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2008-01-13 『女の品格』『おひとりさまの老後』から思うフェミニズムの行方

『女の品格』『おひとりさまの老後』から思うフェミニズムの行方

坂東眞理子さんの『女性の品格』、『親の品格』、それに上野千鶴子さんの『おひとりさまの老後』などフェミニストにより執筆された本がベストセラーの上位に食い込んでいる。お二人は自他共に認めるフェミニストである。そのお二人の本がベストセラーになっている。ウーマンリブの頃とは違い、フェミニズムが日本社会に受け入れられるようになったんだなあと思う今日この頃だ。ついでに言うなら二人とも富山県出身だこと!(その考察はまた改めて・・)


紀伊國屋書店単行本本週間ランキング(12月31日-1月6日)では、『おひとりさま』が3位、同新書ランキングで『女性の品格』が1位、『親の品格』が2位といずれもトップを占めている。文教堂(10分おき更新)では、総合で『女性の品格』が2位、『おひとりさま』が10位に入っている。


「品格」を説く書は啓発本である。『おひとりさま』は読んでいないのでよくわからないが、読者からは「老後の心構え」本と受け止められているのではないか。意識啓発で押してきた主流フェミニズムの面目躍如だなと思う。同じく現在何冊もベストセラー入りしている、坂東さん、上野さんより2周りほど若い勝間和代さんの本は、『効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法 』などキャリアアップのための「サバイバル本」である。シニア世代は、「品格」という心構えを説き、若い世代は「サバイバル」のための仕事術を伝授する・・・。なんと好対照であることか。なんと世代格差を感じさせることよ。


フェミニズムが日本社会に浸透した今だからこそ、言っておきたいことがある。それは、社会で主流になりつつあるフェミニズムだからこそ、女性の中の多様性を積極的に肯定する動きが必要となっているということだ。要するに、女性の間での違いや批判を積極的に受け止めようということであり、自らを批判的に見ることができなければいけないということだ。新たに求められるフェミニズム像については、macskaさんによって「第三次フェミニズム」 (第三波フェミニズムともよぶ)として1998年にまとめられている。


しかしながら、実際はそうではない方向に進んでいるように思う。例えば、日本女性学会研究会レポ:守旧化するフェミニズム?マッチポンプ、あるいは、対立の禁止が対立をつくりだすで書かれているように、「フェミニズムにとって今闘うべきはバックラッシュである」という大義名分を掲げ、「対立をあおらず共闘、連帯しよう」と叫ばれ、学会運営などでフェミニズム批判がおさえこまれたものになっている。わたしもいろいろ声を上げているが、真剣に取り上げられ改善されたとはなかなか思えない。「バックラッシュ」が名目として便利に使われているのではないかという疑いさえ生じる。


2004年12月、上野さんが主宰されている東京大学ジェンダーコロキアムで「ジェンダーフリー概念」から見えてくる女性学・行政・女性運動の関係」という企画を山口智美さんとわたしで提案した。(報告を参照ください。)しかし、その頃から現在までの3年の間に、女性学をめぐる地図はだいぶ変わってしまった。残念なことに、よりいっそう閉塞的で多様な声が出ずらい状況になっているというのがわたしの見方だ。フェミニズム運動がよりいっそうおだんご状にまとまった気がする。相互批判がなくなり、多様な意見が上がってこない。


それに関連したエピソードとして、上野さんのフェミニズム運動における位置取りが変化したことがある。3年前東大ジェンダーコロキアムでの「ジェンダーフリー概念」企画の時は、東京中心の行政一体型フェミニズムを批判した山口智美さんや私に上野さんは、「私がこういう場に出られる理由は、私は行政と結託していないほうですので、ジェンダーフリーがバッシングを受けても、私自身がその対象にならなかったために、痛くもかゆくもない」と見得を切っておられた。そして、自ら行政とは一線を画していた「非主流派(?)」を主張されていた。ただし、『上野千鶴子対談集・ラディカルに語れば・・・』(平凡社)での大澤真理さんとの対談を見る限りでは、上野さんが「行政と一線を画していた」とは必ずしも言えないと思うが、上野さんが「ジェンダーフリーを死守せねば」というフェミニズムの主流派と意見を異にしていたことは確かだった。


