スタジオパークからこんにちは 大友良英さん出演回 2013/9/2

朝ドラ「あまちゃん」の音楽を担当する大友良英さんが出演されるので、久しぶりにスタジオパークを録画しました。音楽家がどのように曲を作っていくのかを聞くのはいつも楽しいので、少しだけ書き起こし。

いつもはゲストを真ん中に立ったままゲスト紹介と挨拶をしてから着席してトーク開始ですが、今日はいきなりビッグバンドの演奏で番組開始。もちろん曲はあまちゃんのオープニングテーマ。

簡単にゲスト紹介をした後、すぐに2曲続けてまた演奏。
三陸の海女さんたちのテーマソング「あまちゃんクレッツマー」。東欧風のガチャガチャとちょっとおっかない曲想。*1

続いて「灯台」。当初春子のテーマとして作曲したけれど、いまは登場人物が何か覚悟を決めた時に流れる曲だそうです。たしかに各エピソードの終盤でかかることが多いかも。

オープニングテーマについて

この日のあまちゃんは9/2月曜日、あの震災のエピソードの日。でも、あの明るいテーマ曲はちゃんと掛かりました。大友さん「震災を描く事は分かっていて作曲したし、演出の井上さんも含めて制作陣は、早くから何があってもずっとこのオープニング曲を使い続けると言っていた」そうです。

「何が起ころうと、変わらない日常はあると思う。色んな思いを込めたので、聞こえ方が違うと思う。震災の日に限らずですけど。アキちゃんが笑ってる時と泣いてる時では聞こえ方が違うと思う」

最初はあまちゃんクレッツマーの出だしがオープニングになる予定だったが、そんなに凝らなくていいかなとやめたそうです。クドカンの脚本が直球だったので。クドカンというとヒネった印象なので、もっとひねったホンかと思っていたが、直球で面白かった。この時点ではまだクドカンには会っていなかったとか。

オープニングの出だしは単純だが、サビは八十年代の歌謡曲で数限りなく使われたコード進行。松田聖子の「秘密の花園」に近いんじゃない?とギター弾き語りしてみる大友さん。ご自分でも笑顔で認めてますが、お世辞にも歌お上手とはいえません。水口さんが逃げ始めるレベル。

オープニングを作曲するにあたって、八十年代の曲を聞きまくって、誰が聞いても懐かしいと思うものを入れたそうです。色んな記憶を刺激するものを入れたかった。

潮騒のメモリーを作曲家本人が詳細解説

潮騒のメモリー」は、1986年に映画のテーマ曲として60万枚の大ヒットを記録したという設定。
アナウンサー「100万枚じゃないんですね」
100万枚まではいかない、ちょっと微妙な所がいいそうです。

クドカンが(大友さん風に言えば「あの帽子野郎が」)5分で書いたと豪語する歌詞を夕日を背景にしたボードに貼りだして、細かく質問をぶつけていきますが、どれも笑顔で楽しそうに答えてくれました。

作曲にあたっては、誰もが聞いた事のあるような雰囲気にしたかったそうです。
大友さん「昨日名古屋で一般の人とワークショップをしてたら、おじさんがよってきて、『この曲昔聞きましたよ。薬師丸ひろ子でヒットしたじゃないですか』『いや、これ最近おれが作ったんですよ』と言っても、信じてもらえない。最後まで新曲とは信じてもらえなかった」

マイナーにしろ、やっぱりメジャーに戻せと言われたりで、4バージョン作ったがまとまらず、前衛音楽家Sachiko Mさんとの合作に。ストリングアレンジは江藤直子さん。この3人だけでなく、演奏陣も含めてだんだんバンド形式になっていった舞台裏で、クレジットされていないけれどびっくりするようなコラボレーターがいるのです、この曲。

まずは「寄せては返す波のように」のあとの「激しく〜〜」の部分。
当初はなかったが、歌を担当した小泉今日子と、前述のアレンジャーの江藤直子がここに「激しく〜〜」って入ると八十年代っぽいよねと提案して入ったそうです。最後の「好きよ嫌いよ」という聖子ちゃん風のフレーズも後で追加(誰の発案かは不明)。

「来てよタクシー つかまえて」は元々は「来てよその火を飛び越えて」と同じメロディーだったが、何とかここを盛り上げられないかと話し合っていたところへ、NHK教育テレビの「スコラ」の収録で来ていた坂本龍一が立ち寄った。坂本龍一小泉今日子はこれが二十年ぶりの再会。
坂本がささっとアレンジして作ったメロディーは、実は大友さんはあんまりよくないなと思ったので、坂本龍一が帰ったら元に戻そうとしていたそうです。ところが小泉今日子が歌ったらさすが本物!で良かったので採用。

ここはアナウンサーが指摘するまで全く気付いていなかったのですが、「三途の川のマーメイド」のあとで「♪三途リバー♪」という女性コーラスが入っている。
八十年代らしいコーラスを試していた時に、コーラスの女性が「三途リバーって入れちゃっていいですか?」と発案。クドカンがあとで怒るかな?と思いながらも「いいよ!」とOKしてやってみた結果採用に。

Fukushima Festival

大友さんは横浜生まれで福島育ち。10代の頃を福島で過ごしたものの、その後福島のことは忘れてしまっていたそうです。ところが震災でこれは行かなければ!と思い、みんなが福島から避難してくるなか、自分は福島へ向かって行ったのだとか。以来、毎年訪れてフェスをしている。
今年はオープニング曲を盆踊りにアレンジして皆で踊った。あまちゃんビッグバンドも浴衣を着込んで総出で演奏。もちろんみんな手弁当。今年は坂本龍一もピアノ担当で普通に参加したそうな。

フェス自体はは遠藤ミチロウの発案。音楽フェスなんてけしからんと言う人たちが出てくるだろうから、ちゃんと議論をする機会になっていいと思って始めたのだとか。当時は事故の状況がなかなかちゃんと伝わって来なかったけれど、バンドが訪れるとなれば、状況も把握しなければいけないのでちゃんと分かるだろうと思ったそうです。

最後に「ドラマあと一ヶ月ですけど、震災が今日ありましたけど、大丈夫です。ぜひ見てください。あまちゃんは変わらずあまちゃんのままです。音楽も含めて」

*1:クレッツマーは、東欧系ユダヤ人、つまりイーディッシュの民族音楽。ドナドナに代表される物悲しいメロディーに、バイオリンやアコーディオン金管を入れて、ジプシー的なつんのめりそうなリズム感で演奏するが特徴