「おおかみこどもの雨と雪」を観てきました(※ネタバレ無し)

各方面でポジティブな感想が相次いでいるし、そもそも僕はミーハーなので細田守監督の作品ならば当然チェックせねば…ということで、観てきました。



アニメ映画「時をかける少女」は大変面白かったのですが、元々の原作の良さに支えられた点も多分にあったと思います。そういう意味で「おおかみこども」の比較対象として挙げられるべきは当然「サマーウォーズ」でしょう。


サマーウォーズ」は一応、ネットサービスが発達した世界が舞台で、そこにファンタジー的な要素は含まれていなかったけれども、あまりリアリティを感じることができなかった。要は、想像が及ばなくて真に感情移入したりハラハラしたりできなかった、ということ。「この演出はカッコいい!」と思う瞬間はもちろんあったけどね。
適当に言葉をあてがうとすれば「ノンフィクションの中のフィクション」という感じでした。


一方「おおかみこども」は、物語の根幹に“半狼”というファンタジーな存在を突っ込んでいる。にもかかわらず、こちらの作品には大いにリアリティを感じてしまった。人間と狼との間で当たり前に交配が行われるというトンデモな事態が何の説明も無く起こっているというのに、観ている自分は不思議と置いてけぼりになることなく、むしろ自然にキャラクターの気持ちを汲み取ってしまえるというのが、「おおかみこども」の特筆すべき点だと思いました。
こちらは「フィクションの中のノンフィクション」と言えましょう。


また、この作品の特徴として強く僕が感じたのは、「泣かせポイントを作っていない」ということでした。みんなが泣ける泣けると言うので、いつもより厚手で大き目のハンカチを持参して鑑賞に臨んだのですが、特にぶわっと来る瞬間は、正直ありませんでした。多分同じく現在公開中の劇場版NARUTOの方が泣けます。しかし、親としての苦悩や子どもたちの成長など、全編に渡ってじんわりと心に響いてくるものは確かにありました。


最後になりますが、この作品は、一見すると狼と人間の両方の性質を併せ持った子どもを育てていくことならではの苦労や葛藤を描いているように見えます。しかし実際は、全ての子を持つ親にとって、子育ては苦悩の連続であり手探りなのだというメッセージを「おおかみこども」は発しているように感じられました。




とりあえず、花は多分処女っぽかったし、避妊くらいちゃんとしろよと無粋なことを思ってしまう自分がいたことだけが悔やまれる。それと宮崎あおいの演技はなかなか良かったと思います。