって財産権生存権を侵害され、否応なく基地に依存する経済体制の中に強引に引きずり込まれる過酷な歴史を強いられてきた。

(同上、pp.203-204.)

この後に筆者は在沖米軍基地の現状を確認し、「基地経済」発祥の地・コザ(沖縄市)のたどった運命を事例として紹介する。

1950年代の越来村では米兵相手の飲食街が並び歓楽街が広がった。朝鮮戦争が始まる50年夏頃には店舗の数は130軒を数え、400人近い従業員が働くなど基地の「門前町」として発展した。

(同上、pp.205-206.)

ベトナム戦争中は、出撃する米兵がもらう「戦地手当」で散財し、「村は基地バブルのような好景気にわいた」らしい。

しかしベトナム戦争が終わる70年代に入ると、基地は整理縮小が進み、中心市街地は「シャッター通り」になってしまったのだとか。

基地ができたせいで沖縄の産業構造が変わってしまったらしい。

 戦前の沖縄は、島全体が越来村と同じように8割が農業に従事する農業県だった。ところが、沖縄戦による農地や生産基盤の破壊に加え、米軍占領下で財産権生存権を無視されて銃剣で土地を追われ、ブルドーザーで農地と家を潰されて、基地に依存しなければ生きていけない基地依存経済に強制的に組み込まれたのである。

(同上、p.206.)

基地のために国がお金をくれても沖縄経済的に発展するとは限らない。

このような事情から産業構造が変わった沖縄経済を筆者は「ザル経済」と呼ぶ。いくらお金を注いでもみんな沖縄を通り抜けていき、沖縄には残らないからである。

 戦後60年余を迎えた現在では、就業人口に占める農業就業者は5.5%にまで減少し、製造業や建設業など第二次産業就労者が16.7%、米軍基地や公務・商業など第三次産業就業者が77.5%を占める、首都東京並みの「都市型サービス産業」中心の就業構造となっている。農業製造業を持たないサービス産業中心の産業構造は、「投資資金の域内循環が困難で、財やサービスを域外に求めるために資金が域外に逃げ、波及効果が少ない」というザル経済=基地経済の典型的な構造そのものである。

(同上)

基地がなくなったところでは実際に雇用と税収が増えたらしいよ。

続いて筆者は米軍基地生産性の低さを指摘する。引用が長くなるが、数字が具体的に上げられているのでそのまま引用してみる。

 基地収入が県民総所得(3兆9592億円)に占める割合は5.4%であり、復帰直後は15.5%を占めていたが、観光産業などサービス産業の成長に伴い相対的なシェアは低下している。金額ベースでは、基地収入は復帰直後の777億円から34年間で2.7倍に増加、基地従業員所得は240億円から516億円と2.15倍、軍用地料は123億円から777億円と6倍に激増している。

 年間2000億円を超す基地収入は、観光以外に産業らしい産業のない沖縄にとってなくてはならないものと思われてきた。しかし、琉球大学大城肇副学長は「『基地収入』は経済発展の動因になるとの見方が定着しているが疑問だ」と指摘している。軍関係受取は「軍事基地維持のための経済的コスト」にすぎず、同じ規模の投資なら民需に振り向けた方が収益性ははるかに高いというのだ。

 これは、実際に米軍基地として使われてきた土地が、返還によってどの程度の経済効果を挙げているかを比較すれば、より明確になる。

 たとえば、北谷町米軍ハンビー飛行場(43ヘクタール)は返還後、雇用が100人(基地従業員)から2259人と23倍に増え、税収は357万円(固定資産税)から1億850万円と52倍に増えている。同じくメイモスカラー射撃訓練場(23ヘクタール)は、返還前の雇用数は不明ながらはるかにそれをしのぐであろう3563人の新規雇用効果を上げ、税収も192万円から7411万円と38倍の効果を上げている。

 うるま市の天願通信所(97ヘクタール)も変換後、雇用は4人から2431人と608倍に、税収は76倍となった。沖縄市の泡瀬通信所(241ヘクタール)は86人から3257人と38倍の雇用増、税収は4倍。那覇市の新都心に生まれ変わった米軍牧港住宅地区(214ヘクタール)は、196人から7168人と36倍の雇用効果をあげている。

(同上、p.207.)

こうした実例を上げたあとで筆者は沖縄経済を次のように形容する。

 基地経済は、資金の大半が税金という”点滴経済”にすぎない。働き、稼ぐという民間経済とは本質的に異なる点にも注目すべきであろう。

(同上、p.208.)

ついで筆者は普天間飛行場の移設問題に触れ、「ムダ金」を投じる鳩山政権、「基地がらみの振興策の行く末」を批判し、最後に「基地の持つ資産をどう活用するか」について問う。

 フェンスに囲まれた別世界の米軍基地は、基地として使用されていなければ、農地化、宅地化、都市化、商業地化によって、資産価値が上昇したであろう土地も多い。基地であるがゆえに発展、開発から取り残されたために生じた「逸失利益」については、”安保の弊害”として今後の議論も必要であろう。

(……)

 戦後60年間にわたって強制接収され強行使用されてきた米軍基地の返還にあたっては、政府による責任ある跡地利用支援策と財政支援も不可欠となる。返還後、米軍基地の跡地利用が順調に進むように的確な施策の実施も政府にきちんと要求すべきであろう。

(同上、p.209)

ここまでの引用の仕方はかなり恣意的なものであることをお断りしておきます。実際の議論をきちんと追いたい方は、『世界』のバックナンバーを読んでみてください。図書館とかに置いてあるはずです。

自分は専門家でないので、実際のところはよくわからない。しかし少なくとも、ろくに調べもしないで「やっぱ沖縄は基地がなくちゃダメだろ」とか断定口調で騒いだりするのは、沖縄の人にとって迷惑なだけなのかもしれない。

惑わされ、踊らされているのはいったい誰なのか。さて。

MUSKAMUSKA 2010/05/18 01:33 はじめまして。
例えば、フィリピンですが、米軍基地を撤廃した後、経済が上向いてますね。
基地跡地を工業特区に指定して外国企業を誘致しています。
ラモス大統領が経済優先した結果ですが、基地撤廃だけではなく、内戦を治め政治を安定化させた結果でもあります。

ただしラモス自身は基地撤廃反対だったこともあり、米軍寄港を認めるなど後退した政策も採っています。

didotdidot 2010/05/18 01:40 そうだったんですか
私はこういう記事↓で知った程度です
http://blog.tatsuru.com/2010/05/07_1708.php

Don MichelDon Michel 2010/05/20 23:19 琉球新聞左過ぎてあてにならない

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