しかし、その後、主流フェミニズムに対して批判的なわたしたちのスタンスはウェブで示しているように変わっていない一方、上野さんはその後メーリングリストを開設し、かつて「行政と結託している方の人たち」と呼んでいた方たちと共に集会を開いたり、それをまとめた『「ジェンダー」の危機を超える!』(青弓社)を共に刊行するなど行動を共にするようになっておられる。ジェンダーコロキアムに企画を出したことから、上野さんと同じ考えだと誤解される方もないとは思うが、明確にしておきたい。傍目には、上野さんは今や行政と連結した主流フェミニズムのリーダーとすら目されている状況にある。


しかし、今やフェミニズムは孤高の人ではなく、行政とも連動してやっていけるし、その考え方がベストセラーにもなるほど受け入れられている。この現状を真っ当に認識する必要があるのではないか。いつまでも自分たちを「少数派」や「弱者」の位置において安住しようとするのは、現状を読み違えている。もちろん、行政との連携ゆえに今の男女共同参画政策が意識啓発に偏ることも受け止め、本筋の性差別是正へと軌道修正すべきである。今の男女共同参画政策が意識啓発に偏るから右派の道徳重視派から反発を受けている部分が大きいのである。それをせずに、「バックラッシュ」を大義名分として持ち出し、内部批判を封じたり、スルーしたりするのでは、フェミニズムは先細りになるだけだ。いくら覇権を握っているのがシニア世代だからといって長生きできなくてもいいということにはならない。


私からの提案としては、批判を含めて内部の議論を活発にすること、メーリングリストや更新の少ないHPにとどまることなく、議論をウェブ時代に適応して拓いていくことをあげておきたい。あー、『女性の品格』には、インターネットは危険なので近寄らないのが女性の品格だといった趣旨のことが書いてあったんだ・・・。

【訂正:2月16日】メーリングリストに関しての不正確な記述を訂正しました。

kmizusawakmizusawa 2008/01/13 09:31 うーん、ほんとにフェミニズムは日本社会に受け入れられるようになったのだろうか… 「女性の品格」にしても「おひとりさまの老後」にしても、あれ、フェミニズムの本だったのか…。坂東さんや上野さんが「フェミニスト」であると意識せずに読まれている方も多いでしょうね。それはそれで「浸透してる」ということかもしれませんが。タイトルのつけ方もうまいですよね。

「おひとりさまの老後」は私も少し読んだのですが、今のところ、自分の現状とそこから予想される未来とを照らし合わせるとあまり前向きな参考にはならず、むしろ不安を煽られるばかりです。

それがまったく必要ないというのではなく、そういうものばかりではないこともわかった上であえて言うのですが、行政の意識啓発政策に取り込まれ(そして新たな「こうあるべき」を作り出している)、個人の心構えとか備えとかなんとか術を身につけることでサバイバルしよう幸せを目指そうという、メインは自助努力的なものばかりがフェミニズムと言われるのなら、そんなフェミニズムはいらんわー(笑)。たしかにそれが社会に受け入れられる「主流」のテクニックではあるんでしょうけど。世の中全般的に、成功のためのなんちゃら術や「心構え」系の本って人気ありますよね。

あと…

上野千鶴子さんって「非主流」だったことなんてあるんでしょうか…(笑)

discourdiscour 2008/01/13 10:27 >行政の意識啓発政策に取り込まれ(そして新たな「こうあるべき」を作り出している)、
>個人の心構えとか備えとかなんとか術を身につけることでサバイバルしよう幸せを目指そうという、メインは自助努力的なものばかりがフェミニズムと言われるのなら、そんなフェミニズムはいらんわー(笑)。

「啓発」ではらちがあかないからと、法の網をかぶせるべく、男女共同参画社会基本法を作ったはず。「性差別」をなくすことがその法律の最大のポイントとして・・。しかし、そのことを今どれだけのフェミニストが覚えているのか、あやしいものです。

discourdiscour 2008/01/13 10:29 kmizusawa さんへの追加です。

>上野千鶴子さんって「非主流」だったことなんてあるんでしょうか…

そうですね。ただ、行政とのつながり方という点で、ご自分ではそのような認識であられたように思いますが、、、。

yamtomyamtom 2008/01/13 10:50 上野さん、もしかしたら現在でも行政とのつながりという面で「非主流」のつもりなのかも?しかしながら、彼女はずっと「主流」だったと私も思うし、「主流社会学」的なものへの批判もしてこなかったしね。

「基本法」はできるときに、妥協の産物的にできあがってしまったのも問題の根幹かも。

discourdiscour 2008/01/13 12:03 yamtomさん、
>上野さん、もしかしたら現在でも行政とのつながりという面で「非主流」のつもりなのかも?

どうでしょうね、聞いてみたい気もしますね。

>彼女はずっと「主流」だったと私も思うし、「主流社会学」的なものへの批判もしてこなかったしね。

フェミニズム運動ではなく、「フェミニズム研究」(あるいは女性学)という点においては、自他共に「100%主流」という評価に違いありません。

>「基本法」はできるときに、妥協の産物的にできあがってしまった

そういえば、「男女平等」ではなく、「男女共同参画」という用語を発明された張本人が何を隠そう『品格』の人、板東真理子さんだったことはこのエントリー的には奇遇だなと思います(笑)。

discourdiscour 2008/01/13 14:10 こうやって書いていて思ったんだけど、日本のフェミニズムって上野さんや板東さんと、主要登場人物が変わらず、長期に影響力持ち続けておられるんだなと感慨深いです。なんだかなあ・・と思います。どうしてこうなるんだろう? しっかり考えないとまずいですね。

sumiyakistsumiyakist 2008/01/13 20:49 >二人とも富山県出身だこと!
現代フェミニズムのみとり図は全く分かりませんが、この二人と室井滋の鼎談を企画したら面白いだろうな〜。三つ巴戦や!

son-of-laurenson-of-lauren 2008/01/13 22:38 バックラッシュって、ネオリベラリズムに対抗してということで理解は良いのでしょうか?そして、日本の状況はアメリカに準ずるというスタンスという理解で良ければ、ブッシュ政権以降の私たちを取り巻く状況に対し、フェミニズムは連帯しようじゃないかという声ですね。たぶん、第二次フェミニズムの時も、まずは女の地位を向上するためにということでレズビアンフェミニストは沈黙を強いられた歴史があると思うのです。現在も、結局どういう意見が弱められ、どういう意見が強められているのか、そこが問題なのだと思います。

discourdiscour 2008/01/14 11:01 sumiyakist さん、
板東、上野、そして室井のぶつかり合いはみてみたいですねー。興行主になるのはどこでしょう?

son-of-laurenさん、
>バックラッシュって、ネオリベラリズムに対抗して

「バックラッシュとの戦い」と言っている主流フェミニズムは一体何と闘っているつもりなんでしょうね。

>第二次フェミニズムの時も、まずは女の地位を向上するためにということでレズビアンフェミニストは沈黙を強いられた歴史がある

はい、そうですね。そういった歴史を思い出してしまう状況です。

>結局どういう意見が弱められ、どういう意見が強められているのか、そこが問題なのだと思います。

確かにそうです。強められているのは「ジェンダー概念」の重要性です(例えば、『「ジェンダー」の危機を超える!』を参照ください)。「ジェンダー」「ジェンダーフリー」およびジェンダー理論の研究および研究者を強めようとしているところが、もっともひっかかるところです。その結果、ジェンダー理論の研究者が大したことないと思う意見は弱められてしまうことになる状況に陥っているかと思っています。

brother-tbrother-t 2008/01/18 13:02 上野千鶴子さんや坂東眞理子さんの著作が売れているのはフェミニズムが保守の1ジャンルになり、既得権を守る運動になってきていると言う側面が現れてきているだけなのだと感じています。
 ただ悲しいかな、上野さんが既得権を守ろうと頑張っても下の世代からはそっぽを向かれるだけ名のではと感じます。
韓国の新しい大統領が「さらに成熟した韓日関係を作り上げるために(日本に対して)謝罪せよ、反省せよといった言葉は言いたくない」と言っています。従軍慰安婦問題に関して書いている人はいっぱいいてもこのことに注目しているフェミニストはどれだけいるのでしょうか?また「外資系企業の投資環境を大幅に改善し、各種の規制を取り払うほか、労使問題の安定化に向け対策をまとめていく」とも演説で述べています。
 かれは日本以上の貧困に苦しんでいる韓国の若者の支持で首相になった人間です。もう60年前の戦争よりも目の前の貧困の解決と言うのが韓国の選んだ方向性だと感じます。
 そんな中で上野氏のようなお年寄りが「お一人様の老後」と既得権を守る論調を繰り広げたり坂東氏が「品格」と言ってもしらけるばかりなのではないでしょうか?http://news.livedoor.com/article/detail/3469510/

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